英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~   作:魔ギア

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第二十七話 新たな問題

 きっかけは先月の特別実習。オスカーたちⅦ組B班が向かったラクウェルで起きた騒動が原因だった。

 オルディスに降り立ち、ラクウェルへと向かうオスカーたちを出迎えたのは帝国軍でも領邦軍でもなかった。シャーリィが所属する猟兵団《赤い星座》の幹部、《閃撃》のガレスが待ち構えていたのだ。

 当初はオルディスに駐在している領邦軍がオスカーたちをラクウェルへと送る予定だったらしいが、帝国政府とのいざこざが原因で人員を割けることができなかったため、代わりに《赤い星座》が担当することとなったとのことだ。

 猟兵の手を借りることを拒否しようとしたオスカーだったが、メイが無理矢理、引っ張って、ガレスが用意した車でラクウェルへと向かった。

 ラクウェルに到着した彼らは《赤い星座》が経営している《ノイエ=ブラン》に宿泊することになり、実習を開始するのだった。

 一日目は特に問題はなかった。オルディス出身でラクウェルにも来たことがあるメイがリーダーとなり、要領がいいリアムとカグヤが上手くフォローを行い、戦闘面ではオスカーとシャーリィが貢献してくれたおかげで順調に課題を終わらせることができた。

 だが、二日目に問題が起きてしまった。

 ラクウェルでもアルフィンたちの所と同様に《新生貴族連合》が暗躍していたのだ。

 それを知ったメイたちは行動を開始して、《新生貴族連合》のメンバーと思わしき人物を特定。町に被害が及ばないように、外で拘束しようと提案するオスカーだったが、シャーリィはそれを無視して、町中でその人物を捕まえてしまったのだ。

 そこから先は大混戦。

 別の場所に潜伏していた《新生貴族連合》のメンバーがシャーリィに襲い掛かり、シャーリィは事前に待機させて置いた《赤い星座》のメンバーを呼び寄せて、壮絶な市街戦が始めてしまったのだ。

 

「結果はシャーリィたちの圧勝。相手さんはみんな、女神の下へと行っちゃったよ」

 

 シャーリィは日常会話のように淡々と当時のことを語る。あまりにもバイオレンスな話に聞き手のアルフィンたちは黙ってしまった。

 

「一応、言っとくけど、シャーリィたちは殺してないからね。全員、口の中にあらかじめ毒を仕込んでて、自決しちゃったんだよ」

「それは……、こちらと状況が少し似ているわね」

 

 ケルディックでの結末を思い出したアルフィンは、彼らを始末したであろう《H》の姿を思い浮かべてしまった。

 

「シャーリィさんはどうして、町中で捕まえたのですか? オスカーさんの言う通り、外で捕まえれば、被害も少なくなると思いますが……」

「あぁ、ダメダメ。もし、外に出していたら、町が爆発していたから」

「ば、爆発?!」

 

 質問したエリゼだったが、予想外の回答に目を見開いてしまった。

 

「あいつら、町のあちこちに爆弾を仕掛けていたみたいでね。外に避難したら、起爆スイッチを押して、町を破壊しようって考えてたんだよ」

「実際、騒動の後、鉄道憲兵隊が町を捜索したところ、爆発物が数十個見つかったそうです」

「数十個って……」

 

 カグヤの口から出た爆弾の数に、アルフィンは思わず、恐れ慄いてしまう。明らかにイタズラなどで済ませられる量ではないからだ。

 

「ラクウェルを文字通り、爆発させるつもりだったということですね。では、シャーリィさんが町中で騒動を起こしたのは……」

「避難できなければ爆発もできない。ちょっと町は壊れるかもしれないけど、吹き飛ぶよりはマシでしょ」

 

 シャーリィが取った行動にエリゼは納得して頷くのだった。

 

「被害の方はどうなったのですか?」

「町の方は復興が少し必要ですが、幸い、怪我人はいませんでした。シャーリィさんとメイさんが事前に町の人たちを避難させていたみたいです」

 

