英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~   作:魔ギア

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 長い間、お待たせしまって申し訳ありません。
 それではご覧ください。


第二十四話 仲間

『先手必勝です!』

 

 アルフィンが叫ぶと同時に機甲兵が前進。足に取り付いたローラーを激しく回して両腕を突き出す。

 魔獣は近づいてくる機甲兵を目にして、同じように両腕を突き出した。

 

 ドンッ!!

 

 両者が激しくぶつかり、互いの腕を掴んで取っ組み合いが始まった。

 

『お……も、い!』

 

 無意識にアルフィンは歯を食いしばる。魔獣の強靭な怪力に操縦するハンドルがピクリとも動かない。

 コックピット内が激しく揺れる中、魔獣を押し倒そうとアルフィンはハンドルに力を入れる。

 

「《クロノ・ドライブ》!」

 

 エリゼがロドルフォたちにアーツをかける。動きが加速したオランピアが魔獣の背後に回り込んで、足元に近づく。

 

「光嵐!」

 

 光の斬撃で螺旋を描きながらオランピアは魔獣の膝に刃を通した。

 

「エリゼさん!」

「鳳仙華!」

 

 オランピアが後ろに下がるとすれ違いにエリゼが前に出る。空中で横回転して威力を上げた一撃はオランピアが斬った膝に当たる。

 

「硬いっ」

 

 痺れる腕を抑えてエリゼは斬った場所を見る。薬によって強化された魔獣の皮膚は硬く、二人が放った斬撃は魔獣の皮膚に赤い十字を作り上げることしかできなかった。

 

「下がって!」

 

 エリゼたちを下がらせてウィリアムが法剣を抜く。助走を付けてエリゼたちが作った傷口に向かって法剣を突き刺した。

 

「炎よ、宿れ!」

 

 魔獣の膝に深々と刺された刀身が赤く染まり、熱を帯びる。

 

「爆ぜろ!」

 

 爆発。圧縮された高熱が皮膚の内側を燃やす。下から伝わってくる高熱と激痛に魔獣は耐え切れずに悲鳴を上げる。

 

「アルフィン!」

 

 ウィリアムの叫びにアルフィンはハンドルに力を込める。身体ごとを大きく傾けてハンドルを回す。バランスを崩した魔獣が地面から離れて宙に浮く。

 

『んんりゃあああああ!!』

 

 激しい揺れと共に鳴り響く破壊音。機甲兵に投げられた魔獣が地面に叩きつけられた。

 仰向けに倒れた魔獣は起き上がろうとするが、機甲兵が魔獣を上に乗っかる。

 

「剣に力を込めろ! ただの刃では奴には効かん!」

 

 押さえられているのを好機にロドルフォがエリゼたちに指示を出す。

 魔獣の上に登ったロドルフォは纏った()()()()()()ウォークライ》を双剣に込める。振り抜いた剣は硬かった魔獣の皮膚を斬り裂き、血を飛ばす。

 

「炎よ!」

 

 オランピアは黄金の太刀に手を添えて炎を灯す。それを見てウィリアムはエリゼの方に振り向く。

 

「エリゼ、剣を!」

「! はい!」

 

 ウィリアムが火球をエリゼに向かって放つ。

 向かってくる火球にエリゼは細剣に掲げて受け止める。炎は細剣を包み込んで刀身を赤くする。

 

「「せーの!」」

 

 二人は魔獣の両脇腹に剣を突き刺す。炎を纏った剣は硬かった皮膚を貫く。

 二人は突き刺したまま、そのまま走り出す。硬い皮膚を焼きながら、二人は赤い一文字を魔獣に付ける。

 腹部から走る痛みに絶叫を上げる魔獣。耐え切れずに腕と足をジタバタさせると地面が揺れ動く。

 

「きゃっ!」

「エリゼ!」

 

 反応が遅れたエリゼはその場で躓く。ロドルフォは魔から降りて、身動きが取れない彼女を抱えて、その場から離れる。

 

「オランピア!」

 

 ウィリアムは伸ばした法剣を木の枝に絡める。刀身を戻して、木に引っ張られる際にオランピアの腕を掴んで、共に木の上へと避難する。

 一方で暴れる魔獣の上に乗っていた機甲兵は体勢を崩す。それを見た魔獣は勢いよく上半身を起こした。

 

『しまっ……』

 

 気づいた時にはもう遅く、魔獣は機甲兵を鷲掴みする。身体を起こすと同時に、魔獣は機甲兵を地面に押し倒した。

 機内が激しく揺れて座席に叩きつけられてしまうアルフィン。痛みで顔を顰める中、堪えながら正面のモニターに顔を向ける。するとそこには拳を振り上げる魔獣の姿が映っていた。

