『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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携行食

―――星暦八七六年四月十一日/ネニング平原南翼戦線/アラン・ラッカー

 

 

 11日の昼前、時間稼ぎから戻った俺たちを待っていたのは空っぽの馬車の群れだった。防衛線を構築した結果として後方要員に空白が出来るわけで、戻ってきた我々はそちらに回されたと言う訳だ。

 

 戦場を不眠不休で駆けずり回った挙句、戻ったら戻ったで休息する暇なくあくせくと荷運びに移ったわけである。特に砲弾や弾薬が不足しており普段なら屈強なオークの支援があるものだがクレーンを併用したり腰を炒めたりしながら苦労して何とか積載をする羽目になった。自分たちの補給などお構いなしである、空腹と眠気と戦いながらなんとかかんとか任務に従事する羽目になった。

 

 結果として、食事は移動中に輸送を行いながら行う羽目になりデポで手に入れた携行食糧をかじって何とかやりくりをするのだがこれがまたつらかった。ハードタックもさることながら、いい食事は一番前で戦っている奴の為にある。旨い飯ほど気力がわいてくるものなのだ、当然ながら危険度が下がる分俺たちの食事は粗末なものにせざるを得ない。

 

 この時、俺たちが摂取する羽目になったのはやはりというべきかハードタックだった。胸ポケットにハードタックを突っこみ、様子を見て少しずつかじろうと試みるわけだ。もちろん大抵はそんな気力残っているわけもなく胸ポケットに突っ込んだままになるのだが、この時、俺たちの中で一つの奇跡が起きた。ハードタックが弾を止めたのである。

 

 前線の防衛陣に弾薬を運び込み、積み下ろしをしている時だ。運悪く俺たちが視認されて集中砲火を食らったタイミングが合った。殆どは退避行動か遮蔽物に潜り込むかで事なきを得たのだが、一人の義勇兵に命中した。

 

 当たったやつは落馬してその場に転がったのだが傷を確認するために駆け寄ると思いもよらない光景がそこにあった。胸に入れた5インチサイズのハードタックが弾薬を受け止めていたのだ。

 

 半ば砕けてハードタックは原型を留めていなかったがそれでも弾薬は被弾した奴の体を貫くことなく、辛うじて落馬による打撲のみで後送されていった。それ以降、弾薬を本当に止めてしまう硬さを証明したハードタックは俺たち義勇兵からアイアンプレートと呼ばれて終戦までの間、いざという時の為にハードタックを胸ポケットに入れてお守りにするという行動が慣例となった。

 

 時折虫が湧いたり、このハードタックのせいで怪我をする奴もいたが、それでも戦場信仰というのは恐ろしいものでこれがあるだけで命が担保されたと思い込んで式を挙げるやつらがごまんといて、戦後の同期会でさんざん酒のネタにされた。

 

 ハードタックは携行食糧としてはそれこそ忌み嫌われたといっていい代物だったが、お守りという意味ではネニング以後この硬い食用の板を重宝していたというのだから世の中どんなものがどういった用途で役に立つか分からないものだ。

 

 ともかく、ネニングの戦いにおいて俺たちの出番は序盤の苦労だけであとは後備としての輸送任務に終始した。司令部から見れば苦労して働かせた分楽をさせたといった意味合いもあったのだろうが、あと一歩、それこそ追撃戦でもさせてもらえればよかったものを不完全燃焼で会戦を超える事になってしまった。

 

 そんな俺たちに目立つ活躍の機会が与えられたのは会戦の終結直前の事だった。探偵として司令部から命令……いや、捜索依頼があった。




先日は投稿が遅れて申し訳ございません。改めての更新となります。楽しんでいただければ幸いです。
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