英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~ 作:魔ギア
静かに流れる水の音。その音が耳に入り、アルフィンは閉じていた瞼をゆっくりと開ける。全身からくる痛みに眉を潜めながらも、ゆっくりと身体を持ち上げる。
「姫様! 大丈夫ですか?!」
「あ……、エリゼ」
アルフィンが起き上がったことに気づいて、毛布で体を隠したエリゼが慌てて、彼女の隣に座り込んだ。
「エリゼ、ここはどこ? 私たち、確か川に落ちて……」
「はい。そのまま川に流されていたところを彼女たちに助けてもらったのです」
エリゼが振り向いた先にアルフィンも視線を向ける。そこには一人の少女がいた。
「お気づきになりましたか」
ウサギ耳が付いたフードを被った銀髪の少女、アルティナが手に持っていた木の枝を焚火に投げて、火を焚いていた。
「こちらに来てください。その姿だと身体が冷えてしまいます」
「え?」
何のことかとアルフィンはきょとんとするが、焚火の近くで干されているものを見て、固まってしまう。
赤を基調にした制服とスカートが二つずつ。間違いなく、自分たちの制服だ。そういえば、エリゼは毛布で体を隠していたことを思い出す。アルフィンはおそるおそる下を向き、自分の状態を確かめる。
「//っ!!??」
自分にかけてあった毛布で慌てて身体を隠した。
アルフィンとエリゼが顔を赤くして縮こまる中、アルティナは特に反応せずに作業を続けていた。
「ア、アルティナさんが助けてくれたんですか?」
「いいえ。私は後から来ました。お二人を助けたのは……」
「獲って来たぞ」
その時、川の上流部から一人の少女が降りてきた。
「あ、あなたは?!」
アルフィンは目を見開いた。現れたのは、昨晩のケルディックで会ったノーザンブリアから来た猟兵――ラヴィアン・ウィンスレットだった。
「そっちの方も目が覚めたのか」
「ど、どうして、あなたが?」
「……ここに潜伏していたら、魔獣の群れに襲われた」
ラヴィアンは獲って来た魚をアルティナに渡して、近くの岩場に腰を落とした。
「そのせいで仲間と逸れて探していたら、川に流されていたお前たちをたまたま見つけた」
「そうだったのですか。助けていただきありがとうございます。私はアルフィン・ライゼ・アルノールと申します」
「エリゼ・シュバルツァーです。私からもお礼を言わせてください。ラヴィアンさん」
「……別にいい。後、ラヴィでいい」
お礼を言われてラヴィアンは顔をそっぽ向いた。かすかに頬が赤くなっていたのは気のせいではないだろう。
「そんなことより、これからどうするおつもりですか?」
焚火を囲いながらアルフィンたちは身体を温める。ラヴィアンが獲った魚を焼きながら、アルティナは今後、どうするのかをアルフィンたちに持ちかける。
「そのことなのですが、ラヴィさん、私たちと一緒に行動しませんか?」
「何?」
アルフィンの提案に、眉を潜めるラヴィアン。隣で驚くエリゼをよそにして、アルフィンは話を続ける。
「先程、仲間と逸れてしまったと仰っていましたよね。それは私たちも同じです。ここは共に行動するべきだと思います」
「お前たちと行動をする理由がない」
「理由ならあります。この公園の魔獣の数が異常なほどに多いです。それにあの魔獣の存在もあります」
アルフィンの頭には自分たちを川に落とした巨大魔獣の姿がチラついた。
「単独で行動するのはあまりに危険です。今は集団で行動して安全を確保するべきです」
「そのために共闘するというのか?」
「はい、その通りです」
アルフィンの提案にラヴィアンは眉を潜める。
自分たちが帝国に来た目的は、おそらく、昨晩あったレクターという男から聞かされているはずだ。
それを知っても、なお自分と行動を共にしようと考えるアルフィンの真意がわからない。
「それに私たちはロドルフォさんも探さなくてはなりませんから」
「ロドルフォ? あいつがどうしたんだ」
ロドルフォの名前を聞き、ラヴィアンの顔つきが変わり、話にのめり込む。
アルフィンはラヴィアンたちが立ち去った後のことを話す。彼と妹がスパイとして追われていることも話した。
