とある<マスター>のデンドロ記録   作:貴司崎

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※前に書いたデンドロ二次とは別ユニバース。
※長編やってると原作の設定開示で作中設定に齟齬が出たら書く気ががなくなる悪癖があるダメ作者なのでオムニバス形式な短編集にしました。


最強だった理論(上)

 □レジェンダリア東部・<魔獣の森> 【獣戦鬼(ビーストオーガ)】レフィー

 

 中央大陸南西部・西方三国の一つである“妖精郷”レジェンダリア。多様な自然環境が特徴のその国の東部にある、魔獣種を中心とした様々な高レベル非人型範疇生物(モンスター)が生息している<魔獣の森>にて一人の女性と一頭の白銀の狼が少し困った様な表情で佇んでいた。

 

「……うーむ、どうも道に迷ってしまいましたかね?」

『クゥン……(主人殿、だからあれだけフラフラしない方が良いと……)』

 

 その片手に持った地図を見ながら困り顔をしている女性の外見は長い金髪に緑色の眼を持つ二十代ぐらいの女性で首には黒いチョーカー(首輪)が巻かれており、地図を持っている左手には『片腕の人と狼』の様な紋章が刻まれていた。その図柄通りと言うか本来なら()()()()()()()()()()()()()、衣装も片腕が無い彼女用の物で代わりと言うか右肩から赤色のマントが棚引いている。

 ……そんな彼女の名前はレフィー。この世界で<Infinite Dendrogram>と言うゲームをプレイしている<マスター>の一人であり、今は相棒であるお揃いの黒い首輪(チョーカー)を付けた大型犬程度の大きさな白い狼の『パスカル』と共にレジェンダリアを旅していた。

 

「いやーごめんねパスカル。ほらレジェンダリアってアルターやドライフと違って珍しい自然が多いからつい」

『ガウガウ(それで道に迷ってしまっては本末転倒でしょう。ここに棲むモンスターであれば()()()()()()()()()()()()()()()とはいえ、レジェンダリアの自然環境は危険な事に変わりないのですから)』

「ホントにごめんってば。それに<Wiki編集部・レジェンダリア支部>から【レジェンダリアの歩き方】って注意事項付きのパンフレットを買って読んだし、地図も高い魔法の地図を買ってるから目的地のカルディナとの国境にある“麗都”に向かう事はまだ出来る……筈」

『バウ(そのパンフレットには“レジェンダリアでは自然環境が危険だから可能な限り変な場所に近付かない様に”と書かれていませんでしたか?)』

 

 少し呆れた様にレフィーへと苦言を呈するパスカルだったが、彼の口からは犬化動物の鳴き声のみが聞こえてくるので念話の様なもので二人は話している様であった。

 ……とにかく流石に道に迷ったのは不味いと思ってはいるレフィーは器用に片手で魔法の地図を広げつつ、レジェンダリアで購入した目的地を示すマジックアイテムを駆使してどうにか迷子状態を解除しようと試みていた。

 

「うーん、目的地はあっちで……まだ<アクシデント・サークル>対策アイテムは十分残ってるから大丈夫の筈」

『バウ(此処の環境はマジックアイテムを狂わせる事もあるらしいですからね。私の感覚も100%当てに出来るとは限りませんよ)』

「そうだね、アルターやドライフと比べたら環境の特殊性が濃いって言うか『ガウッ!(主人殿後ろ!)』え?」

 

 そうして地図を持って四苦八苦しているレフィーだったがパスカルからのいきなりの警告に後ろを向くと、背後の森から全長5メートル程の大きさの虎がこっちに飛び掛かる直前の様な構えを取っていたのだ。

