超昂大戦SS 翔び上がれルビー、復活の右脚! 悪夢の過去と敗北の涙を超えて   作:環 藍河

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※原作第1部初期、トパーズも出てこないだいたい第3章前半くらいの時間軸です。ネタバレの心配はほとんど無いと存じますが、一応ご注意を。


第2話 絶望のサブミッション! サファイア、非情の脚責め

「それじゃあ、ゆ~っくり曲げてみて~?」

 ぐっ…

「そうそう、膝も足首も…あっ、痛みがあったらすぐ止めるのよ~?」

 

ダイビート本部・メディカルルーム。

新参の地上神騎・ユユエルが、大ダメージを受けたルビーの右脚の治療を終え、最終確認をしていた。

 

「どお〜? もう痛くないはずだけど〜?」

「は…はいっ、嘘みたいです! ユユエルさん、ありがとうございました!」

現代医学ではなし得ない、神騎の力による回復。

ルビーの右脚は出撃前の状態そのまままで整復されていた。

 

「ルビーちゃん。あなたの右脚、医学的には完全に元通りよ〜。

 すぐにだって出撃できるくらいなんだから~。」

「それとっ! このさやかさんのチューニングを信じなさいっ!」

「わあっ!?」

「ルビー! あなたの戦闘服は、D2エナジーで攻防を常に最適化するのよ!

 敵の攻撃や障害物を察知して、先回りで戦士を全力ガード!

 自分の脚を壊さないよう、キックと同時に脚も強化しちゃうんだから!

 怖れるなルビー、次の出動も、全力キックでどーんと行っちゃえ!」

 

ユユエルの激励に、様子を見に来たダイビート技術顧問・高円寺さやかも太鼓判を押す。

「あはは…大げさに騒いですみませんでした。」

 

 ぷしゅうっ。

(……。)(……。)

救護室を後にするルビーを見送る二人。

(…でもね…)

ユユエルもさやかも目を伏せ、心配そうにルビーを思う。

(技を破られたのも、脚を壊されたのも事実なのよね…。)

(自信を取り戻して、全力でまた戦えるかは、ルビーの心の内面次第…か…。)

 

……

 

屈辱の撤退から、あっという間に時間が過ぎ…青空はとっくに星空だった。

シャワーだけ浴び、無傷の右脚を拭き、寝間着に身を包むと…アカリはベッドに身体を預ける。

 

 どくんっ。

(…忘れたつもり、振り切ったつもり、だったのに…。)

 

胸のざわめきを必死に押さえて、アカリは天井を仰ぐ。

バトルの疲労が残る身体と、ざわつく心の昂ぶりがちぐはぐなまま、時計だけが空転していた。

 

……

 

浅い眠りのまま、やはり目を覚ましてしまった夜明け前。

誰もいないことを確かめ、アカリはトレーニングルームへ入る。

準備運動ももどかしく、サンドバッグの前に立つと…決意の詠唱。

 

「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」

 かっ…!

 

真紅の閃光に身体を預け、エスカ・ルビーに変身。

昨日引き裂かれたチェストやカラー、ボディのレオタードも、打ち砕かれた右脚のブーツも、すっかり元通りであった。

 

(私は…私の右脚は、もう元通り…!

 変身スーツが護ってくれる…!

 ユユエルさんを、さやかさんを、信じるんだ…!)

 

「はああっ!」

ばしばしっ、どがっ!

まずは左右のパンチから、左のハイキック。

右脚を軸足にしての攻撃は…大丈夫のようだ。

 

「やああっ!」

どすっ。

第2フェーズは決意を込めて放つ、右のハイキック。

だが…威力は直前の左ハイキックに、到底及ばない。

(…ダメだ、こんな蹴りじゃ…!)

 

「はああっ! やあっ、だああっ!」

どすっ、ぼすっ、ばすっ。

弱気な自分を戒め、意を決して放つ3連の右ハイキックは…

どれも半端なためらいを残す。

 

…がくっ。

(はあっ、はあっ、はあっ…!)

 

わずかに膝を屈し、それ以上に心が愕然と落ちる。

ままならない自分の心に、焦りが浮かぶ。

 

ユユエルとさやかのお墨付きでも…疑念が消えない。自信が持てない。

もしもまた、この脚を壊してしまったら…!

