超昂大戦SS 翔び上がれルビー、復活の右脚! 悪夢の過去と敗北の涙を超えて   作:環 藍河

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第4話 甦れ、紅蓮の光! 炎の勇者、ルビー凱旋!

ビーッ、ビーッ、ビーッ!

「敵コマンダー、さらに出現! ポイントF−3、繁華街です!」

「くっ…波状攻撃か…!」

 

ハルカの特訓から間もなく、アルダークの破壊活動が昨日に続き再び始まる。

戦士不足のダイビートをあざ笑うかのように、広範囲に分散攻撃を仕掛けるアルダーク。

閃忍を、地上神騎を、レジェンドたちを逐次出動させ、残るは…

 

〘若頭領、出撃命令を下さい! 私一人でも、破壊活動を遅延させることくらいはできます!〙

「サファイア…」

 

ルビーは特訓で精根尽き果て、そもそもエスカ・ペアは凍結中。

ルーキー超昂戦士を単独で出撃させるのはリスクが高すぎる。

「ダメよ! 向こうの狙いはエスカ・ペアを叩くこと…。

 敵の次の狙いはサファイア…あなたなのよ!」

「ああ…奴らの布陣は君をおびき出すため。このまま出撃させたら思うつぼだ。」

 

〘…お言葉ですが、若頭領。

 我々は、戦力を温存できる状況ではありません。〙

(……!)

既に出撃した戦士たちは、量を頼むアルダークの軍勢に一進一退…むしろ劣勢だった。

 

〘お願いします! 今日戦えないならば、私が超昂戦士になった意味が無い!〙

「…わかった。サファイア、退きどころを間違えるなよ。」

「御意!」

 

……

 

「ぐははははっ、やはりルビーは再起不能かあ!? 無様だなあ!」

「黙れ! 貴様ごときにルビーが出るまでもない!

 お前たちの狼藉、このエスカ・サファイアが止めてみせる!」

「ハッ、その減らず口、このサファイア・シフトを見ても、まだ叩けるかあ!?」

 

ざざっ。ざざざっ!

「なっ…!」

 

「かかれっ!」

「〔[〈ブーっ!!!〉]〕」

「滅っ!」「滅滅っ!!」

 

コマンダーの合図で現れたフーマン部隊と滅忍部隊。

フーマンは、重装備の耐火服とボンベ…火炎放射器。

さらに滅忍部隊が四散し、火遁の術で繁華街に火を放つ。

 

「…私一人を潰すために、街を焦土と化すというのか…! 卑劣な…!!」

 

既に戦場は火の手が四方に上がり、サファイアのスタミナを急激に奪い取る。

「くっ…ううっ…!」

 

……

 

指令室では長官と副官が、ぎりぎりの判断を迫られる。

「ポイントF-3防衛中のエスカ・サファイア、バイタル急速に低下中! 危険です!」

「トキサダ、撤退を判断して!」

「…なぜだ…?」

「…えっ?」

「サファイアは、こんな無茶をする奴じゃ…!」

 

〘ふははあっ! どうしたサファイア、まだまだ炎のおかわりはあるぞお〜っ!〙

 ごおおおおおおっ!! ぶしゅうううううっっ!!!

『うああっ! ぐうう〜〜〜っ!!』

 

「トキサダっ!!」

(くっ…!!)

 

『神騎スケートル…撤退するっス…!』

《ビートバイカー・マッハ、帰投します…アニキ、すまねえっ…!》

全ての戦士・全ての閃忍・全ての地上神騎が苦戦し、各ポイントでの苦闘を余儀なくされ、戦闘不能となった超昂戦士たちが一人、また一人と撤退を告げる。

 

だが…とっくに撤退しておかしくないほどのダメージを全身に刻まれながら…

孤立無援のエスカ・サファイアは、獅子奮迅の大立ち回りを続けていた。

「サファイア! 撤退しろ!」

たまらずトキサダが撤退を指示。だが…!

 

『ダメです! 街を…ルビーの街を、焼け跡には…させないっ…!』

「なっ…!!」

サファイアはブリザード・エスカレーションで、敵を狙うだけでなく、上がる火の手を喰い止める軌道を描いていた。

「サファイア! 街の保全より、君の安全が優先だ! 繰り返す、撤退しろ!」

『まだです! 私はまだっ…! ぐっ、ぐうう〜〜〜っ!!』

「っ…!!」

 

(サファイア…まさか、君は…?!)