 ……その虎は【ハイ・フォレスト・ステルスタイガー】と言う上位純竜級モンスターであり、その名の通り特定環境──森林内での自己バフや《消音》《消臭》《気配欺瞞》に加えて森林内限定で目視とスキルによる感知を協力に妨害する《密林迷彩》により非常に高いステルス能力を有している恐るべき森のハンター。その力によりレフィーが有する《殺気感知》や《危険察知》のスキルを擦り抜けて接近出来ており、彼女より高いレベルの感知スキルを有するパスカルでも相当に接近されなければ気付けなかったのだ。

 

『……GUAAU!!!』

 

 最も並の人間やモンスターでも不可視状態での攻撃力を上げる《スニーク・レイド》を含めた奇襲を喰らってから存在に気付く事になる程のステルス能力を持つボスモンスターであり、それを攻撃が行われる前に気付けたパスカルの探知能力が優れている所作なのだがステルスタイガーは“気付かれても最早関係ないと言わんばかりにレフィーを食いちぎらんと飛び掛かった。

 ……確かに気付かれてもしまえば《不意打ち(スニーク・レイド)》などの奇襲攻撃スキルは意味をなさないが、それでも周囲の樹木から自然魔力を吸収したステータスを上げる《ドレインフォース・フォレスト》により超音速に達するAGIを含めた高いステータスがあれば人間一人を噛み砕く事は容易いとステルスタイガーは考え、その通りに無い腕の代わりにマントを翻すのがやっとのレフィーは鋭い牙によって頭部を丸ごと噛み砕かれた。

 

『GUU……U?』

「残念ハズレ。《クレセントスラッシュ》」

 

 ……筈だった彼女の身体が“まるで幻影の様に”霧散すると同時に横合いから《瞬間装備》で一本のサーベルを片手に装備したレフィーが現れ、剣の軌跡が三日月の様に見える程の速度の一閃によりその胴部を深く斬り裂いたのだ。

 その剣技はサブジョブの片手でしか剣を振るえない代わりに速度に優れる隻剣士系統上級職【隻剣聖(シンギュラー・ソードマスター)】のスキルでも加速された一閃を放つものであったが、彼女が使ったそれは剣先が超超音速に迫る速度で振るわれており一般的なカンスト上級職の攻撃と比べても遥かに高い威力を有していた。

 

『GUUAAA……!!?」

「運が良いね、【睡魔】は入ったかな」

 

 更に斬撃を受けた筈のステルスタイガーは何故か痛みを余り感じず、むしろ眠気が襲って来たせいで僅かに動きが鈍った……これは彼女のサーベル──逸話級特典武具【魔睡細剣 アネスーカ】の僅かでもダメージを与えた相手に眠気を齎す【睡魔】の状態異常を与えるスキル《魔睡の刃》の効果である。

 それでもステルスタイガーは眠気を無理矢理振り払いながら戦闘を続けようとするが、そこに逆方向から先程までが小さな狼だった筈のパスカルがステルスタイガーと同じ全長5メートルぐらいまで巨大化──《小型化》のスキルを解除して本来の大きさに戻りながら迫りその首筋に噛みついた。

 

『ガウッ!!!』

『GAAAAA!!?』

 

 急所に噛み付かれた事を知って慌てて強化されたSTRを駆使して振り解こうとするステルスタイガーであったが、パスカルのSTRはバフにより一万に届くステルスタイガーのそれを上回っているのか中々外れる事はなく、更にパスカルは自己強化の魔法に加えて自身に高熱を伴う聖属性を纏わせる付与魔法《聖輝爪牙》を使って牙を輝かせてそのまま敵の首を食いちぎらんとする。

 だが、それでもバフで上昇しているENDと森林内では自動回復するHPで耐えながらこちらも爪牙を振るってパスカルを斬り刻むステルスタイガーだったが、パスカルも高いENDとHPで受け止めながら回復魔法を使って傷を癒しながらステルスタイガーを押さえ込みつつ自由に動けない様にする。

 

『GUUUUUUAAAAAA!!!』

『ガアアアウウ!!』

「……隙だらけだね。《ヴァリアブル・エッジ》!」

 

