英雄伝説 閃の軌跡2.5 ~Trajectory of mavericks~   作:魔ギア

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第五話 踏み出す一歩

 エリゼたちはダンジョンの奥へと進み続ける。交流したメイとロドルフォの戦闘能力の高さも相まってか、一行は滞ることなく進み続け、一気に最奥部まで辿り着いた。

 

「ここが終点でしょうか」

 

 エリゼは少し開けた大部屋を見渡す。左右には柱が一列となって並んでおり、正面を見上げれば上へと続く階段があった。

 

「もう終わりか? 張り合いがねぇな」

「えっと、ボクはそうでもなかったかな」

 

 メイはココアシガレットを咥えながら、つまらなさそうに舌打ちし、リアムは少し疲れたのか、息を吐きながら苦笑いを浮かべるのだった。

 

「……本当にこれで終わりなのでしょうか?」

「同感だな、あれを見ろ」

 

 それに対して、あまりにあっけない終わり方に疑問を抱くオランピアと、顔を横に向けて目を細めるロドルフォ。彼に促されて全員が視線を向けると、そこには何やら魔獣のような石像が粉々になって地面に散らばっていた。

 

「俺がここに着いた時、あの石像は壊れていなかった」

「で、ですが、壊れていますよ?」

「しかも、随分と強い力で壊されたみてぇだな」

「今まで出会ってきた魔獣にそんなタイプのものはいなかったと思いますが……」

「《TOP》、周辺のサーチをお願い」

『わかりました』

 

 不穏な気配にエリゼたちが周囲に警戒を配る中、一行の後ろから女性の声が届いた。

 

「エリゼ!」

 

 呼ばれたエリゼはその人物が誰なのか、すぐにわかった。

 

「姫様!」

 

 振り向くと入り口から駆け寄るアルフィンがエリゼに跳び込み、強く抱きしめる。お互いの無事を確かめあう二人は一度離れて、顔を合わせる。

 

「ご無事で何よりです」

「そっちもね。先に出発したっていうのに、まさか、あなたたちが先に付いちゃうなんてね」

「やっぱり、左の道に向かわれたのですか?」

「えぇ。行き止まりだったみたいだから引き返してきたのよ。まぁ、代わりに彼女たちと合流できたのだけれど」

 

 アルフィンは後ろに振り返る。すると、入り口から彼女と行動していたオスカーとウィリアム、そして、途中で合流したカグヤとシャーリィがやってきた。

 

「全員、揃ったみたいだね」

「そのようだな」

 

 エリゼたちの姿に笑みを浮かべるウィリアムに対して、アルフィンを置いていったことをいまだに根に持っているのか、オスカーは先行したメイとロドルフォを睨みつける。

 

「フフ……、とても賑やかですね」

「一部はギラギラしてるけどね」

 

 微笑ましく眺めるカグヤと、睨みあうオスカーたちに呆れた視線を向けるシャーリィ。

 オリエンテーリング終了を前に全員が最奥部に集まった。アルフィンはこれを機にまだ、話したことがないロドルフォたちに挨拶をし、その流れで全員がお互いに自己紹介を始める。

 シャーリィが猟兵であることや、メイがルグィン家の者であることに驚く者もいたが、特にトラブルが起きることはなく、自己紹介はスムーズに終わるのだった。

 

「それでは、地上に戻りましょうか」

「そうですね。時間的にもう夕方になるのでしょうか」

 

 アルフィンとエリゼが地上へと続く階段へ向かおうとする。

 だが、オランピアが二人の肩を同時に掴んで、その場に踏みとどまらせる。

 

「ど、どうしました?」

「……来ます」

「え?」

「あぁ。全員、構えろ」

 

オランピアだけでなく、ロドルフォも何かを感じ取ったのか、彼女たちを守るように前に立つ。それにエリゼたちが戸惑っていると、《TOP》が光を激しく点滅させる。

 

『強大な霊子反応を確認! 皆さん、前方に注意してください!』

 

 反響する声と共に、アルフィンたちの前で空間が歪み始める。アルフィンたちはすぐさま武器を取り出して見据えると、歪んだ空間の中から、それが現れた。

 

「き、機甲兵!」

 

 リアムが目を開いて叫ぶ。現れたのは、六、七アージュを優に超えた巨大な人型。手には巨大な両刃剣が握っており、全身はブロンズの騎士甲冑を纏っていた。

 

「いえ、違います! あれは……」

 

 エリゼは目の前で佇むその巨大な存在に思わず、一歩下がってしまう。

 機甲兵じゃない。以前見たものとは形は違うがエリゼは知っている。

 内戦の際に故郷の山に突如として現れた魔物。とある猫が言うには暗黒時代に帝国の魔導師たちが作り上げた魔導の傀儡。

 

「魔煌兵です!」

 

 

 ――ウォオオオオオオオオオ!!

