英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~ 作:魔ギア
先月の経験もあり、実習課題については滞りなく進めることができた。同行人として領主の娘であるラウラがいるためか、話も円滑に進み、町中での課題はすぐに片付いた。
「……あの三人娘、なんか妙に俺の事を睨んでたな……」
「私もだ」
エリゼたちは手配魔獣討伐のために外に出た。道中、メイとオスカーは依頼先で出会った町娘たちから敵視に近い妙な視線を感じ、戸惑いの色を見せていた。
「ラウラの親衛隊だって。去年、リィンたちも同じように敬遠されてたみたいだよ」
「フフッ。慕われて悪い気はしないのだかな」
「慕うってレベルじゃねぇだろう」
お姉様に手を出したら殺す。言外から伝わってきた脅迫にメイは冷や汗をかき、それに気づかないラウラに呆れを覚えていた。
「しかし、こうしていると思い出すな、フィー」
「そうだね。ちょっと懐かしいかな」
「お二人は学生時代に今回のような実習をしていたのですよね」
ラウラたちが懐かしむように語り合うと、それを耳にしたカグヤは興味深そうに彼女たちの学生時代の事を尋ねる。
「あぁ。お互い名前と身分くらいしか知らず、意見や価値観の食い違いでぶつかり合う事もあった」
「ユーシスとマキアスなんて、しょっちゅう口喧嘩をしていたよね。見てて飽きなかったな」
「かくいう我々も一時期、そんなことがあったな」
「そうだね」
帝都であった夜の一戦を思い出して笑みを浮かべる二人だったが、その話にエリゼは目を丸くした。
「お二人は仲違いしたことがあったのですか?」
「うん。エリゼがリィンを尋ねに学院に来た時にね」
姉妹のように仲むずましい二人を去年から知っていたエリゼは、二人にそんな時期があった事に驚いていた。しかも、それが彼女たちと初めて会った時だったというからなおさらだ。
「生き方が違えば、考えている事や価値観はそれぞれ違ってくる。それでぶつかり合ったりするのは仕方がないというもの」
「だから、本気でぶつかり合うことも大事だと思うよ。私とラウラがそうだったみたいにね」
二人の話をエリゼたちは黙って聞く。特にオスカーは二人の方に顔を向けて、聞き逃さないように静かに傾聴していた。
「ラウラ。ここは一つどうかな」
「そうだな。先輩としての威厳というものを見せるとしよう」
ラウラたちが正面に視線を戻すと、そこには魔獣が集団となって近づいてくる。
エリゼたちが武器を構えようとしたが、ラウラが彼女たちを制して、フィーと共に前に出る。
「そなたたちは手配魔獣に備えて、休んでいるといい」
「道中は私たちで対処するから」
ラウラは身の丈程の大剣を両手で持ち、フィーは愛用の双銃剣を慣れた手つきで構える。
「行くぞ、フィー」
「ラジャ」
戦術リンクが起動する。二人の足元にサークルが生まれて、一本の線が結ばれた。
二人は同時に足を蹴り、魔獣に突っ込んだ。その連携はⅦ組最強ペアと呼ばれるに相応しい、文句のつけようがない完璧なものだった。
〜〜〜〜〜
ラウラたちが魔獣たちを相手しているちょうどその頃、遠く離れた木の上からその戦いを眺めている者がいた。
「おいおい。帝国の学生ってのは皆、あんな怪物揃いなのか? 俺のところとは大違いだぜ」
魔獣を蹂躙するラウラとフィーの姿に顔を引き攣る男は手に持った望遠鏡をゆっくりと下ろした。
「ま、あの様子なら、手を貸す必要はなさそうだが、どう接触すればいいのかね」