 避難先になったのは《赤い星座》が経営している《ノイエ=ブラン》。猟兵が経営している店だから、爆発物が設置されている心配はなかったようだ。

 

「オスカーさんにはその内容を伝えたのですか?」

「伝えたけど無理無理。あの堅物坊っちゃん、妙に意気地になっちゃってさ」

「頭では理解しているみたいですが、どこか本人なりに納得がいかないみたいです」

 

 そんな険悪なムードを残しつつ、特別実習を終えたⅦ組B班。帰りはほぼ無言で、リアムあたりは居心地が悪かったようだ。

 

「そうなのですか。…………あの、今さらながら、ここで話す内容ではないと思うのですが……」

 

 エリゼは恐る恐ると後ろを見る。そこには白い制服を着た貴族生徒の女子たち全員が、顔を青ざめていた。彼女たちにとってはあまりにショッキングな内容だったようだ。

 

「文句言うならアルフィンに言ってよ。聞きたいって言ったの、アルフィンなんだから」

「そうね。少し配慮が足りなかったわ」

 

 手に持っているボールの中から伝わる甘い匂いに引き寄せられて、アルフィンたちは今、やっている作業を再開するのだった。

 今の時間は男女で分かれて、それぞれの授業を行っていた。

 男子陣は視聴覚室で導力学の授業を受けている中、アルフィンたち女子陣は家庭科室で調理の授業を受けていた。

 

「それにしても、エリゼのことは知っていたけど、三人とも料理ができるなんて思わなかったわ」

 

 ボールを持って中にある具材をかき混ぜながら、アルフィンは砕けた口調でオランピアたちの手際の良さに感心していた。

 学院に入って、既に一ヶ月以上経っており、交流を深めたアルフィンは丁寧な口調をやめて、普段の口調で彼女たちと接するようになっていた。

 

「私は父子家庭でしたので、帰りが遅い父に代わって、よく料理をしていましたから」

「カグヤさんのお父様はどのようなお仕事を?」

「詳しくは言えませんが、国のために働いている公務員とだけ」

 

 笑みを作ってやんわりと誤魔化すカグヤは、隣で混ぜた具材を形に流し込むシャーリィの方に振り向く。

 

「シャーリィさんも意外と料理ができるんですね。猟兵団にいた時もしていたのですか?」

「まぁね。見習い時代にいろんな雑用をやっていたよ。一人でも生き残れるように、ってパパやランディ兄たちに叩き込まれたから。まぁ、こういった手間のかかるものは初めてだけどね」

 

 猟兵の世界でも一般常識は学ぶのね、とアルフィンは少し失礼な感想を心の中で呟くのだった。

 

「シャーリィとしてはエリゼが料理できるのに驚きかな。一応、後ろの子たちと同じ貴族様でしょ?」

「一応って……、まぁ、私の実家はどちらかというと平民よりの生活なので、よく母様の手伝いをしていたのです」

「『領民は民に寄り添うべし』。テオ叔父様がよく言っていたことね」

「ふ~ん。変わった貴族だね。『私の言うことを聞かぬ奴は死刑だ!』とか、もっと傲慢なものを想像していたけど」

「ま、まぁ、そういう人もいなくはありません……かな?」

 

 よくある悪徳貴族のマネをするシャーリィにエリゼは苦笑いを浮かべるのだった。そこでふと、隣で作業を続けているオランピアが視界に入った。

 

「オランピアさんはどうなのですか? 色んな場所に旅をなされていたと聞いていますけど?」

「私は義弟たちによく作ったことがあるから、苦手じゃないよ。……それに食べてほしい人がいたから」

「まぁ♪ それは噂のエドさんなのかしら?」

「や、やっぱり、何でもない」

 

 アルフィン同様、砕けた口調で呟くオランピアにアルフィンは面白そうに笑みを浮かんで絡んでくる。余計なことを口走ったことに気づき、オランピアは少し頬を赤くしてそっぽ向くのだった。