 

 

 魔煌兵の咆哮が広場一帯に轟く。あまりに大きすぎる存在感にアルフィンたちは思わず萎縮してしまう。

 

「アハッ! ようやく、楽しめそうな奴が出てきたね!」

 

 否、例外がいた。

 

「今までの奴らよりは歯応えがあるな」

 

 しかも一人ではなかった。

 

「……仕方ない」

 

 三人の男女――シャーリィ、メイ、ロドルフォが臆することなく、魔煌兵に向かって飛び出していった。

 

「行っくよーー!!」

 

 シャーリィは高く跳躍して、魔煌兵の頭上へと向かう。彼女はテスタロッサを振り回して、魔煌兵に切り込んだ。

 

「ほら、ほら。まだまだ行くよ!」

 

 チェーンソーを鳴らしながらシャーリィは魔煌兵の後ろに降り立つ。振り向きざまにテスタロッサの銃口を魔煌兵に向ける。

 

「ハチの巣になっちゃいな!」

 

 集中砲火。魔煌兵の背中に向かって次々と撃ち込んでくる銃弾の嵐。その大火力の攻撃に魔煌兵の身体が前のめりに傾く。

 

「オォォラァアアアア!」

 

 そこに正面から突っ込んできたメイが魔煌兵へと跳び込む。身体が前に傾き、突き出すような形になった顔面にめがけて跳び蹴りを放った。蹴りは魔煌兵の顔に直撃。前のめりだった身体は、今度は後ろに持っていかれて、そのまま地面に倒れ込む。

 

「喰らえ」

 

 倒れる魔煌兵の顔の上に乗っかり、その顔面に黒と銀の二丁拳銃を突き出したロドルフォ。立ち上がろうとする魔煌兵。だが、ロドルフォは容赦なく弾丸を叩きこんだ。けたたましく響く発砲音と火薬の臭いが広がり、魔煌兵は悲鳴にも聞こえる絶叫を上げながら、じたばたと暴れていた。

 

「す、すごい……」

 

 魔煌兵と戦っている三人の実力に度肝を抜かれたエリゼ。彼女が前に魔煌兵と対峙した時は、兄と彼の相棒の力を借りて、ようやく倒すことができたほどだ。

 そんな相手をシャーリィたち三人は生身で立ち向かい、しかも圧倒しているのだ。

 

 

 ――ウォオオオオオオオオ!!

 

 

「っ!」

 

 怒りが籠った魔煌兵の雄叫びにロドルフォは顔色を変える。すぐさま、そこから離脱すると、魔煌兵は立ち上がると共に剣を頭上へと掲げる。すると、広間が光に包まれた。

 

「んっ!」

「ちっ!」

「おっと!」

 

 空気を切り裂く轟音と共に強烈な雷が落ちてきた。雷はロドルフォたちを襲うが、周囲が光る直前に三人はその場を離れて、直撃を避ける。後ろに下がり、アルフィンたちのところ戻った三人はすぐに体勢を直して、再び立ち上がった魔煌兵を睨みつける。

 

「力が上がってるな」

「《ウォークライ》に少し似ているね」

 

 咆哮を上げる魔煌兵を見て、力が上がったのを肌で感じ取ったロドルフォとシャーリィ。それに危機感を感じ取ったのか、ロドルフォはエリゼたちに振り向く。

 

「エリゼ。アルフィンを連れて下がれ」

「え?」

「物陰に隠れていろ。こいつの相手は俺がする」

「そ、そんなことできません! 私たちも一緒に……」

「足がすくんでいるぞ」

 

 ロドルフォの指摘にエリゼは自分の足元を見る。足がぶるぶると震えており、その場から一歩も動き出せない。それはアルフィンも同じだった。

 

「少し手間取るが倒せない相手じゃない。奴が倒れるまで、お前たちは隠れていろ」

「そ、それは……」

 

 たしかに自分たちの力で魔煌兵を倒せるとは思えない。ならば、ここは彼の言うとおり、邪魔にならないように後ろに下がった方が賢明だろう。だが――

 

(……本当にそれでいいの?)