 やられると顔をこわばらせるアルフィンだったが、突然、魔獣の顔が爆発する。

 

「こっちだ」

 

 ロドルフォが声を上げて、魔獣に向かって手榴弾を投げる。

 何度も爆撃を受けると魔獣は機甲兵から視線を外して、ロドルフォを睨みつける。

 

「捕まえてみろ」

 

 ロドルフォが背を向けて走り出す。怒る魔獣は機甲兵から離れて彼を追いかける。

 追いかけてくる魔獣に手榴弾を投げるロドルフォだったが、爆撃を受ける魔獣の勢いは衰えない。距離を取ろうとするが、その都度、魔獣がすぐに彼との距離を詰める。

 距離の詰め合いを繰り返すが、立っていた巨木に立ち塞がれてロドルフォの足が止まる。

 それに魔獣はニヤリと口を歪ませて、彼を押し潰そうと腕を大きく振り上げた。

 

「ベノムフレイム!」

 

 しかし、魔獣の頭が黒い炎に包み込まれた。瘴気にまみれた炎が魔獣の皮膚と目を蝕む。

 頭を抱えながら藻掻く魔獣を目にしたロドルフォは顔を上げる。そこにはウィリアムが《ARCUSⅡ》を構えていた。ロドルフォは魔獣を引き付けてウィリアムの射程圏内まで誘導していたのだ。

 親指を立てるウィリアムにロドルフォは笑みで返していると、魔獣は何度も頭を叩いて炎を叩き落とした。

 

『やぁああああ!!』

 

 丸まった背中にアルフィンが飛び掛かる。

 強烈な膝蹴りで魔獣をうつ伏せに押し倒して、そのまま後頭部を殴りつける。

 

 ドン! ドン! ドン! ドン!

 

 一撃が当たる度に騒音が響く。繰り返して殴り続ける鉄の拳に魔獣は苦しい悲鳴を漏らす。

 

『このまま……!』

 

 畳みかけようと仕掛けるアルフィンだったが、突如、魔獣が顔だけを持ち上げて大きく息を吸い込んだ。

 

「全員、耳を塞げ!」

 

 ロドルフォが咄嗟に指示を飛ばす。次の瞬間、

 

 ――ガァアアアアアアアアッッッッ!!!!!!

 

 魔獣の咆哮が正面に立つ木々を吹き飛ばした。

 耳を閉じても響く大音量がエリゼたちを襲い、音と共に吹く突風が周囲の木々を揺らす。

 

『み、耳がっ……!』

 

 魔獣の上に乗っていたアルフィンは至近距離からの雄叫びに、耳を抑えてしまう。

 手がハンドルから離れて制御を失った機甲兵はバランスを崩す。魔獣は起き上がり、自分にのしかかっていた機甲兵を殴って吹き飛ばした。

 

「姫様!」

 

 仰向けに倒れる機甲兵に魔獣がゆっくりと近づく。助けに向かおうとするエリゼたちだが、それよりも早く魔獣が拳を振り下ろした。

 

「聖なる盾よ、守護せよ!」

 

 だが、魔獣の拳は金色の障壁によって弾かれる。

 

「ブリューナク起動」

 

 今度は上空から光線が降り注ぎ、周辺に砂塵を舞い上げる。

 

「ガーちゃん、分身!」

 

 続く光線で身動きが取れない魔獣に向かって、小さな少女が大きなハンマーを片手に突っ込む。ハンマーを両手で振り回して、近くで浮いていた巨大な白い球体にハンマーを叩きつける。

 

「テラ・ブレイカー!!」

 

 豪速球の球が魔獣の腹を抉る。球は魔獣を巻き込みながら木々を何本もへし折って、遠くへと吹き飛ばした。

 

「全員、無事か!」

 

 いきなりの事に止まってしまったエリゼたちの下にユーシス、ミリアム、アルティナが駆け寄って来た。

 

「ユーシスさん! ご無事でしたか!」

「お前たちもな。それより、あの機甲兵は誰が?」

「アルフィンさんです。彼女が機甲兵を操縦しています」

「えーー! アルフィン殿下が?!」

 

 オランピアが教えるとミリアムは思わず声をあげてしまった。ユーシスとアルティナは声こそ出さなかったが、目を大きく開いていた。

 

「ちょうどいい。そこの小娘二人に頼みがある」

「頼みとは?」

「お前たちの戦術殻を貸せ」

 

 ロドルフォは立ち上がる機甲兵を見ながら、簡潔に説明する。

 

