翌朝、スパーダは特務支援課の4名を起こし、課長たるセルゲイの前に招集した。
話す内容は無論、一つ。
このまま特務支援課に所属するか、否か、である。
開幕はランディである。
「俺は問題ナシ。このまま厄介になりますよ。っていうか、俺を警察本部に引っ張ったのはアンタでしょうが」
それはスパーダも想定していたが、セルゲイに対する謎が深まる。警備隊に伝でも有るのだろうか。
「クク、何なら一課辺りに推薦したって良いんだぞ?連中もお前の戦闘力なら欲しがるかもしれんからな」
「うげ……ゴメンこうむりますよ。警備隊暮らしならまだしも、ギスギスした所はチョットね」
その理由はスパーダも納得してしまう。と言うより、もし特務支援課でなく捜査一課等ならクロスベル警察署は機能不全に陥るだろう。
「エリィの方はどうだ」
「私もこのままこちらでお世話になります。セルゲイ課長。改めて、よろしくお願いします」
「まっ、お前に関しては俺も予想外だった。本部のお偉いさんはこの課を安全な雑用係と思って推薦してきたんだろうが…‥」
「なんで俺を見る。…おい、セルゲイ…おい」
スパーダは自分を見つめるセルゲイを睨むが溜息をつかれるだけだった。
「当然、そんな甘いもんじゃないのは覚悟しているだろうな?」
「ええ。それはもう初回から体験済みです。密度の高い仕事が出来るのを今から期待しています」
「フッ、上等だ」
「ティオは聞くまでもないし、スパーダ。お前は論外だ」
「ええ、最初からそういう約束でしたし」
「セルゲイ、あとで覚えとけよ」
若干怒っておるスパーダを無視し、ティオは会話を続ける。
「それより……今日の午後、導力ケーブルの配線工事が有るそうですよ。端末のセッティングは任せていただいても」
「ああ、元よりそのつもりだ」
まるで返事が最初からわかっていたかのように、視線を動かした。
「__さてと、最後はお前だけか」
その視線が向いているのはロイドである。
「____ロイド・バニングス。警察学校カリキュラムを座学・訓練共に優勝な成績で修了――そのまま操作感試験に挑戦し、見事これに合格した。正直、ウチには不釣合なくらい真っ当すぎる人材だ」
「………」
「お前なら、どの課に行ってもソレナリにやっていけるだろう。ウチが手放したら引き取りたいって話もいくつか来てるしな。――迷う余地は無いんじゃねえか」
「――いえ。色々考えたうえで決めました。セルゲイ課長。これからよろしくお願いします」
「へへっ」
「……ロイド」
「よろしく頼むぞ、ロイド」
「………」
ロイドの特務支援課参加は全体を見て好印象である。
「なんだよ。つまらんなあ。もう少し悩みまくるのを期待してたんだがよ~……」
「こいつ、最低だな」
「……あのですねえ」
「まあいい、今日一日は全員休暇という形にしてやる。地獄のように忙しくんなる前の最後の休暇だと思っておけ。ああ、ティオ。端末のセットだけは頼んだぞ」
「ええ、了解です」
「――おっと忘れてたな。改めて――ロイド・バニングス」「はい」
「エリィ・マクダエル」「はい」
「ランディ・オルランド」「ウッス」
「スパーダ・リン」「フン」
「ティオ・プラトー」「はい」
「本日、0900をもって以上5名の配属を承認した。ようこそ、特務支援課へ。バラエティ豊かな仕事を山程回してやるから楽しみにしていているといい―」
解散となり、メンバーと別れたスパーダは即座に行動を起こした。スパーダは殺風景な自室をDevil May Cryと同じ調度品や家具で整えようとしているのだ。金に物を言わせたクロスベルの一級品であるDevil May Cryのモノを持ち出そうとは思わない。