 そんな二体のモンスター同士がお互いを倒さんと暴れている所に躊躇なくレフィーが割り込み、パスカルが噛み付いているステルスタイガーに向けて超音速での刺突と斬撃を織り交ぜた連続剣を振るいめった斬りにしていく。

 それらの剣戟は激しくもつれ合う二匹の内ステルスタイガーのみを傷付けてゆき、その度に【アネスーカ】の効果が発揮されてステルスタイガーを動きが鈍る。【睡魔】は累積する事で強度を増していき最終的に【睡眠】に落ち込むと言う特典武具由来故に少し特殊な状態異常なのだ。

 

『GA……AA……』

『グアウッ!!!』

 

 そうして積み重なった状態異常によってステルスタイガーの意識が一瞬飛んだ瞬間、更なる力を込めたパスカルが光熱を発する牙によってステルスタイガーの喉に喰らい付き、その上で口内から聖・炎属性複合ブレス《セイクリッド・バースト》をゼロ距離から叩き込んでその頸部を吹き飛ばして息の根を止めたのだった。

 絶命したステルスタイガーの遺体はこの世界のシステム(法則)に則って光の塵となり【密林隠虎の宝櫃】と言うドロップアイテムを残して消え去り、パスカルは直ぐに回復魔法で自分とレフィーの傷を治しつつ周囲を警戒し、その間にレフィーは慣れた様子でサーベルを片手でアイテムボックスへとしまってから宝櫃を手に取り開けた。

 

「……ふむ【密林隠虎の頭部】と【密林隠虎の毛皮】って素材アイテムと換金アイテムが幾つかか。中々強かったし素材は結構良い値段で売れそうかな」

『バウワウ(私でもかなり近付かれるまで気付けないとは厄介な相手でしたからね。やはりレジェンダリアでは《小型化》は使わずに移動した方が良いでしょう)』

「あっちの方が好きなんだけど仕方ないか。小さくなるとステータスが下がるし、パスカルの感知でもあそこまで接近されるまで気付けない相手がいるんじゃねぇ」

『グウウ(今回は解除が間に合いましたが、私が《小型化》したままだと主人殿のステータスも下がりますからね)』

 

 ちなみにパスカルの《小型化》モードは単なるマスコットモードとかでは無く、物理ステータスが下がる代わりにHP・MP・SPの自然回復速度が増す省エネ形態であり、尚且つ高い感知スキルは据え置きなのでこの姿を取りつつ敵を感知したら元の姿に戻る用途で使う長期間の移動用モードである。

 これまでアルター王国やドライフ皇国を巡る間に長期間活動に適したスキルとして覚えたが、得意な環境とそれに適応したモンスターが多いレジェンダリアではパスカルの感知能力を持ってしても不意を打たれるケースが多いので使用を控えるべきかもしれないと彼女達は考えていた。

 

「そだねー、《獣心憑依》パゥワーはパスカルの基礎ステが基準だから。……それよりも今は道に迷ったのをどうにかしないとだけど、誰か街への道を教えてくれる人とか看板とかは無いものか」

『……グウウゥ……(……看板はともかく人らしき気配とモンスターの気配がこちらに近付いて来ますね。数は3人に加えてモンスターも二体いますからテイマーのパーティーでしょうか。《悪意感知》には今の所反応が薄いと言うかこっちを警戒している感じですね)』

「へぇ、今日はお客さんが多いね」

 

 敵を倒した後も戦闘を聞きつけて他の敵が現れないか感知系アクティブスキルを使って念入りに周囲を警戒していたパスカルが狼由来の嗅覚による感知で接近してくる人間の反応を捉え、それを受けたレフィーは再び武器を取り出して警戒態勢を取った。

 相手は人間の様だがそれなりに旅をしていた経験から野党やPKの可能性もゼロではないので警戒しつつも、この森で活動してしているなら普通に話せる人間であれば道を聞いて迷子から脱却出来るかもしれないと考えてレフィーは相手が来るのを待ってみる事にした。