 

 このまま後ろに下がって、本当にそれでいいのだろうか?

 それでは今までと変わらないのではないか?

 兄の後ろで守られていたあの頃と同じ……

 

「わ、私は……」

「エリゼェェェェェェェェェ!!」

 

 その時、階段の方から勇ましい男の声が響いた。その声にエリゼが、アルフィンが、その場にいる全員が顔を見上げた。

 

「終の太刀、暁!」

 

 魔煌兵を横切ると共に無数の斬撃が魔煌兵の身体へと切り刻まれる。着地して魔煌兵に身体を向ける男の後ろ姿を見て、エリゼは我慢しきれずに声を上げてしまう。

 

「兄様!」

 

 黒い髪を揺らし、赤いジャケットを着た青年。その手にはオランピアと同じ東方の太刀が握られており、怖気ずに魔煌兵と向き合うその姿には強い気迫があった。

 

「あれが……《灰色の騎士》」

 

 オスカーは彼の姿にボソッと呟いた。

 エレボニアの若き英雄、《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーがエリゼたちの前に立つ。

 

「リィンさん!」

「殿下、ご無事でしたか!」

「は、はい。ですが、どうしてここに?」

「ヴァリマールが異様な霊力を感知したので、急ぎで戻ってきました。ここは俺が引き受けます。殿下とエリゼは皆を連れて下がってください」

 

 リィンはその場で構えていた太刀を鞘に収めた。敵を前にして武器をしまうその行為に誰もが疑問を抱く中、

 

「一気に片付ける!」

 

 リィンは片手を大きく上に掲げる。その動作にエリゼとアルフィンは察する。

 "彼"を呼ぶ気だ。内戦でⅦ組の仲間と共に駆け抜けた彼の唯一無二の相棒を。

 

「来い! 灰の騎し……」

「っざけんじゃねぇ!!」

 

 しかし、それは反響する怒声によって遮られた。目を開き、後ろに振り向くリィンは、全身を震わせて睨みつけるメイの姿に息を呑んだ。

 

「こいつは俺の喧嘩だ。余計な手出しなんかしてんじゃねぇ!」

「下がっているんだ! 君たちが敵う……」

「うるせぇ! 相手が誰だろうと俺は戦う。逃げる選択肢なんか俺にはねぇんだよ!」

 

 メイはリィンを押しのけて前に出る。自分よりも遥かに大きい魔煌兵に怯むことなく、メイは睨みを利かして拳を構える。

 

「守られるだけなんて、まっぴらごめんだ! 俺はそんな弱者に成り下がるつもりはねぇ!」

「あ……」

 

 守られるだけなんて嫌。

 

 その言葉がエリゼの中にすっと入り込んだ。

 

 そうだ。自分は何のためにここに来た?

 自分は守られるためにここに来たのか?

 

(違う……!)

 

 内戦の時、故郷が猟兵たちに襲われたあの日、自分はアルフィンとともに敵の手に落ちてしまった。連れ去られようとしたその時、リィンは自分たちを助けようと必死に自身の手を差し伸ばした。

 だが、届かなかった。抵抗むなしく、自分たちはまんまと敵に連れ去られてしまった。

 あの時、悲痛に満ちた兄の顔は今も覚えている。

 守るために剣を取ったにもかかわらず、結局、自分は囚われてしまい、最後にはいつもと同じように、また兄に助けられた。

 

(私は……!)

 

 自分は守られるために来たのではない。

 いつも自分を助けてくれた兄を守るために、支えるために、ここに来たのだ。

 兄には大切な仲間がいた。

 苦難を乗り越え、想いを分かち合い、そして、共に涙を流す大切な仲間たちが。

 だが、今、兄の隣に彼らはいない。皆、それぞれの道へと進んでいった。

 兄もそうだ。彼はたった一人で戦おうとしている。

 英雄としての立場、責任、そして周りからの期待。それら全てを背負おうとする兄を、ただ後ろから見守るだけなんて、もうできない。

 だから――、

 

「兄様。どうか、下がってください」

 

