リィン・サンドロットの軌跡   作:影後

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スパーダ・リンの軌跡8

「…それで、

ウチの会長がイリヤ・プラティエに脅迫状だと?」

 

「あぁ、丁度よくクロスベルからマフィア1つ消せるんだ。

良いことだと思わないか?ガルシア・ロッシ」

 

「テメェ…」

 

「スパーダ、煽らない!…話を戻します。

無論。此方もそうだと決めつけている訳ではありません。

しかし、何やらそちらの会長とイリヤ・プラティエとの

間にちょっとした『トラブル』があったとお聞きしたもので。

参考までに、話を伺えればと」

 

「アレは酒の席でのちょっとした『ハプニング』だ。

会長も酒が回ってて記憶にないらしい。

ぜんぜん、気にしてないと思うぜ?」

 

「帝都のオペラハウスへ彼女を『誘致する』

という話もあったそうですが」

 

「ソイツは帝国のお偉いさんとの付き合いで言っただけだ。

別に否定されようがされまいが、どっちでもいい。

逆に聞くが、拒否された程度で報復する程度だ

と舐めてるのか?」

 

「は?上納金納めろとか言って来た癖によく言うぜ。

彼奴どうした、川に投げ捨てた奴」

 

「…ちっ、一命は取り留めた。

テメエに両足ぶち抜かれてなければより泳げただろうが…」

 

「はん、ウチのバイトと家族に手を出そうとしたカスだ。

俺はお前は、ガルシア・ロッシは昔から知ってる。

殺し合った仲だしな。だが、他の奴等は知らん。

お前が『猟へ』」

 

「黙れ!」

 

スパーダが何かを言おうとした時、

机をへし折るほどの爆音と怒りに任せた拳が

叩けつけるように振るわれた。

 

「へぇ、殺気は変わってないな。

悪いな、ロイド。少し煽り過ぎた」

 

「テメェの魂胆はわかってる。

俺を嘲り情報を抜こうって魂胆だろうが、

その手には乗らん。曲がりなりにも俺は若頭。

そこらの組員とは理由が違う」

 

「……ソイツは残念だな。ロイド、脅迫状を。

ここまで煽っても此奴は怒ってない。

理性的な状況だ、俺が道化になる理由も言って来た。

探り合いなどしていても、時間の無駄だ」

 

「……よくわかってるな、スパーダ。

それで、ソイツが件の『脅迫状』か?」

 

「はい、此方を」

 

ガルシアはロイドから受け取った内容を読む。

 

「確かに、イリヤ・プラティエの公演を……」

 

そして、スパーダを一睨み。

 

「お前、始からわかってて此処に来たな」

 

「え?」

 

ロイド達はスパーダを見たが、軽く微笑む。

 

「――1つ忠告だ。

お前等が何をしようがこの街は変わることはねぇ。

特に、俺達になにかしょうが無理だって話だ。

わかったらとっとと失せろ。これ以上話す気はない」

 

ガルシアは態度を急変させ、ロイド達を追い出す。

そこには何処か面倒事が降り掛かった様な疲れた表情が

見て取れた。

 

「ご協力、ありがとう御座いました」

 

「じゃあなガルシア、何時か飲もうぜ?」

 

「二度と来るな」

 

特務支援課の一同が裏路地から出てくると、

付近にあるカフェの中に入る。

 

「さて、スパーダ。話して欲しい。

今回の件について、知っている事を全て」

 

「……話したつもりだったんだが?」

 

「スパーダの態度がおかしい。

何時もは俺達に危険がない様に立ちわまっていた。

でも、今回は相手を煽るように動いてばかり。

まるで、今回の件から手を引かせたい。

そんな気配がする」

 

スパーダは注文していたラズベリーサンデーと

ブラックコーヒーが届くと、食べながら話し始めた。

 

「今回の件、ルバーチェは関わっていないだろう」

 

「おい、じゃあ何で行か」

 