 

「出来れば街への道を教えてくれる人だとありがたいけど『…………ァァァアァァァアアアァァァァァァァ!!!』ん?」

 

 すると何やら雄叫びの様な聞こえて来たと思ったら突然雄叫びと共に森の中から人間と思われる影が飛び出して、更にはその人影から何か“巨大な物体”が召喚されて周辺の木々を薙ぎ倒しながら地面に落ちたのでレフィーとパスカルは直ぐに飛び退いた。

 その物体はよく見ると厚さ約五メートルで直径は10メートル程度の円盤状になっており、それが地面に落ちた直後に全身に獣を模した民族衣装を着て右手には奇妙な形状をした(マチェット)、左手には同じく変わった盾を装備した浅黒い肌をした筋肉質な男性が降り立った。よく見るとその男性の左手には“とぐろを巻いた蛇”の様な紋章があったのでティアンではなく<マスター>である事が伺える。

 

(<マスター>って事は呼び出したあの物体が<エンブリオ>かな。《看破》と《鑑定眼》も通らないし。後キャッスルかと思ったけどどうも()()()()みたいだから……)

「……問おう、此処に何の目的で来たのか? ……言っておくが、もうどう頑張っても【獣王(キング・オブ・ビースト)】の座は手に入らないぞ」

(【獣王】? でもそれって確か……)「何の話か分からないけど私達は道に迷っただけだよ。それとも入っちゃいけない場所だったかな? それなら直ぐに出ていくけど」

 

 もしかしたらパンフレットに注意事項として載っていた『現地部族特有の入っちゃいけない禁足地に入って犯罪者にされた』パターンかと思ったレフィーは確認を取る。彼女としてもレジェンダリアで指名手配されるのはゴメンであった。

 

「いや、そういう訳では無いが……此処にある“獣戦士(ジャガーマン)氏族”に何か悪意があってこの場所に来たのでは無いと?」

「その獣戦士氏族とか今初めて聞いたんだけど、そっちから襲って来ない限りは何か危害を加える気はないわよ。私達は本当に道に迷っただけで、出来ればさっさと目的地である麗都に向かいたいぐらいなんだけど。……後、出来れば道を教えてくださいお願いします」

 

 とりあえずレフィーは何か誤解されているらしいので戦意がない事をアピールすべく武器を下ろし、此方を伺う男の反応からして《真偽判定》を使っていると見て出来るだけ正直に事情を話した。

 その様子を見た男も《真偽判定》で受け答えが全て真実である事からレフィー達が“自分が警戒している者達”とは違うと見て武器を降ろし、更に森の中から同行していた残り二人の男女とそのテイムモンスターらしき“虎”と“豹”が姿を現した。

 

(……男の方が従えてるのが【テンペスト・ドラグタイガー】で女の子が従えてるのが【ライトニング・ブラックパンサー】か。二人とも紋章が無いって事はティアンなんだろうけど、どちらも純竜級のテイムモンスターを従えてるあたり相当強いね)

『(私は気付けましたがスキルではない技術による気配の消し方も見事なものだったから熟練のティアンですね。合計レベルも500(カンスト)かそれに準ずるレベルでしょう)』

 

 その男女はどちらも先に出て来た<マスター>と同じ様に浅黒い肌に獣の衣装をした装備を身に付けており、男の方は30代半ばで女の方は10代後半から20代ぐらいの年齢に見えたが顔立ちや目元が似ている事から血縁関係にあるのが伺えた。

 

「レラ、それにキムも。出て来たのか」

「そこの<マスター>が戦う気がないなら奇襲の為に隠れておく必要はない。……後その狼には私達が隠れてる位置も全部丸わかりみたいだったし」

「プリンス、お前が【獣戦鬼】に就いている<マスター>を警戒するのは分かるが、ただ森に迷い込んだだけの者であれば無事に返すのも俺達獣戦士氏族の役目だ。……それにその狼は主人と信頼関係を築けていてその在り方も善性の様だから、少なくとも悪逆の徒では無い事ぐらいは分かる」

