『オルクセン王国史/二次創作』ラッカーズ・ボランティア   作:karkaroff

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差別的な表現がいささか多く描写されておりますが時代背景を考慮した仕様となっております。ご了承下さい。


エルフの騎兵はトイレに行かない

 

―――星暦八七六年十一月十六日/ファルマリア近郊北部/ネイサン・A・キュスター

 

 あのケチな所長は装備と人員だけは真面目に選んであのシャドウ・エルフの奴らに俺を派遣しやがった。センチュリースターじゃ先住民に追い立てられ、こっちでは見た目ばっかり奇麗なばあさんにこき使われるってわけだ。

 

 選抜された野郎どもを連れて挨拶に行ったら即日弾運びにキャラバン隊の馬車で負傷者の後送をさせられた。確かに迅速な負傷兵の移送は優先すべき事柄なんだが、エルフィンドに到着してから今までただの一度も戦闘参加もなければ、それこそ偵察に割り当てられるような事すらなかった。敵兵を見たのは捕虜くらいで、それもそう多い話ではなかった。俺たちの背中で飾り物のスピンセルがいつになったら出番があるんだと泣いている気すらした。

 

「俺たちだって戦わせてくれ」

 

 などと戦闘部隊に随行できないか要望を出したことがあったが連携が取れないからとけして戦闘参加を許可しなかった。それどころか

 

「従軍した分の土産は持たせてやるからおとなしくしていろ。」

 

 といわれた日には危うくホルスターのボタンを外しそうになったが、辛うじてこらえた俺を誰かほめてほしい。補給将校の癖におたかくとまりやがって……

 

 それがさらに戦場から遠ざけられることになったのは11月も半ばに差し掛かったころだ。各国の従軍記者や観戦武官の数が増え始め、その受け入れが本格化しはしめたのだ。それに伴って義勇兵の俺たちはオークやエルフのお嬢様方に行き届かないあれこれ細かい雑務を押し付けられるようになった。

 

それでもキャラバン隊とそれを護衛する分隊での輸送任務や弾薬の配達などは維持されたがこちら側の責任者である俺たちはもっぱら記者や観戦武官が違和感なく戦場の少し後ろで暮らせるように小間使いと言う訳だ。

 

 特に、衛生まわりでは苦労させられた。なにせシャドウ・エルフ…のお嬢様方は便所っていう概念が抜けているのだ、記者や観戦武官が戦場の一歩後ろでトイレに行きたいって話になったら即席でお嬢さん方に話が行く前にあらかじめ選定しておいた比較的安全な場所に案内して用を足していただく。

 

 多少粗雑なあれこれがあったとしても種族間の致命的な違和感が起こりにくくして清潔な戦場を維持するための努力をさせられた。

 

 唯一の気休めはエルフのお嬢様方はやたらと酒を好んだって言う事だ。火酒に蒸留酒、ラム酒、補給に乗らないセンチュリースター経由の嗜好品をいくらか融通してやるといつもの刃物みたいな顔が緩んで人らしくなるのは面白かった。

 

 話が合わないことは多々あったが馬鹿話が通じるっていう一点においては少なくとも規律が保たれている限りはマシな話だった。下ネタを話そうものなら奴らの外見位鋭いナイフが首筋をかすめてそのまま天使のお世話になることに目をつぶればいい戦友だったかもしれない。

 

 ただ、誰かが銃を持った男(レングマン)として英雄になるって言いだすのを小さい友人(リトルフレンド)じゃ役不足だとか故障品の役立たず(ダンピーズ)にされちまうからやめておけと諫められたり、まれにマイト級の鋭い一撃を食らってたたき出されて笑い話にされる羽目になるのはままある光景だった。憲兵に連れていかれる事がなかったのは俺たちが義勇兵(ボランティボランティア)の立場だったからで大ごとにしないでその場で納めてくれるのはある意味助かったといえるだろうさ。少なくとも縛り首にされる馬鹿は一人も出なかった。

 

 俺たちは交代で弾を運びあの年を食ったお嬢様がたを後送し、辛うじて信頼の『し』の字を勝ち取れたと思いたかった。だが、あくまで俺たちはよそ者の小間使いの扱いで彼女たちに受け入れて戦友の扱いを受けられるのはしばらく先の話だった。

 

 




口の悪い粗暴な男を描写するのはなかなか面倒ですね、楽しんでいただければ幸いです。
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