「行かせたつもりはない、お前達の選択だ。

事実、お前達はその選択をしルバーチェ商会ビルへ入り、

マフィアの若頭と顔を繋いだ。

俺としては、そんな繋ぎなど消して構わないとすら

思えるが……兎に角、今回の件は手を引かせたかった」

 

「何故ですか?スパーダさんが居れば」

 

「俺が居れば確実に安全だが、

『銀』という存在は曲がりなりにも『凶手』。

つまり暗殺者に等しい、今回の件、やり方は無数にある。

自分で手を下さなくとも、毒と言った考え方もできる。

俺も四六時中一緒にいる訳じゃない。

俺は、お前達を……ランディ以外を守りきれない」

 

「おいおい、俺は」

 

「お前は本気になれば銀ぐらい倒せるさ」

 

「……スパーダの考えはわかった。

でも、支援要請を受けた。なら、どんな結果になっても、

俺は進む」

 

「なら、歳上として俺も行かなくちゃな」

 

ロイドとランディの言葉にスパーダは驚き、

ラズベリーサンデーを食べる手を止めた。

 

「エリィ、ティオ、二人は」

 

「私も支援課の一員です。

ハブられるのは嫌です」

 

「えぇ、仲間と思ってもらえてないのかしら?」

 

スパーダは頭を天井に向ける。

正直、ここまで言われるのは想定外だった。

 

「マフィアだぞ?」

 

「えぇ、でもクロスベルを知るには良い機会だものね」

 

エリィの言葉にスパーダは折れ、降参する。

 

「ここからは普段通りに行こう。

ロイド、済まなかった。許してく」

 

「許す、許さないじゃないさ。

スパーダなりに俺達を心配してくれていた。

この中でクロスベルの闇を一番知ってるのはスパーダだ。

そのスパーダが言っている。

でも、俺達は進む。特務支援課としてね」

 

「あぁ、了解した。リーダー」

 

「…よし、なら」

 

「ルバーチェには行ったんだ。

俺もロイドの言葉の続きを理解してるが……

判ってるのか、相手は凶手の雇い主だぞ」

 

「あぁ、だから行くんだ」

 

「わかった、ならあと5分待ってくれ」

 

スパーダはそう言うと、

ラズベリーサンデーを食べる速度を上げる。

まるで魔法のようだ。5分もせず、完食し、

全員分の会計も済ませる。

 

「……はぁ」

 

「お前、太るぞ」

 

「知ってるか?脂肪があると身体を鍛えられるんだ。

俺は別にアスリートじゃあないが……

肉体を鍛える事を疎かにはしない。

食べた分のカロリーは常に消費されているのさ」

 

『黒月貿易公司』

それは表向きは東方系の貿易商であるが、

実情は共和国の東方系マフィアたる『黒月』の

クロスベルへの橋頭堡である。

 

「…ここか」

 

「まぁ、無下にはされないさ。

ただ、支社長には気を付けろよ。かなりの『切れ者』だ」

 

〘黒月貿易公司クロスベル支社〙

ー御用の方はノックをしてください。

 ⚠銃撃などはお止めください

 

「何だコレ、律儀にメッセージプレート?

しかも……」

 

「因みに、スパーダさん。この⚠の所は」

 

「……喧嘩を売られたから射撃した。

一応言うが、警察も悪いんだからな。」

 

「今回は問題ないさ。

スパーダは今のところ黒月と何も起きてないだろ?」

 

「起きてない…というか、ルバーチェとは違い、

奴等は普通に依頼してくるからな。しかも、高給。

俺達がマインツに行ってる時も、ウチのバイトが黒月関係の

依頼を受けて、報告書を上げてきた。

まったく、学生だぞ。何で俺に回さないんだ、彼奴は」

 

「バイト…前に聞いたけど、ユウナさん?

