交換屋ナインヴァリ、その店舗下の増設された地下室。
扉には『Devil May Cry』と書かれた看板が下げられた部屋で、男はスイーツを食べていた。
男は普段からスイーツ等を食べる事は無かった。
しかし、何故か不意に目に入ったラズベリーサンデーに運命を感じたのだ。ついつい、店に入り一時の気の迷いから注文すると、男の世界は広がった。
それから男はまるで魅了にかかったかのごとく、朝昼晩のスイーツとしてラズベリーサンデーを食べている。
そんな朝のラズベリーサンデーを食べていると扉が勢いよく開かれた。
「スパーダ!居るわね!!」
「グレイス……まだ俺はラズベリーサンデーを食べているのだが」
彼女の名はグレイス、男へ仕事を回してくる女であり仲介人である。かつて悪魔狩りを行っていた際に遭遇し、今の男の城。
『万屋Devil May Cry』を作るきっかけとなった女だ。
男の仕事は非合法な事もあるが、合言葉が無いと滅多に依頼を受けない。他は手配魔獣等をギルドから奪い、魔獣を鏖殺し、男にとって非常に簡単な仕事をしながら生きている。
「めんどくさい顔しないの!特ダネよ!汚職議員の闇を暴く!」
「知らんな」
「無論、合言葉付きの依頼よ。ターゲットは汚職議員、殺しは無し。彼の周りで不審な行方不明事件が起きてるの。今回の件はそれで議員を失脚させたい人間からの依頼よ。前金で50万ミラ、私の取り分の10万ミラは貰ってるから」
「……武器はあるな?」
「勿論」
大口径の導力銃、グレイスはリポーターであるが並の悪魔も殺せる実力者だ。
「大きな依頼よ、情報もろくになし。やれる?」
「ジンゴとアシュリーに話しておけ、衣装はあるよな?」
「勿論、今回は私のカメラマン。その体で行くからよろしくね」
翌日、スパーダはカメラマンとして議員の屋敷に潜入していた。
汚職議員だが、外面はよくマスコミにもよくしている。こうしているのはあくまでもグレイスが優れた情報通故であるからだ。
「…それで、気配は感じる?」
「濃密な匂いだ。上級悪魔レベルがこの屋敷の何処かにいるぞ」
グレイスはヤレヤレといった顔をする。低級迄なら何とかなるが、中級以上はご遠慮願いたい彼女にとって上級悪魔など悪夢以外の何物でもない。
「行方不明者はどうかしら」
「悪魔の餌にされただろう………グレイス」
スパーダはグレイスの襟を掴み引き寄せる。
「ちょっと、スパーダ!」
首が絞められた事に文句を言うが背後に落ちたドゴンという音と頬についたネチョっとした物で理解する。
「どうやら、挽き肉にされた様だな」
「気楽に言うな!」
赤みがかったソレには人の指が入っていた。グレイスが恐る恐る振り向けば、巨大なハンマーの様な何かを持った悪魔がそこにいる。
「いひっ…イヒヒヒヒ……美味そうだ……旨そうな、人間!!!!」
バン!バン!バン!バン!
