コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 短編集 作:アシッドレイン
ジャンル ?
注意)
舞台は、キュウシュウ戦役で黒の騎士団が勝利し、九州を拠点に合衆国日本宣言した後の話。。
一部、細かい設定がゲームと違っていますが、スルーをお願いします。
九州を奪還し、合衆国日本宣言をした我々黒の騎士団だったが、それで戦いが終わったわけではなかった。
そう、まだ日本を完全に取り戻せてはいないのだ。
本来なら九州だけしか手に入れていない合衆国日本が、ブリタニアに勝てるはずも無く、あっという間に壊滅してもおかしくなかった。
だが、世界最大のサクラダイト産出国という条件がそれを覆す。
EUにしても、中華連邦にしても、サクラダイトをブリタニアだけに牛耳られていて面白いはずもなく、水面下ではかなりの妨害が行われていた。
それに、世界各地で戦い続けるブリタニアという国のシステムが、戦力の集中を妨げている。
その結果、戦いは、互角以上の状態になっていたのだ。
各地に散らばるゲリラとも連携を取りながら、戦線は北上していく。
そして、後の歴史が日本開放戦争の一大決戦と記した富士山周辺での戦いが開始された。
「なんて数だよっ……」
いくら制限されているとはいえ、まさにこの戦いはブリタニア側としても正念場とわかっているのだろう。
かなりの戦力がかき集められていた。
だが、それでも我々は負けられないのだ。
「ふむ……。少尉、紅蓮に先に補給に戻るように連絡しろ。ここはわしと少尉で抑える」
仙波大尉の言葉に僕は合意し、カレンに連絡を入れる。
「カレン。先に戻って補給してくれ。ここは、僕と大尉で防ぐから……」
僕の連絡にすぐにカレンの言葉が返ってきた。
「わかったわ。すぐ戻ってくるから……。それと、念のために言っておきますけど死んだら許さないんだからね」
その言葉に、僕は思わず笑いながら返事をする。
「当たり前だよ。カレンと結婚するまでは死ぬつもりもない」
笑いながらの言葉だが、これは僕の本音だった。
「……馬鹿っ……」
照れたような罵倒の言葉で無線は切れる。
真っ赤になっているカレンの姿が目に浮かぶ。
「ははははは。相変わらず仲がいいようで、わしとしては嬉しい限りだ」
無線を聞いていたんだろう。
仙波大尉が笑いながら言う。
「あ、すいません。戦闘中に……」
謝る僕に仙波大尉の笑い声がより大きくなる。
「かまうものか。ピリピリしているだけでは、身体がもたんからな。よい余興だ。あっはははは」
そして、笑いがおさまると仙波大尉は噛み締める様に言った。
「生き残れ。そして、今言った事を必ずやってみせろ」と。
僕は、大きな声で返事をする。
「はいっ。絶対に……」
そして、僕と大尉は、迫ってくる敵ナイトメアに向かって突撃を開始した。
僕は、ゆっくりとドアの鍵を開けた。
そこは士官用の部屋だったが、大きさの割りに荷物は少なそうだった。
そう、ここはかって仙波大尉の部屋だった場所だ。
先の戦いで、彼は僕を庇い……。
ガンッ……。
鉄製のドアに拳を叩きつける。
激しい痛みが走ったが、今、心を締めつける痛みよりもはるかに軽いものだった。
あの時、僕がもう少しうまくやっていれば……。
後悔だけが心の中で大きくなっていく。
「……ライ……」
隣にいたカレンが僕を気遣っているのがわかる。
「ご、ごめん……」
僕はそう言うとゆっくりと部屋の中に入っていった。
部屋は、見た目どおり、あまり荷物はなかった。
いくつかの着替えと最低限の生活用品、それに本が数冊。
そして、僕は見つける。
1つの封筒を……。
封筒には、達筆な字で僕の名前が書かれていた。
僕は震える手で封を切り、中身を出す。
中には1つの指輪と1通の手紙が入っていた。
僕は、ゆっくりと手紙に目を通す。
拝啓、ライ殿
貴殿がこの手紙を読んでいるという事は、わしはもうこの世にいないだろう。
本当なら、生き抜いて渡したかったが、いつ死んでもおかしくない命だ。
だから、ここに書きとめておく。
わしは、ひとつやらねばならぬ事があった。
それは、先祖から仙波家に伝わる指輪を譲り渡す事。
そして、この指輪を仙波家の跡取りが、結婚相手に求婚するときに送るのを見守る事だ。
これは、わしの曾爺さんから続いてきた慣わしだ。
だが、残念な事に、わしの子供は先の戦争で死んでしまい、仙波家はわし一人になってしまった。
だから、この慣わしも終わりかと思っていた。
だが、そんな時だった。
貴殿と会ったのは。
最初は、少々腕のいい少年程度としか思っていなかった。
だが、貴殿は、実に優秀だった。
だが、それだけではない。
かっての息子の若い頃に良く似ていたのだ。
いや、姿形のことではない。
雰囲気や物腰がだ。
そして、気が付くと、わしは貴殿の姿にかっての息子を重ねてみるようになっていた。
それは、貴殿にとっては、迷惑でしかない事だったかもしれん。
だが、わしにとっては、貴殿は、私の息子同然だった。
共に戦場を駆け抜け、共に笑い、共に苦労をしてきてよりそう思った。
だから、わしは、この指輪を貴殿に譲ろうと思う。
