英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~ 作:魔ギア
時間は少し巻き戻る。
夕食を食べ終えて、オスカーとフィーが外に出た後、エリゼは誰にも告げずに屋敷を出て、レグラムの町へと向かった。
治安がいい町とはいえ、猟兵たちが外で潜んでいる状況で夜の町を一人で歩くのはあまりにも危険すぎる。
しかし、それが頭に入らないほど、今のエリゼには余裕がなかった。
「兄様。私は……」
湖畔の岸に設置されたベンチに腰を掛け、エリゼは敬愛する兄の姿を思い浮かべていた。
一日目の特別実習を終えて、それを振り返っていたエリゼは自身の失態を思い出していた。
夕暮れ時に始まった猟兵団との混戦。一人先走って、孤立したオスカーを助けようと向かったが、逆に敵に追い詰められてしまい、メイたちに助けられる結果になってしまった。
守りに向かったのに、逆に守られてしまった結果に、エリゼはひどく落ち込んでいた。
「このままじゃいけない。わかっているはずなのに……」
内戦時、リィンの力になろうと思った矢先に囚われの身となってしまい、最後は兄とその仲間たちに助けられてしまった。
そんな未熟な自分を変える為にアルフィンと共に士官学院に足を踏み入れた。
先月の特別実習を経て、アルフィンは変わった。
可憐な花のような可愛らしかった彼女は、それを残しつつも力強く、そして、たくましく成長していった。
対して自分はどうだ? 率先して動いてはみたものの、最終的には皆の足を引っ張ってしまった。
次こそはと考えるが、失敗してしまうのではと考えがよぎり、足が止まってしまう。
変わらなければならない。だが、変わって上手くいくのだろうか。
「私はどうすればいいのでしょうか……」
「このような場所で何をしているのかな、お嬢さん」
突然の声にエリゼは肩を揺らし、慌てて後ろを振り返る。そこには一人の男性が悠然と立っていた。
「夜の町は危険が多い。こんな時間に一人で出歩くものではない」
「あ、あなたは……」
エリゼはその男性に見覚えがあった。去年の学院祭で兄のリィンに紹介されていたからだ。
「む……、そなたは……」
「お久しぶりでございます。アルゼイド子爵閣下」
ヴィクター・S・アルゼイド。レグラムを治めるアルゼイド子爵家の現当主。そして、《光の剣匠》という異名を持つ、帝国最高峰の剣士の一人だ。
エリゼはベンチから立ち上がり、貴族令嬢にふさわしい柔らかい物腰で頭を下げる。
「たしか、リィンの妹君のエリゼ嬢だったな」
「はい。去年の学院祭以来になります。本日は士官学院の特別実習でこの地に参りました」
「話は聞いている。多忙ゆえ、そなたたちを出迎えることができず、申し訳ない」
「い、いいえ。お気になさらないでください。子爵閣下が多忙なのは重々承知しております」
ヴィクターはレグラムの領主としての仕事だけでなく、去年の内戦で士官学院生たちが乗った高速巡洋艦《カレイジャス》の艦長としての仕事も任せられている。今回のように夜遅くに帰ってくることもしばしばあるほどの多忙の身だった。
「とにかく、今日はもう遅い。一人で出歩くのは危険な時間帯だ。我が屋敷までエスコートしよう」
「申し訳ありません。お手間をかけさせてしまって」
これ以上ここにいても意味はないだろう。何よりも子爵閣下を困らせるわけにはいかない。
エリゼは抱えている悩みをいったんしまい込んで、彼と一緒に屋敷へと戻ろうとする。
「何か悩んでいるのか?」
「え?」
しかし、ヴィクターの問いかけにエリゼは足を止めた。
ヴィクターは瞳の奥にあるもの覗き込むかのようにエリゼの顔をじっと見つめていた。
「今のそなたは何か迷いを抱えている。この場所にいるのもそれが原因なのかな?」
「ど、どうして……」
会ってわずか数分で見抜かれたことに、エリゼは目を丸くした。