スパーダはルーチェの引き金を4度引いた、悪魔の顔に穴ができ痛みに喘ぐようにうずくまる。
「グレイス」
「了解よ、汚職議員の正体は化け物か!まったく、ゴシップネタを書くのも増えてきたわね」
「それで金が入るんだ、理解しろ」
「貴様ら……何を話して」
「少しは黙れ」
スパーダはリベリオンで悪魔の左腕を斬り落とす。
溢れ出た血がグレイスにも降りかかるが慣れているのか、顔の血を払うのみに済ませる。
「なんで……こう上級の悪魔って血が吹き出すのかしら」
「低級と違い明確に肉体があるからだ。しかし、最初の頃はそのスーツに血の染みができるだけで騒いだお前がな」
「なれたのよ、血の落とし方も知ったし。でも、コレじゃあ表は歩けないわね」
「相変わらずお前の私物が店に増える」
「貴様ぁぁぁぁ!!!!」
今度は悪魔の右腕を、左足を、右足を、順番に切り落として行く。
「まさか……この強さ、お前は裏切者のスパー」
そして言い終わる前に頭を斬り落とされた。
「……依頼主に話せ。悪魔だ、後はお前がヤレとな」
「えぇ、じゃあ戻りましょうか。Devil May Cryに」
翌日、スパーダはグレイスに詰め寄られていた。
「だから…マクダエル議長からの仕事で護衛を」
「合言葉付きではないのだろう、遊撃士に回せ」
新聞を見れば議員殺害と行方不明者の惨殺事件が大々と掲載されたがソレはあくまでも汚職とは無関係だと警察からの発表もあった。
「しかし、腐っているな。クロスベルの警察は」
「今更よね、ってソレよりも依頼よ。依頼!」
「失せろ、ラズベリーサンデーが」
「ラズベリーサンデーなら、後ですきなだけ奢るから!話だけでも聞い……て」
そこでグレイスは自分の放った言葉に気が付いた。
スパーダは良い笑顔で電話を使っているのだ。
「そうか、そうか……!悪かったなグレイス。話を聞こう、既に店の個室は予約してある!行くぞ!」
「まって……まって……スパーダ!私の…私の財布が?!」
「あれ、スパーダ。出かけるのか?」
「あぁ、そうだ。ジンゴ、後でお前のすきなストロベリーサンデーは俺が買ってきてやるぞ」
「頼むから1つにしてくれよ。店の冷蔵庫、入り切らないよ」
「あははは!」
スパーダは見たことがない程上機嫌だ。
「うぅ…私のミラ」
「スパーダにすきなだけ奢るなんて馬鹿言ったな。諦めろ。大丈夫だ、スパーダなら5個か10個ぐらいで満足する」
「軽く1万ミラ飛ぶのよ!」
グレイスの悲痛な叫びがナインヴァリに響いた。
______
「ふぃー……全然平和にならねぇな」
グレイス3万ミラ喪失事件から数日がたった。
グレイスから依頼を聞いたスパーダは即座に機嫌を悪くし、グレイスに報酬を40%回す代わりにすきなだけラズベリーサンデーを食べさせろと言い、そのまま依頼を達成させた。
100万ミラを超す報酬の40%という破格の現金を押し付けられたグレイスは保管場所に今頃は苦労しているだろう。
そして今、スパーダは変わらず悪魔狩りをしていた。
スパーダの気配を感じて追って来ているのか、それともクロスベルという場所が悪魔を呼び寄せるのか。
依頼がなくとも野良の悪魔狩りをして生計を立てるのか余裕な程度にはそこら中に悪魔はいた。
「あっ、デビルメイクライのお兄ちゃん」
「…確か、ケンだったな」
「うん、ねぇ拳銃見せて!」
「撃つなよ、警察の厄介は御免だ」
スパーダも近隣住民との関係は良好だ。
更に常日頃から暇な時間は散歩や魔獣退治に悪魔狩りをしていることもあり、こうして顔見知りの市民も増えている。
「もう!ケン!!って…あ、不審者さん」
「確かに警察でも無ければ遊撃士でもない、だが不審者は無しだろ。ユウナ」
「冗談ですよ、スパーダさん」
ユウナ・クロフォード。クロスベルに住む少女である。
警察学校に通い、何れはクロスベ警察の捜査官となる事を夢見ている。
「良くも、腐った果実に入ろうとするな」
「わかってます、でもそんな果実でも私の憧れなんです」
「ソレは俺の事も捕まえる事になるのか?」
「捕まえません、スパーダさんは何も悪い事はしてません」
そこで、ユウナにスパーダは意地悪い質問をした。
「俺が、あの汚職議員を殺したとしたら?」
「え?」
「お前は、未解決事件の犯人が目の前に居る。どうする?」
「…逮捕します。たとえ知り合いでも、たとえ家族や友人でも、どんな理由があれ罪は、罪なんです」
