英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~   作:魔ギア

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第三十六話 流儀

 猟兵の襲撃を受けて無事に生き延びたエリゼたちは、謎の青年――ヴァン・アークライドと共にレグラムの町に帰還した。

 ヴァンはそのまま何事もなかったかのようにエリゼたちと別れようとしたが、メイが首根っこを引っ掴み、そのまま遊撃士協会へと連行した。

 

「じゃあ、お前さんはあの猟兵たちの動向を調べるためにあの場にいたって言うのか?」

「あぁ。クライアントからの依頼でな」

 

 ヴァンは今、用意された椅子に座らされて事情聴取を受けていた。サラとトヴァルは彼の前で仁王立ちになって威圧するが、ヴァンは指で耳穴をほじくるなど、まるでものともしていないようだった。

 

「っていうか、何で共和国の人間がわざわざ帝国に来てまで猟兵の事を調べてんのよ」

「《裏解決屋》っていうのも聞いたことねぇし。はっきり言って、怪しすぎんぞお前」

 

 一通り、彼から事情を確認したサラたちだが、色々と不審な点が多すぎて、疑いをさらに深めるのだった。

 

「そうは言うけどよ、身分証とか確認しただろう。いい加減、解放してくれませんかね」

「そういうわけにはいかないのよ。少なくともアンタの素性の裏が取れるまではね」

「勘弁してくれよ……」

 

 サラから目を逸らして、面倒くさそうな顔でぼやくヴァン。

 が進まず、一向に彼の素性が見えてこない状況に、トヴァルは頭を悩ませた。

 

「あの……、少しよろしいですか?」

 

 そんな時、離れたところで話を聞いていたエリゼたちの中から、カグヤが話に入って来た。

 

「何だ? 何か気になることでもあったか?」

「はい。先程、彼が言っている《裏解決屋》なのですが、私、聞いたことがあります」

「なっ、本当か?!」

「はい。ですので、少し彼とお話をさせてもらえませんか?」

 

 トヴァルは一度、サラに視線を送った。同じことを考えていたサラはその視線に頷き、二人は道を開けてカグヤをヴァンの前に立たせた。

 

「ヴァン・アークライドさん。いくつか質問をさせてください」

「もうさんざん、されているんだが……。んで、何が聞きたいんだ?」

「先程、あなたが口にしている《裏解決屋》という名前。私はラングポートで何度か耳にしたことがあります。……警察やギルドには相談しにくい内容を代わりに引き受けてくれる請負人。《スプリガン》とも呼ばれているのですよね」

「へぇ、結構詳しいんだな。その髪の色と猟兵たちに見せた体術で予想はしていたが、あんた、ラングポート出身か」

 

 ヴァンは目を細めてカグヤに興味を持つ。一方、二人の話を傍聴していたエリゼは隣にいたシャーリィに声をかける。

 

「シャーリィさん、ラングポートというのは?」

「共和国にある港湾都市で大陸最大の東方人街だよ。カグヤが育った故郷でもあるね」

「同時に共和国最大のマフィア・シンジゲート《黒月(ヘイユエ)》の本拠地がある場所だな」

 

 聞いたことがない内容にエリゼは関心を深める。その間も、カグヤたちの話は続いた。

 

「先程の《裏解決屋》の説明だが。訂正するところが少しある」

「少し?」

「《スプリガン》って呼ばれているのは事実だ。警察やギルドに相談しにくい内容を引き受けることもある。だが、俺が受け持つのは相談しにくい内容だけじゃねぇ。相談できない内容も受けている」

「相談できない内容……」

「あぁ。筋が通った依頼なら、白だろうが、黒だろうが、どこからの仕事も引き受ける違法スレスレの仕事だ」

「違法スレスレって……。お前さん、何だって、そんな危ない橋を渡るんだ?」

 

 《裏解決屋》の仕事内容にトヴァルは顔をしかめる。下手をすれば、今のように警察やギルドに引っ張られることだってある。何故、そのような仕事を始めたのか。

 