だが、別の問題が生まれてしまい男はさらに頭を悩ませる。
「とりあえず、静観し続けて機会を伺うしかねぇか。ったく、とんだ仕事を引き受けちまったぜ」
男はそう言って、木の上から飛び降りて、エリゼたちに気づかれないように、静かに慎重に追いかけるのであった。
〜〜〜〜〜
ラウラたちのおかげで身体を休めることができたエリゼたちは、目的の手配魔獣の下に辿り着く。
シャーリィが岩場から少し顔を出して、魔獣の様子を観察する。
「気づいてなさそうだから、今なら、すぐにやれそうだよ」
顔を引っ込めて戻ったシャーリィは、今がチャンスだとエリゼたちに伝える。それに頷くエリゼは武器を取り出した。
「短期決戦で勝負を決めます。カグヤさんは敵の注意を引き寄せてください」
「わかりました」
「メイさん、シャーリィさん、オスカーさんは私と一緒に魔獣を撃破。《戦術リンク》を駆使して、速攻で仕留めます」
「オーケー。足、引っ張らないでよね」
「貴様に言われる筋合いはない」
「ったく、めんどくせぇ」
シャーリィとオスカーの一悶着にメイはうんざりして愚痴をこぼす。
「お手並み拝見といこうか」
「ま、心配はないと思うけど、応援するよ」
ラウラとフィーが後輩たちにエールを贈る。
そして、戦いが始まった。
「行きます!」
カグヤは岩場から飛び出して偃月輪を放つ。弧を描くように周りを飛び回り、顔を上げた魔獣は、その動きを無意識に目で追った。
「オラァアア!」
そして、その隙にメイが魔獣の懐に潜り込む。渾身のアッパーが顎を打ち抜き、魔獣の身体が宙を浮いた。
「ブチ抜け!」
《テスタ=ロッサ》を構えたシャーリィが銃弾を乱射した。宙に浮いた魔獣の身体を貫き、身体に穴を開ける。
「エリゼ!」
「はい!」
銃弾が止まり、エリゼが前へと突っ切った。ボロボロになった魔獣はエリゼを視界に捉えて、腕を上げた。
「そこです!」
だが、何かをしようとする前にエリゼの細剣が腕を貫いた。貫かれた腕は宙を舞い、地面に落ちた。
「カグヤさん!」
振り返ってカグヤに合図を送った。カグヤはすぐさま偃月輪が再び放ち、魔獣の身体を切り刻んだ。
「トドメだ!」
オスカーが槍を構えて、魔獣に向かって一直線に走る。腰を低くし、全体重を前に乗せて、力強く地面を蹴り飛ばした。
「貫け!」
最大速度での一突き。槍は魔獣の腹を捉えて肉を
「おー」
「見事だな」
それを遠くから見守るラウラたちは称賛の声を上げる。
ボトッと魔獣の身体が地面に落ちて、塵となって崩れていく。同時に残った下半身も上から消滅していき、やがて魔獣は完全に消え去った。
「フー……。討ち取った」
深く息を吐いてオスカーは構えを解いた。それを皮切りにエリゼたちも緊張の糸を解いた。
「無事、依頼達成ですね」
「そうですね。私たちの作戦勝ちです」
エリゼは勝ったことに安堵を覚えて、それに同意するカグヤは頷いて、シャーリィを見る。
「シャーリィさんが過去に同型の魔獣と交戦したことがあったおかげですね。こうして簡単に討伐することができました」
今回の手配魔獣は、シャーリィが猟兵時代に同種と交戦経験があり、その行動や攻撃手段は既に把握されていた。
動く物を目で追う習性を利用してカグヤが偃月輪を使って陽動をかけて、隙だらけになったところをメイとシャーリィが一気に叩く。攻撃手段である手が動いた時はエリゼがこれを封じ、カグヤが動きを止めた最後にオスカーの全力の一撃でトドメを刺すという流れだ。