「去年、この町に来たそなたの兄、リィンも今の君と同じような顔をしていた。兄妹というものはどこか通じるものがあるのだな」
「兄様も……」
その悩みとは何なのか、かすかに心当たりがあったエリゼだったが、それよりも気になることができた。
「その時はどのようなことがあったのですか?」
「リィンと一つ手合わせをした。一対一の勝負を彼の方から持ち掛けてきたのだ」
その話に、エリゼは一瞬、耳を疑ってしまった。
当時のリィンは八葉一刀流の初伝。対する、ヴィクターはアルゼイド流の筆頭伝承者だ。
指南ならばともかく、達人相手に一対一の手合わせなど無謀にも程がある。
「……結果はどうなりましたか?」
「"鬼の力"と言ったか。その力を解き放ったが、私が勝った。だが、彼は勝負の結果以上のものを掴むことができたと、私は感じた」
それを聞いて、エリゼはホッと一息ついた。すでに終わったことではあるが、リィンが無事だったことに一安心した。
「今の君が彼と同じ悩みではないだろうが、私でよければ相談に乗ろう」
「子爵閣下……」
高名な《光の剣匠》に自身の悩みを打ち明けてもいいものなのかと一瞬だけ悩むエリゼ。しかし、知らないうちにストレスが溜まっていたのか、彼女は無意識に悩みを打ち明けた。
「なるほど……」
ヴィクターは話を最後まで聞き、手を顎に当て、何かを考え込んだ。
「エリゼよ。そなたはリィンの力になりたいのか?」
「は、はい。そのために士官学院に入りました」
「それはどのような形で力になりたいのだ?」
「え……」
「隣に並んで戦いたいのか? もしくは、後ろで彼を支えたいのか?」
「えっと、それはどういう意味なのでしょうか?」
「……君にはかなり酷な内容になるとは思うが、はっきり言った方がいいだろう」
「それは?」
「エリゼよ。君は剣を置くべきだ」
夜の風が強く吹く。風は二人を横切り、髪を靡かせた。
「それは……どういう……」
「君は前線から退いて、後方で皆の援護に徹した方がいい。今の君ではあまりに力不足だ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
聞き間違いではないとわかり、エリゼは血相を変えて抗議する。
「それは私に剣を捨てろということですか?!」
「そうだ。この度の新たなⅦ組は前線に強い者が多くいる。彼らに合わせようとすれば、君はそれに付いていくことができず、結果的に足を引っ張ってしまう」
「そ、それは……」
言い返したいエリゼだったが、猟兵との戦闘を思い出してしまい、上手く言葉が見つからなかった。
「同じ剣の道を歩む者として、君が剣を手放したくないという気持ちは私にもわかる。だが、同じ剣士としてわかることがある」
「そ、それは?」
「エリゼ、君には剣士としての資質がない」
エリゼは言葉を詰んでしまう。
「君にはラウラのように体格が優れているわけでも、フィー君のようにポテンシャルが良いわけでもない。君はどちらかというと主計に回って皆を支援する学者資質だ。君の反応を見るに、同じようなことを言われたことがあるのではないか?」
その問いにエリゼは答えることができなかった。
ヴィクターの言っていることは正しかった。エリゼが剣を取ろうと決めた時、当時、ユミルに滞在してリィンの師、《剣仙》ユン・カーファイに教えを請おうとしたことがあった。だが、その時、ユンからも同じようなことを言われて断られてしまった。
「兄を想い、彼の力になりたいという気持ちは尊重しよう。だが、今の君ではこれから先の戦いを生き抜くのは厳しい」
「これから先の戦い?」
「そうだ。内戦を乗り越えた今の帝国はかなり困窮した状態だ。ケルディックで君たちが相対した《新生貴族連合》が少しずつ各地で活動を活発化している。私も殿下も第二の内戦が起きてもおかしくないと睨んでいる」
「そんな……」