「ロドルフォとルカがスパイ容疑?」
「はい。ラヴィさん、念のために聞きますが、ロドルフォさんは……」
「少なくとも私は知らない。あいつらがノーザンブリアに戻って来たという話も聞いたことがない」
「幹部でもないあなたには聞かされていないだけなのでは?」
「アルティナさん!」
アルティナの指摘にエリゼが咎める。
ラヴィアンはしばらく考え込むと、その場から立ち上がった。
「ラヴィさん?」
「あいつを探す。あいつには聞きたいことがある」
「ま、待ってください! 探すのでしたら、私たちと一緒に……」
「足手纏いだ。私は私で勝手に動く。お前たちと馴れ合うつもりはない」
「で、ですが……」
「私はお前たちのことを知らない。知らない奴に背中を預けることはできない」
ラヴィアンの冷たい発言にアルフィンは少し困惑するが、その答えにエリゼが代わりに答えた。
「では、私たちも勝手に動かさせてもらいます」
「エリゼ?」
「それでたまたま、あなたと同じ行動を取ったとしても、文句はありませんよね」
「お前……」
エリゼの言葉に、ラヴィアンは一瞬、目を丸くして彼女の顔をじっと見つめる。
「えっと、どうしたのですか?」
「姓を聞いて、まさかと思ったが、お前……、リィンの妹か?」
「え、兄様を御存じなのですか?」
突然、出てきた兄の名前に思わず聞き返してしまうエリゼ。
「昨日、会った。そいつと一緒に行動していた」
「帝国政府からの要請で手配魔獣を討伐する時でしたね」
ラヴィアンの視線を受けたアルティナはその時の経緯を語る。
「私がどうして兄様の妹だと?」
「あいつも、さっきのお前と同じようなセリフを言っていた」
『じゃあ、俺たちも出口を探すとするか。それがたまたま君と同じ方向でも、それも俺たちの勝手なわけだ』
「兄様がそんなことを……」
「お前から見て、リィンはどんな奴なんだ?」
「どうして、そのようなことを?」
「それは……」
ラヴィアンは顔を逸らして口を閉ざしてしまう。何かを悩み込む姿にエリゼたちは首を傾げるが、アルティナだけは目を細めていた。
「帝国の英雄に関する情報収集。それがあなた方の任務ですか?」
「っ……、それだけじゃ……ない」
「では、他に何が?」
ラヴィアンは下を向いたまま何も話さない。リィンが目的だと知ったエリゼはアルティナと同じく彼女を警戒する。
一方でアルフィンは、目を半分伏せるラヴィアンを見てあることを思い出した。
「もしかして、あなたのお爺様のことですか?」
「? どういう意味ですか?」
意図がわからず、アルティナはアルフィンに尋ねる。
「昨日の夜、レクター大尉があなたのお爺様の話をした時、あなたの様子がどこかおかしかったので」
「っ、あの人は関係ない」
睨むように顔を歪ませるラヴィアン。その様子にエリゼはアルティナに質問をする。
「ラヴィさんのお爺様というのは……」
「ヴラド・ウィンスレット。《北の猟兵》の創設者の一人です。ノーザンブリアの英雄として名を馳せていました」
「英雄……。それが兄様のことを知りたいのと何か関係が?」
何度も質問するがラヴィアンは黙り続けていた。寂しそうに瞳を揺らして、何かを探して求めている子供のよう雰囲気だった。
そんな彼女の姿に何を思ったのか、エリゼはアルフィンと顔を見合わせて頷くと口を開いた。
「兄様は優しい方です。ですが、困った人でもあります」
「?」
「いつもいつも自分のことを後回しにしているんです。何かを抱え込んでも、何でもないと他の人に悟られないようにいつも振舞っているんです」
困ったように笑みを浮かべるエリゼにラヴィアンは訝しげに見る。すると、今度はアルフィンが口を開く。
「誰よりも前に立って皆を導いてくれる素敵な人です。ですが、あの背中を見ると、私たちには想像できない、とても重いものを背負っているのだと、痛感する時があります」
彼が政府からの要請でトリスタを離れる時、何回か彼を送ることがあった。その時の彼の背中はとても大きく感じたが、同時に遠くにあるような感覚があった。
「アルティナさんはどうですか?」
「なぜ、そのようなことを……」