まさか…未成年?!!」

 

「No comment.聞かないでくれるとありがたい。

それに、エリィ。うちにも未成年がいる。

あと、本当に気安くていい。仲間だ、堅苦しいのはな」

 

「それはわかったわ。

でも未成年を悪魔どころかマフィアと」

 

「色々とあるんだ」

 

そう、色々とある。

今、こうしてクロスベルで生活していられるのも、

指令や任務が今の所一切無い為である。

執行者にはある程度の自由が認められている。

しかし、No.XV『魔王』の盟主への忠誠心は

家族への親愛に等しいものであると組織の誰もが知っている。

そして、仲間への親愛も大きい物へとなってしまった。

今、『魔王』として特務支援課を殺せと言われたら

きっと殺せないだろう。

そんな事が無ければと、ずっと思えてしまう。

 

コンコンコン

 

木の扉をロイドが叩くと、思いの外乾いた音が響く。

 

「…どちら様でしょうか」

 

「…クロスベル警察、特務支援課に所属する者です。

とある事件に関して、此方の支社長さんの話を

聞かせていただければと思いまして」

 

「…………」

 

扉の先の男は悩んだようだが、返答が来る。

 

「少々お待ちください」

 

「さてと…」

 

「鬼が出るか蛇が出るか……」

 

「……扉が開いてみてのお楽しみですね」

 

Don't worry(安心しろ)

俺がいる以上、直ぐ様敵対という事はない筈だ。

特に、あの男がな」

 

無言の時間が続くかと思われたが、

思いの外早く扉が開いた。

 

「ーお待たせしました。

支社長が会われるそうです。

どうぞ中へ」

 

「ど…どうも」

 

「失礼します」

 

ロイドを先頭に黒月へと入る。

中は東方系の装飾が施された古美術商と言うべき内装。

先のルバーチェに比べて明るく、

裏と言った印象は受けない。

 

「やぁ、よくいらっしゃいましたね」

 

そう人の良さそうに特務支援課一同が声をかけられた。

デスクから立ち上がり、素早くロイドの前に立つ。

 

「はじめまして…クロスベル警察。

特務支援課のロイド・バニングスと申します」

 

「此方こそはじめまして」

 

ブルーの東方系スーツに身を包んだ紫髪の男性。

 

「〘黒月貿易公司〙

クロスベル支社を任されている、

ツァオ・リーといいます」

 

「ロイドさんに……

エリィさん、ティオさん、ランディさん。

でよろしかったですか?」

 

「な…?!」

 

「ど、どうして私たちの名前まで……」

 

にこやかに笑いながら、答えを話す。

 

「ふふ、種明かしを致しますとクロスベルタイムズを

愛読していまして。貴方がたの記事を読んでファンに

なってしまったのです。

色々な伝手を使って調べさせて貰ったんですよ

まぁ、若干1名、気難しい方が居られる様ですがね」

 

「……そ、そうだったんですか」

 

(…おいおい、いきなり先制パンチかよ)

 

(頭脳派の切れ者……納得です)

 

「えぇ、ですがどうしてもDevil May Cryの

スパーダさんが参加した経緯が分からなくてですね。

私達の間には弱みでも握られたと。

そこの所は?」

 

「ツァオ・リー。貴方だから話すが、

弱みの類はない。むしろ、弱みを逆に握っているほうだ。

アビゲイル事件の後始末、それをヘンリー・マクダエルに

依頼されただけだ」

 

「……ほぉ」

 

アビゲイル事件という言葉にツァオの眼光が確かに光った。

スパーダは知っている。

黒月の諜報能力を持ってしても、

アビゲイル事件の顛末を理解できないのだから。

何が発端となったかは知らず、

起きた事と、結末は知っているが、

事全て完璧に知っているのはクロスベルでもスパーダ達、

Devil May Cryのメンバーだけなのだ。

これは特務支援課も知らない事。

 

「アビゲイル事件?」

 

「…前に話した筈だが……兎に角帰ってからだ。

今は本題に入ろう。」

 

「それで、本日はどのようなご要件で?

