『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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ファスリン峠の戦い

―――星暦八七六年十二月七日/ファスリン峠/アラン・ラッカー

 

 キュスター少尉が追随していたシャドウ・エルフたちのアンファウグリア師団がエルフィンドのマルローリエンの騎兵集団を発見し迎撃戦に移行しようとしている旨の連絡が入ったのは十二月七日の事であった。

 

「とりあえず金で借りられる馬車をありったけかき集めてこい、総出で武器弾薬を運び込んでやれ。俺たちの時は迎撃戦で十分な弾がなくてひどい目に遭ったからな。」

 

 などといって酒をばらまいて稼いだ資金の一部を使ってエルフィンド規格の馬車を一個小隊分確保してくるとファルマリア港で滞留していた自前の酒に武器弾薬を積み込んで行動を開始した。

 

 この頃にはオルクセン側で用意されたものよりも質は落ちるものの夢見がちな投資家ども(スポンサーたちから)南北センチュリースターよりキャメロット経由で少量の物質的支援が到着し始めており、オルクセン軍の帳簿外の物資として砲弾まではいかずとも小火器用の弾薬、酒、コーヒーやタバコなどの届け物に、オルクセンから届いた手紙を添えて届ける事が出来るようになっていた。

 

 センチュリースター内乱を通ってきた彼からすると後方支援でうまい汁を啜って会社のブランドに箔がつけばそれでよい、ついでに小遣い稼ぎでもして負債を帳消しに出来ればラッキーだろう。

 

 などと考えていたことが戦後のインタビュー記事に残っており、戦火に直接かかわるよりも後方支援で自分たちの顔を広く覚えてもらうことにより情熱を注いでいたと語っている。

 

 

 とはいえ、戦わないための努力は惜しまず、彼は第一軍の司令部に許可を取り第一軍に随行していた手ごまを使って輸送シフトを形成、彼自身を含めたラッカー義勇兵団総出で物資の配達や扶桑社の後送に勤めた。

 

 そして戦闘に参加したがらなかった彼がこの戦闘で最初に戦闘に突っ込む羽目になった。8日の午後に差し掛かるかどうかの頃だ・午前中の戦闘が一時集束したその時を見計らい、ラッカーはキャラバン隊を率いて四六連隊の防御陣地に乗り込み途上、アンファウグリアの補給部で調達してきたコーヒーとパンに、港から運んできた弾薬の補給と負傷者の後送の為の積み下ろしを行っていた。

 

 今までの戦況がうまく行っていたこともあって気を抜いていたのがいけなかった。馬車に背中を預けて鼻歌交じりにスキットルから酒を含んでやろうかと懐に手を突っこんだ時だった。何処からか飛翔音が聞こえ、近くの漁師小屋の屋根をふっ飛ばした。

 

 ラッカーはその体制のせいで顔から地面に突っ込み、へっぴり腰で馬車の影に回り込む羽目になった。

 

「所長!そんなところ見られたらシャドウ・エルフのお姉さま方に笑われちまいますよ!」

 

 などと部下にはやし立てられながらもなんとか立ち上がり、よろめきながら御者席に設置してある12ゲージの弾帯と散弾銃に手を伸ばし、つっかえながらなんとか鹿撃ち弾を銃身に送り込む。

 

「野郎ども!いつものアウトローや先住民のくそ猿と変わらない相手だ!キャラバンを防御配置に固めろ!46連隊への圧力を少しでも減らしてやれ!俺たちの馬車は騎兵の連中から丸見えになる!目立つ的に群がってきたところでありったけぶち込んでやれ!」

 

 などと叫びながら馬車を移動させて「ワゴンサークル」を形成。馬を馬車で作ったバリケードの内側に避難させる。無謀な馬鹿を何人か馬車に配置して残りに隊列を組ませて遮蔽越しに射撃の準備を整える。現状指揮下にいるのは一個小隊、兵力というにはあまりにささやかな数だがそれでも自分の命令を聞く兵士としては上等だと思い込むしかなかった。

 

「俺たちは奴らにとっての本命じゃない!第一波を押し戻したら攻撃の負傷者を引き受けて下がるからそのつもりでいろ!」

 