想破上弦衆で幼少のみぎりから心技体を磨き、閃忍候補として心得を叩き込まれたヒビキ。

戦場においても沈着冷静を絶対とし、決して私情を挟まず刃を握る。

…そのヒビキが、いや、エスカ・サファイアが。

激情のままに、焦土に仁王立ちで熱く立ち回る。

 

(逃げないっ…!

 私には…、逃げる資格なんか、無いんだっ…!)

 

 相棒の古傷をえぐり、闘志を跡形も無く砕き潰した。

 体も心もずたぼろの相棒に、戦力外を通告し、手酷く突き放した。

 トラウマから逃げるな、克服するんだと冷酷に吐き捨てた。

 

(私こそ…この戦から、逃げていたのに…!

 戦う勇気をくれたルビーに、先輩面で大口を叩いて…

 街一つ護れないくせに…尻尾を巻いて退くなんて、無様極まるっ…!)

 

その自責の念、呵責に身を焦がし、自らを許さない。

不退転の覚悟は、サファイアの贖罪だった。

 

……

 

「サファイアっ! サファイアあああっ!!」

「もう…もう、ダメですっ!」

 

「長官っ!!」

「!?」

 

司令室に突如響く、トキサダの不意を衝く声。その主は…

 

「アカリっ!」

「アカリちゃんっ!? ダメよっ、そんなぼろぼろの身体でっ!」

ハルカの迅雷に、手刀に、絞め技に幾度となく一敗地にまみれたアカリ。

メディカルルームで最高の介抱を受けるも、いまだ回復とは程遠いが…。

 

 きっ。

 

制止するユーノに抗う、アカリの強い眼光。

返す目線をトキサダへぶつけ、アカリは志願する。

「長官! 私に…エスカ・ルビーに、出撃命令を下さい!」

 

トキサダは、アカリの両眼を見据え、諭すように問う。

「アカリ…敵は大軍だ。

 そして、サファイアだけじゃなく、ルビーを…君を打倒するための作戦を練ってきた連中だ。

 卑劣な手で君を狙い、今度こそ君を再起不能に打ち砕こうと襲ってくるぞ。」

 

コマンダーは、フーマンは、滅忍は…ハルカのように寸止めなどするはずはない。

ルビーの脚を砕き、両腕をへし折り、ボディを、顎を、何度も撃ち抜き…。

今度こそ新米超昂戦士を戦闘不能に堕とし、イデアの壁に攫って見せしめに…!

屈服。蹂躙。陵辱。

今度こそ、立ち上がれなくなるかも、しれない。

 

「アカリ…それでも、行くのか?」

 

トキサダの投げた問いを反芻するように、ギュッと両眼を閉じるアカリ。

言葉の意味を…また負けたときの痛さと恐怖、悔しさを噛み締め…!

 

しかし、正面から受け止めて、力強く答える。

「…行きます! 全力で、ガッツで!」

 

瞳の奥の、覚悟と決意の輝きを確かめて。

「…よし。」

満を持し、その闘志を信じて。

トキサダは司令を出す。

「超昂戦士エスカ・ルビー! 出撃だ!」

「了解!」

 

……

 

「う…っ、かは…っ…!」

灼熱地獄に立ちすくむサファイア。

もはやその瞳に光は失われ、全ての水分を汗と噴き出した五体は、辛うじてその強靭な忍びの精神力で、僅かに重力に抗うのみ。

 

「ぎゃはははあーーーーっ!! 見よ、市民ども!

 もはやサファイアも虫の息! これがエスカ・ペアの無様な最期だあーーーっ!!」

「〔[〈ブブッブーっ!!!〉]〕」

「滅っ!」「滅、滅ーっ!!」

 

敵の下卑た歓喜が、燃え上がる繁華街に響く。

 

「どおれ、最後の仕上げと行こうか。滅忍!」

じゃららっ! がっ!

「が…ぐはあっ!」

コマンダーの合図で、前後から滅忍三人が分銅鎖を投げ、サファイアを捕縛。

 

「ああっ! ぐうう〜〜〜っ!」

一本はサファイアの首を背後から絡め取り。

二本目の鎖は上半身をたすきがけに縛り、サファイアの乳房を無慈悲に締め上げ。

三本目はチェストから太ももに雁字搦めに喰らいつき、プリーツスカートごとサファイアの最後の抵抗を引きちぎる…!