今、頭の中には買うことしか残っていない。二階には勝手口が有るため、スパーダは家具類を搬入した。
「うおっ、すげえな」
「おいおい、いったい何万ミラ」
「合計5千万ミラ辺りだな」
「…金持ちかよ、スパーダ」
「本職は一回100万ミラやら1億やらもザラだしな」
そういえばランディの表情が陰る。
「猟兵じゃねえぞ、グレーな何でも屋だ」
「あとカジノで荒稼ぎしてるよな。遊撃士の十八番の手配魔獣も殺してる」
「Hm…知ったことか」
翌日
支援課ビル一回事務所、そこに置かれている長机に人が集まっている。
椅子に座り、これから来る未知に何気ない楽しみを覚えている者もいる。
「――さて改めて今日から初仕事というわけだが。まあ、何がともあれ改めて説明を補足しておこう。
ロイド、捜査手帳をだせ」
「あ……はい!」
ロイドは懐からクロスベル警察の紋章が入った黒い手帳を出す。
「警察紋が入った黒手帳か。なんだかソレッぽい感じだよな」
「確か。警察官としての身分証明にもなるんですよね?」
「ああ、その他にも色んな注意や説明事項をまとめている。戦術オーブメントの解説もある。スパーダ、特に読んでおけよ」
自分のミスであるため、軽んじて受けるがいちいち話されるのは面倒だ。
「わかっている。連絡手段が使えないのは笑い話味もならない」
「――だが、こいつの」
ここから話される内容はまるでゲームのチュートリアルのような内容だった。システムや捜査手帳について詳しく説明される。 スパーダ自信、慣れていることもありこの手の話題は簡単だ。
「ロイド、スパーダは特務支援課だが本職は別だ。単独行動をすることもあるだろう。だが、気にするなよ」
メンバーに不審がられたが、特務支援課活動がスタートした。
スパーダが真摯に依頼を完遂する姿や、手慣れた動きに捜査官であるロイドすら感歎する。
「お前たちもなれるさ、ん?ああ」
「あっ!スパーダどこいたのよ!!支援要請も指定だしたのに」
「グレイス、いま案内の」
「なあ、あの人って初日に出会った」
スパーダはグレイスに問い詰められ、静かに頷く。
「わかった、ロイド。これから本職の仕事だ。悪いが」
「ええ、大丈夫です。そうだ隣の」
「グレイス・リンよ。一昨日は何と言うか災難だったわねって、ほら!行くの!!」
「はあ」
グレイスに引きずられていく様を見ればイメージも崩れていく。
すでに初日の取っ付き難いという印象はない。
「スパーダさんはいないけど、このまま続けていこう」
そして、とおのスパーダはユウナとともに東クロスベル街道に向かっていた。スパーダの顔は赤く染まり、不機嫌さが辺りを包んでいく。
「ユウナ、誰からの依頼だった」
すでに30を超える低級悪魔を仕留めている。ユウナも10を超えてから数えておらず、流石に悪魔が多すぎると
感じている。
「依頼主は…確か【道化師】と」
「あーーー」
スパーダは即座に理解した頭に手を当てながら、来る未来に不満を覚える。
「ユウナ、帰れ」
「え?」
「今回の仕事の報酬はお前が6、グレイスが3、俺が1だ」
「え?あの」
「頼む、帰ってくれ」
スパーダの苦悶の表情で何かを悟ったのかユウナは何も言わず帰っていく。それを見たスパーダは悪魔を殺しながら先に進んでいった。
「うん、うん、さすが伝説のデビルハンターだね。…リィン」
「半年…いえ1年ぶりと言うべきでしょうか。カンパネルラ」
青いスーツから漆黒のスーツに変わり片膝を付いている。
「へえ…もう一人の気配もわかるんだ。君、かなり強くなったよね」
「……涙を流しました。でも、貴方らしいと感じていましたよ」