「ふふーん、ウチのパスカルは凄いんだからね。中々見る目がある」

「……ガードナー系<エンブリオ>ではなかったのか」

 

 レラとキムと呼ばれた男女に言われてプリンスと言うらしい<マスター>が今気付いたかの様に《看破》を使ってパスカル──レフィーのテイムモンスター【ハイ・セイクリッド・シルバーウルフ】を見て、従属キャパシティが少ない【獣戦士(ジャガーマン)】系統をメインにしながら上位純竜級モンスターを運用している事もあって多少驚いた。

 

「……成る程、ガードナーではなくテイムモンスターを強化する系統の<エンブリオ>か。それも従属キャパシティを減らす類の」

「その辺りは企業秘密かなー。……それで私はどうなるのかな? 出来ればティアンや<マスター>と戦いとかはしたくないんだけど。出ていけと言うなら出ていくし」

「いや、すまなかった。最近色々あって少し他の【獣戦鬼】ガードナー持ち<マスター>の事を警戒していてな。……俺は【獣戦鬼】モノノケ・プリンス、この森に住むジャガーマン氏族に世話になっている身だ。君をどうするかはキム達の判断に任せる」

 

 そう謝りながら戦闘態勢を解いたプリンスと言うらしい<マスター>は少し後ろに下がって、代わりにキムと呼ばれた青年がテイムモンスターである【純竜猛虎】と共に前に出て来た。

 

「俺は獣戦士氏族の長である【獣戦鬼】キムという、コイツは俺の相棒である【テンペスト・ドラグタイガー】のカンナだ。……<マスター>殿、貴女がこの森に迷い込んでしまっただけであるのなら俺達の里へ立ち寄っても構わない。少なくとも森からの出方や近くの都市への行き方も教えよう」

「え、いいの? 余所者排斥系の展開かと思ったけど」

「別に俺達は積極的に外部の人間を招いたりはしないが、だからと言って何処ぞの邪妖精の様に自分達の両地に迷い込んだ悪意の無い者を一方的に排斥する程に腐ってはいない。……それに優れた【従魔師(テイマー)】には敬意を払うのも俺達の習わしだ」

「じゃあ遠慮なくお世話になります。迷子状態解除やったぜ」

『バウ(良かったですね主人殿)』

 

 そうして紆余曲折あったが迷子状態を脱却出来るならと即答で彼らの好意に甘える事にしたレフィーとパスカルは、彼等の案内に従って獣戦士氏族の里へと案内される運びとなった。

 

「そう言えば自己紹介はまだだったね。私はレフィー、しがない旅の<マスター>だよ。こっちは愛犬(狼)のパスカル」

『バウワウ(パスカルです、主人共々よろしく)』

「ん、よろしく。私はレラでこの子は【ライトニング・ブラックパンサー】のアペラ」

「改めて名乗っておこう。俺はモノノケ・プリンス、獣戦士氏族の客分をしている<マスター>で、こっちは俺の<エンブリオ>のミドだ。もう戻っていいぞ」

『……Zzzzz……』

 

 そう言ったプリンスが後ろの円盤状の物体──“ミド”と呼ばれたトグロを巻いて寝ている巨大な蛇の様なガードナーの<エンブリオ>を紋章にしまったのを見て、レフィーは『ジョブが【獣戦鬼】だしやっぱりガードナーか』と思った。

 

「呼吸はしてたみたいだしやっぱり生き物だったね。ガードナー獣戦士理論ってやつかな? 結構特殊なガードナーっぽいけど」

「全てがオンリーワンの<エンブリオ>に“特殊じゃない”やつなんて居ないと思うがな。そっちも“<マスター>なのに片腕”だしよ。……だがキム、こいつを連れていくのは良いが最近この森に入り込んだ【ハイ・フォレスト・ステルスタイガー】の捜索はどうする? もう結構な被害が出てるんだろ」

