『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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船荷と増援

 

港にバンジョーの楽し気な音が鳴り響く。センチュリースターから来た沖仲仕(ステベドア)たちが5弦のゴートバンジョーの音楽に合わせて歌いながら荷を運んでいく。軽やかな音色に突き動かされるかのように働く労働者たちは半ばやけくその様相で歌い、現実を逃避するように荷物を運んでいる。

 

 星暦八七七年初頭、オルクセンとエルフィンドの戦いがネニングを境に膠着状態に陥る中、海を挟んだ隣の大陸からは来る日も来る日も物資の山が送り続けられていた。缶詰に食べれる合板(ハードタック)、安酒にスパイス、シロップから油の類まで金儲けと宣伝を兼ねた品物は毎週のように海を越えてファルマリア港へと運び込まれていた。

 

その量たるや既に増援として送り込まれた人員を食いつぶしてなお人手が足りないほどで、現地民を金で雇ってなんとか回している状態であった。

 

 運び込むだけならなんとかなったが大変なのは配達業務よりも仕分けと検品の作業であった。魔法を使って奇跡的な速さで荷受けが出来るコボルトやドワーフたちと違い、センチュリースターから来た義勇兵団には従来通りの書類とコンテナ番号を突き合わせての泥臭い管理方法しかなく、また積み荷をより分けようにも雑多な品物がこれでもかと送り込まれている状況に検品を行う主計官たちは限界寸前であった。

 

 そんな状況だからか帳簿とコンテナの数が合わないことはたびたび発生し、特に缶詰とタバコのコンテナが”足りない”という事態がたびたび発生している有様であった。そして何故かしないで紛失したコンテナが発見され捕り物へと発展するという事も見受けられ在庫の帳尻を合わすためにファルマリア詰めのシフト外の義勇兵たちは本来の”武装探偵”としての業務に立ち返り、憲兵たちと協力して探し物をする羽目になった。

 

 これらの紛失品がエルフィンド軍までたどり着く事は稀であったが、それでも各地で定数外の酒やスパイスを加えた炭酸飲料が相場の陪以上の価格で出回る事がありそのたびに義勇兵団から人員が抽出された。

 

 この状況を変えるべく(正確には憲兵からの半ば命令に近い要請により)働かされた男がいた。療養中であったネイサン・キュスター少尉である。この頃、彼はエリクシル材の投与によりほぼ恢復状態に近く、戦場への復帰命令を待ちながらファルマリア港での主計官としての業務を行っていた。ラッカーは罰としての事務仕事をさせているつもりで彼を後方へと留め置いていたが、憲兵隊からの脅迫によってこの横流しを止めてまともな配達を行うための調査へと駆り出されたのである。

 

 キュスターは広報勤務の鬱憤をぶつけるかのように精力的に働いた。そもそもがセンチュリースター内戦では問題がありながらも優秀な指揮官としてもてはやされた男である、金と酒、無かったことになる物資を餌に情報を集めおよそ半月で夜半にコンテナを運び出していたエルフたちを捕らえると、エルフによるレジスタンス集団が形成されかけていることを報告、実質的な活動へと至る前に総司令部付きの憲兵はこれを防止する事に成功した。

 

 テロを未然に防いだ功績はオルクセン軍司令部より評価され、ラッカーはキュスターの前線復帰を認めざるを得ない状況へと追い込まれた。やらかした部下を抑えていたつもりが積極的な支援を行い活動を後押しせざるを得ない状況になったわけである。

 

 ラッカーは彼が前線に戻ることを非常に嫌がったが、一方でこの復帰が後に彼の命を救う結果になった為、後年ラッカーはこの出来事を非常に悔し気に語らされる羽目になったという。なにはともあれ、エルフィンド紛争の戦場はネニングへと移っていく事になる。

 

 




遅くなりましたが本日の投稿です。楽しんでいただければ幸いです。

港湾で歌われていた曲ですが、アルトリアとファルマリア港を行き来する人員を考えるのであれば
Hard Tack Come Again No More や Oh Susanna の替え歌のような歌がよく歌われていたのではないかと考えています。
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