もしや当社の営業活動に

何か問題でもあったのでしょうか?」

 

「いえ、そう言う訳ではないんです。

実は自分達は現在、《アルカンシェル》に関する事件を

調べている途中でして……」

 

「《アルカンシェル》……

あぁ!あの有名な劇団の事ですね!」

 

態とらしいと感じるスパーダだが、

ツァオに何かを言うつもりはない。

 

「いや~、クロスベルに来たからには

私も一度は見てみたいんですが、

忙しくて中々時間が取れなくて。

そう言えば今度、新作が発表されるそうですね」

 

「え、えぇ」

 

それは然りげ無い会話の様に聞こえる。

だが、ツァオがあえて流れをとるように話しているのだ。

暴力と言うものをひた隠し、言葉という刃で戦う。

それがツァオ・リーという男なのだ。

 

「実は、

……その新作の公演についてちょっとした

問題が起きてしまいまして。

その捜査の一環として、此方に伺わせて貰ったんです」

 

「ふむふむ……何か事情がお有りのようですね。

わかりました、詳しい話を聞かせてもらいましょう」

 

ツァオは代表としてエリィとロイドを座らせ、

スパーダ、ティオ、ランディは立っている。

 

「ほぉ、《銀》ですか……

まるで我々がその《銀》なる犯罪者と関わりがある様な

仰られようですね?」

 

「いえ、とんでもない。

正直、情報が少なくて……こうして藁にも縋る思いで

お尋ねしたというだけなんです」

 

「ふふ、良いでしょう。

あくまでも一般的な情報ですが、

《銀》についての、もう少し詳しい情報を

お話しましょう」

 

「お願いします」

 

ツァオは《銀伝説》について話し始めた。

 

「仮面と黒衣で身を包み、素顔を見せない謎の凶手。

影のように現れ、影のように消える。

そして、狙った獲物は決して逃さない……いえ、

ここの部分は誤りがありましたね。

そして、ここからが重要です。

どうやら《不老不死》らしいのです」

 

「……不老不死?腕を圧し折ったり、肋を砕いた時、

呻いていたぞ。剣を奪った時なんて、ボロボロの身体で

地面を這いながら返せと来た」

 

「普通、それは悲鳴をあげたりします。

というよりも、スパーダさんに聞いた時より多くの

情報が入っていますけど?」

 

「…しかし不老不死か。

なら、俺と同じようにチェーンソーで裂かれたり、

燃やされたり、各方位から刃を突き立てられても死なんのか。

彼奴」

 

「……此処にも不老不死居ないか?」

 

「スパーダは規格外だから。

てか、その話後で聞くからな。

それで、ツァオさん、その不老不死について……」

 

「え?あっ、はい。すみません。

少しばかり驚いてしまいました。

チェーンソーは知りませんでしたが、

確か貴方、鉄筋が落ちてきても死にませんでしたよね?」

 

「懐かしいな。

鉄筋をスクラップに変えて振り注ぐ中を歩いた……

あの時、奴等の悲鳴と恐怖に滲む顔が忘れられん。

何に怯えたんだ」

 

「…破片が刺さろうとも、

痛む素振りも見せずに真っすぐ歩いてくる〘悪魔〙

にだと思いますがね」

 

ツァオも呆れ果てた様子で肩をすくめた。

黒月はスパーダと仲が悪い訳ではなく、

どうやら目の前のツァオもスパーダに驚かされた

だけのようだ。

 

「……活動年数で言えば軽く100年は超えています。

数々の文献に《銀》の名前が出てくるのです。

まぁ、活動というか神話の時代から戦い続ける末裔の方には

何とも……」

 

「…嘘だろ。お前等知ったのか」

 

「魔剣士スパーダの伝説ですか?