「それに関しては後回しにする。俺達で探し回っても見つからなかったから相当に警戒心が強い相手の様だからな。一先ず里に戻って対策を……」

「そいつなら多分倒したわよ。はいこれ」

 

 聞き覚えのある名前が聞こえたのでレフィーはさっきのドロップアイテムである虎の頭部と毛皮を取り出しながら討伐報告をすると、ティアンであるキムとレラは驚いた様に目を丸くしプリンスの方も目を細める。

 

「上位純竜級のボスモンスターだった筈だがよくソロで倒せたな。<マスター>でも複数名パーティーで討伐する手合いだろうに」

「パスカルと二人でだけどね。それにステルス能力特化型で直接戦闘になったらそこまで強くはなかったし。ウチのパスカルの探知能力は凄いから相性は良かったね」

「それでもバフ込みで戦闘系超級職並みのステータスはある筈だが。……そのパスカルのステータスなら不可能でもないか」

「……とにかく俺達の領地に入り込んだボスモンスターの討伐には感謝する。ヤツは人間を良く狙って来てウチの里でも犠牲者が出たからな。良ければ里で礼をさせてくれ」

「偶然襲われたのを返り討ちにしただけだから別に気にする事ないけど、お礼をくれるならありがたく受け取るわ」

 

 内心『モンスターを返り討ちにしただけでティアンからの好感度上昇だぜやった』みたいな気楽な考えをしているレフィーは上機嫌になりながら、獣戦士の里に戻るらしい彼らの後に着いていってその場を後にしたのだった。




あとがき・各種設定解説

アバター名:レフィー
性別:女
メインジョブ:【獣戦鬼(ビースト・オーガ)
サブジョブ:【隻剣聖(シンギュラー・ソードマスター)】【獣戦士(ジャガーマン)】【隻剣士(シンギュラー・ソードマン)】【細剣士(フェンサー)】【騎兵(ライダー)】【魔獣師(ビースト・ハンドラー)】【斥候(スカウト)
<エンブリオ>:【???? ????】
従魔:パスカル【ハイ・セイクリッド・シルバーウルフ】
・リアルでは長年一緒に過ごしていたペットの愛犬パスカル(初代)が寿命で大往生してペットロス気味だった所で<Infinite Dendrogram>に出会いそのキャッチコピーに釣られてアルター王国を選んでプレイを始めた。
・とりあえずゲーム内ならまたペットを飼っても死に別れたりしないかなと思って始めたが、王国の従魔師ギルドで<マスター>と違ってテイムモンスターは死亡すると知って続けるか悩んだがギルドにて嘗ての愛犬の面影がある“片足を失った”白い狼を見つけた事、そしてそれを受けて目覚めた<エンブリオ>の特性からプレイを続ける事となった。
・それから“自分は片腕を失いつつも片足が治った”パスカル(2代目)と共にデンドロをプレイしつつ『これだけ凄い世界ならもっと色々な所を回ってみたいな。パスカル(初代)とは旅行に行った事とかは無かったし』と思い、ある程度の実力を身に付けた所で世界を巡る旅に出た。
・そこからパスカルを可愛がりながら王国を巡り皇国にもドライフいってみて次はレジェンダリアとか面白そうと旅行中のデンドロを満喫している<マスター>であり、今はパスカルの存在もあって価値観はやや世界派寄りだが過度にデンドロ側に肩入れする事もないゲームをエンジョイしようぜ勢なスタンス。
・エンジョイ勢だが彼女自身の戦闘スタイルはパスカルの高いステータスを【獣戦鬼】の《獣心憑依》によって自らに加算し、片腕しか無いデメリットを片腕だけしか剣を振るえない代わりに補正がかかるサブの【隻剣士】系のスキルで補う“ガードナー獣戦士理論”の亜種的なもので割とガチ。
・加えて自身の<エンブリオ>の能力もあってパスカルの能力がそこらの上級ガーディアンを優に上回っている事、そして彼女自身の戦闘センスが結構高い事もあって両者の連携を含めれば超級職無しでも準<超級>クラスの戦闘能力を有する<マスター>の一人となっている。