「機甲兵用の武器に変身させてアルフィンに持たせろ。あの魔獣とやり合えるのはあいつが乗る機甲兵だけだ」

「なるほど。ミリアム、聞いたな」

「OK! あーちゃん、行くよ!」

「仕方がありませんね」

 

 ミリアムとアルティナの後ろに《アガートラム》と《クラウ=ソラス》がそれぞれ立つ。

 

「ボクは剣を!」

「私は盾を」

「「トランスフォーム!!」」

 

 主人の命令を受諾した二体の戦術殻が強い光を放つ。光は機甲兵の下へと向かい、それぞれの手に収まる。

 

『な、何?!』

 

 突然のことに戸惑うアルフィン。光が収まると右手には白の剣が、そして左手には黒の盾がそれぞれ握られていた。

 

『こ、これは……』

「アルフィン! その武器を使え!」

 

 ロドルフォはエリゼたちを引き連れて機甲兵の下に集まる。

 

「俺たちが奴を引き付ける。隙ができたら、そこを狙え!」

『で、ですが、私は剣を使ったことが……』

「そこは私が何とかする」

 

 機甲兵の肩に誰かが乗る。モニターで確認するとそこに映っていたのは金髪の少女。

 

『ラヴィさん!』

「私が指示を出す。その通りに動け」

『……はい!』

 

 不安がっていたアルフィンはやる気を出して、構えを取る。すると、彼女たちの下にタリオンとイセリアがやってきた。

 

「ラヴィ! 何をしているんですか!」

「悪いけど、あいつに一泡吹かせないと気が済まない」

「ですが、このままい続ければ、捕まりますよ!」

「倒した後にすぐ逃げればいい」

「そ、そういう問題では……!」

 

 タリオンの必死な説得にラヴィアンは耳を貸さない。そこに今度は遅れてマーティンがやってきた。

 

「ったく、とんでもねぇ展開になってんな」

「マーティンさん! あなたもラヴィの説得を」

「あいつが俺の言う事を聞くと思うか?」

「そ、それは……」

 

 マーティンの指摘にタリオンは黙ってしまう。静かになった彼から視線を外してロドルフォの方を見る。

 

「それにこいつがいるんだ。なおさら、あいつは退かねぇよ」

「え! ラヴィちゃんと《北の英雄》ってそういう関係?!」

「んなわけあるか。ほら」

 

 マーティンは《新生貴族連合》が集めていた武器をタリオンたちに渡す。

 

「速攻で片付けて、ここを撤退する。これが最後の共闘だが、文句ねぇか?」

「……わかった。手を貸せ」

 

 ロドルフォの隣にマーティンが立つ。ロドルフォを構える姿を横目にするマーティンは思わず苦笑いする。

 

「七年ぶりの共闘だな」

「あの時は俺一人でやったから、共闘とは言わん」

「はいはい。そうだったな」

 

 二人が軽く揉み合っていると、魔獣が高く跳び上がってアルフィンたちの前に着地する。

 鼻息を荒くして疲れを見せる魔獣はその身体を少しずつ大きくしながら咆哮を上げる。

 

「グノーシスの力をさらに引き出したか」

 

 顔を険しくするロドルフォ。

 ユーシスたちが加わった事で戦力は上がったが、それでもまだ五分という見積もりだった。

 ここでさらに強化するのは、ロドルフォにとっては想定外だった。

 

(だが……)

 

 エリゼ、オランピア、ウィリアム、そして、機甲兵に乗るアルフィンと順番に視線を向ける。

 

(仲間……。そうだ。俺は仲間がほしかった)

 

 怪物と言われて、周りから拒絶されて、孤独を強いられた。

 妹がラヴィアンと村の子供たちと仲良く遊ぶ姿を見て嫉妬した。

 猟兵団に入り、仲間ができたと思ったが、すぐに捨てられてしまった。

 かつて抱いていたそれは幻想だと捨て、一つだけ残った大切なものを守るために全てを切り捨てた。

 だが—―、

 

『いつか、君たちのために戦ってくれる仲間が必ず現れる。この世界は君が思っている以上に広く、暖かいものが多くある』

 

『一方的な信頼関係では成り立たない。お互いがお互いを大切にして支えあう存在。それが仲間だと私は思っている』

 

 騙したにもかかわらず最後まで自分たちの味方になってくれた英雄。

 素性を問わずに自分たちを受け入れてくれた領主。

 二人の言葉が脳裏に過る。そして—―、

 