「えぇ、マスターも私も、アイネスも涙を流しました。エンネアはどうか判りませんが」
「あぁ、かの魔帝と対峙しに向かったと……それが」
「えぇ一体何時からクロスベルに居たのかしらね」
あり得ない、感じた気配は2人。なぜ、3人以上…
「幻術ってわけじゃないけど君の気配察知を妨害なんて簡単だよ。まぁ、存分に怒られたまえよ」
「カンパネルラ、どうか…御慈悲は」
「あはは、ごめんね。何もするなって言われてるんだ」
後ろから優しく抱きしめられる。
だが、スパーダはそんな感情を抱く余裕は無い。
子供達に家族についてあれだけ話しておきながら、自分は家族の下に帰らずずっとデビルハンターしていたのだ。
「……それに随分と懇意にしている女性が居るらしいですね」
「…………えと、あの………」
「リィン、私達がどれだけ心配したと思いますか?レンに至っては組織まで離れました。自分のせいで、貴方が消えたと」
「えぇ、リィン。私、とても怒っていますわ」
「………何か、言うことはあるか?」
「……大悪魔アビゲイルを倒しました」
「お馬鹿」
「ぐぅ~……」
エンネアの拳を頭に受け、つい抑えてしまう。
「一度、お前の恋人と話したい。無論、連れていけるな?」
スパーダは嘘だろと言う顔をするが、笑っていながら笑っていない目をする母の威圧に耐えられず、頷いた。
「ところで、君は組織を抜けるとか」
「ありません、私の忠誠が揺るがぬ限りは」
「うん…一応言うけど君、使徒候補でもあるんだよ?わかってるよね」
「無論です、ですから助けて頂けるのな」
「じゃあね」
道化師はそのまま消えた。残ったのは家族のみ。
スパーダは観念し、来た道を戻る。悪魔達はもういない。
だが、返したはずのユウナが待っていた。
「あっ、スパーダさん!って、その人達は」
「この子の母です」
「姉ですわ」 「姉だな」 「姉ね」
「え?スパーダさん?」
ユウナに問われ、スパーダは顔を青くしながら頷く。
「実は、リィンいえ、スパーダと名乗っていたのでしたね。
スパーダは1年ほど前に行方知れずになっていたのです。それがまさか、クロスベルでデビルハンターとは。幾ら妹の為に悪魔を倒しに向かったとは言え、何も手紙が無いのは頂けません。それどころか、恋人を紹介しようともしない」
「……え?スパーダさん、家族に黙ってクロスベルに」
「頼む、お願いだ。何も言うな」
「……最低ですね」
信頼するバイトからも蔑まれ、スパーダは居づらい気持ちになる。
「取り敢えず、店に行くぞ。ユウナ、お前は帰」
「面白そうなのでついていきます」
「You have a nice personality, don't you?」
スパーダがナインヴァリに入ると店番をしていたらしいジンゴがテトテトと近付いてくる。
「おぉ〜スパーダ!帰ってきたのか!」
「……ジンゴ、アシュリーはいないのか?」
「ママは出かけてる、その人達は?」
「俺の母親と姉だ」
「おぉー、じゃあ蛇の人達か」
「お前、本当に子供のくせに詳しいな。まぁ、下を使う」
「おう、壊すなよ」
ジンゴはそう言うと店番に戻る。
「あの子は」
「ジンゴ、家主の娘でガンスミス見習いだ」
DevilMayCryの装飾はスパーダの趣味であり、広々とした空間だ。ジュークボックス、冷蔵庫、テレビ、電話、鉄機隊にいた頃とは違い質実剛健ではない。
「随分と変わりましたね」
「……ちょっとな仲間に連絡取る。少し待っててくれ」
自室に向かい、エニグマを手に取る。
「……あっ、繋がった」
「スパーダさん?丁度良かった、あの連絡したいことが」
「いや、あの一身上の都合で今日一日付き合えるか怪しくなってな」