えぇ、最近になって教会に禁書指定されましたが

有名な話ですよ。伝説の魔剣士が蘇り、

クロスベルで戦った。教会はそれを隠す為に行動したと」

 

「……」

 

スパーダもそれは知らなかったのか、頭をかく。

主に知り合いの騎士団員から稀に連絡も来るからだ。

主に愚痴と何処にいるかという話だが、

敵対組織のメンバーに気安く話しかけてくるネギ頭に

何とも言えなくなる。

 

「スパーダさんの謎が深まっていきます」

 

「……ふぅ、何時か気が向いたら話すさ」

 

「おほん、《銀》は正体不明ですが条件次第で

ミラ次第で雇える最高の刺客にして、暗殺者…。

あらゆる暗器と符術を使い熟す神速の速さを秘めた武術家。

……言ってて何ですが、ものすごくとある方と

似通っていると思うのですが、皆さんはどう思います?」

 

顔に似合わないお茶目な質問にスパーダ以外が苦笑い。

ツァオ・リーの恐ろしい所は人心掌握術だ。

この様に雑談や冗談を含めて相手の警戒心を解き、

いつの間にか懐深くに潜り込むのだ。

 

「…何を考えているかわかりませんが、

恐らくスパーダさん。貴方が言えた義理は無いですよ」

 

「……なんでわかる」

 

「続きを聞いてください。

噂では、とある組織に重宝され、

よく仕事を任されているのだとか……」

 

「何が言いたい」

 

「まるで貴方のようではないですか。

ありとあらゆる武器、武術を使い熟し、

条件次第で雇える最強にして、伝説に残る魔剣士」

 

スパーダがツァオを睨む。

それ以上喋るなという意思表示。

スパーダを中心にし殺意が辺りに漏れ始め、

ツァオですから一滴の汗が頬を伝わる。

スパーダは人間ではない。

悪魔への先祖返りであるが、

既に生命力も身体能力も人間を越えた上位者だ。

魂に恐怖が深く突き刺さるのだ。

 

「…そう言えば、銀は東方人街から姿を消したそうですよ。

何でも、その組織から大きな仕事があって、

とある自治州へ」

 

「スパーダ!」

 

行動に気付いたロイドがスパーダを制止する。

閻魔刀が抜かれたが、ロイドの左腕がツァオとの間に有り、

振り下ろしきれない。

 

「……いやはや、ありがとうございます。

私、これでも恐怖は感じる方の人間でしたので。

まぁ、その刃に殺意は有りましたが止める予定

だったのでしょう?」

 

「……1つ聞かせろ、貴様ら。

俺の事を何処まで知っている」

 

スパーダは普段、けしてロイドに見せない顔をする。

人の死を何とも思わない冷徹な殺戮者。

敵を屠り、全てを破壊する『魔王』がそこにいた。

 

「全ては知りませんよ。『魔王』様。

私達も、深淵を覗こうとは思いません。

私自身、死にたくない」

 

スパーダはロイド達仲間の困惑の目を、

心配そうに見つめるティオの目を見て鞘に納める。

 

「…1つだけ告げる」 

 

「何でしょう」

 

「仲間達に手を出してみろ、貴様らも再起不能にする」

 

スパーダの言葉にツァオは冷や汗を流す。

この手の荒事に慣れているとはいえ、

目の前の存在はたった一人で乗り込み、

数多の武術家や戦闘員を薙ぎ倒し、

最強戦力の一角も崩して見せた怪物だ。

 

「………肝に銘じます」

 

「最後に1つだけ。

貴方方とルバーチェとの間において、

アルカンシェルは入っていますか?」

 

「ありえません」

 

「え?」

 

「訂正します、少なくとも私は知らない。

このクロスベルにおいて、

警察やギルド以外の最強の第三勢力。

本拠地不明、所在地不明、手を出した瞬間に全てを喪う。

そんな第三勢力に目をつけられている。

少なくとも、私なら絶対にしない。

そもそも、何故アルカンシェルに《銀》という名前。

私ならそんな危険な橋を渡る人が居れば…

即座に切り捨てますよ」

 

それはマフィアとして、

リスクとリターンを考える冷徹な指揮者の言葉。

その目に映るたった一人の戦士が、

現状クロスベルを支配していると視線で語る。

 

