超昂大戦SS 翔び上がれルビー、復活の右脚! 悪夢の過去と敗北の涙を超えて   作:環 藍河

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第3話 再起への死闘! 届け、レジェンド閃忍の熱き心

『お姉様は…常勝無敗のカッコいいヒーローなんかじゃないわ。』

ななかがアカリに明かした秘密が、頭の中でぐるぐると暴走する。

負ける。打ち破られ、地に這いつくばり、卑劣な敵に屈する。

私の憧れる戦士は、その屈辱と引き替えにみんなを護る力を手にした。

 

(…でも、私は…?)

 

右脚が、正義の心に応えてくれない。

(どうして…どうして最後の最後に、撃ち抜く勇気を貫けないの…!)

 

火照る身体と泣き崩れそうな瞳を抱え、部屋に戻ろうとするアカリだったが…

「アカリ。」

「…長官…!」

 

呼び止める声に、慟哭をせき止められなくなった。

 

「私っ…もう…ダメです…!」

一度決壊したら、止めようがない。

「うっ…うぐっ、…ううう~~っっ!!!」

トキサダは無言でたたずみ…アカリが嘆きの全てを吐き出すまで、小さな戦士の宿り木になった。

 

……

 

「右脚だけじゃ、ないんです…。」

アカリは独白する。

「ストライク・エスカレーションも破られて…。敵が強くなるなんて、当たり前なのに…。」

「アカリ…」

 

「私…覚悟が足りないんです…。ヒビキちゃんにいっぱい言われてたのに…戦いを、甘く見るなって…! 

そんなこともわからないで、ADDDの力に甘えて戦士ごっこをして、ちょっと勝てたからってうぬぼれて、負けたら足がすくんで…!」

 

うつむき、顔を伏せ、トキサダに向ける言葉としてより、自分をなじるように、アカリが続ける。

 

「…知ったかぶりだったんです。負ける辛さを、戦いの怖さを…。

戦う覚悟ができてるつもりになって…。

でも…やっぱり私は弱くて、怖がりで…。

そんなままで出撃して、また負けて、自分がダメ戦士だって思い知らされるんだって思ったら、ますます戦いが怖くなるんです…!」

 

昨日までの希望に溢れた眼差しが嘘のように、自己嫌悪と絶望の中でアカリは溺れ、もがいていた。

 

「情けないけど、私…

もう、立てないかも、しれません…!」

「アカリ…!」

トキサダは逡巡する。掛けるべき言葉は、慰めか、励ましか。

 

 

だが、膠着を破ったのはトキサダではなかった。

 

「アカリさん。」(えっ…!?)

「トキサダ様、話に割り込む非礼、お許しいただけますか。」

いつの間にか2人の側に、ハルカが笑顔で寄り添っていた。

 

「ハルカさん…私…。」

自責の感情が言葉を紡ぎ、その言葉が自己卑下の感情をかき立てる…

その負の連鎖を止めるように、ハルカは慈愛の笑顔をアカリに向ける。

 

「…私、アカリさんがうらやましいんです。」

「えっ…?」

「戦わなくてもいい、戦ったことさえない…そんな貴方がトキサダ様の檄に応えて、戦士に志願した。

 いいなあ…あなたの戦いには、強い意志と信念があるのですね。」

 

「そ…そんなっ、だってあなたは…ハルカさんは…!」

長官から聞いた。

ハルカは人類を滅ぼさんとする猛獣ノロイの脅威から世界を救った、レジェンド閃忍だと。

その伝説の戦いこそ、ハルカは正義を愛し信念を貫き…不退転の強い意志で死中に活を見出し、強大な四道封者やノロイに打ち勝ったはず。

 

 ふるふるっ。

アカリがレジェンドへ抱く偶像を…誤解を解くように、ハルカは首を横に振り、続ける。

「私は…生まれ落ちて物心つく頃に両親に口減らしに出され、兄とも別れさせられました。

たまたま拾われた上弦衆で、生き延びるために戦闘術と忍術を必死で覚えた…それだけなんです。」

「そんな…!」

「ノロイ討伐は、そんな私をタカマル様…私の頭領がお導き下さった結果に過ぎません。

 他に自分の道を選ぶ余地が無かったから…ですね。」

「道を、選べなかった…!」

 

「だから、アカリさんは凄いんです。

 誰かに任せられるはずの戦いを、良しとしなかった。自分が戦わなくてはダメだと、一歩を踏み出した。

 たとえ今は脚がすくんでいても、あなたの最初の勇気を私は…いえ、私たちは知っています。

 エリスさんも、エスカレイヤーさんも…!」

 

 どきんっ!