まさにⅦ組B班の完全な作戦勝ちである。
「出された依頼はこれで全てですね」
「やっと終わりか。ったく、ようやく一息だぜ」
エリゼの言葉にメイは首を回して肩を鳴らし、カグヤはシャーリィの元へと歩み寄る。
「シャーリィさん、お疲れ様です」
「カグヤもね。でも、ちょっと物足りなかったかなぁ。もう少し暴れたかったんだけど」
「それは次の機会に取っておきましょう」
オスカーのところにはラウラとフィーが近づき、彼の槍の腕を褒めていた。
「《シュライデン流槍術》の腕、しかとこの目で見させてもらった」
「ラウラ殿に褒めていただき光栄です」
「結構、速かったね。トップスピードだけなら、私より速いかも」
そんな感想を交わしていると、周りの景色が赤黒くなり、夕日が地平線にどんどん沈んでいった。
「暗くなってきたな。そろそろ町に戻るとしよう」
「そうだね。シャーリィ、お腹空いちゃっ――」
言い切ろうとしたシャーリィだったが、突然、眼光を鋭くして周囲に目を配った。彼女だけでなく、フィーも顔つきを変える。
「フィーさん?」
「見られている。しかも結構な数」
双銃剣を抜き取り周辺の木々に銃口を向けると、ラウラも大剣を手に取り周囲を警戒した。
「総員、円陣を組め。お互いに周囲をカバーし合うのだ」
ラウラの指示でエリゼたちは円を作る。収めた武器を再度取り出して、辺りを見渡す。
「本当に誰かいるんですか?」
「うん。いつからかはわからないけど、たぶん、私たちを付けていたと思う」
「暗がりになるのを待ってたんだろうね」
暗闇に紛れての襲撃。夜外戦闘を得意とする集団など今のレグラムでは一つしかない。
「情報を集める前に、本命が出て来やがったか」
「チッ、コソコソと卑劣な奴らめ」
膠着状態が続き、景色は完全に暗がりに落ちる。
周辺を取り囲む木々が風でユラユラと不気味に揺れる中、黒い筒状のようなものが静かに顔を出した。
――ダンッ!
筒から火花が飛び散った。放たれた銃弾が空気を裂き、カグヤに向かって突き進む。
――ガンッ!
しかし、当たる直前、横からシャーリィが《テスタ=ロッサ》を盾にして防いだ。
「見つけた」
視界が見えない中、音の位置を正確に把握したフィーが木々に飛び込んだ。
小柄な体型と俊敏な動きを駆使して、銃を放った刺客を瞬く間に制圧した。
「ふぅ……やった」
「気を抜いてんな! 来るぞ!」
一息しようとした束の間、周辺の木々から次々と人が襲いかかってきた。
プレートアーマーと頑丈そうなヘルメットを装備し、手には大型の剣やライフルを構えていた。
「猟兵っ?!」
「一気に攻めて来たなっ!」
そこから混戦が始まった。エリゼたちは隣のメンバーをフォローし合いながら、取り囲む猟兵たちを相手取った。
「排除する」
「ハァアア!」
一番、善戦していたのはラウラとフィーの初代Ⅶ組コンビだ。エリゼたち以上に熟練された《戦術リンク》を駆使し、襲い掛かる猟兵たちを次々と蹴散らしていく。
一方でエリゼたちB班は五人で連携を組み、猟兵団と対峙した。《戦術リンク》を状況に応じて結び直し、フォローし合いながら前線を維持した。
「結んで!」
「くっ! 承知!」
シャーリィの掛け声にオスカーはしぶしぶ了承する。
わだかまりはあるが、今は非常事態。まずはこの場を乗り切って安全を確保する。
オスカーはエリゼと繋げていた《戦術リンク》を解いて、シャーリィと繋げる。その時、
――パリンッ!