 エリゼを縛りつけていた震えがいつのまにか止まっていた。彼女は細剣を強く握り、兄の前に立つ。

 

「エリゼ?」

「ここは私たちがやります。兄様はどうか、下がってください」

「何を言い出すんだ! 危険だ。ここは俺に任せて……」

「お断りします!」

 

 リィンの説得をエリゼは即座に跳ね返す。

 

「私は戦うためにここに来ました。ここで兄様に守られたら、私は結局、何も変わらずに終わってしまいます。これが私にとっての最初の一歩なんです。ですからどうか、邪魔をしないでください!」

「エリゼ……」

 

 強い拒絶にリィンは言葉を失う。すると彼を横切り、一人の少女がエリゼの隣に並び立った。

 

「私も戦います」

 

 アルフィンだった。

 

「姫様……」

「私も同じです。私も守られるために来たわけじゃありません。皇女として、姉として、何よりも帝国を愛する一人の人間として、戦うためにここに来たのです。一緒に踏み出しましょう、エリゼ」

「……はい!」

 

 先程とは打って変わり、魔煌兵に勇ましく立ち向かうエリゼとアルフィン。その様子にメイは笑みを浮かべるのだった。

 

「少しは根性があるようだな」

「敵は強敵です。どうか力を貸してください」

「私が後ろでフォローします。メイさんとエリゼは臆せず、前に出てください」

「上等だ。足を引っ張るなよ」

「ちょっと、ちょっと。何、三人で盛り上がってんの?」

 

 三人の所にシャーリィとカグヤが歩み寄る。

 

「せっかく、楽しくなってきたんだから、シャーリィたちも混ぜてよね」

「私も微力ながら、後ろから援護します」

 

 そんな彼女に続いて、次々と集まってくる。

 

「相手にとって不足なし。《シュライデン流》の力を見せてやる!」

「《TOP》、敵ユニットの解析を始めるよ」

『了解しました』

 

 オスカーは槍を構え、リアムは魔導杖を輝かせる。

 

「私も前に出ます」

「僕も!」

 

 オランピアは太刀を構えて、ウィリアムは直剣とボウガンを構える。

 

「リィン」

 

 そして、ロドルフォはリィンの隣に立った。

 

「ロドルフォ」

「お前は下がれ。これも《特別オリエンテーリング》の一環。俺たちの試練だ」

「だが……」

「妹の門出だ。兄として最後まで見守れ」

 

 ロドルフォの言葉に最後まで悩むリィン。一度、エリゼたちの後ろ姿を見て、深く息を吐くのだった。

 

「やばくなったら介入する。それは譲らないからな」

「十分だ」

 

 ロドルフォはエリゼたちと合流して、二丁拳銃を構える。

 

「……Ⅶ組総員、迎撃準備!」

 

 一同が揃ったのを確認して、アルフィンが声を張り上げる。それは自分が何度も見てきた、後ろで見守ってくれる先輩が仲間たちに激励を上げる。その時と同じように。

 

「全力を持って、目標を撃破します!」

『オウッ!』

 

 瞬間、《ARCUSⅡ》が強い光を放つ。淡い光がアルフィンたちを包み込んだ。

 

「エリゼさん!」

「はい!」

 

 オランピアとエリゼが同時に駆け込む。二人を包み込む淡い光が線となって一つに繋ぐ。

 魔煌兵は大剣を持ち上げて、二人に向かって勢いよく振り下ろした。

 二人は左右に跳んで大剣を躱す。着地と同時に二人は再び、駆け込み魔煌兵の足元へと跳びかかる。

 

「はっ!」

「やぁっ!」

 

 鎧のない膝の関節部分に目掛けて刃を放つエリゼたち。ヒットアンドアウェイを交互に繰り返しながら、魔煌兵の片膝を集中して狙う。

 

「ほらほら、こっち!」

 

 魔煌兵がエリゼたちを振り払おうと動くが、そこにシャーリィのテスタロッサが炎を放つ。チェーンソーと一緒に搭載された火炎放射器が魔煌兵の頭を燃やす。だが、怯みは一瞬、炎を頭に被りながらも、魔煌兵はシャーリィに手を伸ばす。

 

「そこです」

 

 魔煌兵がシャーリィを掴もうとするがカグヤの偃月輪が斬りこむ。飛翔する刃が魔煌兵の腕の関節を的確に狙い、腕の動きを鈍らせた。

 