「…そうだ、お前は素晴らしい警察になれる。自分の職務を全うする素晴らしい警察にな」
ユウナの頭を優しく撫でる。
スパーダ自身が意地悪をしたと理解しているからだ。
決して、泣きそうな顔に負けたという訳では無い。
「そういえば、スパーダさんは何を」
「魔獣狩りだ」
「遊撃士でも無いのにですか?」
「今更だろ」
スパーダは会話を終えるとそのままクロスベル市街へとでていく。魔獣狩りでセピスを稼ぎ、売り払う。
悪魔を殺し、セピスを稼ぎ売り払う。そこに何ら違いはない。
「……」
銃声が鳴り響き、その通報を受けた遊撃士や警察が現れる。無論、その時には既にスパーダは消えたあとである。
残るのは大量の血と剣戟のあとである。
「くそ……」
「あら、スパーダお帰りなさい。シャワー借りたわよ」
スパーダがDevil May Cryに帰ると出迎えたのはバスローブ姿のグレイスだった。馴れ初めの頃はこんな事は無かったが、流石のスパーダも少し無警戒だと感じる。
「バスローブで歩くな、俺以外ならどうする」
「問題ないわよ、仕事を持って来るの大抵私だけだし」
「なら、俺が襲うとは考えないのか」
スパーダはグレイスに壁まで迫り、その瞳を一身に見る。
だが、グレイスは変わらず微笑むだけである。
「別に良いわよ、個人的には気に入ってるし……まぁ、貴方ならって思えるからね」
「……まったく、この女は」
「それに、並の男なんて私より弱いわよ。舐めないでくれるかしら」
そう言いながら今度はバスローブ姿のグレイスがスパーダに迫る。首を手を回し、唇と唇が触れ合うギリギリの距離。
「私じゃ……駄目?」
その言葉にスパーダは返事をしようとしたが
「あっ!ジンゴちゃん!スパーダさんは?」
「ん?下に居るぞ」
「馬鹿!速くきが」
「スパーダさーん!」
「きゃん!」
「なんだ……ユウナにジンゴか」
あまりにも早い到達にスパーダは焦り、グレイスを机の下に隠す。上着だけを羽織らせるが不穏な気配は消えない。
「?シャワー浴びてなかったか」
「あぁ………俺がな」
「の割に乾いてますけど」
ユウナの間髪入れない鋭い言葉に色々とスパーダは焦る。
ジンゴはまだいい、子供だ。適当な事を言えば問題ないだろう。
だがユウナは不味い、下手にバレたらスパーダとグレイスの関係が明るみになってしまう。
「ところで、店に来るなんて珍しいな。どうした?」
「あの、ナナがお化けを見たって」
「詳しく聞こうか」
スパーダは食い入るように話を促した。
ユウナはスパーダの威圧に震えている。
自分に向けられたものではない、座ったことのない程にフカフカのソファに沈んでいく感覚があるが、目の前のスパーダがソレを許さない。
「…それで、お化けとは?」
「昨日の夜中、ナナが窓から覗く何かを見たんです。それから、お化けが襲いに来るって……皆逃げようって」
「………」
「悪い夢だと思いたいんですけど、ナナのあんな」
「わかった仕事だ、ユウナ。今晩、お前の家に泊まって良いか?」
「え?」
「悪魔だ、ナナは悪魔に魅入られたんだよ。ケルベロス」
「主よ、何用か」
ソレは全長2m、全高1.5mにもなる巨大なウルフドッグだ。
だが、正体は魔界の番犬ケルベロス。スパーダに倒され、眷属となった悪魔だ。
「お前はナナを守れ、できるな?」
「小童をか?構わんが」
「頼むぞ、番犬。ユウナ、ケルベロスの先に行ってくれ」
「え…あの!なんで喋って…それに悪魔って」
「行くぞ小娘」
「ちょっと!ちょっと待って!!」
スパーダは机の下で震えているグレイスを出す。
「何話し込んでんのよ!バカ!」
「悪かったな、今日の続きはまたいつかだ。わかってるな?」
「貴方の痕跡は消しとくわよ」
グレイスも急いで仕事着になる。
「……市街地戦とかしないわよね?」
「顔は隠す」
ルーチェ、オンブラをホルスターに入れ閻魔刀を腰に差し、リベリオンを背負う。
「二刀流と二丁拳銃使い…また荒れるわよ」
「知るか、そのときは警察ごと斬り捨てるだけだ」
「止めなさい」
スパーダは最期に蒼のコートを羽織り、階段を上がっていく。
ソレをグレイスは名残惜しそうに見つめた。
「まぁ…仕方ないわね」
真っ昼間から武器を隠そうともしないスパーダは普通なら警察から詰問されてもおかしくない立場であるが、何度注意してもやめないスパーダに警察は何も言わなくなった。
