リィン・サンドロットの軌跡   作:影後

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此処らへんからリベール行きです


リィン・サンドロットの軌跡2

リィンが執行者として、鉄機隊の一員として、何故か使徒候補として学び育成されてはや数年。

年は15になりはしたが、相変わらず姿に変化はない。

 

「ねぇ、リィンは他にやることないの?」

 

「…レン、お前のお守り以外今の所はない」

 

「むぅ、パテル=マテルも今は使えないし、レンつまらないわ」

 

「……そうか」

 

リィンもレンの遊び相手はしているが、トランプ等をする場合、レンは計算から全てを導き出し、リィンは直感と観察眼から勝利をもぎ取ろうとする。何方も無意識で行っている為、千日手となり常に引き分けになってしまうのだ。

 

「ねぇ、何か面白い遊びない?」

 

「遊びではないが、帝国観光にでも行くか?幸い、俺ならば」

 

「リィンが行くのは植物園とか自然公園とかじゃない!レンもレディだからデートは嬉しいけど、何時も何時も同じ場所はや!」

 

「うっ……うむ……そうだな。かと言っても共和国方面は今、レンを連れて行こうにもきな臭い」

 

「もぅ、リィンの馬鹿」

 

そう言いつつも、レンもリィンを気に入っている。

血の繋がりはないが、確かな家族なのだ。

 

「良かった、居てくれたね。魔王」

 

「白面が何用か」

 

「レンと共に君も来て欲しくてね、ヨシュアが裏切ったのさ」

 

「そうか、裏切りか……ならば処断せねばならないか?」

 

リィンにとって裏切り等という背信行為は許し難い物だ。

特に、執行者の立場にいながら裏切った存在というのは。

 

「ヨシュアは計画に必要だ、殺しは無しにしてもらうよ」

 

「両手両足は切り落としても?」

 

「構わんさ」

 

「そうか」

 

白面が消えたのを確認した後、リィンは魔王の衣装を身に纏う。

長年、色々としてきた為か武器だけでなく着替えも一瞬で出来るようになったのだ。

 

「レン、パテル=マテルは問題ないか?」

 

「えぇ、リィン。レンもパテル=マテルも」

 

こうして、魔王と魔王の右腕たる『殲滅天使』がリベール入りした。そして現在、リィンは逸れたレンを全力で探していた。

 

「……仕方あるまい」

 

リィンは苦虫を噛み潰したような顔をしながら付近の人間に声をかけた。現在は魔王の衣装ではなく、母達に勝ってもらった蒼の衣装を着ているのだが、刀を携え鋭い眼光の男に声をかけられた者達は恐縮してしまう。

 

「貴方ね、刀を持った不審者」

 

「こら、エステル」

 

「なんだと?」

 

銀色の長髪の女性とツインテールの少女。流石に不審者呼ばわりはリィンもいただけない。リィンは裏の人間てあるが、不審者ではない。

 

「何かあるの?一応、遊撃士として話は聞くけれど」

 

「10歳程の紫っぽい髪色をした少女を知らないか?俺の妹だ、逸れてしまい…今全力で探している!」

 

リィンのあまりの迫力にエステルはたじろぐが、直に優しい男なのだと理解する。

 

「一緒に探しましょうか?」

 

「良いのか?」

 

「えぇ、困ってる人を助けるのも遊撃士の仕事だもの」

 

「遊撃士か、なら尚更だ。依頼する、俺の妹。レンを探してくれないか」

 

リィンは2000ミラをエステルに手渡す。

 

「待って、いきなり」

 

「依頼するのだ、お前も遊撃士なら仕事に誇りを持て。労働の対価という物は常に貰えるものであり、対価を払うものはその対価で感謝を示す。俺はまず、協力してくれる事に感謝している。だからこそ出すのだ」

 

「なら、依頼が完了してからよ。それが遊撃士だもの」

 

「むっ…そうか、すまない。先走ってしまった」

 

「良いのよ、それだけ家族が大切なんでしょ!」

 

「あぁ、俺の生命に変えても護るべき存在だ」

 

「……シスコンなのかしら」

 

シェラザードが何処か呆れ顔を見せるが、真っ直ぐな瞳でそう言ってのけるリィンにエステルは優しげに応える。

 