 銃を握る指の先端に力が籠る。相手はセンチュリースターで滅び去った重装騎兵のクソ・アマゾネスどもだ。散弾銃で装甲は抜けないかもしれないが至近距離で弾薬を浴びせれば……

 

 段々と砲声が多くなり、それに伴って本命の騎兵が殺到してくる音が嫌でも聞こえてくる。

 

「全体、オークの射撃より少し遅らせるぞ!!狙え!センチュリースターのポストマンは凶悪だぞ!狙え!」

 

距離1000,まだ遠い、殆どが所有しているスピンセルはせいぜい500がいいところだ。待て、待て……土埃と泥の味がする口の中を何とか唾で濡らして平静を保つ。

 

800にさしかかりオルクセン軍の統制射撃が開始される。まだ俺たちの銃は届かない。火薬の暴力を伝える戦争音楽が各所で鳴り響き、つられそうになるのをこらえながらもう一息だけつばを飲み込む。辺りは煙で濛々としてくるがもう敵の姿がはっきりと見えてきた。そして……距離500

 

「ファイア!ファイア!全力で弾をぶち込め!俺たちは一個小隊だが打ち出せる弾は4倍だぞ!中隊火力の鉄量で追い返してやれ!」

 

 俺たちのスピンセルが火を噴く。熟練したガンスリンガーの分間18発の全力射撃。経費も貯蓄も無視した弾薬の浪費は幸いにも騎兵たちが馬車で作られたワゴンサークルのバリケードを崩させないだけの阻止力を発揮した。

 

 瞬く間に消費されていく弾薬にいくら経費が掛かっているか内心ひやひやしながらも、スピンセルの洗礼を切り抜けた一人の騎兵に12ゲージの散弾をまとめて叩き込む。R&Rのダブルバレルから同時発射された鹿撃ち用の大型散弾はマルローリエンの鎧を貫通するには若干力不足だが騎兵を馬から叩き落すには十分な火力を持っていた。

 

 装填する暇なく次の騎兵が押し寄せているのが目に入るとそのまま散弾銃から手を放しそのまま腰のリボルバーを引き抜く。騎兵の凶刃がサークルを打ち砕くその数舜手前で45口径の弾薬をありったけぶち込む。

 

およそ美人が発するとは思えない獣みたいな声をしながらも騎兵は馬から転げ落ち、突っ込んできた騎馬はそのまま俺の横を抜けて馬車に突っ込んでいき、馬車が大きく揺らす。ほぼ横倒しになりそうなほどになるが辛うじて内側の射手が馬車を押さえつけて事なきを得る。一瞬、騎兵の起こす暴力の流れが途切れたように騎兵たちとの距離があく。次が来るだろうが一瞬の間が出来た。

 

 

「撤収準備!物資の積み下ろしを現時点で中断し引き上げるぞ!馬車に積んだ弾薬箱はその場に遺棄!馬車に馬を繋げ!手の空いている奴は各陣地から負傷者をかき集めろ!ありったけ安全なところに運んでやるぞ!」

 

 自分のリボルバーを二つに折り、排莢と装填を済ませながら声を張り上げ、部下が駆け出すのを見て自分も46連隊の司令部に駆け込む。物資を遺棄した場所を伝えて負傷者を引き上げる旨をその場で打ち合わせる。合意が取れたところで場所を置いたワゴンサークルに撤収、そこから負傷者の集まり具合を確認して後送を開始した。

 

 意識せずにいつも通りに息を吐けたのは戦場から暫く離れてからだった。しかし、悪い事というのはたいてい続いて起きるものだ。報せが入ってきたのは負傷者を後送した翌日の事だった。

 

 キュスターがやらかした。

 

 

 




ラッカーズ・ボランティア書き始めて初めての戦闘描写となります。
楽しんでいただければ幸いです。

なお、この戦闘参加が第一話でふれられなかったのは公的資料上46連隊との共闘は単純に資料が残らなかったため、という設定です。ラッカーの小隊は四六連隊の陣地で負傷者の後送と支援物資の受け渡しをしていた旨のみが残った想定です。
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