 

「そらっ、フーマンども、捕まえろお!」

〔[〈ブブブーっ!!!〉]〕

 

(是非も…無し…!)

 

引き時を、誤ったか…。

このまま私は拉致され、凌辱されるのだろう。

もはや抗う力も無く…迫るフーマン軍団に、観念し目をつぶるサファイア。

 

 しゅっ。

 

ドガッ、バシイイッ!

〔[〈ブブブ〜〜っ!!!〉]〕

 

五体、いや六体と将棋倒しに吹き飛ぶフーマン。

蒼の戦士の絶望を、たった一閃で希望に変えるジャンピングソバットが、真紅の軌跡を描いて炸裂する。

 

「やああっ! はあっ!!」

さらに閃光は、鏡に跳ね返されたように鋭角反転。

延髄斬りに裏拳、後ろ回し蹴り。

ビリヤードのトリックショットのごとく、真っ赤な弾丸は分銅鎖を引く滅忍たちのベクトルを打ち砕き、瞬く間に三人を沈める。

 

燃え盛る市街地の炎に包まれ、大地に立つ紅き戦士。

「紅蓮の光は不滅の炎! 超昂戦士エスカ・ルビー、悪の現場に再び参上!」

 

「ル…ルビー…!? お前…」

「うん、もう…大丈夫だよっ!」

 

きっ。

きびすを返し、コマンダー達を見据えるルビー。

「私は…もう、負けないっ!」

「はははーーっ! 昨日の今日で何が変わったと言うのだあ?!

 またその右脚、砕かれる覚悟はできたんだろうなあ?!」

 

 びくっ。

 

薄れる意識の中でも、サファイアは見逃さなかった。

気丈に気を吐く相棒が、コマンダーの挑発にたじろぐ一瞬を…。

(ルビー…やっぱり、ダメなのか…?)

 

「…け、ない…!」

(えっ…?)

「負けるもんかっ! たとえこの脚を壊されたって…!

 この街を…みんなを苦しめるあなたたちになんか…絶対に負けないっ!」

 

やっと、わかった。

敗北を知り、それでも怖さを飲み込んで立ち向かう、エスカレイヤーたちの決意を。

怖い。逃げたい。逃げ出したい。

でも、もしもここで逃げたら…もう私は戦えない。

護りたい人々の前で…信じてくれた仲間の前で…逃げた私を、私は二度と許せなくなるから…!

 

(ルビー…見つけたな…。)

その瞳に宿した、深く強い覚悟を確かめ。

「ああっ…!」

 

 どさっ。

 

遂に眼から焦点を失い、膝から、肩から、屹立するための全ての力を奪われ、

エスカ・サファイアは前のめりに、地に堕ちた。

だが、その表情は決して絶望ではなく、ルビーへの全幅の信頼と安堵をたたえる。

(ルビー…後を任せて、いいんだな…?)

 

……。

(すうっ…、はあああ……っ…!)

精神を集中させ、呼吸を整え。

コマンダーの挑発に熱く火照った心を冷ますと…

「エスカ・ルビー、援護に入ります!」

自らを鼓舞するように声を張り上げ、敵陣へダッシュで吶喊する。

 

「フーマンども、滅忍ども! ルビーシフトだあ!」

狙いはひたすら、ルビーの右脚。

白兵戦を挑むフーマンはローキック狙い。

鉤爪や刀、分銅鎖を持つ者も、右脚を刈り取ろうと斬りつける軌道が円弧を描く。

マシンガンを持つ者は、ルビーのダッシュ・ジャンプ・キックの全てを追いかけ、足首をパルシオンごと貫く射線を作る。

 

だが。

「はあああーーっ!! やあっ!」

その全てが空回りする。

 

フーマンのキックはことごとく先読みされ、

ハイキックが。ストレートが。掌底が。

逆にルビーのカウンターアタックが、これでもかと決まっていく。

 

滅忍の刃と暗器も同様。ルビーの背後を取ろうとも、後ろ回し蹴りや裏拳、エルボーで鎮圧され、あるいはかわされて同士討ち。

(そんな…こいつは後ろにも眼が付いているとでも…!?)

うろたえる滅忍たち。

 

(こんなの…ハルカさんの、縦横無尽の剣戟に比べたらっ…!)