 

怖い。戦えなくなることが。自分の不甲斐なさが。

どんなに怖くても痛くても、戦い抜いてみんなを護るんだって決めたのに。

自分の右脚なんて、壊れたって構わないのに。

 

(はあっ、はあっ、はあっ…)

頭でわかっている信念に、心が応えてくれない。

にじむ汗をぬぐうことも忘れ、荒れる呼吸をなだめ…

ルビーはサンドバッグをじっと見据え続ける。

 

…やがて、ルビーが決意を絞り出す。

数度、右脚で素振りし、狙いを定め。

深呼吸を一つ、二つ。

 

「…やあああーーーっっ!!」

自分の弱さを振り切るための雄叫び。

「…ふんっ!!」

 

ルビーは懸命に右脚を振り抜く。

 

  どがっ!…どぼおっ!!

 

蹴撃は標的を捉え、見事に撃ち抜かれた袋は、吊す鎖を引きちぎり、強化されたトレーニングルームの外壁へ。

センチ単位の厚みをたたえた特殊合皮の頑丈な袋が、砂を吹きこぼして壁をずり落ちる。

破壊力は、昨日までと同じ手応えがあった。

右脚の負傷跡には…、痛みも違和感も、無い。

 

(…よかった。これで、また戦える。)

深く息を吐き、ルビーは安堵した。

今日はここまでにして、出撃命令を待とう。

 

きびすを返し、出口に向かうルビー。

そのまま変身を解除しようとした…が。

 

 ざっ!

「愚かなり、エスカ・ルビー!」「なっ…!」

 

仁王立ちの相棒・ヒビキが、ルビーを阻むように扉を塞ぐ。

 

「そんなやけばちなキックで、敵が倒せるものか! 甘く見るな!」

「ヒ…ヒビキちゃん!?」

朝の鍛錬に向かい、トレーニングルームの気配に気づいたヒビキはルビーを見つけ、そして憤慨していた。

背中を預ける相棒の、ためらいと妥協の産物に。

 

「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」

 

朝焼けと見間違うほどの、まばゆい蒼光。

怒気をはらんだ戦士のオーラが、ルビーを打ち据える。

「ルビー、今のお前は戦士じゃない! その甘さ、私が痛いほど教えてやる!

 行くぞっ!」

「えっ…、わっ、わわっ!?」

駆け出すサファイアが、ルビーを急襲した。

 

……

 

ダイビートの誰も立ち会わず、突如火ぶたが切られたエスカ・ペアのスパーリング。

その様相は序盤から、寸止めなしの実戦バトル。

だが、ルビーVSサファイア…共にルーキー超昂戦士同士の一戦は…

徐々に、優勢・劣勢を残酷なほど色濃く塗り分けていく。

 

「あ…あ、ぐうっ…!!」

(はあっ、はあっ、はふっ…!)

肩で息をするルビー。

サファイアの執拗な攻撃に、体力やエナジーの消耗以上に、メンタルを弄ばれ、いたぶられる。

 

「やああっ! はあっ、せいっ!」

しゅっ、しゅっ、がしっ。

「うわっ!…くっ…」

サファイアの拳の連撃を、戦闘訓練で習った通りにガードするが…

 

「甘いっ!」

 どすっ。

「ぐっ…ああっ!」

顔面狙いの拳は、本命の一撃への布石。

サファイアの硬い高下駄が繰り出す、鋭い左ローキック。ルビーの右足首は、真横からパルシオンごと撃ち抜かれた。

 

「くっ…ううっ…」

僅か数分が、ルビーには無間地獄にも感じられた。

 

上半身に意識を取られれば、すぐサファイアの下駄が外から内からルビーのブーツを撃ち抜く。

下を意識してルビーが反撃を試みれば、クナイで足止めされ、怯んだバックステップを刈り取られる。

サファイアの攻撃は…拳と蹴りとビームクナイを絶妙に組み立てながら、最後はことごとくルビーの右脚に突き刺さっていた。

 

「かはあっ…はあっ…けふっ…!」

(そんな…一つも、防げない、なんて…!)

サファイアの狙いは、右脚。

痛いほど、わかっている。それなのに…

これがエスカ・ルビーの、実力だというのか…!

 

 ざっ。

「わかるかルビー! 私でさえ、今のお前の脚なんか、容易く壊せるんだ! ましてや、卑劣な滅忍や、数で押し切るフーマンの右脚殺しは、こんなものじゃない!

 いいか、次から奴らは、お前の右脚を執拗に狙い、再起不能になるまで潰しに来るんだ! 惨めに痛がるざまを、あんなに見せつけてしまったんだからな!」

「…ううっ…!」

「それなのにお前は…ろくにウィークポイントを克服しないまま、むざむざ殺されに出撃するのか!」

「し…死なないよっ、私っ…!

 あんな奴等に、もう負けるもんかっ!!」

「馬鹿っ! お前のその愚かな強がりは、美しくも何ともない! 自ら望んで死にに行く、ただの蛮勇だ!」

「わ…私、もう大丈夫だよっ!