「なら、最後にサーベルバイパーとテスタメンツの」
「抗争でも始めたか?」
「はい、じゃない。始める寸前なんです!両者共に被害者が」
スパーダはロイドから話を聞き、目を瞑る。
「……ロイド、俺は今そこにいない。でも、彼奴等とは顔馴染だ。だから言える、確かにあの不良共は喧嘩もしてる。でもな、そんな相手を殺しかけるなんてしない筈だ」
「……それは」
「DevilMayCryの関係者、ソレだけ言え。それぞれのボスの所までは行けるだろう」
「えと……ありがとう御座います!」
「この頃のクロスベルなら俺が詳しい。何かあれば聞いてくれ。連絡待ってるぞ」
スパーダはエニグマをしまい、自室から出た。
「えぇ?!スパーダさんの本名って」
「リィン・サンドロット。ですわ」
「今なら、スパーダ・R・サンドロット。だな」
ユウナと鉄機隊のメンバーは既に打ち解けていた。
スパーダは人数分のココアを出した。
普段はコーヒーを飲んでいるのを見ているユウナは驚いた顔をする。
「ココアですか?」
「リィンのココアは美味しいぞ」
「いただきます」
ユウナはアイネスに促され、ココアを飲む。
喫茶店で出てくる物よりも美味しく、仄かな苦みが甘さを引き立てる。
「うん、美味しいわね」
「えぇ、変わりません」
「懐かしいです、私達が濡れていると常にタオルとこのココアを持ってきてくれましたね」
「……家族が風邪を引くなんて嫌だしな」
スパーダもソファに座りココアを一口飲む。
「……所で、私に何か話す事はありませんか?」
「………」
ニッコリと笑うリアンヌ、闇はない。
むしろ、貴方の全てを知っていますという母親特有の笑みだ。
「……あの、その……肉体関係を持ちました」
「ほぉ、それで」
「将来を誓い合った仲というか……いえ、プロポーズはしていないのですが、恋人…いや……パートナー?……相棒?」
「嘘、あれだけ一緒に居てグレイスさんと付き合って」
「ユウナ、その目はよせ。違う……責任は取る。愛してる、きっとそう言える。……でもな……」
「失うのが怖いと」
「……今までなら俺が傷つけば問題なかった。レンを…妹を守るだけなら、爆弾で吹き飛ばされようと、ムンドゥスに魂ごと消されかけても」
「待ちなさい、魔界に向ったと報告は聞きましたが」
「ムンドゥスに魂ごと消されかけた。でも、家族の思い出が俺を抑えつけて、戻してくれた。なぁ、母さん。子供を持ったら…守りたい物が増えたら……俺は今まで通り戦えるのか?今なら判る、失うのが怖い。俺を慕うバイト、上で暮らしてるお嬢様とガンスミス、そして恋人。俺は、ほぼ不死身だ。悪魔と人間の力を持って、悪魔を殺すデビルハンター。でも、はじめの頃の様な決死の覚悟、ソレがない。何時も何処かでブレーキがかかる。なぁ、俺は弱くなったか」
「……それはリィン。貴方がまた成長した証です。私は嬉しい。昔、貴方を拾った時から家族になりました。しかし、家族とソレ以外という外界との関係を断とうとしてしまった。クロスベルは、貴方にとって素晴らしい環境なのでしょう」
「……あぁ、嫌いじゃない」
「そう」
リアンヌは優しくリィンを抱きしめる。
母親と息子の抱擁、悪魔は泣かないはずなのに涙が出てしまう。
「……悪魔を泣かせる悪魔が……涙を流すとは」
「……スパーダさん」
「ですが、それはソレとして勝手に家出した挙句恋人まで居る。それは驚きです。ユウナさん、すこし離れていても?」
「はい!スパーダさんとちゃんと話してあげてください!」
「ええ、大切な弟だもの」
「そうだな、心配させた挙句こんな事をしているとは」
「私も言いたいことはありますわ!」
「……勘弁してくれ」
