『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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小奇麗オーク

 

―――星暦八七六年十一月六日/ファルマリア港近郊/アラン・ラッカー

 

 忌々しい鉄道王、ホイットフィールドに送り込まれた民兵……探偵たちは26日の侵攻開始から10日後にはすでにエルフィンドの国内にいた。

 

 それはどうやってかキャメロット外交筋からの速報を受けた鉄道王の行動力のなせる業だった。

 

 何をどうやってかおよそ最速で情報を掴んだモノクルのクソ野郎は即応で俺に言いがかりをつけ、気が付いた時にはわが社の即応戦力207人、増強中隊のフル装備と馬、補給物資付きで貨物として輸送されていた。

 

 10日かそこら、大西洋を高速船で人とも思えぬ扱いで輸送され、何ともつかぬひどい有様で死に体でファルマリア港に転がされるとは露とも思わなかったが、せめて到着してからは義勇軍だ、多少まし化とは思っていたのだが……思っていたのだが……

 

 現地に着いた瞬間に言われた言葉がこうだ。

 

「義勇兵?我々はまだその知らせを聞いてない。諸君を一時拘束する。」

 

 それから半日、故郷のくそったれな牢獄と比べたら大分ましなレンガ造りの倉庫、ファルマリア港で吹き飛ばなかった運のいい頑丈の建物で俺たちはセンチュリースターではおよそ見る事のない巨漢の雄、メルイシス(オーク)の兵士たちに囲まれ、やたら量の多い食事を囲む羽目になった。

 

 目の前のオルクセン兵の中でも一際偉そうな雄、エーリッヒ・グレーベン少将は外見と比べたら幾分か小奇麗な食事を見せつつ、その合間で口を開く。

 

「義勇兵志願者……義勇兵候補、なんにせよささやかな援軍の諸君、大変な失礼をしたようだ。」

 

 倉庫内に設えられた簡易的な食堂が少し冷えた気がした。護衛のクソ生真面目なオークの衛兵野郎の装備がカチャカチャとなるたびに肝が冷えるのを下半身の微かな震えから確信した。

 

 義勇兵については知っていたが観戦武官と一緒にあとから遅れてくると認識していたと、そういった事情説明の後で彼は続ける。

 

「今回の戦争計画に実は多国籍軍での活動計画は現工程だとまだ組み込まれていなくてね、君たちを扱いかねている。そこで君たちの扱いを検討したのだがよい提案があった。」

 

 無駄にもったいぶったこの小奇麗オークの話に内心苛つきながらも話を聞く。

 

「諸君らには武装した郵便配達員になってもらいたい。君たちの足回りを借りようと思う。格安で、過重労働していただきたい。君たちの雇用主と外務省のお歴々曰く、こき使ってほしいと。」

 

 仕事はいつもと変わらないらしい。ついつい、ほぅとため息が漏れた。

 

 結局のところ、センチュリースターにいようがエルフィンドにいようが民兵もどきの俺たちは偉い誰かの為に小間使いにされるのは変わらないのだろう。

 

 200人と少しの内戦上がりの民兵どもとその首領、ローグに堕ちなかったもどきの俺たちに下働きをしろと。そういう話だろうか。

 

「ホイットフィールドの要望がそれなら我々には異論はないですがね、旦那。俺たちだって母国で作られた連発銃で武装した軽騎兵ですぜ。それが荷役の驢馬みたいな働きで?」

 

 などと嘯いてみるがこの小奇麗は涼しい顔でワインを飲み干して言う。

 

「荷役の驢馬でこなせればよかったがそれでは足回りが足りなくてね、補給線に耐えて俊足で補給線を埋められる必要がある。」

 

出来るのだろ?まさか出来ないわけがない。挑発に満ちた視線についつい俺はええかっ こしさだけで頷いていた。

 

「引き受けよう。格安料金で」

 

 恐らく、自分に縁もゆかりもないこの戦争で働いてやろうと意識したのはこの時だったと思う。

 

 この時飲み干した赤ワインは酷く苦く。その割に喉の通りだけは良かった。なあなあに働けていればどんなに良かったか……多分若かったのだろうと思う。あの小奇麗オークめ、上手く乗せやがった。

 

 




第三話となります。楽しんでいただければ幸いです。
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