 これくらいのキックで、壊されるもんかっ…!」

「はっ!」

サファイアの次なる一撃は、パンチでもキックでもなく。

(えっ…あっ…!?)

 

 ぱしっ!

 

集中を欠いたルビーの真横に廻り込み、怯んで重心が崩れた右脚を裏から払う円月蹴り。

無駄な力を排した蒼月の弧が、足首のパルシオンごとルビーのブーツを跳ね上げる。

「きゃ…わああっ!」

体幹を弾かれて仰向けに仰け反り、完全に死に体となったルビー。

 

「取ったあっ!!」

サファイアは逃さず、足払いの低い姿勢のまま、ルビーの急所を追撃にかかり…

 

がしっ。…ぐいっ!

「あ…ああっ?!」

ルビーの右足首を両手でがっちり捕まえる。

トゥーホールドから、そのまま右脚ごとルビーの全身を深く引き込むと…

 

 ぐしゃっ!

「あああーーっ!!」

 

右の下駄で、四股を踏むようにルビーの支えの左脚首を潰す。

もはや、両脚を支配されたルビーに反撃能力は皆無だった。

 

「ふんっ!」

 ぐいっ…ぐきっ。

「あ…ぐううう~~~っっ!!

 …ああああーーーーーっっ!!」

 

下駄で踏まれた左足首を支点に、仰け反るルビーはブリッジで抗う。

だがサファイアは、左腕でがっちり固めたルビーの右脚を、斜め上にこじ開ける。

抵抗がかえって災いし、ルビーの股関節は上下180度まで引き裂かれた。

 

 ぎりぎりぎりっ…ごりっ、ぐきっ…。

「はぐうっ! うあっ…、あ…ああっ……!!

 ……あああーーーーっっ!!!」

 

 ぐぐぐぐぐっ…みしっ、みしっ…!!

 

サファイアがその類い希なる体幹で、釘付けの左足はそのままに、ルビーの右脚を真上へ吊り上げる。

アキレス腱が、膝靱帯が、股関節が軋む音さえ響くかのようなI字開脚は、すらりと伸びるサファイアの長身に合わせた、地獄の両脚ストレッチ。

ストライク・エスカレーションでフーマンを何体も屠ったその健脚は…今や100トンクレーンに吊り上げられた鉄骨も同然に、抵抗空しく空を仰ぐばかりだった。

 

 ぐぎっ…ぎりぎりぎりぎりっ…

「ああああ~~~っ!! は…放してえっ…!」

腰から上の自由は、責め苦の下半身と引き替え。

何とか両脚をサファイアから引き剥がそうと、ルビーは両腕でサファイアを突き放そうとあがき、あるいは振り子代わりにスイングさせ、前に後ろにボディを揺さぶる。

だが…それはかえって自らの股関節を痛めるばかり。

 

サブミッションを外せないルビーにできるのは…

なけなしのガッツで苦痛に耐えるだけ。

歯を食いしばり、ツーサイドアップごと頭を振り乱し、苦痛に飛びそうな意識を踏みとどめ、辛うじて正気を保つ。

「は…くあっ…、…ぐうううう~~っ!!」

 

 …ふっ。(えっ?)

 

虚を突くように、サファイアが緩めた拘束。

つかの間、ルビーの右脚は重力を取り戻す。

 

「ふんっ!!」

 くるんっ、がばっ!!

「あっ…?!」

 

一瞬の自由落下を待ち受け、墜ちる紅蓮の右脚を青嵐が呑み込む。

かがめた上半身をルビーの真下に差し込むと、サファイアは改めて右脚に蜘蛛絡みを敢行。

そこに横回転を加え、自分もろともルビーの全身をひっくり返す。

 

 ぐしゃっ!!

「あううっ!!」

プロレスで言う、レッグシザース。

ジャイロ回転に弄ばれたルビーは、前のめりに床に転がされる。

したたか左の肩を、体躯を床に打ちつけると…

 

「もらったああっ!!」

「ああっ! くっ…ああっ、

 あーーーっ!!!」

既にサファイアは自分の上半身全部でルビーの右脚を絞り上げていた。

背中を取られ、今度は腹ばいの…逆海老反りの姿勢で右脚を吊り上げられる。

股関節から爪先まで完全掌握したサファイアが、無抵抗のルビーの右脚を、とどめとばかり締め上げていく…!