普段とは違う姿、だがスパーダの微笑みは隠されては居ない。
普段では決して見せることのない、優しい笑み。
「スパーダさんも……家族が」
自分達の前では歳上として導き、常に戦いを意識し気丈に振る舞う男。でも、その内面は優しく家族を愛する一般人だった。
「……レンが?」
「えぇ、クロスベルに居ると報告が。もし」
「彼奴が闇に居るべきじゃない。俺は、彼奴の光にはなれない」
スパーダはそれだけ告げると静かにDevilMayCryの扉へと向かう。ホルスターにルーチェとオンブラをしまい、蒼いコートを身に纏う。そして、リベリオンを背負い、閻魔刀を帯刀する。
「リィン、話は」
「仲間の手伝いもある。母さん達はゆっくりしてくれ。宿の手配もしておく」
「あの、スパーダさ」
「ユウナ、クロスベルはお前の庭だろ。俺の家族の案内を頼むぞ」
ユウナにはソレが判る。スパーダの目は冷たく、怒りに満ちている。そんな目をする時、大抵同じだ。
「I'll kill you, devil.」
「お仕事、頑張って下さいねー」
龍老飯店
「あっ!来たぁぁぁ!!!スパーダ!」
「なんだ…ロイド達と一緒に居たのか」
「いやぁ…彼等色々とスクープになるのよ!勿論、貴方の事は載せないから!」
「俺を載せたら、またゴシップ行きだ」
スパーダはグレイスの頬に軽く口付けをし、椅子に座る。
流れるような動作に女性陣は頬を赤らめている。
「恋人ってマジなのか」
「ついでに一身上の都合ってのは店に家族が来たからだ。……グレイスを紹介しなきゃならなくなった」
「あの、そんな状況で俺達と居て大丈夫なんですか?」
「……1年近く音信不通にしてたうえ、恋人まで居ると来た。
やらかした、今日の一件が終わればグレイスも一緒に挨拶してくれないか」
「……ソレは良いけど」
「あの、おめでとうございます。スパーダさん!」
「……結婚もしたいと思える女性だからな。尚更、紹介したい」
「おっ…そりゃあお熱い事で」
簡単な雑談が終わり、本題にはいる。
「グレイスさん、そろそろ話してもらえませんか?」
「嫌だと言ったら?」
「金輪際、貴方達ともたらされた情報を信用しない」
「やめた方が良いわよ?貴方が思うよりもクロスベルは闇で一杯なの。スパーダと私と…ユウナちゃんが奔走してるから安全なのに」
「どういう意味ですか」
「知ってるかしら?警察はね、市民に信用されてないの。スパーダを誤認逮捕したり、汚職の証拠をバラされたり、今の市民でクロスベル警察に協力してくれる人は少ないわ」
「………」
「私はね、協力なんかもっての他だと思ってるから。でも、スパーダが、恋人がいるから手伝うの。良い、ロイド君。いえ、特務支援課の貴方達には拒否権はないわ。私達市民にとって、半グレの抗争は困るのよ。遊撃士に頼みたくない事情もある」
「……グレイス、あまり虐めるな」
スパーダがグレイスの肩に触れる。それで、自分が出した言葉を慌てて謝罪する。記者の中でもグレイスは真実と脚色を使い分けるのが出来る人間だ。のにも関わらず、つい本心を吐露してしまった。
「…ごめんなさい。でも!特務支援課に期待してるのは本当よ」
「いえ、クロスベル警察の汚職は理解しています。現在、俺達にはソレをどうにかする力もない。でも、力が無いからと何もしなければ変わらない。そうでしょう」
「変える力があると?」
「そんなの、やってみなくちゃ判りません」
ロイドはグレイスにそう言ってのけた。グレイス自身、もう笑うしか無い。捜査官なりたての青年の言葉、青臭く、希望溢れる言葉。
「……若い……若い言葉だ。ロイド、お前はまだ世界の闇を知らないだろう。どんな人間にも闇がある、でもそうだな。そんな闇を理解し、寄り添える奴になってくれ」