繰り返す模擬戦のゲームオーバーのたび、新米戦士の動体視力はみるみる鍛えられていった。

百戦錬磨のレジェンド閃忍が繰り出す、背後から、死角から鋭く狙う獲物の仕留め方を、その身で骨の髄まで味わったルビー。

小一時間に過ぎないその実践は…四道封者たちやノロイと繰り広げた死闘を生き延びた、戦士の心技体を凝縮した一挙手一投足の積み重ね。

そして、そのメッセージを一つ一つ、乾いた砂に水を注ぐように吸い上げたルビーは…何百時間もの戦士育成プログラムを受けるよりも顕著に、戦士として急成長を遂げていた。

 

「はあっ! やあっ! そこだあっ!」

 がばっ、びしゅっ! ばしいっ!

今やルビーは敵の気配を如実に察知し、前面の兵士の反応からバックアタックのタイミングも軌道も読み切る。

「ブブ~~っ!」「無念っ…!」「がふっ…!」

収まる気配を見せない炎の中、続々とフーマンが、滅忍が、炎に焚き木をくべるようにルビーに薙ぎ倒されていく。

一体、また一体。

フーマンを、そして滅忍を屠るごとに、ルビーの拳が、肘が、そして蹴りが、鋭さを加速させていく。

その瞬発力にフーマンとコマンダーの銃は追いつかず、何十発、何百発もの弾丸も、ことごとくアスファルトをはじき、虚空に吸い込まれるばかり。

 

「あ…あああっ…!」

 

何故だ。昨日は頭脳プレーでルビー最強の武器・ストライク・エスカレーションを封じ、右脚を間違いなく打ち砕いた。

それをたった一日足らずで…!

しかも今回は満を持しての全戦力投入。サファイアごと粉砕し、二度と歯向かえなくなるまで、エスカ・ルビーを完膚なきまでに屈服させるはずが…!

 

昨日と同様の死んだふり作戦を取ろうにも、起き上がり、自分の盾となる気力を残したフーマンは皆無。

「…ちっ、畜生めえっ!!」

 

 がばっ!

 

コマンダーが懐から取り出したのは、ニードル一体型注射器。

(…よもや、コイツを使う羽目になるとは…!)

足下に倒れるフーマンのうち、手頃な一体の首根っこを掴み上げると、首筋に注射器を遠慮なく突き立てる。

ぶすっ! …ぐじゅっ。ぐじゅっ。

{ブッ!? ブブブ〜〜っ!!!}

「やかましいっ! 捨て身でルビーを潰せえ!」

{ブオオオオ〜〜ッ!! …ブ…ッ……}

びくっ、びくっ、どくんっ。

抵抗するフーマンが、激しい悲鳴と痙攣の後、失神したと見えた、次の瞬間。

 

ぐぼぼぼぼぼぼぼぼーーーおっ!! ばりいいんっ!!

《{[ブブブグビゴブルベブッ、ブブーーーッ!!]}》

「…なっ、何ですかっ?!」

フーマンの全身が猛烈な細胞増殖を始め、防火服を膨張、破裂させる。

殻を破り現れたのは、薬に冒された筋骨隆々のマキシマボディ。

 

「があーーっ、はっはっはあーーっ!! こいつはプラナリアベースのESセル配合、フーマンの元の体組織を拡大再生して、もとの6倍の筋力を発揮する! ルビー、こいつがお前の処刑執行人だあっ!」

 

昨日はフーマン4体に阻まれたストライク・エスカレーション。

数字通りなら、この1体で今日もルビーを跳ね返せる計算だ…!

「さあさあさあ、撃ってみろよ、昨日我らの前に敗れ去った、お前の必殺技をなあっ!!」

 

 ぴたっ。

 すうっ……はああっ……!

 

…コマンダーの挑発に乗ってか乗らずか。

 

「全力、フルパワーっ!!」

 どしゅっ! びしゅっ!!

 

再び呼吸を整えたルビーは、助走をつけ、ドーピングで醜く膨れ上がるフーマン目掛け、ハイキックを2発。

決めざまに反転し、背面跳びで踏み切る。

「ストライクーーーっ!」

空を半周する、勢いを乗せた右脚。

そこにパルシオンのブーストを乗せ、フーマンの脳天を狙う一撃は。

「エスカレーションっ!!」

 

 がっ…ばしいいっっ!!