簡単に言えば金で黙らせたのだ。スパーダ自身、使えるものは使う精神であり、邪魔は少ない方が良い。
「悪魔が居てもおかしくない……とは言えんのがな」
どんなに整った場所だろうと、クロスベルは至る所に悪魔がいる。そこら中とは言えないが、それでも悪魔の数は多い。
銀行から金を降ろし、西通りに向かう途中スパーダは路地で立ち止まった。そこには人形が一人佇んでいる。
「仕事がなくならないわけだ」
人形の中に蠢く何かを感じる、低級の悪魔だろうか。スパーダはルーチェを抜き、銃口を向ける。
「まちな、そいつを消されたら商売上がったりだよ」
「お前は…確か歓楽街の古物商」
「その悪魔はうちの家族だ、殺させる訳にはいかないよ」
「なんだと?」
古物商の言う通り、人形は古物商を守るように斜線から外れる。
悪魔が人間を守るとは思えないため、一発打ち込もうかという思考が働く。
「裏切者スパーダ、いや英雄。魔剣士スパーダ、アンタもその名を名乗る悪魔だろ?なら、おかしくないじゃないか」
「…わかった、今回の狙いは貴様等ではない。運が良かったな」
スパーダはルーチェを仕舞うと静かに歩きさる。
目的地の西通りはもうすぐだ。
「まったく……随分と懐かれたな。ケルベロス」
「失せろ、小童」
「ケルベロス!」「ケルちゃん!」
「グルルルルルル」
ケルベロスハ唸り声を鳴らしながらも、ケンとナナに撫でられている。元々、面倒見が良いのか二人が危なそうにすると服を咥え、引っ張る仕草もする。
「スパーダさん!」
「デビルメイクライの兄ちゃん!」
スパーダも子供ウケが良いのかすぐさま二人が抱き着いてきた。
ケルベロスは溜息を吐きながらスパーダの隣に寝転ぶ。
「今は仕事だ、ナナ。お化けをみたのは?」
「昨日の夜、トイレに起きたの。そしたら、窓からズシン…ズシン…っておとがして、部屋の中をギョロッとした目が見てて」
「ナナ!大丈夫だって!俺め居るし、姉ちゃんも」
スパーダはその話を聞き、ナナが見た窓の外を調べる。
足音が鳴ったという割に、足跡などはなく痕跡はない。
「……」
「あの、スパーダさん」
「悪いな、金も食材も俺が払う。今日は泊まらせてくれ。床でいいから」
スパーダは真剣な瞳でユウナを見つめ、ユウナ自身もその真剣な瞳に息を呑まれる。
「リナ・クロフォードさんであっていますか?」
「はい、あの貴方は」
「私は…Devil May Cryのスパーダ。貴女の娘さんがみた化物の件でお伺いしました」
スパーダは礼儀正しく答える。
「あのお金は」
「いえ、今回。私がお宅に一泊させて頂きたい事を話したく。
此方、僭越ながら。少ないですが」
「……なっ…札束が」
「100万ミラが入っています。ケンとナナ、ユウナ、そして生活の足しに少しでもなればと」
「あの、こんな大金」
「受け取ってください」
「あの……なぜ、娘がみたその化物に」
「私は、ソレを悪魔だと思っています」
「悪魔って…その、あの悪魔ですか?」
「ええ、神を冒涜し、人々を拐かす」
リナは少し悩んだ様子を見せながら言う。
「なぜ、こんな大金まで」
「俺には妹が居ます。歳はケンやナナより少し上。こんな子供が死ぬのは嫌なんです。嘘だと、信じなくても良い。でも、この子達は俺のクロスベルの友人です。友人だから、友人を助けたい。その気持ちに、嘘偽りはないんです」
事実、ケンとナナは結構な頻度でDevil May Cryに遊びに来る。
仕事の日は居ないとジンゴが追い返すが、何もないとユウナの変わりに二人のお目付け役となることもある。
「わかりました、そのよろしくお願いします」
スパーダの誠意が伝わったのか、リナはスパーダを受け入れてくれた。
「スパーダさん、その何処で」
「床でいいさ、野宿とかも慣れているからな」
「流石だよな、スパーダ兄ちゃん!」
「そうか」
リナはスパーダにも食事を用意してくれた。
それに感謝しながら食べる、その団欒の空間がとても羨ましく自分の選択が正しいのかと悩んでしまう。
「そういえば、スパーダさんの家族って」
「実の親は俺を捨てた。今の母さんは俺が幼い時に拾ってくれた。とても厳しく、美しい人だよ」
その晩、零時を回った頃だ。
子供たちは既に寝ている時間の筈だった。
リナ、ユウナ、スパーダがソレを待っていた。
「……なんだ、このおと」