「まかせて!じゃぁ聞き込みからね!」

 

エステルとシェラザードは慣れた感覚で話しかけようとするが、上手くいかない。理由は明白だ。

 

「貴方、ちょっとその眼光を優しくできないの?」

 

「む……すまない、だがコレは生まれつきなのだ」

 

鋭い目をした男、何もしていないが威圧感が酷いのだ。

 

「むむむ……なら、家族の事を考えてみてよ!きっと笑顔になれるわ!」

 

エステルのアドバイスを受け、優しく厳しい母親、甘えさせてくれる姉、厳しい姉、放っておけない姉、仔猫のような妹を思い浮かべる。

 

「優しい顔もできるじゃない」

 

「あぁ……」

 

そしてあるき続けているとフワッとした紫髮の少女が現れた。

二人の男女に追いかけられながらリィンに抱きつく。

 

「もう、リィンったら集合場所はここって伝えたじゃない!パパもママもずっと探してたのよ」

 

「…え?」

 

「………貴方」

 

「嘘、迷子はこっち?」

 

「待て、レン!お前が急に駆け出して何処かに」

 

「もう、レディに理由を聞くのはナンセンスよ!ねぇ、ママ?」

 

「そうね、レンも理由があったの」

 

「そう!お花畑があったから見てたの」

 

「花畑?そんな物、俺は」

 

「馬鹿!鈍感!」

 

「………俺が悪いのか?」

 

「ねぇ、貴方は鷹を射るとかって聞いたことない?」

 

「知らんな」

 

「もう、リィンのすかたん!」

 

ポコポコとリィンの体を叩く様子に何処か微笑みが出てしまう。

 

「リィンが見つかって良かったです、あの遊撃士の方々ですよね?」

 

「まさか、依頼主が迷子とは思わなかったわ」

 

「そうだ、報酬だ。迷惑料込で1万ミラだ。……本当に申し訳ない!俺のせいで二人にはご迷惑をかけた」

 

「良いのよ!それに良いの?1万ミラなんて」

 

「無論だ」

 

「リィンね、用心棒でお金稼いでるの!この前はね!赤い星座っていうのと!西の風の旅団っていうのを相手にしたって言ってたのよ!」

 

「西風の旅団だ」

 

「貴方!それ猟へ」

 

リィンはシェラザードの口を押さえ、エステルを連れて端に向けう。

 

「レンや家族には安全な用心棒で通してるんだ。命の危機に瀕してるなんて言いたくない。頼む」

 

「なら!なんでそんな危険な」

 

「俺は拾い子でな、レン達とは血の繋がりはない。育ててくれた恩返しの為には、金がいる。老後の生活を少しでも楽にしてやりたい。その一心なんだ」

 

「…後ろ暗い事は?」

 

「家族に誓って。俺は猟兵でも!遊撃士でもない!用心棒だ」

 

ソレは事実である、猟兵でもなければ、遊撃士でもない。

今の立場を簡単に表せば、結社の計画の用心棒であるからだ。

 

「貴方が家族思いなのはわかったわ、でも言わせなさい。良い歳してそれはないわ」

 

「んぐ……それは済まないとは感じているが、しかし……花摘みとは本当に何なんだ」

 

リィンはレンと合流し、遊撃士達と別れた。

 

「それで、話してみた感想は?」

 

「ヨシュアが気に入る筈だな、アレは太陽だ。彼奴はきっと、太陽に手を伸ばしたイカルス。全く、闇の者であるのに度し難いな。だが、嫌いではない」

 

「リィンはどうなの?」

 

「俺の伸ばす手は家族の為、次に盟主様の為、最期に己の復讐の為。レン、お前が泣きそうならば俺は必ずこの手を伸ばそう」

 

「悪魔みたいな、悪い顔ね」

 

「悪魔…いや、魔王だよ。俺はな」

 

リィンは路地裏に入り閻魔刀を構えると空間を斬り裂いた。

 

「ワープできるなんて、狡いわよ」

 

「似たような事をお前達もしているたろうに、何を今更」

 

リィンは魔法陣による転移が何故か使えない。

そのため、次元斬による転移を行うのだ。

出口はリベールに作られた秘密基地ではなく、リィンが事前に買っていたリベールの廃屋。しかし、中は整えられ人が住めるようになっている。

 