「もしも、その時が訪れた時、君は真っ先に狙われるだろう。アルフィン殿下の友人にして、英雄となったリィンの妹。二人を封じるために人質にする可能性がある。エリゼ、本当に兄の、そして、殿下のためを思うなら、どの道を歩めばいいのか、聡明な君なら理解しているはずだ」
エリゼは理解する。ヴィクターは決して、自分の気持ちを蔑ろにしているわけではない。これから先の事を考えて、彼なりにエリゼの身を案じているのだった。
しかし、エリゼは、
「……申し訳ありませんが、それを承服することはできません」
小さくもはっきりとした声で、ヴィクターの案を退けた。
「確かに、今の私では兄様や皆様の足を引っ張ってしまうのでしょう。ですが、私はもう後ろで皆さんの背中を見守り続けるのは嫌なんです」
自分の事をいつも守ってくれる兄。そんな彼の後ろ姿をずっと見てきた。
仲間と共に困難を乗り越え、ひたすら前に進み続けるその姿は、とてもたくましく、誇らしいものだと何度も思った。
だが、今の彼の後ろ姿はとても脆く見えた。
傷ついても、一人になっても、それでも前に進むその姿は、すぐにでも壊れてしまいそうなほど、弱く見えた。
どうしたんだと、大丈夫かと声をかけても、彼は何でもないといつものように笑顔を見せて、本心を隠すのだ。妹である自分にさえも。
自分たちに背を向けて、前を向いている彼の顔をいったいどんな表情をしているのだろう。それを想像するだけで怖く、胸が締め付けられた。
「強くなりたい。兄様の隣に立って支えたい。もう、守られるだけの自分には戻りたくないんです」
どこかでそのままでいいという自分がいた。守ってもらえれば、自分は彼の妹であり、大切な人であると、醜い独占欲が満たされる。
だが、そんなもののために、彼が傷つくのを黙って見るわけにはいかない。
いつまでも甘えるわけにはいかない。
本当の意味で兄を支えるために、自分も彼と同じように前に進まなければならないのだ。兄よりも大きく、兄よりも速く。
「そうか……。それが君の本心か」
答えを聞いて、ヴィクターは笑みを浮かべるのだった。
「断られるのは初めからわかっていた。それなりに強い覚悟と想いを持って、学院に入ったのだろうからな」
「え……、で、では、子爵閣下が私に言ったことは……」
「半分は本気だ。戦場を知っている先達として、若者である君が戦場で散る姿を見過ごすことはできない」
ヴィクターは辺りを見渡して、目に留まった木の枝を拾う。
「エリゼ。ここは勝負と参ろう」
「勝負……ですか?」
「そうだ。君が勝ったら、今まで通り、剣を持って戦えばいい。だが、私が勝ったら、君は潔く剣を置くのだ」
「し、子爵閣下と勝負だなんて……」
はっきり言って勝つイメージがまったく浮かばない。
それは当然、ヴィクターも理解していた。
「もちろん。リィンのような手合わせをするのではない。ちょっとしたゲームのようなものだ」
「ゲームですか?」
「左様。まず、私の武器は先程、拾ったこれだ」
ヴィクターは拳二つ分しかない小さな木の枝を剣のように振るう。
「互いに一撃を繰り出し、当たった方が勝ち。勝負は三回。君は一回でも取れば、そのまま君の勝利となる」
「一回だけ……」
「君はどんな手段を取ってもよい。アーツや道具を使用しても構わない。君の持てる全てを使って、私に一撃を与えてみろ」
先程までの穏やかな顔は消え、鋭い眼光をぶつけるヴィクター。それに息を吞むエリゼはしばらく考え込んだ後、細剣を鞘から抜き取った。
「その勝負、受けてまいります」
「意気や良し」
ヴィクターは距離を取るために後ろに下がる。その間にエリゼは自分の勝ち筋を整理する。
(今の私では子爵閣下に一撃を与えることはできない。でも、一撃を与えないようにすることはできる)
エリゼが注目したのは、ヴィクターが持つ木の枝。リーチの長さからして懐に入らなければ、おそらく届くことはない。
(武器の破壊。それが私の唯一の勝ち道)
そうしている間にヴィクターは足を止めて、木の枝をエリゼに向ける。それに応えるようにエリゼも細剣を彼に向けた。