「ま、俺にはこれが合っているってだけの話だ。他人のあんたらにとやかく言われる筋合いはねぇよ」

「その話に関しては今は関係がありませんので、一度脇に置きます。次の質問に入ります。今回、あなたは共和国にいる誰かの依頼で帝国にいる猟兵を調べているということで間違いありませんか?」

「守秘義務で言うことはできねぇ。だが、猟兵を調べていたのは今回の依頼に関係しているから調べていただけだ」

「関係がある。シャーリィさん。猟兵は報酬次第ではどのような仕事も引き受けるのですよね」

「そうだよ。報酬次第じゃ、代理戦争だって引き受けるよ」

「そこには政治的な介入はありますか?」

「シャーリィたち自身は関わらないけど、引き受けた仕事に政治が関わっていたことはよくあるよ。ま、シャーリィもパパも、そこらへんの興味はなさそうだけどね」

(去年の通商会議ね)

(あぁ。宰相がテロリスト殲滅のために依頼したあれだな)

 

 シャーリが話した内容にサラとトヴァルが小声で話し合う中、カグヤは顎に手を当てて、しばらく考えると口を開く。

 

「ヴァンさん。個人名を言う必要はありません。ですが、これだけは確認させてください。……依頼してきたのは共和国政府の誰かですか?」

「なんでそう思ったんだ?」

「この時期に共和国が帝国に公然と何かしらの介入を行うとは思いません。少なくともロックスミス大統領がそのような愚策を行うはずがありません。当然、政治にかかわる内容ならば、警察やギルドに協力を要請することはできません。ましてや帝国に潜入するような今回の案件は下手をすれば、国際問題になりかねない内容です。だから、依頼人はあなたに依頼したのですよね、《裏解決屋》さん」

「俺は政府とは何の接点もない一般人だ。捕まったとしても観光だと言い張ればいいし、仮に接点を怪しまれても、政府が関係ないといえばそこで終わりだからな」

「そのように発言をするということは……」

「あぁ。そこまで見抜かれるとは思わなかったぜ。名前は言えねぇが、あんたの言う通り、俺の依頼人は共和国政府の関係者だ」

 

 ヴァンが打ち明けた内容に周りの視線が厳しくなる。カグヤも引き締めて、話を続ける。

 

「次の質問です。あなたが政府から調べてほしいと頼まれている内容は猟兵を雇っている依頼人のことですね?」

「あぁ。そいつらのことを調べるために奴らとの接触を試みていたんだが、中々、尻尾を掴ませてくれなくてな。あんたらと出会ったあの時が最初だ」

「では、これが最後の質問です。……あなたが調べている猟兵の雇い主は、《新生貴族連合》ですか?」

『っ?!!』

 

 カグヤの発言に全員が目を見張った。ヴァンも目を大きく見開き、思わず聞き返した。

 

「マジか……。そこまで気づくか」

「きっかけは初めて会った時の対話です。あの時、あなたは私たちにこう言っていましたよね」

 

『ま、よろしく頼むぜ。トールズ二代目Ⅶ組』

 

「それが何だってんだ?」

「トールズⅦ組の存在は去年の内戦で広く知られました。《灰色の騎士》であるリィン先輩がそこの出身というのもあります。ですが、それは初代Ⅶ組の話であり、私たち二代目Ⅶ組のことではありません」

「ふむ……」

「私たちのクラスにはアルフィンさんがいます。ですが、帝国の皇女殿下とはいえ、内戦を止めたリィン先輩たちと違って、他国に情報が広まるほどの功績はありません。二代目Ⅶ組は先月に発足されたばかりということを考えれば、こんな短期間で諸外国に私たちの存在が広まっていることなどありえません」

「では、どうして、ヴァンさんは私たちのことを」

「簡単ですよ、エリゼさん。ヴァンさんは私たちを知る機会があったからです」

「なるほど。ケルディックとラクウェルの件か」

 

 メイの言葉にカグヤは頷いた。

 

「先月の特別実習で私たちは《新生貴族連合》と対立しました。その話を耳にした。もしくは目撃したのきっかけに私たちを調べたのならば、知っていてもおかしくありません。ひょっとしたら、私たちから情報を手に入れられると考えたから、私たちに接触したのではないのですか?」