「もう、リィンは一人で住むの?」

 

「白面に居場所を悟られたくない。奴は、盟主様に必要な人材だが、それはソレとして個人的に好かんのでな。それに、レオンハルトは良いが、ヴァルターは面倒だ。奴と居れば拠点が持たんぞ」

 

「そうね、でも来ていいんでしょ?」

 

「なんだ、添い寝か?ベッドは大きいし、他にも」

 

「!!!!この唐変木!変態!スカタン!レディをなんだと思ってるのよ!」

 

レンは怒りながら転移する。

リィンとしても、面倒な執行者達がいる中で眠るなど御免被りたい。家族以外の前で休むなり、鍛えるなりをする気がないのだ。

 

「………白面、何故だ。あの男を見ていると身体の底から殺意が湧いてくる」

 

自分の善性と心からの嫌悪感、そしてまるで此方を実験体の様に見ていると感じるのだ。ソレが何故か明確な殺意となっている。

 

「血の気が多すぎるか……」

 

そして、リベールで個人的に情報収集をしていると赤髪の遊撃士に話しかけられた。

 

「お前、リィンとか言う名前だったりするか?」

 

「なんだ貴様、俺の名前を知っているとは」

 

「……なんか当たりつえぇな。お前、迷子だったりするか?」

 

「ふざけるな!こっちは仕事中だ、仕事!」

 

「……そうか、所で紫の髪でフリフリを着た」

 

「どこだ!レンだろ、レンの事だろ!なんだ、何かあったのか!」

 

「落ち着けって!お前、その娘の家族か?」

 

「血の繋がりはないが、妹だ。何があった」

 

リィンは焦った顔で赤髪の男に問う。

 

「王都の遊撃士協会の支部で保護されて」

 

「王都だな!感謝する!」

 

リィンはその場から走り出し、王都へと向かった。

 

「うそだろ……走ってくのかよ」

 

次元斬など、其れ等全てを忘れリィンは走った。

披露など感じる暇も無く、王都の遊撃士協会支部の扉を開ける。

 

「レンは何処だ!」

 

「うそ…アガットから聞いてだけど」

 

普段の蒼のコートは薄汚れ、魔獣の血らしき物がそこら中に付いている。血の乾いた匂いが酷く、顔も合わさり恐ろしい。

 

「リィンじゃない、その格好」

 

「いつぞやの……レンに何があった!怪我か!病気か!誰だ!誰が原因だ!教えろ!血祭りにあげ」

 

「落ち着くのは貴方です、ほら水ですよ」

 

リィンは渡された水を飲むと、一呼吸する。

 

「済まん……どうしても家族の事となると盲目になってしまう」

 

「そう言えば、王都にどうやって入ったの?その風貌じゃ」

 

「………記憶がない、何か止められた様な気がするが……待てよ、俺はもしや門兵やらを殴り飛ばしたか?……そういえば誰かを殴ったような記憶も」

 

「あっ、リィンじゃない!来たの!」

 

「レン!無事なのか!怪我は!病気は!」

 

レンを隅々まで観察するように撫で回し、リィンはレンから嫌な視線をもらう。

 

「もう!レディの体を弄るなんて変態よ!」

 

「変態と罵倒されようが構わん。俺には家族だけだ……俺には……お前達と母さん達しか」

 

「……ごめんなさい、リィン」

 

リィンの言葉に遊撃士達も言葉を失う。

そんな時に、エステルが言葉を紡いだ。

 

「そういえば、リィンってレンと血が繋がってないって言ってたわよね?なんで」

 

「こら!エステル!」

 

銀髪の遊撃士、シェラザードがエステルを叱るがリィンは話す。

 

「俺はな、元々は帝国の軍人の家系だったんだ。だが、俺の本当の父親を邪魔と思っていた奴等が猟兵を雇い、家を襲撃した。今でも覚えているさ。実の父親は猟兵を皆殺しにした。そして、双子の弟ノミを母親に託されて……俺は手を伸ばした。待って…まだ僕は此処にいる!助けて!そんな時に助けてくれたのが母さんだ」

 

「だからリィンとレンに血の繋がりはないわ。でも、最高のお兄さんよ!今はちょっと血腥いけど」

 

「ごめんなさい、その……」

 