 

「まったく姫様ったら……。旅をしていたという話でしたが、オランピアさんはどんなところを回ったのですか?」

「クロスベルやリベール、帝国に共和国、あとは法国にも立ち寄ったことがあるよ」

「リベール……。ひょっとして、クローディア殿下とはその時に?」

 

 先月の実習の時を思い出したのか、エリゼは通信越しで出会ったクローゼのことについてを聞き出した。

 

「クローゼさんとはあの人が学生だった時に知り合ったの。……私を受け入れいてくれて、手を差し伸べてくれた初めての友達。あの人と出会えてたから、今の私がある」

 

 大切な宝を握り絞めるように両手を組んで静かに微笑むオランピア。その姿に友達以上の何かがあるとエリゼたちは感じ取った。そうしている間にも調理作業が進んでいく。

 

「後はオーブンで温めるだけですね」

「私たちⅦ組女子が作ったクッキー。できるのが楽しみね」

 

 アルフィンたちは形を取ったクッキーの生地をオーブンに入れて、出来上がりを待つのだった。

 

「とりあえず、出来上がったら食べちゃっていいわけ?」

「そうですね。余ったら、兄様やロドルフォさんたちにも分けてあげましょう」

「ロドルフォさんからの感想はちょっと怖いかな」

 

 不安そうにオランピアはⅦ組の万能超人の姿を思い浮かべる。プロレベルの腕を持つ彼からどんな感想がくるのか。期待半分、不安半分である。

 

「これを気に、シャーリィさんがオスカーさんに上げるのはどうですか?」

「いや、ダメでしょ。毒を入れてんじゃないかって、拒否するよ、絶対」

 

 冗談まがいでカグヤは提案するが、シャーリィは即座に否定する。

 

「よくわかんないけど、猟兵に対して、結構な恨みを持っているみたいだからね。ロドルフォに対しても、少し遠慮気味だし」

「やっぱりそこよね」

 

 シャーリィの見解にアルフィンも同意する。オリエンテーリングの時でも感じたが、オスカーが猟兵に対して、何かしらの確執があることはアルフィンだけでなく、Ⅶ組全員は見抜いていた。

 どうしたらいいのか、と考え込みながら、アルフィンはオーブンのタイマーが鳴る音に気づいて、クッキーを取り出すのだった。

 