 

「だから、私たちは信じています。

 あなたが再び勇気に目覚めて立ち上がるなら、きっと私たちよりも強くなると。」

 

 どくん。

 

(…どうして、だろう…?!)

アカリの心に炎が灯る。

単に新人をおだてて励ましているだけじゃない。

この人は…異世界を戦乱から護り抜いた伝説の忍びは…

(私を…未来の私を、信じてくれているんだ…!)

芯の通ったひと言ひと言でわかる。

アカリ自身が疑う未来を、一点の曇りも無く確信しているんだと…。

 

 すっ。

 

やおら立ち上がると、慈愛をたたえた目は一転、閃忍の鋭い眼光へ。

「一つお手伝いをしましょう。手合わせ、お願いします。」

 

一瞬のためらいを、刹那打ち消す。

この心に、信義に応えたいと、アカリは組手に応じた。

 

……

 

「上弦流奥義・四門五月雨っ!」

 ぴしゃーーーーん!!

「あうっ! あああーーーーーっっ!!!」」

 びくびくびくっ! …がくっ。

 

ビートポータルでこの世界に転移した際、力をかなり失ったというハルカ。

とんでもない。

それでも、ひよっこ超昂戦士一人を手玉に取るくらい、わけもなかった。

 

「獲ったあっ!!」

 がしっ! くるっ、ぐしゃっ!

「あっ! …あぐうっ!」

ダウンしたルビーの右脚を即座に急襲。この体勢は…

(サ…サファイアのと、同じ…!!)

 

落雷に膝の支えを失い、力なく仰け反り倒れたルビーは、浮いた右脚を一瞬でハルカに掌握される。

そのまま上体ごとねじられ、体落としで逆エビの体勢を取られてしまう…。

「ううっ! あぐっ…くはあーーーっ!」

 ぎりっ! ぐきっ、ぎしぎしぎしっ!

一転して腹ばいを強いられるルビーに…

 

「御免っ!」(えっ…!?)

 がばっ! ぐるんっ!

「きゃっ…あぐっ!」

 

レッグロックに気を取られ、ガードがおろそかになった上体を、レジェンド閃忍は見逃さなかった。

脚を放すと、虚を突かれたルビーの上半身にそのまま背中から蜘蛛絡み。

密着したハルカのふくよかなボディは歴戦で鍛え抜かれた筋力を爆発させ、ルビーの両脚股関節を極め直す。

「ぐううう〜〜っ!

 あっ、あああ〜〜!!」

さらに後ろ手に固めた右腕ごと、左腕一本でルビーの両腕の自由を奪うと…

 

 ちゃきっ。

「勝負あり、ですね。」

「あっ…ああっ…!!」

 

ハルカの業物、クナイ「シズク」が、ルビーの首元で鈍く光っていた。

 

「右脚は、壊されても戦えます。真に護るべきは急所ですよ。」

「はっ…はいっ…あぐっ、けほっ…!」

赤子の手をひねるも同然に、ADDDの爆発力を秘めた超昂戦士をその淫力で翻弄するハルカ。

 

でも、ルビーにはわかった。

この人は、それこそ片腕片脚を潰されてもなお諦めず、手負いのまま難敵を倒してきたのだ。

私には想像もつかないような死線を、何度も何度も越えて来た。だからこそ、その極限の境地を伝えようとしている…!

 

「ルビーさん…命のある限り、戦いなさい。

 指一本でも動くなら、どんな窮地でも逆転勝利を信じて立ち上がるの。

 さもなくば、貴女が護りたいと願う人々が苦しみ、嘆き悲しむのですから…!」

「は…はいっ! ハルカさん、もう一本、お願いしますっ!」

 

……

 

時間にして数十分間、ハルカは戦場の旋風となり、駆け続けた。

紅蓮の超昂戦士は疾風に呑まれ、迅雷にその身を撃たれ、幾度も幾度も冷たい床に這いつくばった。

持ち前のガッツで起き上がるたびに、その右脚を…刈り落とされ、縦に横に極められ、締め上げられた。

脚を取られまいと怯もうものなら、腕を、背中を、首を取られ、さらに酷い責め苦を受けた。

 

 どさっ。

(……。)

もう何十度目のダウンか、見守るトキサダも数えるのを止めていた。

 

 ぴくん。…どくん。どくっ。

「立ちなさい、エスカ・ルビー。

 貴女が立たなければ、護りたい人たちが、アルダークの手に堕ちるのですよ。」

「……!!」

 

極限の、最果ての死地で、新人超昂戦士は…。

 