「知りたいんです。アルティナさんはリィンさんの事をどう思っているのですか?」
アルフィンはぐいぐいとアルティナに詰め寄って、話を促す。彼女からの威圧に、顔をうっすら引きつかせたアルティナは、諦めて語り始めるのだった。
「不埒な方です」
「ふ、不埒?」
「私が寝ているときに部屋に入ってきたり、急に頭を撫でてきたり、とにかく不埒な人です」
「兄様……、こんな小さい子に何をやっているんですかっ」
アルティナの私怨が若干、混ざった回答にエリゼの目が据わる。
「でも、あの人は要請の時、いつも私の事を気にかけてくれました。何度も話しかけてくれて、助けてくれたこともありました。かつて、私と彼は敵対していました。それなのに、どうしてそんなことをするのか、私にはわかりません」
アルティナはリィンの行動が理解できずに思い悩んでいる様子だった。
「英雄とはそういうものなのか?」
三人から聞いたリィンの感想。そして、彼と言葉を交わした時のことを思い出すラヴィアンが小さく呟いた。
「リィンも、お爺ちゃんも、見ず知らず誰かのために戦っている。見返りがあるわけじゃないのに、それでも誰かを助ける」
「ラヴィさん?」
「っ! ……何でもない」
口走ったことに気づいたラヴィアンは顔を逸らす。だが、彼女の言葉に英雄の妹であるエリゼは聞き逃せなかった。
「兄様は自分の心に従っているだけなんだと思います。たとえ、それがどういう結果になったとしても後悔はしていないと思います」
「自分の心に従ったからか?」
「はい。誰かのために抗って、立ち向かって、ボロボロになりながらも、ただひたすら前に進んでいく。そんな兄様の姿を見たから、周りにいる人たちはあの人に惹かれ、信じ、支えたいと思うんです。そういった人たちが兄様を英雄と讃えているんです。……兄様は英雄だから人を助けているのではありません。助けられた周りの人たちが兄様を英雄にしてくれたのです」
もちろん、リィンだけではない。自分の何か大切なもののために前を進み続けて、英雄と呼ばれるようになった者たちは何人も存在する。
滅びを迎えようとした国を復興しようと立ち上がった猟兵団がいた。
戦争が起きようとした時、それを防ごうと立ち向かった遊撃士たちがいた。
二大国に挟まれながらも、自分たちの正義を信じて、何度も壁を乗り越えた警察官がいた。
彼らがやってきた行動が全て正しいとは言えず、中には英雄と呼ばれるのには相応しくないものもあるだろう。だが、助けられた者たちにとっては、彼らは皆、等しく英雄なのだ。
「お爺ちゃん……」
エリゼの言葉を聞き、ラヴィアンは子供の頃を思い出した。それはまだ、祖父が存命だった時の頃。
『お爺ちゃん、英雄って何なの?』
『英雄か……。そんなもの私にもわからないよ』
『え? だって、お爺ちゃんは英雄だったんでしょ?』
『違うよ。お爺ちゃんが英雄だったんじゃない』
その後、祖父が何を言ったのか、上手く思い出せない。だが、その時の自分を見つめてくれる祖父の顔はとても穏やかで優しい顔をしていた。
「……わかった」
「え?」
立ち上がっていたラヴィアンはその場に座り、アルフィンたちと向き合った。
「お前たちと行動する。だから、もう少しだけ話に付き合ってくれないか?」
突然の頼みにアルフィンとエリゼは目を丸くして顔を合わせるが、すぐに笑顔を浮かべて、静かに頷くのだった。
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一方、アルフィンたちと逸れてしまったユーシスたちは、
「うん、わかった。ボクたちもそういう風に動くからあーちゃんの方も気を付けてね」
ミリアムが《ARCUS》を使って、アルティナと通話をしていた。通信を切ると、離れたところで待機していたユーシスたちの下へと駆け込む。
「殿下たちは無事みたいだよ! 後、《北の猟兵》のラヴィアンっていう人も一緒みたい」
「そうか。それで殿下たちはどうすると?」
「四人でボクたちとロドルフォを探すみたいだよ。とりあえず、森の奥に進むみたい」
「よし。ならば、俺たちも奥に行くぞ。お前たちもそれでいいな」