「良いさ、生きている親父も、双子の弟も殺したいが、俺には家族がいる」

 

「……そう」

 

エステルもそう言い、レンとリィンを優しくみつめる。

 

「…と、エステルだったよな」

 

「えぇ!何?」

 

「俺は警備兵に出頭する、さすが迷惑をかけたからな。拘留中、レンを頼むぞ」

 

「……ケジメはつけるの?」

 

「そう、ケジメだ。迷惑をかけたな」

 

リィンはそう言うと警備兵の詰め所に自首、エステル、シェラザード達遊撃士の言葉もあり2、3日したら出られることになった。

 

「しっかし……話すの?」

 

「レンの話だと、リィンは途中から仕事でリベールを回る筈だった。今回、此処に居るのはアガットが見つけて、レンが無事かどうか確かめる為。少なくとも、彼のレンへの愛情は本物よ。あの笑顔が偽物だとは思えない」

 

シェラザードの言葉に遊撃士達の顔が曇る。

 

「だとしても、ヘイワース夫妻の行動は……」

 

「何か危険があった、リィン君は見る限り実力者だ。何かあれば、レンちゃんをリィン君が全力で守るという信頼があったのかも」

 

「なら、初めからリィンに任せるべきじゃない?」

 

「それは……」

 

ヘイワース夫妻の失踪、その謎は深まるばかりである。

そして、リィンはといえば自身のミスと申し訳無さで牢のベッドにずっと腰掛けていた。

 

「いや、そんなに思い詰めないでよ。リィン君」

 

「俺は貴方に怪我を負わせてしまいました。何の罪も無い、貴方に」

 

「家族が心配何でしょう?何歳だっけ?」

 

「11歳です、仔猫みたいな娘で…自分をレディと」

 

「そのぐらいの歳の子は大人扱いしてほしいのさ。でも、突き離すとかは駄目だよ?ちゃんと愛情を持って接するんだ」

 

30代程の兵士はリィンに倒され、軽い捻挫を負っている。

だが、彼も一人の父親であり同じ様な気持ちがある。

 

「俺は上にいるけど、何かあれば叫んでね」

 

夜になり、リィンの下に一人の少年が現れた。

 

「君は律儀だね、リィン」

 

「カンパネルラ、…仕事か、了解した」

 

「何してるの?」

 

「ここの警備兵に、一筆。後で詫びの品も贈る」

 

「……やれやれ、速く出てよ?」

 

カンパネルラが消えるとリィンは虚空から閻魔刀を取り出す。

そして、空間を斬り裂いた。

 

「お茶会を開いた主人として、当然の権利だと思わない?」

 

レンがそうエステル達に言葉を伝えているところだ。

 

「私は執行者No.XV。〘魔王〙の付き人〘殲滅天使〙レン」

 

誰もが驚愕した。レンは11歳の少女であるにも関わらず、結社の一員だと名乗ったのだから。

ペースはレンはの物であり、ただ観客達は驚きを告げるだけ。

そして、お茶会はフィナーレに近付いていく。

父親と母親人形の首を飛ばし、エステル達の前にすてる。

 

「結社の作った自動人形…人間ソックリや」

 

「待って…ソレじゃあリィンは」

 

「そう、レンはね。あくまでも付き人。きて、お兄ちゃん」

 

空間が斬り裂かれ、激しい重圧感が当たりを覆う。

現れたのは正に、〘魔王〙と呼ぶに相応しい異形の存在だった。

 

「なによ……あれ」

 

「そんな……アレは悪魔や」

 

「悪魔か、確かにな。だが、人間でもある」

 

その声、その姿、エステル達は驚愕した。

漆黒のコートとスーツ、ズボン、そして刀。

 

「執行者No.XV。〘魔王〙リィンだ。エステル、シェラザード。レンが世話になった。後で菓子折り等を渡させて貰う。そして、赤髪の遊撃士」

 

「なんだ、魔王!」

 

「お前の話を聞かず、駆け出した事を此処で謝罪する。済まん」

 

何処までもクソ真面目としか言えない態度にエステルは吹き出す。変わらないのだ。

 

「むぅ!エステルったら、私のお兄ちゃんを笑うなんて!言うけど、リィンなら此処にいる人達なんて一瞬で殺せるんだから!」

 