「……やれやれ、お手上げだぜ」

 

 完全に見抜かれてしまい、ヴァンは両手を上げて降参のポーズを取って諦める。

 

「あんだけの情報でそこまで行き着くなんてな。あんた、探偵に向いてんじゃねぇのか?」

「褒め言葉として受け取っておきます」

「それではカグヤさんの話は……」

「全部、当たってるぜ。もちろん、あんたらのことも調べたぜ。エリゼ・シュバルツァー嬢」

 

 名前を言い当てられてエリゼは目を張った。いたずら小僧のようなあくどい笑みを浮かべたヴァンは切り出した。

 

「アトソン嬢の言う通り、俺は《新生貴族連合》について調べている。どうも、連中が共和国(こっち)のテロ組織と手を組んでいるっていう噂が上がってるんだ。その真相を確かめてほしいっていうのがクライアントからの依頼だ」

「なぜ、共和国のテロ組織が《新生貴族連合》と?」

「国が違うっていうのに、手を組んで何の得があるんだ?」

 

 そこに何かしらのメリットがあると思うが、エリゼたちはまったく思いつくことができなかった。

 

「……もしかすると、メリットなどは考えていないのかもしれん」

「ラウラさん?」

 

 全員の視線がラウラに集まる。それに気づいた彼女は自分の意見を述べる。

 

「去年、トマス教官の歴史の授業で聞いたのだが。共和国が民主革命を成功した直後、帝国貴族が共和国に侵攻したらしい」

「どうして、帝国貴族はそんなことを?」

 

 疑問を浮かべるエリゼに代わりにカグヤが答える。

 

「カルバード共和国は民主革命する前は帝国と同じように王制を敷いていました。ですが、移民の流入や財政の破綻、国内の大飢饉など問題が多く発生し、最終的には革命家シーナ・ディルクを筆頭に決起が起こり、カルバード王国は滅亡しました」

「帝国貴族が介入したのは、単純に王政を打破した革命勢力が気に入らなかったからだろうな」

「つまり、今回の件は、その時と同じということでしょうか?」

「はい。共和国にいるテロ組織の資金源として、王国時代から続いている貴族の末裔たちが多いのです。資金源を送る見返りとして《新生貴族連合》に手を貸しているのかもしれません」

「同じ高貴なる者として、落ちぶれている姿を見たくねぇってことか? くっだらね」

 

 悲しそうに語るカグヤにメイは吐き捨てて、一同は黙ってしまう。それを見たサラは強く手を叩いた。

 

「はいはい。暗い話はそこまで。カグヤのおかげで敵の情報がわかったことだし、今日はここまでにしましょう」

「そうだな。エリゼ嬢ちゃんたちも今日のところはここで切り上げていいぜ。一応、与えた課題はやり遂げたみたいだからな」

 

 長い一日目が終わり、エリゼは一安心したものの、その表情はどこか暗かった。

 

「ふむ。これは少しまずいな」

「うん」

 

 そんな彼女と、シャーリィから目を逸らすオスカー、そして、苛立ちを隠そうとしないシャーリィ。その三人を見たラウラとフィーは危機感を覚えた。

 そして、その様子を見ていたサラは、ヴァンの方を一度、見て何かを考え込んだ。

 

「なぁ。俺はもう帰っていいか?」

「そうだな。今日はいいが、明日、改めて事情を聞かせてもらうぜ」

 

 面倒くさい顔でトヴァルの要請に渋るヴァン。それをよそにサラはラウラに近寄った。

 

「ラウラ、ちょっといいかしら?」

「む? いかがされましたか?」

「ちょっと、アンタに頼みたいことがあるんだけど」

 

 そう言って、サラはヴァンとエリゼたちに視線を送るのだった。

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 一日目の実習を終えて、宿泊先のアルゼイド邸に戻ったエリゼたちⅦ組B班。