ミリアムから事情を聞いたユーシスは方針を決める。オランピアとウィリアムも彼の方針に従う。
「……それで、お前たちの方はどうする?」
ユーシスは少し離れたところから自分たちを見る三人の男女、マーティンたち《北の猟兵》に視線を向ける。
「どうするもこうするも、ラヴィがそっちの仲間と合流しているんなら、俺たちも一緒に行動した方が効率的だろう」
「下手な真似はするなよ。何かしたら、そのまま魔獣の餌になると思え」
「お~~、怖い。わかりましたよ、アルバレアの坊ちゃま」
ユーシスは鼻を鳴らして、森の奥へと向かう。その後をオランピアたちが続き、マーティンたちはその後を付いて行く。先行するユーシスにミリアムが近づく。
「ねぇねぇユーシス、無理してない?」
「何がだ」
「あの三人を連れて行くこと。ケルディックのこと、まだ、引きずってるでしょ?」
昨年の内戦でユーシスの父、ヘルムート・アルバレアは《北の猟兵》を使って、ケルディックを焼き討ちした。そして、首謀者たる父を逮捕したのは、他ならないユーシスだった。
「気にしていない。あの件は俺なりに踏ん切りがついた。《北の猟兵》の件もサラ教官がケジメをつけてくれたからな。あいつらを連れて行くのは、ただの魔獣対策だ」
「ニシシ♪ 素直じゃないね。本当は放っておけないからでしょ? ノーザンブリアの賠償金についても今朝、聞いてたみたいいだし」
「それがどうした」
「誰から聞いたのかな~~? 帝都にいる知り合いだって聞いたけど、その人、ユーシスと友達なの?」
「あんな面倒な男、友人でも何でもない。ただの喧嘩相手だ」
眉を潜めるユーシスにミリアムは笑みを隠せない。それだけで誰なのかわかってしまったからだ。
そんな二人の話を彼らの後ろで聞いていたオランピアたちは、
「誰のことなんでしょう」
「たぶんだけど、リィン先輩たちと同じⅦ組の先輩だよ。ユーシス先輩とは特に仲が良いって姉さんが言っていた」
二人の話がミリアムの耳に入った。
「そういえば、ウィルって委員長の弟さんなんだよね! ボク、初めて知ったよ!」
「あ、はい。僕もミリアム先輩の事は聞いています」
「先輩……、えへへ、先輩か♪」
先輩という響きが気に入ったのか、連呼してはしゃぐミリアム。その姿にユーシスは呆れていた。
そんな彼らの様子を後ろから付いてくるマーティンたちは傍観していた。
「……マーティンさん、彼らに付いて行って大丈夫なのですか?」
緊張感がないユーシスたちのやり取りに、タリオンは不安がってマーティンに訪ねる。
「心配はねぇだろう。あいつらの実力は内戦の時に知ってるからな」
「そういえば、帝国の内戦に参加していたんですよね。その……ケルディックの焼き討ちに参加したと」
「あぁ。あいつらは先代アルバレア公を逮捕して俺たちを退けた、《トールズ士官学院》の学生たちだ。帝国の英雄とも親しい間柄だ」
「て、帝国の英雄とですか?!」
「ケルディックの事件であいつらと一緒に、あの灰色の騎士人形が現れたからな。間違いねぇよ」
マーティンが頭をかいて答えると、イセリアが話に割り込む。
「ねぇ、そこまでわかってるなら、どうして士官学院に行かなかったの? そこに行けば、帝国の英雄についての情報が多く集まるじゃない」
「バカ言ってんな。あそこには元帝国元帥のヴァンダイクがいるんだぞ。それにサラもいるからな」
「サラ? もしかして、サラ・バレスタイン?」
「し、《紫電》のバレスタインですか?!」
タリオンの声が大きく、前を歩いていたユーシスたちが振り向く。
「何々? サラ教官の話をしていたの?」
「え、きょ、教官?」
「うん。サラはボクたちの担任教官だったんだよ」
ミリアムの発言にタリオンは目を丸くする。
「あいつがあの場にいたのはそれが理由か」
「マーティンと言ったか。お前に聞きたいことがある」
納得してるマーティンにユーシスが睨みつける。
「ロドルフォ・ソレイユについてだ」
「……あいつがどうした?」
「かつて、お前たちの団に所属していたみたいだが、随分と嫌われているようだな」
「まぁ……な」
マーティンは罰悪そうに目を逸らす。