「レン、流石に一瞬は無理だ。10秒以内ならできるがな」

 

淡々と述べる様はまるで事実を告げているかの如く、冷たい物だ。

 

「騙してたの!」

 

「少なくとも、リィンが迷子になったのは違うわ!いきなり居なくなって、私も驚いたんだもの」

 

「…レンよ、お前は俺を貶したいのか」

 

「……お前、本当に執行者かよ。なんつうか……クソ真面目で馬鹿野郎とか、そんな……」

 

「赤髪の遊撃士、俺は魔王であるのは事実だ」

 

リィンは閻魔刀を構えるとヴァレリア湖に向けて斬撃を放った。

湖が割れ、反対の岸までの通路が一瞬にして出来上がる。

 

(……これ、良いのかしら)

 

「そんな、ヴァレリア湖が……」

 

「ふん」

 

そして、納刀すれば水は再びヴァレリア湖に戻る。

 

「……」

 

「もう、リィンったら。まぁ良いわ。来て、パテル=マテル」

 

そう言えば、巨大な機械が遊撃士達の前に現れる。

 

「コレがレンのパパとママ(パテル=マテル)。ママならもう一人居るけど、すくなくともパパは居ないわ」

 

「なんなのこれ!」

 

「……リベール国軍も来たか」

 

援軍としてかさらなる遊撃士とリベール国軍も現れる。

 

「ふふ、睡眠薬の時間も完璧ね。さて、リィン、レンは先に行くわ」

 

「そうか、俺はコイツラの実力を確かめてからだ」

 

「そう……エステル」

 

「何よ、レン!」

 

「レンね、本当ならエステルを殺しちゃおうかなって思ってたの。ヨシュアが戻らないのはエステルのせいだって、教授が言ってたから」

 

「え?」

 

「でも!楽しかったから許してあげる。それに……リィンに多分殺されちゃうし。せいぜい頑張ってね!」

 

リィンにウィンクするとレンはパテル=マテルと飛び立った。

残ったリィンはと言えば、静かに地面に着地する。

 

「投降するつもり?」

 

「……とりあえず、雑魚を倒すか」

 

リィンはその一言で腰を低めると一瞬にして移動した。

その移動先にはリベール国軍の兵士達がいた。

 

「Pass out」

 

カチャンと、閻魔刀が納刀されると兵士達は胴体から鮮血を吹いて其の場に倒れる。血が池となり、沈む兵士達を赤く染める。

 

「貴様!」

 

「こい、お前達の力を見せてみろ」

 

戦いは、戦いではない。ただリィンは其の場に達攻撃を受けるだけ。そう、避けも、防御もしない、だがリィンのダメージにはならない。

 

「もっと精進しろ、すくなくとも俺の上衣ぐらいには傷を与えろ」

 

その一言と共にエステル達は惨敗した。

たった一振り、ソレだけだ。鞘に仕舞われた状態で振るわれた閻魔刀で全員が気絶した。

 

「あわ……ひっ……」

 

「……少女、済まないが助けを呼んできてやってくれ」

 

「え?……あの!良いんですか?」

 

「今回、俺は殺害任務を受けていない。今のところ、殺す理由がない」

 

リィンはそう言いながら倒した兵士達にティアの薬を使い救命行為をする。その現場を見て、ティータは理解できなくなる。

 

「なんで……レンちゃんも!お兄さんも結社に」

 

「居場所だからだ、俺の家族は結社にいる。守る為に、俺は結社であり続ける。そうだ……レンの友達になってくれてありがとう。あの子には、同年代の友達が居なかったからな」

 

「え…あの……」

 

「じゃあな」

 

リィンの乱入により戦場となったグランセルの一角。

リィンは戦力の査定の為に戦ったが落胆しただけだ。

自身の拠点にもどり、調べた情報と実際に戦って得た情報を照らし合わせる。

 

「ケビン・グラハムが白面を狙うのは明白、だが今回の一件で魔王たる俺を狙ってくる場合もあり得る。さて……外法狩りをどう下すかだが……いや、奴ならば」

 

情報と嘗ての経験でどの様な聖痕か、どの様な人間か、どの様な戦いをするかは知っている。今回のは簡単な攻撃を受けてやったのみ、聖痕を解放した状態の戦闘力は未知数だ。

 

