『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア 作:karkaroff
―――星暦八七六年某日/センチュリースター/アカディア
装飾されたシャンデリア、ごてごてとした芸術風のランプに見栄ええばかりのテーブル、成金趣味のグロワール建築の一室で目つきの悪い紳士が縛り付けられていた。
彼の名はアラン・ラッカー、暫く後に義勇軍を率いて戦う羽目になる男性である。
縛り付けられた彼の周りには仕立ての良い黒服たちと、彼らに守られたモノクルの男が一人。鈍く光るステッキを片手に彼を見下ろしている。
「なあ、スピンセルの件は俺のせいじゃない。俺は戦争で浮いた持ち主不明の廃棄物を有効活用しただけだぜ?わかってるだろ?鉄道の旦那。」
縛られた椅子をがたがたと揺らしながらアラン、命運が付きかけた世界最初の民間軍事会社、ラッカー探偵社の経営者たる彼は出資者の男に懇願する。
出資者たるモノクルの男……センチュリースターの鉄道王と呼ばれるその男はうんざりとした様子で口を開く。
「赤字なのだよ、ラッカー君」
カツンとステッキを打ち鳴らしモノクル男は唸るように続ける。
「列車強盗二件、鉱山襲撃一件、労働者暴動一件、君の探偵たちは全ての問題を解決したが、解決したがそれによる損害額は経費のどれだけを占めているか把握しているかね?」
カツンカツンと床を叩く感覚がだんだん短くなる。
「止めに失われたはずの私の銃を何故か君が大量に保有していると来た。内戦中に納品される筈だったスピンセルを失った時の損失額がどの程度か君は知ってるかね?」
ぴしりと床がひび割れた音がしたかと思うと、次の瞬間にはモノクルは床に思い切りステッキを叩きつけた。木片が飛び散りアランは頬から血が滴るのを感じた。
「アラン、君は私の武器をくすね、厚顔無恥にも探偵たちを売り込み、私の金で仕事をした。それはもう痛快だったろう。」
モノクルの男、鉄道王ホイットフィールドは砕けたステッキの欠片を彼の首筋に静かに押し付ける。
「君は私に貸しがあるとでもいうのかね?金の件でも戦争で消えたはずの武器の件でもだ。君は少々やりすぎたのだよ。」
ぐりぐりと押し付けられる破片に顔をしかめながらもアランは何とか言葉をひねり出す。
「うちの探偵たちならどんな仕事でもしますぜ?うちのうりは金さえあればどこへでも、苦難しらずの武装探偵。ですからね。生産するなら仕事でさあ。」
ぷつりと破片が皮膚を割くのを感じる。そして……そして彼はその日の船でオルクセンへ送られる事となった。
「世界で一番面倒な戦争に加勢してこい。それで清算してもらおう。」
鉄道王ホイットフィールドはアラン・ラッカーと彼の武装探偵という名の民兵たちを負債の清算をさせてやると辺境の戦争に叩き込んだ。
幸か不幸か、戦争は彼の人生を変えた。
アラン・ラッカーは史実上の人物、アラン・ピンカートンがモデルとなっております。
彼はピンカートン探偵社を経営してアメリカ国内で民兵規制が実施されるきっかけとなった人物でした。