『ロドルフォさんは私たちとⅦ組の大切な仲間です。この先、ロドルフォさんを見捨てて学院生活を送るなんて、私は想像もしたくありません。……だから、絶対に助けます』

 

 危険を省みずに自分たちを助けに来たクラスメイト。自分の過去を知りながらも「仲間」だと強く言ってくれた。

 そんな彼女たちに応えたい。自分を受け入れてくれた彼女たちの力になりたい。

 

「だから……、絶対に勝つ!」

 

 闘志を奮い立たせるロドルフォ。すると彼の身体が光りだした。

 

「! 何だ?」

「ロドルフォさんだけじゃなくて、私たちも?」

 

 ロドルフォ以外にも、エリゼ、オランピア、ウィリアムが彼と同じように淡い光を放っていた。

 

『この輝きは……』

 

 そして、機甲兵の中にいるアルフィンも同じだった。

 周りの者たちが謎の現象に戸惑う中、ロドルフォは光を発しているそれを取り出す。

 

「……《ARCUSⅡ》?」

 

 ロドルフォが取り出した《ARCUSⅡ》を見て、オランピアたちも取り出す。ロドルフォのと同様に同じ光を放っていた。

 

「これはいったい……」

「よくわからないが、頭の中に何かが入ってくる」

 

 ロドルフォは頭に手を置いて考え込む。知らない情報が次々と入ってくる。

 

「……エリゼ、ウィル、オランピア、そして、アルフィン」

 

 一人一人の名前を呼び、エリゼたちは彼に振り向く。

 

「俺の指示に従ってくれ。今なら、あいつを倒すことができる」

「本当ですか?」

「あぁ。だが、そのためにはお前たちの力が必要だ。……俺に力を貸してくれるか」

 

 一人で戦い続けた男が初めて他人の力を求める。

 彼の切実な願いを耳にして誰もが沈黙する中、真っ先に声を上げる者がいた。

 

『もちろんです!』

 

 機甲兵に乗っているアルフィンだった。

 

『ロドルフォさん、指示を! あなたのことを信じます!』

 

 即答ぶりに目を丸くしてしまうロドルフォ。そして、そんな彼をエリゼたちは微笑みながら力強く頷いた。

 

「アハハ♪ これは先輩として、いいところを見せなきゃね、ユーシス!」

「言われるまでもない。お前は後ろに下がれ。今のお前たちは武器を持っていないのだからな」

「わかってるって。あーちゃんと一緒にアーツで援護するから。ね、あーちゃん」

「どうして、あなたが仕切るんですか」

 

 そして、その光景に懐かしさを覚えるユーシスとミリアムは笑みを浮かべる。アルティナは仕切るミリアムに呆れながらも、ロドルフォたちのやりとりをじっと見つめていた。

 

「タリオン、前衛は任せた」

「じ、自分ですか?!」

「アンタ以外に誰がいるのよ」

 

 いきなりのことに狼狽えるタリオンだが、それを無視するマーティンたちを見て、諦めて前に出る。

 

『行きます!』

 

 アルフィンの合図に全員が動き出す。

 ロドルフォは《ARCUSⅡ》を手に取り、二代目Ⅶ組に指示(オーダー)を出す。

 

「光を超えろ。《オーバー・クロックアップ》!!」

 

 《ARCUSⅡ》が強く光り出し、ロドルフォを含めた二代目Ⅶ組全員を包み込む。

 

「! 身体が軽い」

「あまり長くは持たない。すぐに終わらせるぞ!」

 

 身体の異変に気づくウィリアムだが、ロドルフォの言葉で思考を切り替える。同じく横で聞いていたオランピアが先陣を切る。

 

『双翼疾風!』

 

 瞬時にその場から消えて()()に分身するオランピア。その数に魔獣は虚を突かれる。

 炎を灯して威力を上げた斬撃は魔獣の皮膚を斬り裂いて、鮮血を散らせる。

 

「確かに速くなっている」

 

 ウィリアムの感覚は間違っていなかった。

 本来二人までしか分裂できなかった技が、その倍以上の数を作り出せたことに使ったオランピア本人も驚嘆していた。

 

「そのまま叩き込め!」

『やぁ!』

 

 怯んだ魔獣にアルフィンが剣を振り下ろした。硬かった皮膚は容易く斬り裂かれ、魔獣は悲鳴を上げる。

 

『このまま……』

「盾!」

 

 追撃しようとするアルフィンだったが、咄嗟に盾を前に構える。

 魔獣の拳が盾に叩きこまれる。

 斬られて痛みが走る中、魔獣は我武者羅に拳を振り回して反撃を許さなかった。

 

「エリゼ!」

「はい!」

 