「それでは始めるぞ」
「はい。よろしくお願いします」
エリゼは細剣を強く握り締めた。踏み込まずに彼が自分から来るのをじっと待った。
しかし、風が吹いた瞬間、ヴィクターの姿が消えた。
「え……」
そして、気づいた。自分の喉元に何かが軽く触れていることに。視線をゆっくりと下ろすと、そこには木の枝が自分の喉元に付いていた。
「これで一本。残り二本だ」
何が起きたのか、一瞬、わからなかったエリゼだったが、ヴィクターの言葉を耳にして、ようやく反応した。
突然の寒気に慌てて後ろに下がると、ヴィクターは構えを解いて後ろへと振り返った。
再び距離を取る彼の後ろ姿を見て、エリゼは先程まで考えていたことをすぐに捨てた。
(これが帝国最高峰の剣士。《光の剣匠》っ!)
勝てる? とんだ思い上がりだ。多くのハンデを受けても縮まらない隔絶された力の差に、エリゼは身を震わせた。
(でも、まだ……!)
「《ARCUS》駆動!」
《クロノドライブ》、《シャイニング》と自身に補助アーツをかけたエリゼ。それに対して、ヴィクターは静観した。
「……お願いします」
「よかろう。では……」
二本目。今度はエリゼの方から攻めた。アーツの効果で速さが増したエリゼは、正面からではなく、後ろに回る。
ヴィクターはその場から動かず、振り向く様子もない。
(ここっ!)
背中に向かって一撃。勝ったと確信したエリゼ。
パンッ!
しかし、その一撃が当たることはなかった。細剣が空へと弾かれ、地面に突き刺さった。
「悪くない動きだ。だが、まだ甘い」
弾かれて手を抑えて蹲ったエリゼに、ヴィクターは厳しく告げた。
「大丈夫か?」
「も、問題ありません」
薬を使って、しびれた腕を治したエリゼは、突き刺さった細剣を抜いて構え直した。
「すまない。本当は柄部分を打つつもりが腕に当たってしまったようだな」
「お、お気になさらず……」
「知らぬうちに腕が衰えているかもしれんな。次は寸止めで止めるように気をつけるが……」
距離を取って枝を構えるヴィクター。だが、雰囲気が先程と変わっていた。
「もしも、当ててしまったら、すまない」
冷たく放たれた言葉。それにエリゼはゾクッと背筋が凍り付いた。
「参る」
そんな彼女の様子など関係なしに、ヴィクターが前に踏み出した。
(……死ぬ)
当たるとエリゼは確信する。旧校舎の時に感じた死の感覚が迫りくる。
本来は見えないはずなのに、どうしてか遅く見える彼の一撃を呆然と見つめ、エリゼの頭は過去を遡った。
『エリゼ……っ、に、げろ!』
最初に思い浮かんだのは、あの大雪の日。大熊に襲われて、兄が怪我をした日。そして、兄の中に眠る"鬼"が目覚めた日。
兄はあの日から自分たちと距離を取り、壁を作るようになった。
『行ってきます……』
次に浮かんだのは、兄がトールズに行く時の顔。最後の別れをするみたいに、その顔はとても寂しいものだった。
『俺は違うだろう……』
兄の手紙を受け取り、その真意を知るためにトールズに来た時。自分は家にいるべきではないと悟ったような顔。
走馬灯のように次々と兄の顔を思い出すエリゼ。
兄はいつも暗い表情をしていた。兄に笑ってほしいと彼を支え続けていたが、兄の顔は決して晴れなかった。
だが、兄はトールズで大勢の仲間に取り囲まれ、自分には見せたことのない笑みを彼らに見せていた。
それに悔しさを覚えないと言ったら噓になる。だが、それ以上に彼がそんな笑みを浮かべるようになって、心から嬉しかった。
仲間たちが兄から離れて、彼らと入れ違いで自分がトールズに入った。
兄と一緒に学院生活を過ごした。女学院では経験することのないものが多くあり、毎日が新鮮だった。
親友や新たな友人、そして、何よりも兄と共にいる時間がとても充実だった。
それが終わってしまう。迫りくる刃に貫かれて自分は死ぬ。
自分を見送ってくれた兄の顔が脳裏によぎる。
(…………いやっ!)