 

 ~~~~~

 

 

 同時刻。学院二階の視聴覚室では、ウィリアムたち男性陣は導力ネットと睨みあいをしていた。

 

「こうして、こうすれば上手くできます」

「うわ、すごい……」

 

 担当のマカロフ教官が席を外して、自習をしていたウィリアムはメイと共に、リアムから導力ネットの操作を教わるために彼の所に集まっていた。

 他の生徒たちが操作に苦戦している中で、一人だけ手慣れた手つきでタイピングをするリアムにウィリアムは思わず、感心して声を上げてしまう。

 

「最初は苦戦するかもしれませんけど、慣れれば速くなれますよ」

「あいつらは早々にマスターしたみたいだがな」

 

 メイは視線だけを動かして黙々と導力ネットと向かい合っているロドルフォとオスカーをそれぞれ見る。

 

「う~ん。頭が少し痛くなる」

「ウィル君の所には導力ネットはなかったのですか?」

「うん。田舎の田舎だったからね。姉さんから教えてもらったけど、実物がなかったから知識でしか……」

「そういや、お前の姉貴はトールズ出身だったな」

「うん。リィン先輩と同じⅦ組で、去年、主席で入学したんだよ」

 

 三人が軽く話していると、離れたところで騒ぎ声が聞こえてきた。視線を移すと、平民生徒たちが集まって何かをしていた。

 

「何してるのかな」

 

 気になったウィリアムが覗くと、導力ネットのモニターに映っているリィンの姿に平民生徒たちが称賛の声を上げていた。

 

「英雄様の話題みたいだな」

「リィン先輩。すごく人気ですね」

「一緒に暮らしているから、ついつい忘れちゃうよね」

 

 世間ではリィンの性格などをかなり美化しているようだが、第三学生寮で共に暮らして、彼の人柄を知っている三人は平民生徒たちの反応に苦笑いを浮かべていた。

 

「話していると意外と普通でしたね。もっと威厳のある人だと思っていました」

「妹によく説教されているから威厳も何もねぇけどな」

「そういえば、メイって先輩に何か言われなかったの? その……、エリゼとの件で……」

 

 ウィリアムが言っているのは、入学の日にあった特別オリエンテーリング。メイとエリゼに起きたあるハプニングについてだ。

 

「あぁ~、そのことだが、それどころじゃなくなった」

「? 何かあったの?」

「バレて詰められたけど、そのすぐ後にエリゼが出てきたんだよ」

 

 メイが言うには、リィンもかつて特別オリエンテーリングで二人と同じようなハプニングがあったことを、うっかり漏らしてしまったらしい。そして、その話をエリゼが耳にしてしまい、彼女に問い詰められたようだ。

 

「笑っているようで笑っていなかったからな、あいつ」

「そ、それはちょっと怖いな……」

 

 想像してしまったのか、ウィリアムは顔を引き攣らせる。すると、集まっている平民生徒たちのところに一人の男が近づいてきた。

 

「うるさいぞ、下民共」

 

 白の制服を着た貴族生徒、モートンが連れの貴族生徒を連れて、不機嫌な顔つきで平民生徒たちを睨みつける。

 

「フンッ。よくもまぁ、そんな偽の英雄を持ち上げて。やはり平民というものは無能な愚者の集まりだな」

「おい! そんな言い方……」

「黙れ、愚民。誰の許可を得て口を開いている」

 

 反論しようとした平民生徒にモートンは傲慢な口調で黙らせる。

 

「我ら貴族に平伏するしかない貴様らの言葉など何の価値もない。ただ我らの言葉に従っているだけが貴様らの存在価値だ。わかったのなら、その口を開くな。次、開いたら死刑だぞ」

 

 彼から出た言葉に相手する平民生徒だけでなく、立ち聞きしていたウィリアムたちも言葉を失う。

 モートンが《新生貴族連合》に所属しているというのはアルフィンから聞かされていたが、ここまでひどいものだとは思ってもみなかったようだ。

 モートンの行動に苛立ったのか、メイは舌打ちをした後、ウィリアムたちから離れて、モートンの方に向かおうとする。

 しかし、それよりも前に一人の男が割って入った。

 

「いい加減にしないか、モートン・テルドール」

 

 オスカーだった。彼は平民生徒たちの前に立って、モートンと対立する。

 

「貴様は……Ⅶ組のオスカー・シュライデンか」

「先程から聞いていれば、貴様の発言はあまりにも傲慢がすぎるぞ。彼ら平民たちを何だと思っている」

「言ったはずだ。我々の言葉に従うしか価値のない無能な愚民だとな。そして、そんな愚民の味方にする貴様とその家も同罪だ。オスカー・シュライデン」

「何?」

 