ズシン…ズシンと重々しい足音が響いている。
家具が揺れるほどの衝撃だ、ユウナはリナを支えている。
「いや……ママ!!」
「ナナ!」
扉を開けてナナが飛び込んでくる、ナナは「ケンが…ケンが…」
と鳴きながら指を指す。
「ケルベロス!」
「キャウン」
ケンがケルベロスを踏み付け、赤い瞳を浮かべている。
「見つけた」
「ナナ、何があった」
「ケンが…ケンが怖い幽霊に」
「見つけぞ!あらンの涙ぁぁぁぁ」
「お前…何者だ」
「ムンドゥス様の腕の傷、貴様の力で治そう」
『キズつけるな』
その時だ、壁を破壊し巨大な腕がケンを掴んだ。
「あれが…昨日の化物!」
「あれは?」
ソレは人形だった、朽ち果てた男人形。
6mにも及ぶ巨大な人形、しかし悪魔の気配は一切ない。
「消えろ!」
ケンの放った衝撃波で人形は簡単に腕を壊された。
「…悪魔よ、俺の友達を傷付けたのだ」
普段のリベリオンではなく、閻魔刀を抜く。
「何を」
そして、スパーダは思い出す。
閻魔刀の力を発揮できるようになったころ、妹を守る為に悪魔狩りをしていた時代、盟主より賜った言葉を。
「リィン、その閻魔刀は人と魔を分かつもの。そして、リベリオンを人と魔を融合させるもの」
スパーダは静かに閻魔刀をケンに向ける。
「…ハッ!」
すれ違うようにケンが斬られる、しかし何故かケンの体から
悪魔が消えていく。
「……クソぉ…クソぉ……」
「なんだ、喋れるだけの低級め今此処で」
「貰ったぁぁぁぁ!!!!」
だが、霧散するはずの悪魔はリナの方に飛ぶとリナが付けていたペンダントを奪い取った。奇跡だった、ユウナがリナを押さなければ、そのまま体ごと奪われていただろう。
「ヒハハハハハ」
「おい、無事か?」
「えぇ、でも……なぜあのペンダントを。アレは、古いだけの」
「…アランの涙、確か……さっきの化物はそう言ってました」
「アランの涙、かつて存在した大魔術師アラン・クロフォードが伝説の悪魔『アビゲイル』を封じた物よ」
そう言いながら、二丁拳銃をホルスターにいれ動きやすいスーツを来た相棒、グレイスが立っていた。
「お前何時から」
「あの変な巨人を追いかけてきたのよ!連絡しても繋がらないし!雑魚悪魔もそこら中に湧いたし!今、クロスベルはパニックよ!」
「嘘だろ……しかし、魔術師とか、クロスベルは本当に魔都だな」
「そうだ、昔聞いたことがあります。ご先祖様の中に凄い魔法使いが居て、もしかしたら私達の家にも何かがあるかもって」
「でも、これは結婚した時にお義母さんから」
「何年の前の事だ、忘れられたんだろ。んで、そのアランの涙で悪魔は解放される寸前。ところで、その人形は」
「……私が幼い時に使っていたニックです」
人形はゆっくりと頷く、そこでスパーダは理解した。
「東洋には付喪神という存在がいる。大切に扱われた物には精霊が宿り、人を守護したり惑わしたりすると。どうやら、そのニックは余程大切にされたんだな」
所々くちているが、人形はずっとリナを優しく見つめている。
「ナナを守ってくれたのね」
頷くニックに、リナはその手を取り言葉をかけた。
「ありがとう……本当に、ありがとう」
ニックから光が溢れるとそのまま通常の人形に戻る。
リナはソレを優しく抱きしめるが、グレイスが口を開いた。
「感動シーン台無しにするけど、アレ見なさいよ!」
「手に入れた!大悪魔アビゲイルの肉体を!!!もう!ムンドゥスも関係ない!!俺が…俺が最強だぁぁ」
建築中のオルキスタワーの頂上でアビゲイルは叫ぶ。
ソレだけではない、空が赤く染まっている。
門が開かれたのかクロスベルの空から低級悪魔が続々と現れている。
「ヒヒッ…イヒヒヒ」
「……悪魔」
「スパーダ、本気出して良いわよ」
「当たり前だ、やるしか無いだろ」
ーDevilTriggerー
ソレは漆黒の悪魔、叛逆者にして人間の守護者。
「グレイス、任せる」
「ええ、じゃあ頑張ってね。魔王様」
「ふん…そうだな、この世界はこの魔王サンドロットの物だ。ならば、守るのも王の努めか」
スパーダはそう言いながら翼を広げた。そして、上空に飛び上がると閻魔刀を一振りする。それだけで赤い空が消え、満天の星空が溢れ出る。
「貴様は……スパーダぁぁぁぁ!!!殺してやる!殺してやるぅぅぅ!!!」
「Do you think you stand a chance? Hm.