「あああーーーっ!!」

 

バケモノじみたフーマンの両手で、敢えなくガードされ、弾き返される。

「ぐははあーーっ! くたばれっ、エスカ・ルビーいいっ!」

喜々として鞭を振り上げるコマンダー。

(ダ…ダメだっ、ルビーっ!!)

絶望に襲われたサファイアが、息を呑む。

 

ここまでは、昨日と全く同じ…だが。

 

「…っ!?」

コマンダーが気づく。

空中に浮くルビーの眼は冷静に、フーマンとコマンダーを捉え、ガードを、そして反撃を狙っている…!

 

(必殺技は…撃ちっぱなしじゃダメなんだ…!

 返されることも想定して、次に備えなきゃ…!)

 

それは、ハルカを相手に必殺技を撃って撃って撃ちまくり、そしてかわされて反撃を受け続け、必殺技と自信を封じられた経験。

破られては考え、敗因を身体で覚え、繰り返し繰り返し地に這いつくばった末に、ルビーが会得した教訓だった。

最強の武器を壊される悔しさを何度も噛み締め、その果てにルビーが見つけたその心得は、彼女が戦士でいる限り、ずっと心に刻まれ続けることだろう。

 

ターゲットだけを…ドーピングフーマンだけを見てはいけない。

戦場全体を冷静に俯瞰できる今なら、次が読める。

弾き返された自分を狙うコマンダー。

やられないよう、低空で跳ね返り、コマンダーの鞭の軌道にドーピングフーマンを重ねて追撃を防ぐ。

 

 すたっ。

(一度で効かなきゃ…何度だって!)

 

再び大地を蹴り、フーマンめがけ、

正拳、ミドルキック、エルボー。

連撃でタイミングを整え、

「ガッツで、行きますっ! 全力っ、フルパワーっ!」

ルビーの両の瞳に、翠の炎が灯る。

 

「ストライク〜っ、エスカレーション!」

「ブグッ…、ブブ〜〜ッ!!」

ルビーの一撃目のダメージか、薬の副作用か。

フーマンの両腕は細胞レベルでみるみるうちに自死を始め、もはや腐りかけ。

ルビーの磨き抜かれた一閃を阻む力は、そこに無かった。

 

 どぐっ!

 

昨日ガードレールをねじ曲げた右足が、今日はガードの両腕ごと、ピンポイントでフーマンの脳天を陥没させる。

「ブルヲゴゲヴァ〜〜〜ッ!!」

断末魔を残し、爆散するフーマン。

 

「あ…あがあっ…そんなあっ……!!」

「さあ、あとはあなた一人ですっ!」

「ひっ…!!」

 

 ざっ…だだだだだだだだっ!

 

隠し球のドーピングフーマンも屠られ、もはや手札を全て喪ったコマンダーは孤立無援。

「ち…畜生おおおおっっ!!」

戦意喪失し、狼狽えながら敗走を選択したが…

 

「逃がしませんっ! ガッツ全開っ!!」

 

  ドガーーーンっ!

 

「ショ〜〜テ〜〜〜ン!!」

 

今日3発目のストライク・エスカレーションがコマンダーを軍帽ごと叩き潰した。

雪辱を果たす、ルビー会心の一撃。

 

「正義の…勝利ですっ!!」

 わああああーーーーーっ!!!

 

その両手には、渾身の握り拳。

ルビーの勝利宣言が、街を希望で包んだ。

 

「ああっ…ルビー…、やったな…!」

「サファイア!」

僅かに回復したサファイアの呼びかけに、ルビーがVサインで応える。

 

「…ありがとう、サファイアのおかげで、私…逃げずに戦えたよ…!」

 

…だが。

「…ルビー、その足…マズいぞ。」

「えっ…? …あれっ?」

勝利を決めるストライク・エスカレーションを堂々と撃ち抜いた、ルビーの誇り高き右脚は…

ブーツがぱんぱんにはち切れんほど、膨らんでいた。

 

「…それ、このあと滅茶苦茶、痛くなる腫れ方だ。…御愁傷様。」

「ええっ! …あれっ…そういえば、痛みが、今…来た、かも…っ?」

 

一呼吸置いた、次の瞬間。

 

 ずぐんっ!!!