 予定よりも遅くなり、心身疲れ切ったエリゼたちだったが、アルゼイド邸が用意してくれた郷土料理を前に、疲れが一気に吹き飛んだ。

 

「うっま~~い! シャーリィ、こんな料理初めて!」

「シャーリィさん。お行儀が悪いですよ」

 

 周りを気にせずに慌ただしく料理に口をつけるシャーリィ。隣にいるカグヤがそれを咎めたが、彼女の手は止まることはなかった。

 

「……で、何でテメェまで一緒に来てんだ?」

「それを言うなら、嬢さんに聞いてくれ。俺は誘われただけなんだからよ」

 

 一方、メイは料理を口にしながら、隣で何喰わない顔で食しているヴァンを睨みつけていた。

 家主であるヴィクターがまだ帰ってきていないため、メイは視線をヴァンからラウラに変える。

 

「今回、ヴァン殿のおかげで危機を退けたのでな。そのお礼ということで迎え入れたのだ」

「ハッ、そうかよ」

 

 メイはサラがラウラに何かを頼んでいた場面を見ていた。サラの差し金だと察するが、それ以上の言及はしなかった。

 

「ヴァン殿。お口には合うか?」

「庶民の出だからな。今まで食べてきたものの中じゃあ一番だよ」

「フフッ、それは光栄だ」

 

 ヴァンからの評価にラウラは微笑むと、隣に座っているフィーは一旦、食事の手を止めて、ヴァンに質問をした。

 

「《裏解決屋》のことで気になったことがあるんだけど」

「ん? 何だ?」

「ギルドで白だろうが、黒だろうが、どこからの仕事も引き受けるって言っていたけど、それって猟兵からの仕事も引き受けることがあるの?」

 

 フィーの質問に全員の視線がヴァンに集まる。それに気づいたヴァンは素直に答えるのだった。

 

「猟兵だけじゃねぇよ。マフィアやら、裏商人の依頼とかも引き受けたことがあるし、お前さんらが内戦でやり合った《結社》からも引き受けたこともある」

「っ! そんなところまで……」

「随分と裏にも精通しているんだね」

「別に好き好んで繋がったわけじゃねぇんだけどな」

 

 警戒するラウラたちに、不本意だと肩を落とすヴァン。その時、今まで沈黙していたオスカーが鋭い目つきで口を開いた。

 

「ヴァン殿。なぜ、そんな者たちからの依頼を引き受けているのですか」

「何だよ、いきなり」

「貴殿は猟兵たちに手を貸すことがどういうことなのかわかっているのか?!」

 

 鬼気迫る勢いで問い詰めるオスカーに、ヴァンは目を丸くしてしまう。

 

「あのような悪人たちに手を貸したことで、どれだけの悲劇が生まれ、どれだけの命が奪われるのか考えたことがあるのか?!」

「ぶっ飛んだ思考だな。その理屈だと武器を売っている商売人も糾弾することになるぞ。俺は手を貸しただけで、どう選択するのかはそいつらの意思だ。そこまで責任を負うつもりはねぇよ」

「だとしても! 貴殿が手を貸さなければ、起きなかったものもあったはずだ! それを知った時、貴殿は罪悪感のようなものは感じなかったのか?!」

「……まぁ、ないっつったら嘘になるな」

「っ! 貴殿は自らの行動を恥じるべきだ! 自覚していながら、そんな悪人共に手を貸すなど言語道断だ! なにが《裏解決屋》だ! 貴殿なら遊撃士や警察など、他に真っ当な道に進むことも……」

「悪いけど、俺は今の仕事をやめるつもりはない。更生させようってなら諦めな」

「なっ……、な、何故……」

 

 オスカーは言い返そうとするが、初めて見るヴァンの真剣な顔つきに言葉を止めてしまう。

 

「俺は別に今の仕事を恥だと思ったことはない。猟兵たちに手を貸そうと決めたのは俺の意思だ。それで無関係な奴が傷ついちまう結果になったら、それは依頼人の腹の内を見抜けなかった俺の責任だ。その時は俺なりのやり方でケジメをつける」