「……入るのならノックをするのがマナーだ。親から教わらなかったか」

 

「レンはどうなんだ?」

 

「あの子は俺の妹だ、お前には渡さんぞ。剣帝」

 

「お前の姉は何故か俺に執拗に来るがな」

 

「…俺を挑発しに来たか?今此処で殺してやろうか」

 

扉を開けて入ってきた男に殺気を向ける。

しかし、何処かなれた手付きで飲み物を剣帝レオンハルトはリィンに投げ渡す。

 

「……子供扱いはよせ」

 

「見た目がそうなだけだろう、歳下には違いない」

 

「……美味い」

 

渡されたのはオレンジジュース、リィンの好物の一つだ。

肉体を作るためには野菜類が必要であり、肉だけではないと幼い日から教え込まれ、まだ野菜が美味しいと思えなかった当時はオレンジジュースにニンジン等を混ぜたジュースなら何とか飲めた。

 

「……美味い」

 

「リベールで造られた物だ。他にもあるぞ」

 

瓶や紙パック、缶など多様な種類があり流石に驚く。

 

「鋼からお前に話を付けたい時はオレンジジュースを渡せと言われてな」

 

「……俺の性格を判っているか。それで、何のようだ。剣帝」

 

殺気は消し、柔らかな反応を返す。

 

「他のメンバーとの顔合わせは良いのか?」

 

「何かあれば白面がレンを通して伝えてくる手筈だ。ヴァルターの様なイカれた男と過ごすなど御免だ」

 

「無駄な争いはしないだったか」

 

「…実力としては俺の方が上になる。だが、面倒には違いない」

 

「近々、ボースにて実験が行われる。お前には」

 

「……俺は悪魔だが、市民を殺すつもりはない」

 

「守れ、ソレぐらいはできるだろ」

 

剣帝のやってみせろという顔にイライラしつつも、リィンは頷く。

 

「……オレンジジュース、感謝する」

 

「そうか……良かった」

 

「ソレとだ、お前を年上として質問したい」

 

「なんだ」

 

「花摘みとはなんだ」

 

「?」

 

「レンが花を摘みに行くと、前に言っていた…しかし、俺の記憶の限りでは花壇や花畑は」

 

「……一度、お前の姉か母に聞け」

 

剣帝は呆れ顔をしながら消えていった。

 

「なんなのだ」

 

数日後、リィンはボースにいた。

剣帝も何処かにいるのだろうかと思いながら観光していると、竜が空から舞い降りて来た。計画の全容を知っていない身としてはこれがそうなのかと思わざる得ない。

ボース市を瓦礫に変えようとするのは許せないが、結社に所属しているのだ、自己の判断で竜を討伐するなど以ての外だ。

 

「Too slow!」

 

「え!」

 

「主人を守るか、良きメイドだな」

 

「なっ!リィン!!」

 

「此奴が…執行者No.XV。魔王!」

 

「相変わらず…恐ろしい気配だ」

 

「待って!この人は私を、リラを助けてくれたの!」

 

メイベル市長の言葉に驚くエステル一行。

 

「エステルか、此処らへんの瓦礫は細かく斬っていく。後は任せるぞ」

 

「待って!」

 

エステルは一瞬迷うが、言葉を続ける。

 

「他にも救助が必要な人がいるの、お願い!」

 

「……判っている。だからこそ、この区画は任せたぞ」

 

リィンは瓦礫の下敷きとなった人々を救出していく。

家事が起こりそうになれば火ごと瓦礫を斬り裂き、倒壊しそうになれば誰よりも速く動き救う。

 

「……なぁ、なんでお前は結社に」

 

瓦礫の撤去が終わり、立ち去ろうとすると巨体の遊撃士に呼び止められる。

 

「俺は、俺を見捨てた父親も、弟も、実母も許せない。何時か、奴等は殺す。だが、それ以上に大切な事。家族を守る、結社に居る家族を、母を、姉達を、妹を、そして、敬愛する盟主様。俺は守る為に結社に居る。だが、この様な市民に被害が及ぶ事を、心情的には良しとは出来ない。だから助けた」

 

「そうか……代表して感謝を」

 