(俺に勝つつもりなのか? フン)」
「Come on
(来いよ)」
スパーダは煽るようにアビゲイルに手を向ける。
それだけでその巨腕が振るわれる。
「随分と大振りだな」
「黙られぇぇ!!!」
「Hm.」
振るわれる拳を閻魔刀とリベリオンで弾き、即座にルーチェとオンブラに持ち替えアビゲイルの目を撃つ。
「その程度で!」
「弱いな、ムンドゥスよりも弱い」
棘が空中に浮かぶスパーダを追いかけるように迫ってくる。
ソレをただスパーダはルーチェとオンブラで打ち砕く。
「バカな!俺は……俺は……アビゲイルの」
「貴様が…世界を支配する力を手に入れたとしても、無駄な事だ」
次元斬が何度も何度も何度も何度も、アビゲイルの肉体を切り裂きバラバラにしていく。
血が飛び散り、赤い雨がふりクロスベルを真っ赤に染める。
「馬鹿な!馬鹿な!!」
「こういう時に、言う言葉がある」
スパーダはリベリオンをアビゲイルの頭に突き刺し、更に地面に向けて蹴り下ろす。
クレーターが出来上がり、ボロボロのアビゲイルの顔面が降りてきたスパーダの前に現れる。
ルーチェとオンブラに魔力が溜まり、光り輝く。
「Jackpot.」
2つの弾丸がアビゲイルの頭蓋を砕き、鮮血をスパーダに浴びせかけた。脳髄を破壊され、力を失った肉体が段々と霧散していく。
「……警察の厄介は御免だ」
スパーダは空に飛び上がると、クロフォード家に飛んだ。
「ちょっと!血腥いわよ!」
「グレイス、お前も返り血で赤いぞ?」
二人とも返り血で真っ赤に染まっている。
警察が見たら即座に逮捕か、事情聴取が待っているだろう。
「あ!スパーダさん!!」
「「スパーダ兄ちゃん(お兄さん)!」」
「ユウナ、ケン、ナナ、アビゲイルは倒した。もう安全だ」
「あの化物は?」
「アレは化物じゃない、お前達家族を守る強い人だよ」
そう言いながら、スパーダはリナを指差す。
ケンとナナは頷いてリナの下に向かい話し始める。
「お母さん、あの」
「ニックよ、私達を守ってくれたの」
「ありがとう、ニック」
「うん…ごめん。化物とか」
そんな三人を微笑みながらも、グレイスとスパーダは立ち去ろうとする。
「あの、スパーダさん!」
「じゃあな!」
「スパーダ、私今日泊まってくから」
「ベッドは同じだ、俺を少し…な?」
悪魔の翼を出しながら、スパーダはグレイスを横抱きし闇へと消えた。
翌朝、グレイスとスパーダは一糸まとわぬ姿で同じベッドから起きる。グレイスの頬は若干赤らみつつも、何処か嬉しそうだ。
「おはよう、スパーダ」
「…ふぅ、コーヒーでも淹れる。シャワーは先浴びとけ」
「そ、ありがとう」
スパーダに軽くキスをするとバスローブと共にグレイスはシャワールームに消えた。スパーダも下着とバスローブを羽織り、目覚ましのコーヒーを準備する。
「ふぅ……」
今の今まで経験は無かった為、はじめての体験であったがそんな事を言うつもりはない。意外なのはシーツが赤く染まった事だが、スパーダはピロートーク等は上手くない。
「あがったわよ」
「…なぁ、グレイス」
「できたら、責任とかは取らなくて良いから」
「おい…ソレは」
「なら、せめて指輪位は良くしなさいよ」
「わかった、ところで……コーヒーは?」
「いただくわ」
グレイスとスパーダはその後、着替えなどを済ませ朝食をとる。
デザートは勿論、ラズベリーサンデーだ。
「相変わらず好きね、ソレ」
「何故かな、どうしても食べずには居られない魅力がある。無論、別に食べなくても良いが、デザートがあるならコイツで決まりだ」
食器を片付け、ソファに座る。
仕事は無く、今日は休日でありグレイスも暇を持て余している。
「あの……すみません」
「Devil May Cryにようこそ、ってユウナか」
「あら、昨日の」
グレイスはスパーダに寄り添う様に座り、身体を預けている。
真面目なユウナにしてみれば、仕事人の態度では無い。
「はい、ユウナ・クロフォードです。あの、隣の人って」
「グレイス・リンよ、まぁ……恋人、かしら?」
「…まぁ、肉体関係はある。仕事仲間とも言えるが」
その発言にユウナは頬を赤らめる。この様な所を流せないのは生娘故か、真面目な性分からか。
「それで、何のようだ」
「私を…私を此処で働かせて下さい!」
「冗談だろ、お前」
「止めなさい、貴女みたいな子供が闇を知る必要は無いわ」
スパーダが止めるよりも先にグレイスが止めた。
「でも……」
「それにお前、警察学校はどうなる。彼処に居るんじゃ」
「でも!クロスベル警察学校は土日の外出や外泊は問題ないんです!お願いします!私に…私に悪魔と戦える知識を下さい!