「し、しかし!」

「こっちはそんなもん全部、百も承知で仕事を続けてんだ。会ったばっかりのテメェにとやかく言われる筋合いは、そもそもねぇんだよ」

「何っ……」

「それに俺は何でもかんでも引き受けちゃいねぇ。言っただろう。筋が通っていればってな」

「筋が通っていれば?」

「裏の世界で生きている奴らの中にはな、知らないうちに入っちまった奴ら。無理矢理入れられた奴ら。逃げたくても逃げることができずに"狭間"をさまよい続けている奴らがごまんといる」

「つまり、ヴァン殿はそういった者たちを助けるために《裏解決屋》をしているのか?」

「別にそんなんじゃねぇよ。俺はただ自分の流儀を貫こうとしているだけだ」

「流儀?」

「あぁ。表の人間だろうと、裏の人間だろうと、誰もがこれだけは譲れない流儀っつうもんを持っている。それに則って依頼したもんはたいてい筋が通ってんだよ。ま、俺はまだこの活動を始めたばっかりだから、そこらへんを見抜ける力は、まだ身に付けていねぇけどな」

「なるほど。たしかにヴァン殿の意見には一理あるな」

 

 ラウラが思い出すのは、内戦で剣を交えた一人の女騎士。《結社》に身を置きながらも、彼女は彼女なりの騎士道(流儀)を貫いていた。

 

「シュライデン。テメェは猟兵が血も涙もない悪党だって考えているかもしれねぇが、あいつらだって俺たちと同じ人間なんだ。自分(てめぇ)の譲れない流儀のために戦っている奴らだって当然いる」

「それ……は……」

「それを考えようともせずに、自分(てめぇ)の言いがかりでそいつの在り方を否定するってのは、内戦を引き起こした《貴族連合》と、お前が想像している猟兵たちと何か違いがあんのか?」

「……っ!」

「自分の考えが正しいだなんて酔ってんじゃねぇぞ。くだらねぇ八つ当たりで自分を誤魔化すなよ、クソガキ」

「…………くっ!」

 

 その場にいられなくなったのか、悲痛な顔でオスカーは勢いよく部屋から出て行った。一同が勢いよく空いたドアを見つめる中、ヴァンは深くため息を吐いた。

 

「ったく、らしくねぇこと言っちまった」

「いや、今の彼には必要な言葉だと思う。それにヴァン殿が主張した"流儀"。私も学ばせてもらった」

「よしてくれよ。そんな大層な人生を送ってたわけでもねぇんだからよ」

 

 気まずそうな顔で否定するヴァンにラウラは柔らかく微笑む。そんな中、フィーは席を立って、ドアの方へと向かうのだった。

 

「フィー?」

「ちょっと、様子を見てくる」

 

 そう言って、フィーは部屋から出ていった。それに続いて、今度はシャーリィが立ち上がった。

 

「ねぇ、ちょっと付き合ってくれない?」

「む? 私か?」

 

 なんとシャーリィはラウラを誘ってきた。意外なことに呼ばれた本人は目を丸くした。

 

「そう。聞きたいことがあるんだけど」

「……わかった。では、行くしよう」

 

 ラウラはシャーリィと共に部屋から出ていった。それを最後まで見届けたメイは椅子にもたれながら、顔を上に上げる。

 

「ったく、これが狙いだったか」

「どういう意味ですか?」

「あの遊撃士の女。シュライデンを何とかするために、この男を利用したんだ」

 

 サラはオスカーとシャーリィの確執を見抜いて、ヴァンが何かしらの糸口になってくれるだろうと感じ、ラウラに頼んで、彼をアルゼイド邸に招待させたのだ。

 

「ですが、効果はあったみたいですね。シャーリィさんも何か思うところがあったのでしょう」

「やれやれ、一杯食わされたぜ」

 

 利用されたとわかって肩を落とすヴァンに微笑むカグヤは、辺りを見回して、首を傾げる。

 

「エリゼさん、どちらに?」

 

 先程まで静かに夕食を取っていたエリゼが席から消え、部屋のどこにもいなかった。

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