『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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ロード・オブ・ネブラス

―――星暦八七六年四月/ネブラス近郊/ユーダリル山/アラン・ラッカー

 

 四月六日、ネニング平原方面での膠着状態の中でエルフィンド軍の攻勢の予兆に伴っての警戒が発令されると俺たち義勇兵団はあの小奇麗オークのグレーベンの火力による迎撃を支援する為に砲弾の運搬とそれに伴っての護衛任務に従事する事になった。

 

 

 この頃にもなるとラッカー義勇兵団は負傷兵の復帰と再編の結果一個中隊規模を回復しており、10人編成20単位の輸送隊によるフルシフトで第一軍団と第五軍団に砲弾を届ける体制を整える事に成功した。

 

あのやたら目ったら厳重に構築され、近づけば弾幕を浴びること間違いない強固な防衛陣地を支える資源だ。これさえ続けば攻勢をはねのけ続けられるだろうと意気揚々と運び始めたのが早朝である。しかしこの日の戦場は何かが違った。

 

 午前六時、ユーダリル山への輸送第一陣を率いていたラッカーは普段であれば受け入れの兵士たちが弾薬やラ補給物資と一緒に酒やたばこの”駄賃”目当てで集まってくるのだが、今日は冷や汗をかきながらオークたちが駆け足で馬車に集まってくるのである。

 

 普段の1.5倍速で物資の積み下ろしが行われるのだが、コボルトや兵士たちをなだめる士官の姿が見えない。早朝、余剰砲弾の追加が目的で砲弾よりもコーヒーやシロップ、タバコを届けてやるのが主目的の配達なのに目当てのコボルトの姿が誰一人見えないのだ・

 

「普段とは違った様子だが、何かあったのか?」

 

などと合間を見て訪ねてみるのだが魔術妨害がどうだの、通信ができないだので状況が混乱しているという。この戦場が魔術とか言う奇抜な手段で連携を取っている戦場なのは百も承知だったがそれにしては凄い焦りようだった。

 

そしてそうこうしている間にエルフィンドからの砲撃が始まった。まばらとした砲弾が防塁の近くに堕ちたかと思うと、応戦するようにオルクセンの弾幕が撃ちあがりあっというま耳と腹に響くオーケストラが奏でられる。

 

 普段より砲弾の量が多い。そもそも奴らから砲撃してくるのがおかしい。

 

「砲撃がやんだら迎撃戦が展開されるぞ!野郎ども!積み下ろしが終わったところから撤収準備!火器に装填していつでも尻尾をまくれるようにしておけ!」

 

 あちらこちらで砲弾の弾着によるクレーターが形成されていくのを横目に補給団列の部下たちに指示を出していく。銃床に装填チューブをつなげ弾薬を流し込むとガチャンとレバーを操作し暴発が起きないよう撃鉄をハーフロックに起こしておく。

 

 各々が火器を準備し準備を終えるか負えないかというタイミングの事だ。まだ砲撃が続き、兵士たちが援兵豪や遮蔽物で身を掲げる中、陣地と陣地の隙間を動くものがある。分隊規模か小隊規模か……普段ではあまり見ない少数の戦闘集団が砲撃中にもかかわらず移動している。サイズから味方のようには見えない……

 

 その後の指示は直感だった。ヤバイ、ここにいたら死ぬ。今を逃したら多分……そうよぎった時にはその場にいた輸送隊、3個戦闘単位30人の部下たちに叫んでいた。

 

「砲撃は度外視だ。我々は一足先に撤収する。ジェントルマン。全作業を中断。続け!」

 

自分の乗ってきた馬に飛び乗ると慌てた味方が続こうとするのをしり目に愛馬の脇腹にけりを入れる。慌てた馬が何事かと鳴き声を上げながら走り出すその先にはいるはずがない白エルフの戦闘集団がいた。お互いに目が合う……お互いにまさかという感情が交差するのを感じる。

 

「損害を度外視、戦線をそのまま突破して司令部まで撤収する!」

 

 前傾姿勢になりスピンセルを片手にそのまま敵小隊に突っ込んでいく。慌てて小銃を構えるエルフたちの合間をぎりぎりで交差し、そのまま駆け抜ける。

 

数舜遅れて立て続けの射撃音。頭のすぐ横を弾薬が通り過ぎるのを気が付かなかったことにしてさらに速度を上げる。

 

視線の端には辛うじて追いついてきた部下たちがなんとか付いてきているのを確認して安全経路まで退避する。30名の輸送隊のうち負傷2,脱落0,只野港運でしかなかった。

 

各所では砲撃が途切れ、両軍の小銃の音があちこちで聞こえてくる。オルクセン側の小銃音は少なく、明らかに押されていることがわかる……

 

硝煙の雲があたりを覆い隠さんとばかりに広がり、怒号と悲鳴とが多重そうになって銃声鳴り響く戦場音楽に彩を添えている。

 

 遠目には先ほどまでいた物資集積地が見え、今まさに血みどろの殲滅戦の数歩手前といった壊滅具合が見て取れる……

 

 救援に向かうか?そんな考えが一瞬よぎるが、それを打ち消すようにエルフたちが陣地へと乗り込んでいく姿が見える。もう遅い。救援が出来るようには到底思えない。

 

「俺たちは一度ネブラスまで退くぞ。多分この後が大変になる。早急に状況を伝えて司令部に命令を下してもらわないといけない。」

 

 明らかに今までとは戦術が違う。砲撃を迂回し浸透、小隊規模の小集団による多角的な襲撃行動。火力で押し戻そうにも火点移動が間に合っていないのだ。これじゃどうにもならない。

 

「ジェントルマン。この先俺たちにも輸送任務以外の出番が来るぞ。騎兵隊の出番だ。シャドウ・エルフ箱の近くにはいないんだ。足回りが必要になる。」

 

 駆け出したときから握りしめていたスピンセルを愛馬につけたホルスターに放り込むと俺たちは後方へと転戦した。ユーダリル山の味方には申し訳ないが負けを受容できないと勝利への道を舗装する作業には入れないのだ。




昨日はお休みして申し訳ないです。本日一回目の更新です。
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