仙波家の事とか考えなくともよい。
ただ、この指輪を託せると思えるものが貴殿しかいなかったのだよ。
だから、ライ殿、迷惑でなければこの指輪を貰っていただけないだろうか。
そして、どうするかは、貴殿に任せる。
そこで手紙は切れている。
そして、気が付くと、手紙に黒い染みがいくつも出来ていた。
そう、僕は泣いていたのだ。
また一つ、涙が手紙に黒いしみを付けていく。
多分、後ろから手紙を読んだのだろう。
カレンが僕の背中にぎゅっと抱きつく。
「ライ……」
呟くような声。
だが、その声は、震えるような涙声だった。
「仙波……大尉……」
僕の声も悲しみに震えていた。
そういえば、大尉は、いつも僕の事を気にかけていてくれたっけ……。
訓練の時も、戦闘の時も……。
そして、いつも豪快に笑って口癖のように話していた。
「これからは、少尉のような若者が引っ張っていかねばならぬ。だから、わしより先に死ぬんじゃないぞ」と……。
大尉の気持ちは良くわかりました。
でも、どうせなら……。
僕は、大尉が生き残って、直接僕に手渡してくれる方がずっとずっとよかった。
その方が、何倍も何十倍も嬉しかったのに……。
涙が止まらなかった。
そして、それはカレンも同じだった。
僕らは、そのまま涙が枯れるまで泣き続けたかった。
だが、そういうわけにはわけにはいかない。
まだ、すべてが終わった訳ではないのだから。
だが、それでも僕に出来ることが一つある。
だから、僕は指輪を手に取って振り返った。
そしてまだ泣いているカレンにそっと言う。
「紅月カレン。まだすべてが終わったわけじゃないけど、君に言いたいことがあるんだ」
ゆっくりとカレンが僕の顔を見つめる。
その顔は、涙でぐちゃぐちゃだったが、それでも愛しく綺麗だと思った。
「僕は、君が好きだ。この戦いが終わってからでも構わない。僕と……」
そこで言葉を切って深く深呼吸をする。
そして、はっきりと言った。
「僕と結婚して欲しい」
一瞬、驚いた表情で止まったカレンの顔。
だがすぐに真っ赤になり、再び目から涙が溢れ出した。
彼女が俯き、しばしの間が空く。
だが、彼女は俯いたまま答えなかった。
駄目なのだろうか……。
僕の心が不安という感情に染められていく。
急な事だし、仙波大尉の手紙を読んだから言われたのだと思ったのかもしれない。
でも、これはきっかけに過ぎない。
僕は、いつかは言うつもりだったのだ。
カレンと結婚し、共に歩みたいと……。
そんな事を考えていたら、ぶつぶつと聞き取れないような声でカレンが呟く。
「えっ?!」
彼女の呟きはよく聞こえず、僕は思わず聞き返す。
すると、じーっと僕を見つめた後、拗ねるような表情になってカレンが再び口を開いた。
「ずるい…。ずるいよ、ライ」
僕は、その言葉に唖然として何も言い返せない。
「こんな状況なら、イエスしか言えないじゃないの」
カレンが僕を責めるように言う。
僕は、慌てて言いつくろうとしたが、その口は塞がれた。
カレンの唇で……。
そして、唇を離して文句を続ける。
「馬鹿っ。これじゃ、本当に私がライの事が大好きで返事したと思われないじゃない。
勘違いしたらいけないから言うけどね……、私は貴方が大好きで、本当にとても大好きで、私も一緒になりたいからOKするんだからね」
そして、そこまで一気に言うとぷーと頬を膨らませ、そっぽを向いた。
「ご、ごめん……」
思わず反射的に謝りながら、僕は彼女の言った言葉を反芻する。
そして、気が付く。
彼女の返事がOKだという事に……。
僕は、慌てて俯きかけた顔を上げて彼女を見る。
そこには、少し呆れて、それでいて嬉しそうな表情の彼女がいた。
「本当に、気が付くのが遅いんだから……」
彼女は、そう言うと、再び僕にキスをする。
僕もそのキスを喜んで受け止めた。
キスが終わり、僕は、手で掴んでいる指輪を思い出す。
返事がOKなら、彼女に渡そうと思っていたのだ。
たが、それは彼女からの突然のキスですっかり忘れかけていた。
「カレン……」
僕はすーっと指輪を見せる。
「んっ」
カレンも頷き、僕の前に左手の指を広げて見せた。
貴方の手で付けてほしいという意思表示。
僕は、やさしく指輪をカレンの薬指に入れようとする。
だが、どうやらサイズが合わないらしく入りそうにない。
そして、互いに顔を見合わせる。
目と目が合い、私たちは同時に笑い出していた。
どうやら仙波さんは、まだ許可してくれないらしい。
「もう仕方ないな」
カレンは、そう言うといつも身に着けているロケットのチェーンを外して、それに指輪を通す。
そして、僕の顔を覗き込む。
「戦争が終わったら、サイズ調整してもらおうよ」
「そうだね」
僕も素直に頷く。
そして、微笑みながらカレンは言う。
「結婚して指にはめてもらわなきゃならないんだから、死んじゃ駄目だからね」
僕も笑いながら答える。
「もちろんさ。大切な僕の嫁さんを一人にするものか……」
そして、再び笑いあった。
仙波大尉、いや、仙波さん。
僕は、貴方の想いとこの指輪を受け入れ、絶対に生き残ってカレンと添い遂げて見せます。
だから見ていてください。
僕はそう誓った。
《おわり》