 

「ひっ…いやっ…あああっ…!」

逆さに吊られた真紅のプリーツスカートは、もはや重力に隷属し、ルビーはショーツのクロッチを無防備に晒す。

既にここまで、垂直に、水平に…とことんこじ開けられ、痛めつけられた股関節は、苦痛に泣き喘ぐかのように汗でぐっしょり濡れそぼる。

それでも、何とか上体を起こして逃れようとするルビー。

だが、戦巧者のサファイアはさらに右脚をねじり…

 

 どすんっ。

遂にルビーの上体をひねり落とす。

「うぐうっ! …あっ、あああ〜〜〜っ!!」

うつ伏せにされ、上体と左頬を冷たい地面に押し付けられるルビー。

その背面越しにまたがるサファイアは…紅蓮の超昂戦士を完全制圧していた。

 

 ぐぎっ。

(な…何をっ…!!)

 

さやかは言った。超昂戦士の戦闘スーツは、そのD2エナジーで戦士を護ると。

だが、相手が超昂戦士ならぱ…。

自分と同じパワーを持つ超昂戦士、エスカ・サファイアのパワーからも、ルビー・フォームは護ってくれるのか…?

 

…無理だ…!

 

このまま足首をねじりあげて壊すも。

向こうずねごと関節を垂直に曲げ、膝を壊すも。

太ももごと引きちぎり、股関節を壊すも。

今のサファイアなら、思うがまま…!

 

うつ伏せでエビ反りになったルビーには、次のサファイアの技が見えない。

抵抗しようにも、抗うための力の向きが…わからない。

 

ブーツも、アンクルガードも、パルシオンも。

本気のサファイアの技とエナジーの前には…薄紙同然。

 

私は…エスカ・ルビーは、壊される…!!

 

(た…耐えられない……

 もう…もう、私っ…!)

 

悲観と絶望に支配され、ルビーの心が…

遂にへし折られた。

 

 ごりっ…!

 

サファイアがルビーの脚に力を入れた。

耳打ちする、複数の関節の断末魔。

瞬間。

 

「やめてええーーーーーっ!

 もう…もうっ、ダメええーーーーーーっ!!」

 

遂に反逆を諦め、ルビーは屈服の証を叫んだ。

 

……

 

ずきんっ! ずきっ、ずきっ…びくんっ!

 

赦された紅き敗者が、うつ伏せに横たわる。

処刑台から解き放たれた右脚が、力なく床に伸びていた。

完膚なきまでに無力化された右脚は、再び激痛と痙攣に囚われていた。

 

 

「ううっ…、ぐすっ、うぐっ…、

 ……〜〜っっ!!」

うつ伏せのまま、ルビーは肩を震わせ、声を殺して泣く。

「ルビー…お前、以前にも足を怪我しているだろう?」

「……うん。交通事故で…。」

 

サファイアは、それで全てを察した。

入院治療とリハビリの、辛く痛く苦しく、希望の見えない日々。

その経験がルビーの心の深層を苛み、新たな足の怪我を極端に怖れさせていた。

 

サファイアはルビーの身体を起こし、諭すように真っ直ぐルビーに告げる。

「…ルビー、もう一度言う。

 今のお前は戦場に出せない。

 トラウマを抱え、脚責めに耐えられないお前には…私の背中は預けられない!

 エスカ・ペアは…解消だ!」

「えっ…!」

「若頭領には私から申し出る。…御免。」

 

サファイアに、見限られた。

もう、出動できない。

 

「あ…ああっ…!」

 

突きつけられた現実を受け止めきれず、その場でへたり込み呆然自失となるルビー。

 

(ルビー…待っているからな…!)

喉まで出かかった言葉を飲み込み、敢えてルビーを突き放すサファイアは、無言で去る。

 

癒えたはずの右脚は、新たな地獄への一歩だったのか。

昨日まで希望に充ち満ちていたはずの、紅蓮の超昂戦士。

今やルビーは、絶望と再起不能の淵に瀕し…

 

「…うっ…うぐっ、……~~~!!」

 

己の不甲斐なさに唇を噛みしめるばかりだった。




作者の環藍河です。リメイクSSの第2話をお届けします。
今回はサファイアにとことんルビーの脚をいじめてもらいました。
文章の量と詳細描写を2年前当社比で倍増しましたが…ハーメルンの読者さまはこういうの、お口に合いますですか?
(かといってpixivの読者さまがリョナ系好きとも限らない)

【近況】
最近はX(旧Twitter)でもぽちぽち超昂大戦プレイ中のアクシデントや感想をポストしてます。
添付画像はWindows10&ClipStudioで編集してますが、逆にスマホから投稿できないネット老人です。いつかバズりたい。
Xはリアルイベント「ALICEの館35」の企画「アートコンテスト」のキャッチフレーズ部門投稿のため始めました…が、企画終了後もぽちぽちポストを続けるつもりです。全国のまだ見ぬトキサダさんとつながりたいー!
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