エリゼの身体が前に出た。瞬間、眩い光が二人を包み込んだ。
バキッ!
折れる音が夜の町に響いた。
その音に呆然としていたエリゼが正気に戻る。
頭が真っ白になって何も考えられなかった彼女は、自分が動いていたことにようやく気づき、前に突き出した細剣に目を向けた。
「……見事だ」
そこには折られた木の枝を持つヴィクターが首を傾けて、細剣を避ける姿があった。細剣は彼の頬を掠めており、そこからうっすらと血が流れていた。
「す、すみません! 子爵閣下にお怪我を?!」
「気にすることはない。ほぼ無意識に放ったのだろう」
エリゼから離れて折れた木の枝を捨てると、ヴィクターは満足そうに笑みを浮かべるのだった。
「あの、何も覚えていないのですが、私はいったい何を?」
「うむ。正直なところ私も驚いている。だが、確かなのは、君の剣は確かに私に届いたということだ」
ヴィクターは先程の一戦を振り返る。自分の一撃が彼女に届く瞬間、それに合わせて、エリゼの細剣が木の枝を完璧に捉えて斬り裂いた。
その際に一瞬だけ、彼女の剣が光を放つのを見た。
「どうやら、君には自分でも気づかない何かしらの力があるようだな」
「力……ですか?」
「まだ、使いこなせていないようだが、習得できれば大きな助けになるだろう」
ヴィクターの顔が真剣なものへと変わった。
「エリゼ。剣士にとって、もっとも重要なものは何だと思う」
「え? えっと、ど、努力ですか?」
「確かに努力も大事だろう。だが、私は"信念"こそが一番大事だと考えている」
「信念?」
「何があってもこれだけは絶対に譲れないもの、というべきだろうか。我々剣士はその信念を守り抜くために剣を取ると考えている。だが、時が経てば、それは忘れ去られ、いつしか何の為に戦うのかわからなくなり、ただの人斬りに成り下がってしまう者もいる」
何があってもこれだけは絶対に譲れないもの。エリゼは一瞬、ヴァンの話を思い出した。
「だが、信念を忘れなかった者は、自分が何の為に剣を取ったのか、自分が守りたいものが何なのかを常に振り返ることができる。そういった者こそが成長し、新たな可能性を見出すのだ。今の君のようにな」
エリゼは顔を下に向けて、先程までの戦いを振り返る。
勝てないと思った。剣を捨てなくてはならないと思った。だが、自分は勝つことができた。あの《光の剣匠》に一太刀を与えられた。
(兄様……)
自分が何故、剣を取ったのか。何故、自分は戦うのか。自分の"信念"とは、"流儀"とは何なのか。
それが少し見えた気がした。
「ご指導ご鞭撻のほどまことにありがとうございました。子爵閣下が教えてくださったことは決して忘れません」
ヴィクターに深々と頭を下げたエリゼ。顔を上げた彼女の顔には、最初にあった迷いがなくなっていた。