「シャーリィさん!」

「OK!」

 

 二人の淡い光が繋がる。カグヤが放つ偃月輪をシャーリィは目視もしずに突っ切る。魔煌兵の周りを動き回って斬り込むシャーリィ。その間も偃月輪は飛び回るが、一度も彼女に当たっていない。

 

「オスカー!」

「承知した!」

 

 怯んでいる魔煌兵に淡い光を繋げたウィリアムとオスカーが同時に突っ込む。狙うのはエリゼたちが狙っているのとは別のもう一つの膝。

 

「いっけぇええ!」

 

 ウィリアムは接近しながら直剣を大きく振りかぶる。すると直剣は蛇のように刀身を伸ばし、関節部に向かって直進する。

 

「あれは《帝国解放戦線》の?!」

 

 リィンはウィリアムの武器に目が止まる。それは去年、彼と敵対したテロリストが持っていたものと同じ武器。七耀教会が所有する特殊な武具。法剣(テンプルソード)だった。

 

 鞭を扱うように法剣を振り回して、ウィリアムは膝の関節部を何度も切り裂く。

 

「チャーーーーージ!」

 

 そこにオスカーが追撃する。離れた場所で足を止めて踏ん張るオスカーが、声を上げると同時に爆走する。空気を突き抜けて弾丸をも越える速度で向かうオスカーの槍は関節部を貫き、粉砕する。

 

「「やぁ!!」」

 

 同時にエリゼとオランピアの剣がもう片方の膝を切断する。

 足を同時に崩された魔煌兵はそのまま地面に倒れようと身体を傾ける。

 

「もう一度、吹っ飛びやがれぇええ!」

 

 そこにメイが渾身の一撃を放つ。魔煌兵の身体はまたもや後ろに持っていかれてしまい、そのまま仰向けに倒れてしまった。

 

「解析完了。火属性のアーツが弱点です。アルフィンさん!」

「わかりました」

 

 アルフィンは《ARCUSⅡ》のカバーを開き、そこに新たなクオーツをセットする。それは入学前に兄から戴いたもの。仲間を守れるようにと贈られた自分の新たな力。

 

「《ARCUS》駆動!」

 

 アーツを放とうと青い陣を形成しながら集中するアルフィン。そこにリアムも加勢する。

 

「アーツの強化、および、敵の耐性を弱体化させます! 《ARCUS》駆動!」

 

 リアムもアルフィンと同じく、青い陣を形成する。だが、それだけで終わりではなかった。

 

Week Shoot(ウィークショット)!』

 

 なんと、駆動状態のまま、リアム、否、《TOP》がクラフトを放ったのだ。魔導杖の先端から赤い球体が発射されて、倒れている魔煌兵に直撃する。

 

「火属性の耐性を弱体化、成功! 《フォルトゥナ》!」

 

 リアムがアーツを放ち、光がアルフィンを包み込む。

 

「今なら、行けます!」

「はい!」

 

 アルフィンはアーツを放とうとするが、そこに魔煌兵が倒れながら、大剣を頭上に上げる。大剣は強い光を放ち、雷を纏わせる。

 

「また、落雷か!」

「姫様!」

 

 エリゼはアルフィンに声を掛ける。アルフィンの頭上には雷の光が集まっていた。アルフィンはアーツを中断して、回避しようとしたその時――、

 

「させん」

 

 ロドルフォが大剣に向けて銃弾を放つ。銃弾は大剣に直撃すると、強烈な音と風を周囲に巻き起こしながら、大爆発した。

 大剣は爆発で根元からへし折られ、落雷の光が消えた。

 

「撃て!」

「……《ゼルエル・カノン》!」

 

 魔煌兵を囲うように頭上に赤い魔方陣が現れる。すると、魔方陣から強烈な火炎が一斉に火をく。

 放たれた炎で逃げ場を失った魔煌兵。そこにさらなる魔方陣が現れる。

 一際大きな赤い魔方陣が魔煌兵の真上に現れて強い光を放つ。そして、強大な火柱となって魔煌兵を飲み込んだ。

 魔煌兵は灼熱の業火に耐えきれず、絶叫を轟かせる。その様子をエリゼたちは黙って見続ける。

 炎が消え、赤く染まった景色が戻った。そこには焦げて黒くなった地面だけが残っており、魔煌兵の姿は完全に消えていた。

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