パスカル:レフィーのテイムモンスター
・種族は【ハイ・セイクリッド・シルバーウルフ】と言う聖属性と回復魔法に長けた上位純竜クラスの白銀の狼型モンスターで性別は雄、更に狼らしく嗅覚も鋭い上に聖属性の応用による悪意や呪いに対する非常に高い感知能力を有する。
・元は【ホワイトウルフ】と言う【ティールウルフ】亜種の白い狼だったがテイム時の事故で片足を失い、希少種でもあったのでギルドで保護されていたが部位欠損したモンスターを買うテイマーは居らず処分される寸前でレフィーに買われた。
・見捨てられて当然な自分を買ってくれて更には足を治してくれたレフィーには絶対の忠誠を誓っており、そこから彼女を守るべく修練と成長を続けて【ホワイトウルフ】から【セイント・ウルフ】に、そして【セイクリッド・シルバーウルフ】へと進化した後に更なる成長を遂げて今に至る。
・元々特にスキルの習得に関する高い素質を持っていたので複数の強力なスキルを習得しており、スキル重視な影響から同レベルの純竜級モンスターと比べると低めのステータスもレフィーの<エンブリオ>によって伝説級モンスターに迫るレベルまで強化されている。
・パスカル(初代)についてはレフィーから話を聞いて最後まで主人とその家族に尽くした在り方から一定の敬意を持っているらしく、その名に恥じない様に自らも主人を守ろうと新たな名前を好意的に受け止めている。
・ちなみに名前の元ネタは初代の犬のパスカルを買って来たレフィーの父親が好きだった“とあるレトロゲーム(真・女◯転生)”に出て来る犬の名前であり、『出張で家を開けがちな自分に変わって家族を守ってほしい』と言う願掛けで付けたらしい。
・……のだが元ネタを知っている妻からは『それって私が食い殺される展開じゃないかしら。子供は守ってくれそうだけど』と突っ込まれたが、2代目の彼なら人間に化けたモンスターを見破って返り討ちにするぐらいは出来るだろう。

【魔睡細剣 アネスーカ】:逸話級特典武具
・細身のサーベル型特典武具で高めの攻撃力とこの武器での攻撃時の痛覚や衝撃を大幅に鈍化させるパッシブスキル《麻酔の刃》と、MPを消費してこの武器でダメージを与えた者に【睡魔】の状態異常を付与する状態とする《魔睡の刃》の装備スキルを持つ。
・この【睡魔】はレジストし難い代わりに効果は僅かに眠気を齎す程度で極短時間で解除される状態異常だが、掛かっている状態で追加で【睡魔】を付与されると効果がどんどん累積して重篤化し最終的に【睡眠】の状態異常になる。
・生前の【魔睡虻蚊 アネスーカ】はステータスは純竜級下位程度だが大きさがリアルの蚊ぐらいと言う<UBM>であり、その大きさとステルススキルで誰にも気付かれずに人の血とHPを吸って殺すモンスターだった。
・その能力でドライフ皇国の辺境の村で次々と住民の不審死を起こしていたが偶々立ち寄ったレフィーと探知能力に長けたパスカルがその存在に気付き、それでも『純竜級の能力を持つ超小型の蚊』と言う特性故に苦戦したが最終的にはパスカルの高範囲攻撃を中心にどうにか討伐出来た。


読了ありがとうございました。
今回のテーマは『ガードナー獣戦士理論』についてのあれこれ。原作にも設定が出ていた【獣戦士】に慣習的に就いている少数部族を独自設定100%で出しました。
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