『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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ラッカー義勇兵団

 

―――星暦八七六年十二月五日

国境部からファルマリア周辺一帯を北上する第1師団への補給物資には珍しい″おまけ″が付属していた。

微妙に不揃いの隊列、揃いのバッジに小口径のレバーアクションカービンを背負い黒の軍服を身にまとった″人間″の集団だ。

 

 後にポストマンと呼称された彼らはセンチュリースターの鉄道王ホイットフィールドに雇われた探偵たちで、アラン・ラッカーというグラスト出身の紳士に率いられた義勇兵(ボランティア)であった。

 

 内戦で余ったスピンセル・ライフルの在庫を背景に準軍事組織を作り上げられたラッカーが最初に請け負った大口の案件だ。

 

 それまでは各地の鉄道警備やキャラバンの警備、労働者暴動対策の用心棒、そういったしけた仕事で稼いでいた中小業者であったが、傭兵でなく探偵と名乗っていた事で小さく話題になっていた業者だった。それがどういう訳か各国を先駆けて義勇兵としてエルフィンドの紛争に駆け付けたというので当時センチュリースターでは話題になったものだ。

 

 当初、義勇兵の受け入れにはかなりの反発があった。なにせ使う武器も違えば言葉も強い訛りがあり、人によってはそもそ言語が通じない。食べる量も違えば規律もまちまち、参謀本部は頭を抱えることになった。当時の政治意図はともかくとして観戦武官はともかくとして義勇兵(ボランティア)がこの段階で部隊編成に組み込まれる想定がなかったというのもあるだろう。

 

 しかし、幸運なことに彼らのある特徴が幸運にも一つの仕事を与える事になった。理由は単純明快だ、彼らの全てが軽騎兵だったからである。

 

 ラッカーのポストマン、彼の探偵たちは中隊規模で馬を持ち込んでいた。大陸東西をカービン片手に駆けずり回る彼らにとって馬は必需品であり相棒であった。アンファウグリア旅団には及ばないまでもその身軽さは前線の一歩後ろで重宝された。単純な機動力もそうだが彼らが当時にしては幸運にも人種意識の薄い特殊な集団であった事も影響したという。

 

 一方で彼らが前線に出張ることは稀でだった。これも理由は簡単で彼らの扱ったスピンセルの弾薬がオルクセン軍の使う小銃とは違ったからだ。

 

 補給が困難であるが護身用としては過剰な火力を持った彼らは軽快な足回りを活かして補給線の維持や伝令としてこき使われた。ついたあだ名がポストマンだ。

 

 彼らは西部よりはまし、センチュリースターの荒野と比べれば天国だと嘯いて小隊規模で各軍、各師団に配置されこき使われた。

 

 東で怪我人が出ればエリクサーを届け、西で弾が不足すればキャラバンを伴って弾薬を届けた。その彼らが幸か不幸かエルフたちと銃火を交えた戦いが2回あった。ファスリン峠とネニングだ。

 

 センチュリースター義勇軍第一中隊第二小隊を率いたキュスター少尉という男がいた。ネイサン・アームストロング・キュスター少尉、彼は内戦で名を馳せ、そして落ちぶれた軍人であった。

 食う為にラッカーのもとで副官として重宝され、当時ファスリン峠でアンファウグリア旅団が戦場清掃をしていた時に弾薬を配達したポストマンたちの一人であった。

 

彼の小隊はアンファウグリア旅団の惨状を見て小隊の面々とともに偵察任務に志願したのだが運悪く線路を破壊しようとしたマルローリエン支隊の工兵との遭遇戦となった。彼は列車強盗と渡り合った熟練の武装探偵であり2個小隊の工兵相手によく戦ったが彼を残して小隊は壊滅した。

 

 彼の正体はよく戦ったが軽装で半分以上の装備をアンファウグリア旅団に融通した状態の小隊では魔力通信で連携したエルフィンドの最精鋭には歯が立たなかった。唯一それでも彼らの目標であった線路の破壊を阻止し一定の被害を与えたことでキュスター少尉は勲章を受け、オルクセンでは数少ない外国人での恩給受給者としての資格を手に入れた。

 

 彼の屈辱をラッカーが晴らすのは暫くあと、ネニング平原の戦い後のことだ。ユーダリル山の戦闘で鹵獲された十六門の追跡を成功させたのだ。彼らが武装探偵として適性通りの仕事をしたと言われればそれまでだが彼らはキュスターの屈辱を晴らすのだと意気込み、二週間の追跡劇の末に砲を確保した。

 

 義勇兵(ボランティア)たちは砲を輸送する一個中隊の守備隊を強襲、後年活躍が映画化され話題となった。

 

 ラッカーは戦後に探偵社で商流貨物部門を設立、今もオルクセン国内でその痕跡を残す。

 

 さて、そんな義勇兵たちだがもう一つ、戦後彼らの多くが遭遇した不幸があった。エリクシル剤の副作用を受けた(記録上)最初の兵士たちであったという事だ。

 

 参戦時一個増強中隊だったポストマンたちは二度の戦闘を経て一個中隊182名が帰還、当時はエリクシル剤の効果を多いに喧伝したがこれがいけなかった。の大戦に至るまでに戦中の負傷兵であった者達の多くが不審死をしているのだ。

 

 これに気がついたラッカーはその経過と死因をまとめ後年オルクセン軍部に秘密文章として送付、副作用の可能性を示唆していた。

 

 ラッカーはこれを律儀にも業務上の守秘義務のためと国外に漏らすことなく、軍部としてもサンプル数の少なさから要検証事項として記録されるにとどまり後の大戦の悲劇を招いたと要因の一つとされた。

 

だが晩年ラッカーはインタビューの中でこう残している。

 

 「我々は文明と幻想の狭間を駆けずり回った最後の荒くれ者たちであった。今や我らもその幻想の中で消えつつある、だが我々が逝っても彼らは記憶を続けるのだ、我らを送りつけた鉄道王と、我らを使ったグスタフ王、二人の幻想に栄光あれ」

 

 

ロング著 「ガンマンたちの軌跡」より

 




二次創作でちょっとあれこれ準備をしたら実射検証で3桁とんでいきました。
karkaroffです、皆々様どうぞよろしくお願いいたします。
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