「……エステルに伝えろ、ヨシュアとは必ず再会できる。だが、俺は裏切り者に対しての容赦はない。殺されたくなければ、先に見つけろとな」

 

無意味な行動を意味のあるものにしてみせろ。

リィンなりの激励の言葉である。

そして今、リィンは計画の用心棒として遊撃士の相手をしていた。

 

「がはっ…」

 

「クルツさん!」

 

閻魔刀で胴体を斬り裂かれ鮮血が滲み出す。

今回、リィンには慈悲の心はない。命令に中実な執行者として、

『魔王』リィンとしてここにいた。

 

「いや……来ないで…………」

 

刀を構えた少女、アネラスは震えている。リィンの目は絶対零度の瞳。アネラスはそんな瞳を見たことがない。

 

「Die!」

 

「まちたまえ」

 

アネラスの薄皮一枚を斬り裂いた所で白面から待ったがかかる。

 

「エステル・ブライトを捕獲する。彼等を餌にさせてもらう」

 

「……命拾いしたな」

 

リィンは冷めた目では倒れた遊撃士を一瞥すると、一言発する。

 

「I need more Power」

 

「リィン?」

 

「とうした?レン」

 

遊撃士に向けたものではない、暖かな一人の人間の瞳。

 

「ねぇ、リィンって泣いたりするの?」

 

「レン、レン。悪魔は、泣かないんだ」

 

「……ん」

 

レンはリィンに抱き着くと、頭を撫でるようにねだる。

そんな兄と妹の関係はまだ続いていく。

エステル達が研究所に襲撃を仕掛けてきたと流れれば、真っ先に動いたのはリィンだ。

 

「……ひっ……魔王」

 

アネラスは自分達を苦しめたリィンに完全に恐怖している。

 

「お前の役割は終わった。死ね」

 

「させん!」

 

ジンがその拳をリィンに向けたが、リィンは閻魔刀ではない。

リベリオンを持って遊撃士と相対した。

 

「その剣は!」

 

「…」

 

刀ではない、だがリベリオンの戦い方はジン、シェラザードは見たことがなかった。

リベリオンをブーメランの様に投げれば追尾し、追ってくる。

その隙にリィンはその肉体で殴ってくる。

また、牙突の様な一撃は踏み込みが重く、鋭い。

防御がまるでできないのだ。

 

「くっ…リィン君!なんでや!」

 

「殺し合いの中で喋る余裕があるとはな、ケビン・グラハム。だが、終わりだ」

 

リベリオンをケビンの胴体に突き刺す、ブツリと肉が裂ける音と何かを穿いた音、無慈悲に引き抜けば血が溢れリィンの顔を赤く染め上げた。

 

「ケビン!」

 

「……お前たちもだ」

 

遊撃士達は気絶し、無力化される。

 

「お前にしては暴れたな」

 

「ふん…エステル・ブライトは連れて行け。他は処分しておく」

 

リィンの言葉に頷いた白面達はエステルを連れて消える。

リィンは次元斬を行い、ケビン達を岸へと送った。

 

「…さっさと起きろ、無駄に演技をした意味がない」

 

「何処が演技や……こちたら腹刺されたんやぞ」

 

ムクリと痛みに喘ぎながらケビンが立ち上がる。

 

「外法殺しケビン・グラハム、久しいな」

 

「魔王やったんか、リベリオン。黒騎士の武器やな」

 

「…感謝している。俺はお前の協力がなければ、あの子ども達を死なせていた」

 

リィンとケビンはかつて出会っている。

リィンがリアンヌから与えられた指令でDC教団残党の抹殺。

その際、リィンへの人質として子供たちが使われたのだ。

偶然、居合わせたケビンの助けにより救出できた。今、子供達はアルテリア法国にて保護され元気に生きている。

 

「…善人なのは判る、なんで魔王なんかしてるんや」

 

「それは言えん、例えエイドスの神父と言えどな」

 

「それで、俺を気絶させとかん理由は?」

 

「白面の計画を潰したい、奴がおこなってきた事を知った。

俺は……組織を裏切れない。家族の為、盟主様のためにも。

だから、お前達に、お前に頼む。ヨシュアは白面を殺す鍵だ」

 

「何が言いたいんや」

 

「利用しろ」

 

リィンはそれだけを告げ、次元斬で消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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