「…イヤ…だ…!」

 

瞳は虚ろ、頬は汗とも涎とも涙ともつかぬ雫でどろどろに汚れ、戦闘服はクナイと落雷と絞め技でぼろ雑巾。

それでも、エスカ・ルビーは…

翠の瞳の奥に僅かな炎を灯し、両手のグローブに最後の力を振り絞る。

 

「もう…もう、……」

 

最強閃忍に虐め抜かれた右脚は、ずきずきと悲鳴を上げ、戦士に降参を哀願する。

フル回転のADDDでも歯が立たない眼前の敵に、本能が畏怖のシグナルを灯す。

 

だが。

 

(あんな…思いは…

 誰にも…させない…。

 誰も…悲しませないっ…!)

 

日常を踏みにじる侵略者に、何も抵抗できなかった。

暴力にさらされ、負傷し、泣き叫び、ある者は怪人と化した。

許せないと怒っても、ひ弱な自分では、何一つ止められなかった。

 

逃げるしか、なかった。

それが、悔しかった。

逃げたくなくて、力を求めた。

 

それなのに、私は…エスカ・ルビーになれたのに、また逃げるのか。

脚をかばって、許せない侵略者たちに心で屈服するのか…?!

 

(……~~っ。)

「…ルビーさん…。」

(……~~~っっ…!!)

 

「…あ~っ…。

 …ああ~っ…。」

 

 ふらっ……!

 

手負いの野獣のように、ルビーは静かにいななく。

立ち上がるも、ファイティングポーズなど取れず、両腕はだらりと垂れ下がる。

焦点の定まらぬ両瞳、荒ぶる呼吸、とっくに限界突破した心臓の拍動。

 

「………あああああーーーーーーっっっ!!!」

 

 ぞくっ!!

(ルビーさんっ…!) 

その時、ハルカの背筋にほとばしった戦慄は。

かつてノロイに相対したときのそれさえ彷彿させる、野性の恐怖。

 

「ストライクーーーーッッ!!」

 だだだだだだだだだっっ!!

 びしゅっ、どしゅっ!!…ばっ。

「エスカレーショオオオーーーンッッッ!!!」

 

 どごおおおおっっっ!!!

「くうっ…!!」

 

 

 どすっ。

「あうっ…!」…どさっ。

「ふう…危なかったです…。」

 

ルビー渾身のストライク・エスカレーションは…無念にもすんでのところでハルカに躱されていた。

全てを吐き出した抜け殻のルビーは、ハルカの当て身一撃で脆く沈んだ。

 

「ルビーっ!」

タオルを投げ込んだ直後のセコンドのように、トキサダが敢闘した新人超昂戦士へと駆け寄る。

起こしてメディカルルームへ担ぎ込もうと右肩を差し入れるトキサダを制止し、ハルカは反対側からルビーを抱き起こす。

 

「トキサダ様…お気づきですか?」

「ああ、ルビーはもう、大丈夫だ。」

 

最後の一撃、ルビー渾身の必殺技は…

爆弾の右脚で、一切かばうことなく全力でハルカに振り下ろされた。

 

「…ありがとう、ハルカ。」

「想破だけじゃない…トキサダ様の戦士たちにも、私が伝えられることがあるのですね。」

 すっ。

「この子は…エスカ・ルビーは、きっともっと強くなります。私とは…私たちとは違う強さを備えた、未来の私たちの希望を担う戦士に…!」

 

その言葉通り、やがて世界の危機を救うことになるルーキー超昂戦士、エスカ・ルビー。

その今持てる力の全てを引き出したレジェンド閃忍は、殊勲を讃えるようにルビーを抱きかかえ、メディカルルームへ運ぶ。

そんなハルカから最大の賛辞を贈られたことを、ルビー本人だけが知らない。




作者です。前話投稿から2週間のブランクを空けてしまいました。
最終話をどう膨らませるか、怖じ気づいてしまいまして…苦悩してました。
※その割には、アリスソフト放送局への投稿に精が出てましたけどね。

こちらの第3話も、2年前にポストしたリメイク前バージョンは、単にトキサダがアカリを説き伏せ、トラウマ克服の修行で勇気を甦らせる、という淡泊な展開。それを何とか色濃くしたくて、レジェンド2号・みんな大好きハルカさんにご登場願いました。
そしてさあ最終話…ですが、ポストするのは数日先の予定です。やっと書く勇気や気力が戻ってきたばかりで…。
ともあれ、秋もたけなわ、超昂大戦は4周年目前。
X投稿も含めて、また初心に返って頑張ります。ペースアップ…できるかな?
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