 エリゼとウィリアムが左右に広がり回り込む。炎の剣で何度も奇襲をかけて、魔獣の身体に傷を作る。

 それを鬱陶しく腕を振って薙ぎ払う魔獣だが、動きが速くなった二人を捉えることができない。そして、隙ができたところをアルフィンが再び斬りかかる。

 

「タリオン、打ち合わせ通りに頼むわよ」

「わかっています!」

 

 タリオンが魔獣に向かって駆ける。彼に向かって、アルティナとミリアムがアーツをかける。

 

「支援します」

「フレー、フレー! 頑張れ、男の子!」

 

 タリオンは加速し、魔獣の背中を駆け上がる。

 

「オォオオオオオ!!」

 

 ガンドレットを後頭部に叩きつける。

 頑丈さで大したダメージは受けていないが、突然の不意打ちに魔獣は頭の上に乗るタリオンを睨みつける。

 

「離脱して!」

「わかってますよ!」

 

 タリオンはすぐに魔獣から飛び降りてその場から逃げ出す。魔獣は機甲兵を押し返してタリオンを追いかける。

 

「後は頼みますよ!」

 

 魔獣から逃げるタリオンは正面で待ち構えていたマーティンとイセリアの間を通り過ぎる。二人はその場でライフルを構えて、迎え撃つ。

 

「外すなよ」

「心配ご無用♪」

 

 ライフルが一斉に火を吹く。

 放たれた弾丸はタリオンを捉えていた魔獣の両目に命中する。

 視界を奪われた魔獣は目を手で抑えて、勢いよく前に転がった。

 そこにユーシスが飛び込んだ。

 

「眩き光よ、我が剣に力を!」

 

 ユーシスが構えていた騎士剣に力を籠める。すると剣は黄金の光を放って一本の聖剣へと変わった。

 

「アイオロスセイバー!」

 

 放たれた聖剣は魔獣へと向かい、立ち上がろうとした魔獣の足を吹き飛ばした。

 

「今です、殿下!」

「《クラウ=ソラス》!」

 

 機甲兵が持つ黒い盾が剣へと変わる。二本の剣を手に持った機甲兵は、足を失い、その場で蹲る魔獣の上に飛び掛かる。

 

『これでっ!』

 

 剣を逆手に持って魔獣の背中に剣を突き立てる。

 串刺しにされた魔獣は抜け出そうと暴れ回る。機体に揺られながらも今度も逃がさないようにアルフィンは必死に押さえつける。

 

「そのまま押さえていろ」

 

 ラヴィアンが機甲兵の肩から降りて魔獣の顔へと回る。懐から手榴弾を取り出してピンを外した。

 

「じっとしていろ」

 

 腕を振りかぶって口の中へと放り投げる。

 飲み込んだ魔獣は一瞬、動きを止めるが、くぐもった音と共に口から血と煙を吐き出す。

 

「アルフィン、ラヴィ。離れていろ」

 

 ぐったりと倒れて動かなくなった魔獣にロドルフォが静かに近づいた。

 

「どれだけ強い力を持ち、再生能力を持っていようと、冷凍してしまえば、その機能は停止する」

 

 彼の周囲が冷えていく。彼を纏うオーラが冷気を放ち、周囲を凍らせる。

 

「クロックアップ」

 

 加速して姿を消すロドルフォ。すると、魔獣に切り傷が生まれ、そこが瞬時に凍結する。

 

「まだだ」

 

 魔獣が徐々に氷に覆われる。飛び散る血が結晶に変わり、魔獣は巨大な氷の像へと変わっていく。

 ロドルフォは双剣に意識を集中する。刀身が氷を纏って刀を伸ばす。同時に刃が少しずつ形を変えていき、ノコギリのようなギザ刃を作り出した。

 

「削ぎ落とす」

 

 氷の剣でオブジェとなった魔獣を斬る。いや、削っていく。

 腕、腹と魔獣の身体が氷ごと落とされていき、徐々に小さくなっていく。

 

「仕上げだ」

 

 残りが頭と胸だけになってしまった魔獣のオブジェにロドルフォが駆ける。

 ギザ刃の刀身が再び形を変えて、今度は精巧に加工された真っ直ぐな刀身へと変わる。

 

「ノーザンスライサー!」

 

 交差する二閃。氷のオブジェに十字の傷が刻まれる。

 氷は亀裂を広げていき、閉じ込められた魔獣と共に粉々となって崩れていった。




 あまり筆が進まらず、だいぶ遅くなってしまいました。
 完結できるように頑張っていきます。
 評価、感想の方もお待ちしております。
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