もう!家族が、故郷のクロスベルが燃えるのは見たくないんです!」
ユウナの言葉にスパーダはグレイスと顔を見合わせる。
グレイスはニッコリ笑うと、スパーダは頭を掻いてユウナを見る。
「はぁ、判った。日給は3万ミラ。依頼が有れば俺の取り分の10%をやる。良いな?俺達の仕事は命懸けだ。死んだら元も子もない」
「わかってます、だから……強くなります!」
「ケルベロス」
「なんだ、主」
「お前、ユウナに付け」
「未熟者にか?まだ、主の番の方が良いが」
「あら、番と認めてくれるのね」
「ふん!だが、この小娘は未熟者だ。悪魔を倒したことも」
「判った、というよりお前は俺の魔具だ。変わらず使わせてもらうぞ」
「うむ、それに武具ならジンゴかアシュリーに頼め」
ケルベロスはウルフドッグの姿でスパーダに撫でられる。
「上に行くぞ、あと口座とかよこせ。後で振り込んどく」
「え?」
「今日からだ、悪魔はそこら中にいる。仕事はたくさんあるぞ」
「え…はい!」
「なら、私は仕事を貰ってくるわね。ユウナちゃん!初仕事、覚悟しておきなさいよ」
グレイスはDevil May Cryを離れた。ユウナとスパーダはガンスミスたるアシュリーとの会話だ。
「んで、お嬢ちゃんへどんな武器が?」
「取り敢えず、剣と拳銃を下さい」
「へぇ…剣と拳銃ね」
アシュリーはスパーダをニヤリと見るが、とおの本人はジンゴと戯れている
「みろ、ケルベロス!新しい魔具だぞ!」
「よせ、変なものを着けるな!」
「むっ…強いのに」
「おいおい、ケルベロスはそもそも魔具だ。俺には無いのか?」
「お前は使ってない魔具を店に飾るの止めろ。魔具が無くぞ」
「いや…使ってない訳では無い。だが……」
グリフォンとベオウルフ、アシュリーとジンゴの店『ナインヴァリ』に飾られている。
「ケルベロスが使い勝手が良くてな、グリフォンとベオウルフは……」
「ふん、主はわかっているな」
ケルベロスは尻尾をブンブンとふり、ジンゴに撫でられる。
「憧れるのは良いが、人間が同じ事をしたら死ぬよ」
「憧れるだけにします」
そんな時だ、ナインヴァリの扉が勢い良く開かれた。
「スパーダ!ユウナちゃんが来て初仕事よ!また、汚職議員に悪魔の疑惑!今回は大暴れするわよ!ほら、さっさと準備して!」
「アシュリー、重火器はあるな?」
「ロケットランチャー、グレネード、なんでもござれだ。後で払いなよ」
「なら!私はグレネードランチャーで!」
「えっ!?えっ?!」
「ほらほら、ユウナちゃんもバズーカ持って!」
「さて」
スパーダはナインヴァリの扉を蹴り開けた。
「Let's Show Time!!」
人物像イメージ
グレイス =モリソンとレディを足して2で割った
ジンゴ =ニコ
アシュリー=ニール・ゴールドスタイン
リィン =スパーダ、バージル、ダンテを足して3で割った
リナ・クロフォード=ニーナ・ローエル
ユウナ・クロフォード=パティお嬢様