 眉を潜めるオスカーを見てモートンは鼻で笑う。

 

「去年の内戦のことは聞いているぞ。どうやら貴様の父のシュライデン伯爵は愚かにも我ら貴族に歯向かって重傷を負ったそうだな」

「っ!」

「まったく愚かなことだ。平民を守ろうとするからそんな目にあったのだ。全ては貴様らシュライデン伯爵家が貴族しての自覚がまったく足りていなかったからだ」

「何だとっ!」

「自業自得。貴様の父も死んでいれば、せめて名誉の死で終わったものを……」

「貴様っ!!」

 

 オスカーが怒りを爆発させて、モートンに詰め寄ろうとする。ウィリアムたちもまずいと思い、飛び込もうとするが、

 

「そこまでだ」

 

 その前にロドルフォが間に割り込んだ。彼はオスカーの肩を抑えて、その場に踏み止まらせる。

 

「オスカー、それ以上は止せ」

「ロドルフォ……殿」

「くだらない挑発に乗るな。……ここは任せろ」

 

 頭が冷えたとわかったロドルフォは手を離して、そのままモートンの方に向き合った。

 

「貴様はたしかロドルフォとかいう愚民だったな」

「……」

「聞いたぞ。元猟兵、しかも、祖国を捨てたあのバルムント大公の孫だそうだな。フンッ、よくもそんな愚民がこの学院に入ったものだ。身の程を弁えろ」

 

 ロドルフォに対しても容赦なく責め立てるモートンだが、ロドルフォはただ黙って彼を見ているだけだった。

 

「貴様のような蛮族に用はない。とっとと私の前から消え失せろ」

 

 傲慢な態度を取り続けるモートン。しかし、ロドルフォは一切、その場から動かずに見つめ続ける。

 

「……貴様、聞こえなかったのか? 消えろといったのだ」

「……」

「……いいだろう。貴族である私の命令を無視すればどうなるか、身をもって教えてやる」

 

 ロドルフォの態度が気に障ったモートンが踏み込んで、ロドルフォの胸倉を掴む。そして、そのまま反対側の手で拳を作り、それを振り抜こうとする。

 

 ――どんっ

 

 しかし、その拳が届くことはなかった。殴りかかろうとしたモートンがその場で尻もちを着いて倒れてしまったからだ。

 

「は……? あ……」

 

 モートンは何が起きたのか理解できずに目を丸くする。だが、自分の状態に気づくと顔を真っ赤にして、目の前の男を睨みつけた。

 

「愚民が……、万死に値するぞ!」

 

 もう一度、殴ろうとするモートンは立ち上がろうとするが、彼は尻もちを着いたまま、その場から動けなかった。

 

「な、何が、貴様、私に一体何を……」

 

 問い詰めようとするモートンだったが、ロドルフォの顔を見た瞬間、息を止める。

 能面のような無表情な顔で見下ろすロドルフォ。目は虚ろのように光がなく、頬もピクリとも動かずにただ黙ってモートンのことを見ていた。

 

(い、息がっ……!)

 

 あまりにも不気味な顔にモートンは必死に息を整えようとするが、上手くできずに過呼吸になる。周りがモートンの様子に目を疑う中、ロドルフォは動かなかった口をゆっくりと開いて一言を告げる。

 

「失せろ」

 

 モートンと同じセリフ。だが、彼の何倍も凄みのある脅し声。

 それで恐怖心が限界を超えたのか、モートンは地面を這えずりながら、その場から立ち去り、一緒にいた貴族生徒も慌てて彼の後を追うのだった。

 

「い、いったい何をしたんですか?」

 

 離れたところから静観していたリアムは何が起きたかわからずに混乱していると、メイは口角を上げるのだった。

 

「はっ……、さすがは最強ってところか」

「何をしたのかわかったの?」

「単純な話だ。あの野郎、あの腰抜けに殺気をぶつけて黙らせたんだよ」

 

 おまけに殴りかかろうとした瞬間と最後の一言の時に全力の殺気をぶつけたのだ。それを直撃したモートンは自分が殺される瞬間を幻視してしまったのだ。

 モートンが立ち去るのを確認したロドルフォは後ろに振り返り、呆けた顔で佇むオスカーを見る。

 

「ロ、ロドルフォ殿、その……」

「何も言わなくていい」

 

 お礼を言おうとするオスカーをロドルフォは制止する。

 

「元とはいえ猟兵だった俺にお礼を言うのは酷だろう。ならば、何も言わなくていい」

「い、いや、しかし!」

「まずは自分の問題を解決しろ。礼はその後でかまわない」

 

 そう言ってロドルフォはその場から立ち去った。オスカーはそんな彼を複雑そうな目線で見送るのだった。

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