スパーダはまるで弟を撫でるかのようにロイドを撫でた。
「スパーダさん、やめてくださいよ」
「悪いな……なんというか、弟みたいに感じてしまう」
「……スパーダが認めたんだもの。教えてあげる」
グレイスの言葉はロイド達を震撼させた。
警察も手出しできないマフィアの存在。
クロスベルの闇の一端に触れたのだ。
「……マジか」
スパーダは嫌な顔をする。ロイド達もスパーダがクロスベルの色々な所に借りを作っているのは今日で理解した。
ワジもヴァルドも、スパーダを名を出すだけで渋りつつも情報を渡したのだから。
「その、マフィアとは」
「悪魔関係で何度か、構成員もヤッた事があるし……」
「ヤッたじゃないでしょ?悪魔なんだから」
「あぁ、こんな感じでな」
その時、スパーダがルーチェとオンブラを、グレイスが大型拳銃を抜き一人の店員に向かって撃ち始めた。急な銃撃に店内が騒然となるが、グレイスとスパーダは何とも感じていないように歩き出す。
「もう、やっと足掴んだわよ」
「さて、お前がが喰った市民の遺体だ。さっさと場所教えろ」
店員の身体は肥大化し、瞬く間におぞましい何かに変貌する。
「貴様……スパーダ?!!」
「あ~、グレイス。遺体は諦めた方が良さそうだ」
「胸糞悪いわね」
悪魔の身体からは人間の腕が無数に生えていた。
急に現れた怪物に店は騒然とするが、即座にスパーダは閻魔刀を抜く。
「食事の邪魔だ」
次元斬
空間が斬り裂かれ、悪魔は血を噴き出しながら粉微塵になっていく。 だが、スパーダが何かしたのかテーブルの上とロイド、スパーダ達には血が一切付いていない。セピスだけが残り、何があったのか…ソレは分からない。
「ちっ……」
「ひっ……」
「ティオ、悪かったな。キャンデー食べるか?」
「あんな事をしておいて………のうのうと」
「悪魔は何処にでも居る。言ったろ!お前達も会う。まさか、今日会うとは思わなかったがね」
「うわ……スパーダ、よく食べれるわね」
「ロイド、悪魔は見つけたら殺せ。信じるな」
「私は無視なの?」
「今の騒ぎで警察が来る、食って撤退だ」
「ちょっと代金は」
グレイスがそう叫ぶと、スパーダは懐から分厚い札束を出した。
「100万ミラだ、後で足りない分は払う」
「スパーダさん、足りますけどね。悪魔殺しは店外でしてくださいよ」
「まぁ、死人でない程度にな」
食事を急いで終え、港湾区の広場にあるベンチに座る。
「マフィアか……」
「手を出した返しが面倒ね。相手は表向きは商人だし」
「……取り敢えず、セルゲイ課長に報告しよう」
「ですね__スパーダさんは」
ロイド達がそう会話をし、ティオが問いかけると既にスパーダの姿は無かった。
「ねぇ、彼等は良いの?」
「良いさ、俺が居なくとも強くなる。それに……」
「ここから先はR指定だ。よね?」
クロスベルの旧市街地、その屋根の上にグレイスとスパーダが居た。グレイスも既に並の人間のステータスではない。
悪魔を殺し、その力を吸っているのか強くなっている。
「フューリッツ賞は夢のまた夢かしら」
「……新聞記者が大事なら、止めても良いぞ」
「誰が仕事を持ってくるのよ。DevilMayCryは宅練一生」
「一蓮托生だ、しかし……そうだな。俺達は仲間だ」
「なら、わかってるわよね?」
「……わかっている」
風に吹かれながらも、スパーダの顔は変わらない。
蒼のコートがたなびきながら、現れる悪魔達を冷めた視線で見つめる。
「…まったく」
ルーチェとオンブラは使えない。
流石にこの程度の相手なうえ、市街地でぶっ放す危険は理解している。