ケルディックでのやり取りを見ていたユーシスは、ロドルフォが《北の猟兵》との間に、何かしらの確執があることを見抜いていた。
「俺たちはあいつがお前たちが送り込んだスパイでないことを証明しなければならないのでな。貴様が知っているあいつの情報、洗いざらい吐いてもらおうか」
「俺が素直に言うと思ってんのか?」
挑発するように口角を上げるマーティンだったが、そこにオランピアが口を挟む。
「少なくとも、あなたはロドルフォさんに対して、申し訳ないと思っているのではないですか? でなければ、あの人の話をする度にそんな苦い顔はしないと思いますよ」
「……よく見てるな、嬢ちゃん」
ため息を吐いて、観念したマーティンは語り出す。
《北の英雄》ロドルフォ・ソレイユの栄光と没落の英雄譚を。
~~~~~
アルフィンたちは魔獣たちを掻い潜りながら、森の奥へ進む。
「周辺に魔獣の気配はありません。このまま先を進みましょう」
アルティナが《クラウ=ソラス》の腕に乗って、周辺の探索から戻って来た。彼女の報告を聞いたラヴィアンはアルフィンたちに指示を出す。
「私が前。二人は左右に広がって周辺を確認。何か妙なものを見つけたら、逐一報告しろ」
「はい」
「わかりました」
「それと……」
最後にアルティナを見る。
「お前は二人の後ろにつけ。何かあったらフォローに回れ」
「了解しました」
ラヴィアンの指示に従い、アルフィン、エリゼが肩を並べて、その後ろをアルティナが付いて行く。
「ラヴィさんの指示、わかりやすくて、動きやすいですね」
「そうね。グラン教官やロドルフォさんに指示されているみたいだわ」
「姫様、よくロドルフォさんに怒られていますしね」
「う……、それは言わないで」
旧校舎での失態を思い出し、アルフィンは顔を赤くする。
「何の話をしている」
「ラヴィさんの教えが上手いなと思ったんです」
「……まぁ、あっちの方でも、新人たちに教えていたからな」
「そうなのですか! その年で教官なんてすごいですね!」
「そうか? あまり実感はないが……」
実際、ラヴィアンの指導は大雑把で感覚的なもののため、訓練兵にはあまり好評ではない。だが、アルフィンたちがわかるくらいには成長しているのようだ。本人はあまり自覚はなさそうだが。
「ロドルフォに怒られたというのはどういうことなんだ?」
「そ、それは……」
黒歴史になりかねている内容を問われて、俯いてしまうアルフィン。
その時――、
――ズカンッ!
突然の銃声。アルフィンたちは顔を上げて、銃声が鳴った方を顔が向く。
「今のは?!」
「そんなに遠くはありません!」
「《クラウ=ソラス》」
アルティナは《クラウ=ソラス》に指示を送る。主に呼ばれた黒い戦術殻は上空に飛んで、サーチを始める。
「……見つけました」
「誰ですか?」
「そこまではわかりませんが、二人います。一人は横たわって、残った一人が魔獣の群れに囲まれています」
「急いで行きましょう!」
アルフィンたちは銃声が鳴った場所へ走り出す。
「あれは!」
広げた場所に辿り着いたアルフィンたち。そこにいたのは――
「ロドルフォさん!」
二丁目拳銃を構えて、狼型の魔獣に囲まれているロドルフォがいた。彼の後ろにはルカが地面に横たわって眠っていた。
「すぐに助けに……」
エリゼが前に踏み出そうとするが、それは無駄に終わった。
「……クロック・アップ」
ロドルフォがそう呟くと、その場から姿を消す。
ダン! ダン! ダン! ダン!
すると、銃声と共に魔獣が消滅していく。
周りを見渡す魔獣だったが、銃声が鳴るたびに、ばたりと倒れていく。
吠えながら動き回る魔獣たちだったが、抵抗することもできずに消えていき、最後には姿を現したロドルフォだけが残っていた。
「み、見えませんでした」
「《北の英雄》。想像以上の戦闘能力です」
ロドルフォが見せた圧倒的な実力にアルフィンたち四人は言葉を失ってしまった。すると、彼は四人に気づいたのか、視線を彼女たちに向ける。
「ロ、ロドルフォさ……」
――チャキッ
アルフィンは話をしようと声をかけるが、ロドルフォは彼女に向かって銃口を向けるのだった。