「…ありがとうございます」

 

ロイドが立ち上がり、

出ていこうとするとツァオは最後に微笑みながら声を掛けた。

 

「最後に、私は貴方方のファンです。

どのような解決方法をするか、実に興味があります。

…楽しみにさせていただきますね」

 

何も言わずたった一人先に出ていくスパーダを、

ティオは悲しそうに見つめている。

そこにはこの頃よく目にする絶対零度の瞳、

優しさというものが無い。

相手を殺すという殺意もなく、作業の様に行える目がある。

だからこそ、自分も追い掛けた。

 

「スパーダさん、その……大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ。大人は子供と同じかそれ以上の闇がある。

その闇を秘密にして、隠し通して生き続ける」

 

「……それは」

 

「誰しも、関わって欲しくないことが1個はある。

それが、大切な人や仲間達になら尚更だ。

幻滅され、距離を置かれる。

俺の場合、それをお前達が知る必要がないから

話さないだけだ。

人の過去等、知って面白いことなど無いさ」

 

「…スパーダさん」

 

ティオはスパーダや色々な人に助けられて今がある。

だが、助けてくれたスパーダの過去迄は知らないのだ。

 

「……I need more Power」

 

(もっと力を?)

 

耳が良いティオだから聴き取れたスパーダの一言。

その目は先程とも違う、深淵があった。

真っ暗闇、覗き込めば戻ってこれない恐怖すら覚える。

声をかけようとした時、扉が開いた。

黒月の一人が歩いてくると、ロイドの前で立ち止まる。

 

「お疲れ様でした。支社長から特務支援課の皆様へ

何か有れば何時でもいらっしゃって下さい。

そして、スパーダ様へは

これからもご贔屓にお願いします。

との伝言です」

 

「……どうも、ご親切に」

 

ロイドの一言を聞き終えると、会釈しそのまま帰って行った。

 

「ルバーチェに続いて、此方もだったか……」

 

「まぁ、ルバーチェよりは遥かに友好的だったがな。

まぁ、逆に舐められていたのかもな」

 

「その可能性は否定できませんが、

1つ確実な情報が手に入りました」

 

「……あぁ、《ルバーチェ》も、《黒月》も、

確実に《銀》に対して《イリヤ・プラティエ》。

彼女の暗殺を依頼していないと言う事だ」

 

ロイドの言葉に皆が頷いた。

それはスパーダという圧倒的な個人による第三勢力。

マフィアの抗争すら意に返さぬい怪物。

いつエンカウントしてもおかしくない存在と、

少な軽ず関わりのある相手を攻撃したら報復が来る。

両者ともに理解しているのだ。

 

「では、《銀》という暗殺者が《黒月》関係なく、

勝手にやった事なのでしょうか……」

 

「だとしたら……正直手詰まりになりそうだ。

スパーダ、そこの所個人の意見で構わないから、

聞かせてくれないか?」

 

ロイドは裏に最もせいつうするスパーダに問う。

目を閉じながらスパーダは重々しく口を開いた。

 

「銀は長い歴史を持つ凶手だ。

無差別な殺しはしないだろうが…銀も人間だ。

さすがに黒月を裏切りはしないだろうが……

個人的な恨みか何かで雇われた可能性もある。

だがもし、私怨で動くような存在なら俺の恋人や社員。

その家族や、お前達を人質にしていてもおかしくない。

奴は、それができる相手だからな」

 

スパーダの言葉に納得する。

心なしか、スパーダ自身も自分の発言に対して、

ソワソワしているようだ。

 

「――えっと、

スパーダの店を見てみたいな〜なんて」

 

「なんだいきなり」

 

「お?確かにそうだな。お前の店行ったことないし」

 

「そうですね、ちょっと気になります」

 

「えっ、えぇ…そうね!」

 

「…変な感じだな」

 

スパーダはキョトンとした表情を浮かべながらも、

デビル・メイ・クライへと特務支援課を案内するのだった。

 

 

 

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