「〜〜〜っっっ!!!」

 

今度こそとばかりに襲う激痛に、勝利の余韻が、一転して苦痛の拷問と化す。

 

「あ…あああ~~っっ!! ひぎいっ、いっ、痛っ…!

 ……ううう~~~っっっ!!」

 

しゃがみ込み、声を殺して半泣きするルビー。

(エスカ・ルビー…凄いと思ったけど…)

(あれじゃ、まだ安心はできないなあ…)

(ダイビートって、大丈夫なのか…?)

遠巻きに、あるいはネットで戦いを眺める市民。

昨日より懸念は和らいだようだが、まだまだ不安一掃とはいかないようである。

 

その中に…

 

「うげえ〜っ…あんなズタボロでカッコ悪いの、ヒーローじゃないわよ…!

 超昂戦士エスカ・ルビー…? ご大層に…名前負けもいいところよっ!!

 あああ〜っ!!! いっそズバッと、私にヒーローの力が降りてきさえすれば!

 ダイビートなんて、とっとと引き立て役に引きずり降ろすのにい!」

 

その中の一人の少女が、間もなく魔力を得て、ダイビートに嵐を呼ぶのは、今はまだ蛇足の話。

 

……

「…なななっ、何よこの数字いいいっ!?」

同時刻、ダイビート本部、ラボ。

「ドーピングフーマンにブチかましたストライク・エスカレーション…

 攻撃力が1.5倍にジャンプアップしてるじゃないのよーーーっ!?」

 

ルビーは右脚を捻挫していた。

それは、ためらい無く必殺技を何度も撃ち抜き、ルビーが心の古傷を完全払拭した証。

だが同時に、ルビーの必殺技がさやかの想定を上回る攻撃力を叩き出した結果でもあった。

(…そりゃあ、防御力が追いつかないわけよねぇ…。

 ルビーの覚醒ストライク・エスカレーション+(仮称)、味方ながら恐るべし…!)

 

この結果を解析し、さやかはこの少し後に、超昂戦士たちの能力を次々に覚醒させることに成功する。

 

……

まだ、そこかしこが燃えくすぶる繁華街に、もうびくとも動けない超昂戦士が二人、人目もはばからずうずくまり、あるいは這いつくばる。

「…ルビー、済まないが、私ももうお前を担いで基地まで運ぶ体力は無い。

 間もなく搬送車が来るから、辛抱だぞ、相棒。」

「あはは…エスカ・ペア、締まらない再結成だね…!」

「…全くだ。次は最後までビシッと決めてくれよ。」

「…うん、なるべく、ガッツで…!」

 

今はカッコ悪く、強がりながら痛む脚をかばうエスカ・ルビー。

だが、真の勇気と覚悟、そして真の実力に目覚めたこの日を転機に、紅蓮の超昂戦士エスカ・ルビーの活躍が始まる。

そして、更に二人の仲間を加えたエスカ・チームは、このあと遂に誰もが認める人類の救世主となる。

その話は公式記録に詳しく叙述され、諸君の記憶にも新しいことだろう。

 

 

公式には語り継がれないダイビートとエスカ・チームの物語がある。

それらは市民の噂話や空想、あるいはデマゴーグと諸説あるが…。

街のどこかで語り継がれ、あるいは電脳世界の海をたゆたう、彼女たちの英雄譚。

今後もこの場では、そんな物語を蒐集し、可能な限り記録保全していく。




はい、作者の環藍河です。
昨日第3話(pixiv様で2週間前に先行投稿済)をやっとポストし、舌の根も乾かぬうちに第4話はハーメルン様(ここ)とpixiv様に同時投稿となりました。
リメイク前では描写しなかったルビーとサファイアの心情を付け足しましたが…白状します。
先月(2024年9月)の「ALICEの館35」に参加しまして。
ステージ企画の生アフレコ、トパーズ初登場回でいたく感動を呼び覚まされた作者が、ルビーの名ゼリフ「私…逃げちゃダメなときに逃げないのが…ヒーローだって思うから…!」に繋げたくなりました。
…これってパクリ…ではないですよね…?

ともあれ、まだまだ自分勝手に、超昂大戦で自分が感動した何か、楽しんだ何かを織り込めるように2次創作を続けて参ります。
投稿ペースの面では、読者様をがっかりさせるかもしれませんが…なるべくそうならないように頑張ります。
今回もお読みいただきありがとうございました!
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