『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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オークに南部の差し入れを

 

―――星暦八七六年十一月十日/ファルマリア港/アラン・ラッカー

 

 シャドウ・エルフ側の指揮官が決まれば後は早かった。長距離移動に長けた騎手を選抜、あわせてキャラバン隊の半分をキュスターに預ける形で部隊の再編成を行った。二個小隊のキュスター隊の完成だ。

 

 残った二個小隊と余剰数名の人員からさらに二個分隊を引き抜き、ファルマリア港で義勇兵用のデポを設置して主計官として武器弾薬から海越えして届けられる物資の管理回りまで雑務を任せる。

 

 どうやら北のモリガン商会と南のスティーブンスが秘密裏に共同出資して物資を手配しているらしい。らしいというのはメッセージを届けに来た人物が南部の観戦武官だったからで北部と南部のいざこざにより執着しそうな人物だったからだ。

 

 くだんの観戦武官はセンチュリースター号が見れなくて残念だという話をして消えていったが、鉄道王に銀行家、南の元副大統領まで気合の入った連中が投資してくるというのは非常に引っかかる話であった。

 

 とはいえ債務者としては返済のためにあくせく働くしかないのも確かで社員の給料を遅滞でもさせればそれこそどんな目に遭うか分かったものではなかった。

 

 部隊を再編した俺たちがまず手を付けたのは味方を作る事だった。あの小奇麗オークの少将は敵ではないにしろこの地で大っぴらな味方はほぼいないに等しかった。

 

 まず、司令部に食事と酒の差し入れをするところから始めた。俺たちと共に貨物として送り込まれた燻製ソーセージとオクラをこれでもかと煮込んだガンボだ。

 

 一個小隊まるっと声をかけ、俺たちの天幕近くに炊き出しの為の調理場を設営する。大鍋を磨き上げ、炉を組み立て、奴隷のやつらが組み上げる数倍立派なそれを使って戦中に南軍の捕虜から聞いたレシピを再現する。

 

 大量のラードを使って小麦を炒めたルーをベースにセンチュリースター南部のクレオルのスパイスをぶち込み、先物取引で破産したどこぞの富豪から買いたたかれたと噂のガンボとこれだけはまともな燻製ソーセージを煮込む。

 

 コボルトのちびすけどもが食えるように玉ねぎとニンニクを抜くのも忘れない。味を調えるために後から胡椒と開園ペッパーを追加し、しばらく煮込んだうえでトマト缶を追加、鮮やかな色合いのスープをさらにしばらく煮込む。

 

 具材がトロトロになったころ合いで火を弱める頃には遠巻きにオークとコボルトの姿が見え始める。暇している奴らにそのちらほら見えるやつらに炊き出しを行っている旨を宣伝させると、並行して司令部に義勇兵の”支援要請”を伝えに行ってやる。

 

 大量に作ったセンチュリースター風トマトガンボが余っているから消費してほしいと声をかけるわけだ。もちろんラム酒のケースを付ける事も忘れない。

 

 その間にもガンボはぐつぐつと煮込まれ、もうもうと白い湯気を立てスパイシーな香りを立てるスープが完成する頃には調理場には自前の飯盒を用意したオークの列が出来ていた。

 

「ラッカーのボランティアだ!オークにコボルト、騎兵のお姉さま方に砲兵の英雄たち!センチュリースターから最速の支援が到着したぞ!」

 

そんな呼び声をかけながら部下に炊き出しの配布開始を伝えると、鍋の中身はどんどんと消費されていった。

 

 都合2時間の炊き出しで消費された量は人間換算三個大隊分のオーク、コボルト、そしてエルフ腹を満たす量を提供する事となった。反応は様々でオルクセンとは違う異国の味わいに舌をうならせる奴もいれば、慣れないスパイスの味に顔をしかめるものもいた。

 

 その中で一番印象的だったのはオークたちの一団が引いた後に来た白エルフたちだった。彼らはオークたちが落ち着くのを見ると自分たちも配給を受ける権利があるかと聞いてきた。その頃には燻製ソーセージの在庫はすでに無くなっていたがオクラとルーを追加して提供してやるとその味にびっくりしながらも泣きそうな顔でスープを啜っていた。

 

 まだ戦争は始まったばかりだというのに敗戦国の有権者みたいなありさまにエルフィンドの行く末を見た気がした。

 

 何はともあれ配給を終えた俺たちは兵士や港の市民たちに妙な料理を出す外国人として認知されることになった。食い物の話は足が速い。腐りやすいってわけじゃない、娯楽の少ない戦場じゃうまい飯の噂は騎兵突撃よりも俊敏だって話だ。

 

 

 おかげでおれたちは少なくとも妙な奴らがやってきた、オークたちの味方らしいっていう評判を得た。噂は変に変わっていったがおかげで配達業務がやりやすくなったのは事実だった。




ガンボを4個大隊分作成するとおおよそ

燻製ソーセージ:320kg
オクラ:200kg
鶏肉:400kg
ピーマン:120kg
セロリ:80kg
トマト:200kg
チキンブイヨン:800L
ラード:80ℓ
塩・コショウ:大量

ぐらいが必要になります。ラッカー義勇兵団の場合は持ち込んだ食料のうち25%をこの”支援活動”で消費しました。
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