『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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撤退戦

―――星暦八七六年四月九日/ネブラス近郊/ユーダリル山近郊/アラン・ラッカー

 

あちらこちらで防衛線が強襲される音が響き、あれだけ強固に構築して誰も破ることはかなわないだろうと思われていた戦線は今まさにその特性から食い破られようとしていた。空には薄い雲がかかり、状況が悪くなっていく様を表しているようだった。

 

「畜生、馬車を置いてくるんじゃなかった。繋いだ馬だけじゃ負傷兵も無事な味方も回収で来やしない。」

 

 なんて当たり散らしたことをよく覚えている。

 

 攻撃を受けている防衛陣地を迂回し辛うじて通行可能な道を迂回しながらネブラスへと移動をしていくがその道行は悲惨なものだった。エルフィンドの奴らは防衛線の隙間をそれこそ津波のように侵食してくる。

 

 俺たちは出来るだけ遭遇そのものを避けるように茂みを抜け、街道を避けて移動を続けたがそういう道に限ってあのエルフの奴らが蔓延っていやがる。見つけるたびに俺たちはスピンセルによる一撃離脱を行い、戦線を攪乱して逃げ道を作る羽目になった。

 

 後方には別の襲撃されている防御陣地があり前方にはエルフの小隊網とどちらかを抜けなければいけなかったので自然と回避のための襲撃を選ばざるを得ない状況に追い込まれていたともいえる。

 

 いくら馬車を捨てたからといって多少の弾薬の備えはあったし、幾人かはスピンセルの他に12ゲージや少数の猟銃を持ち出している奴もいたので突破をするだけであれば数回は何とかなったが、問題は負傷兵の扱いだった。いくら一撃離脱で退避を行うための攪乱行動であっても繰り返せば負傷する奴が出てくる。輸送自体はなんとかなるが負傷兵を確保して輸送する役目を誰かがやらなくてはならない為結果的に射撃可能な人員は目に見えて減ってくる。

 

 苦肉の策として、俺たちがとったのは内戦時代のシャープシューターズの真似事だった。センチュリースター内戦中、北軍には合衆国義勇狙撃兵連隊もしくはシャープシューターズなどと呼ばれる長距離狙撃用の狙撃銃を装備した連隊が複数存在した。

 

 特にその中でも合衆国義勇狙撃兵連隊、特にハイラム・B・ウィンスコットのハイラム・シャープシューターズという奴らは狩猟用の拡大照準器を大口径ライフルに取り付けて指揮官や砲兵を遠隔距離から狙撃して攪乱するという戦術を好んで使っており、南軍を大いに混乱させた。

 

 俺たち30人の義勇兵のうち、長距離狙撃に使えるローレンス・シューター・ライフルを持ち出していたのは5名と限られていたがスピンセルによる威嚇と狙撃銃による出血を組み合わせて攪乱を行うことでこれを何とかカバーした。

 

 .45-70の狩猟用弾薬は狙撃用の拡大鏡(スコープ)との相性が良く1000ヤード内の鹿や熊を仕留めるための精度はエルフの下士官や士官などの優先攪乱目標を仕留めるには最適だった。

 

 

 俺たちはエルフと騎兵の鋼線距離を設定し安全マージンを取った状態で威嚇のための統制射撃を行い、相手を引き出したうえで狙撃を行うことで部隊を攪乱。その後部隊が立て直す前に狙撃班や負傷兵と合流し移動を行う、という形でかく乱を繰り返すという形で機動防御を行いながら撤退を再開。最終的にネブラスの司令部や味方部隊と合流できた頃には翌10日を回っており、報告を終えて一時休息をとれる頃には10日の午前4時にもなっていた。

 

 負傷者を出したものの義勇兵団の武装探偵に殉職者はなく、一定数の負傷者を後送する事で俺たちは四月十一日には部隊を再編、司令部貴下の機動戦力として戦線に復帰した。

 

 

ロング著 「アラン・ラッカー備忘録」 より抜粋

 

 




今回、ベルダン・シャープシューターズが使った旧式のシャープス・カービンでなく45-70Government 仕様のものを使い狙撃用途に耐えるかどうか検証を行っております。

実地検証を行ったところ45-70 Government 弾と1898年式の狙撃スコープを組み合わせて射撃を行う場合狙撃の為の調整に手間はかかるものの1000ヤード(910m)範囲で鹿程度の製紙目標に射撃を行う場合。誤差±30㎝の範囲内に命中させる事が可能でした。

その為、オルクセン世界でも同程度の猟銃とスコープを組み合わせればすでに狙撃を戦術に組み込める可能性が非常に大きいと考えています。
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