結ばれたリンクがガラスのように砕け散った。いきなりの事にオスカーとシャーリィは動きを止めてしまう。
「《リンクブレイク》!?」
その現象に見覚えがあったラウラは顔色を変えて焦りを見せた。あの状態になると一時的に二人は《戦術リンク》を結ぶことができなくなる。
「チッ! 舐めんなぁああ!」
しかし、歴戦の猟兵であるシャーリィは切り替えが速かった。《戦術リンク》が使えないと判断すると、単独で突っ込んで猟兵たちの相手をし始めた。
一方で、前に出ていたオスカーは孤立してしまい猟兵たちに囲まれてしまう。
「オスカーさん!」
「っ! 行くな、エリゼ!」
オスカーを助けに行こうと単身で向かうエリゼ。それをラウラは止めようとするが、周囲を取り囲む猟兵が邪魔をする。
「大丈夫ですか?!」
「くっ、すまない」
その間にオスカーの元にたどり着いたエリゼは、彼を起こして背中を合わせた。オスカーとの《戦術リンク》が結べない今は、お互いに死角をカバーして戦う他ない。
猟兵たちはエリゼたちを取り囲んで襲い掛かる。休む間もない波状攻撃に二人は防ぐのがやっとの状態。攻めようにも相手はその隙を与えてくれない。
「きゃぁ!」
そして、敵の攻撃に耐え切れずにエリゼは弾かれて尻もちを着いてしまう。それに気づくオスカーだが猟兵がそれを阻止する。
立ち上がろうとするエリゼに向かって、猟兵が剣を振り上げる。
やられる。
そう思ってしまったエリゼは恐怖のあまり、目を瞑り、その時を待つ。
「オラァアア!」
しかし、振り下ろそうとした猟兵は横から来た衝撃で吹き飛ばされた。聞き覚えのある声が耳に入り、エリゼは目をゆっくりと開けた。
「あ……、メイさん!」
「グズグズしてんな! とっとと立て!」
制服が切れるなど、ボロボロの状態だったメイは、エリゼの方には振り向かずに猟兵と向き合った。
――シュッ!
すると、今度は偃月輪が横から通り過ぎ、エリゼたちに襲いかかる猟兵たちの足を止めた。
「はぁああ!」
偃月輪が飛んできた方向からカグヤが走る。武器を持たない彼女は拳を作って、近くにいた猟兵の懐に潜り込む。
「剛掌崩打!」
正拳を一閃。細い腕から放たれたとは思えない衝撃が放たれ、打たれた猟兵と一緒に近くにいた猟兵が吹き飛んだ。
「無事ですか?!」
「そんなのは後だ! 繋げ!」
メイの啖呵にカグヤは《戦術リンク》を繋げる。
荒波のような激しい動きと、さざ波のような滑らかな動き。
正反対の徒手空拳を使う二人の猛攻に、猟兵たちは次々と吹き飛ばされ、攻めあぐねた。
「この後、どうするおつもりですか?!」
「知るか! とにかく、来る奴らをぶっ飛ばせ!」
だが、多勢に無勢。猟兵たちが次々と押し寄せてきて、メイたちを追い詰める。
(チッ、まずはここを抜け出す手をっ……!)
猟兵たちを叩きのめしながら、メイは脱出する隙を探す。その時、
――キンッ
金属が弾く音が静かに響く。すると、金色の閃光が猟兵たちを撃ち抜いた。
「こっちだ!」
声がした方向。そこには青黒い髪の男が手に持ったコインを輝かせながら、それを猟兵たちにぶつける。男の妨害で猟兵たちが包囲網を崩したため、男はこちらに来るようにエリゼたちを呼びかけた。
「行くぞ!」
メイはエリゼの腕を掴んで、猟兵たちの間を強引に駆け抜けた。オスカーとカグヤはその後に続き、挟みこもうとする猟兵たちを払い除けた。
「誰だ、テメェ!」
「おいおい。恩人に向かって、その言い草はねぇだろう」
警戒するメイに呆れる視線を向ける男だったが、すぐに視線を前に向ける。
「とりあえず、今は味方と考えてくれ。まずはここを切り抜けるぞ」
エリゼたちは猟兵たちに向き合い体勢を立て直そうとした瞬間、けたたましい銃声が鳴り響いた。