「久し振りの戦い方だ」
リベリオンを投擲し、低級悪魔の胴体に突き刺す。
この戦法をとったのは輝く輪以来だったと何処か感慨深いが、
そんな気持ちにふける余裕を悪魔は与えない。
「おいおい……チェーンソーは無いだろう」
クロスベルは低級悪魔ですら化け物とかしていく悪夢の地。
更に低級悪魔は合体し、3Mほどの巨大な人型の化け物となる。
そんな奴等が20体ほど。流石にスパーダも頭が痛い。
「ごめんなさ〜い、ユウナ呼んでくるわね♡」
「……おい」
笑顔を浮かべながら消えていくグレイスに呆れつつ、リベリオンを構える。
「shit…Shall We Dance?」
チェーンソーの音すら聞こえてくる。悪魔たちの動きはまさに怪物と言えた。
チェーンソー達は他の悪魔を切り裂きながら、スパーダに向けて迫る。
それをリベリオンで弾き、キックを繰り出す。
一撃でも受ければ即死級のダメージだ、いくら悪魔として覚醒し大抵の攻撃では死なないといえど、痛いものは痛い。
「Breaking Down!」
リベリオンとスパーダの腕力に言わせた斬撃はチェーンソーごと一体の悪魔を破壊する。
閻魔刀を使う場合とは違い、斬るに拘らず断ち切ることを考える荒々しいバトルスタイル。ルーチェとオンブラは使えない、使わないという縛りのせいで余計に面倒くさい。
「FACK!」
回避しそこねたスパーダの顔面の肉をチェーンソーが抉る。
鼻が持っていかれた上、斜めに出来た傷から血がドバドバ流れ出てくる。
「スパーダさキャアアアアアア!!!」
「ユウナちゃひやぁ?!っ!?」
顔面が血だらけのクリーチャーとなっているスパーダに怯える2人。口はまだある為喋れはする。
「グレイス!もう、気にするな!ぶっ放せ!ユウナ!コイツラに斬られれば人間は一溜まりもない!わかってるな!」
「え?はい!って、スパーダさん?!」
「顔の事は気にするな!」
スパーダはリベリオンで応戦しているが、チェーンソー達の連携力が上がっていく。まるで群体だ。同じ行動を連携して行ってくる。
「コイツラ……強い!」
「ユウナちゃん!」
グレイスとユウナがコンビで戦っているが、だんだんと押されていく。スパーダも何とか防ぎたいが、面倒な状況だ。
「くそ……本気でやるDEVILTRIGGER」
肉体の撃鉄が上がる。火薬の爆発の様に魔力が吹き出し、スパーダを囲っていた悪魔達は吹き飛ばされる。
「……the end of the punishment」
ー手加減はここまでだ
「フフッ……スパーダ!……って、彼じゃないのね」
「……冗談じゃないぞ」
悪魔達の周りに蝙蝠が現れ雷撃が辺りを焦がす。
残っていた奴らも霧散し、濃密な霧がクロスベルを覆った。
裸体をその長髪で隠すという淫らな容赦。
しかし、スパーダは閻魔刀を構えるのを止めない。
「……貴方、スパーダのコスプレ?かなり似てるわね」
「先祖だ、俺はスパーダの血族。お前達悪魔を殺すデビルハンターだ」
「へぇ……面白いじゃない」
「スパーダさん!その悪魔は」
「あら、人間。そう……可愛いじゃない」
スパーダに悪魔は迫る。閻魔刀を振り下ろそうとしたが、空を斬り悪魔はユウナの背に立つ。
「ひっ」
「怯えないの、可愛い顔が台無しよ」
「くっ、うちの後輩から離れなさい!」
「むだよ」
グレイスもマグナムを撃つが悪魔は身体を蝙蝠に変え避けていく。蝙蝠から悪魔にもどると怪しい笑みでじっと三人を見つめる。
「来なさい、その力。見てあげる」
「I'll make you regret underestimating」
ー侮った事を後悔させてやる
クロスベルの闇に紛れ、強者達の争いが幕を開けた。