「退けぇええええ!!」
鬼気迫る顔でシャーリィはテスタロッサを振り回し暴れまくった。猟兵たちは彼女を相手にするも、あまりの猛攻に返り討ちにされた。
「フィー!」
「ラジャー!」
フィーに指示を送るラウラは猟兵たちに突っ込む。それに気づいた彼らは彼女を襲うが、彼女の後ろに回っていたフィーが威嚇射撃で妨害。
「砕け……散れ!!」
空高く跳んだラウラは大剣を持ち上げて地面に叩きつける。落下の勢いも合わせて大地が割れて、猟兵たちが宙に吹き飛ばされる。
「マジかよ……。あれが女の腕力か?」
「うちの姉貴もあれくらいはする」
ラウラの一撃にぼやく青黒の青年とメイをよそに、状況が拮抗したと判断した猟兵の一人が指示を出した。
「撤収だ!」
『
猟兵が缶のような物体を取り出すと、ピンを外し、エリゼたちに投げつけた。それにフィーとシャーリィは目を見張る。
『
眩い光が暗闇を照らし出す。身動きが取れないエリゼたちを無視して、猟兵たちは暗闇の森の中へと姿を消した。
「クソッ、逃げやがったな」
「深追いはすんなよ。夜は奴らの狩り場だ」
青年の指摘を理解していたメイは不貞腐れながらも追うことはしなかった。
「エリゼさん、お怪我は?」
「大丈夫です。それよりもシャーリィさんは?」
自分たちよりも危ない戦地に立っていたシャーリィの身を案じて、エリゼは彼女を探す。
「シャーリィさん!」
そして、すぐに見つかった。身体中に返り血を浴びながら、呆然と猟兵たちが去った森の方をじっと見つめていた。
「シャーリィさん、お怪我は……」
駆け寄って声をかけるエリゼだったが、突然、シャーリィは彼女を横にどかしてある場所に向かう。
ドンッドンッと力強い足取りで歩く彼女はオスカーの前に立つと、彼の胸倉を勢いよく掴む。
「……ちょっと、さっきのあれは何?」
「ぐっ……」
力強く引っ張られて唸り声を上げるオスカー。突然のことにエリゼたちは止めようとするが、シャーリィはさらにオスカーを締め上げる。
「アンタがシャーリィのことを嫌っているのはわかってるけどさ、時と場合ってのがあるでしょ。あの時、《戦術リンク》が切れたせいで状況が悪くなったのわかってんの?」
「それは、わかって……」
「わかってないでしょ。自分が何したのかもわかんないくらいバカなの? これ以上、シャーリィたちに迷惑かけるってんなら…………殺すよ」
殺気をぶつけられたシャーリィにオスカーは何も反論できなかった。本人もあれが自分の失態だということを自覚していたからだ。
あの場は突破力のある自分とシャーリィで包囲網を抜けるのが最良の選択だった。だが、それは失敗に終わり、エリゼたちをさらなる窮地へと追いやってしまった。
自分の不甲斐なさと苛立ち、そして、それを他ならないシャーリィに指摘されたことに、屈辱以上の失望感を覚えた
「双方、そこまでだ」
険悪になった二人の間にラウラが割り込んだ。オスカーを掴むシャーリィの手を放させ、二人を引き離す。
「いろいろと言いたいことはあるかもしれないが、それは町に戻ってからにしよう」
「撤退したとはいえ、また来る可能性があるからね」
森の方を警戒して忠告するフィーにシャーリィは舌打ちをしながら、彼女たちに従うのだった。
「そうしたいが、まだ一つ問題があるだろう」
町に戻ろうとする一行だったが、メイがそれを静止し、乱入してきた男を睨みつけた。
「テメェは誰なんだよ。こんな夜道を一人で出歩くなんざ、さすがにカタギとは言わせねぇぞ」
「そう警戒すんなよ。ちゃんと答えるからよ」
男は後頭部を掻き、エリゼたちをぐるりと見回し、挨拶を交わした。
「ヴァン・アークライド。カルバードで《裏解決屋》っていうのをやっている便利屋だ。ま、よろしく頼むぜ。トールズ二代目Ⅶ組」