コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 短編集 作:アシッドレイン
ジャンル「ホラー」
注意点
R指定出来そうな残虐描写らしきものあり。
オリジナル設定。オリジナルキャラあり。
以上の点で問題ある人は、スルーお願いいたします。
「う~んっ……ここは……」
私は周りを見回した。
白い壁に白いカーテン、そして光の注ぐ窓…。
病院?
私は頭を軽く振る。
まだ、頭の奥で鈍い痛みが走るが後はなんとか大丈夫みたい。
身体の方も異常はなさそう。
少し擦り傷と打撲があるくらいみたい…。
でも…なぜ…ここに?
私は…確か……井上さんに呼ばれて…。
まだはっきりしない頭で、私はゆっくりと記憶の糸をたどり返していく。
そう…あれは…2週間近くぶりに井上さんから電話があったんだった。
二人とも忙しくてなかなか会えないけど、今度ゆっくり遊びにいらっしゃいって言ってたっけ…。
なんでもこっちの方に部屋借りたって言われて…。
で…遊びに行って…。
そこから記憶があいまいになる。
そして…私は教えられる。
あまりにもショックな現実を…。
私が意識を取り戻した後、いろいろと事情調書を受けた。
そして、聞かされたことは、ライが井上さんに殺され、井上さん自身も精神に支障をきたし廃人のようになってしまっているという事だった。
前後の流れは、井上さん自身から聞き出せないためになんとも言えないらしい。
ただ、治安警察が踏み込んだ時には、部屋の床一面に血が飛び散り、絶命したライの肉を貪り食っていた井上さんがいたという話だった。
そして、バスルームで失神していた私が発見され、病院に担ぎ込まれたという…。
「どうして…こんな事になっちゃってるんだろう…」
最愛の人と信頼できる先輩を同時に失い、私には枕に顔を埋め泣く事しか出来なかった。
病院から退院し、1週間が過ぎた。
合衆国日本建国の英雄であり、黒の騎士団双璧の一人と言われたライの死は、混乱を抑えるためブリタニア軍の暗殺と発表された。
また、井上さんは重傷とされ、隔離施設へ送られていた。
すべては闇の中へと隠されていく。
そして、発表の翌日に行われたライ追悼のゼロの演説が放送されるとその反響は大きく、多くの日本人が打倒ブリタニアと心に誓い立ち上がっていた。
しかし、私はその様を冷めた目でしか見る事は出来なかった。
一部ではあるが真実を知ってしまっていたから…。
結局、いろんな大きな情報も真相はこんなものなのかもしれない…。
私は、そんなことをぼんやりと考えてその日を過ごした。
しかし、翌日、そんな私に1つの小包が届く。
宛名のない小包は気味が悪かったが、何か惹かれるものがあり受け取ると中を開けた。
そこには1冊の日記帳が入っていた。
ぱらりとページをめくる…。
それは…井上さんの日記帳だった。
私は、それをゆっくりと読み始めた…。
事件の真相を知る為に…。
その日記帳には、井上さんのライへの熱い思いが綴られていた。
「井上さん…ライの事…」
それなのに自分は、無邪気にライの事を相談していたのだ。
辛かったんだろう…。
悲しかったんだろう…。
それでも彼女は…私に…。
だが…ある日から、書き方ががらりと変わっていった。
その日とは…そうカレンがライに告白した日だ。
そして、その日を境に日記には、支離滅裂な言葉が目立ち始める。
悲しみや悩みといった内容から、憎しみと恨みが増え始る。
私は、背筋がぞーっとする思いだった。
心の壊れていく様を日記という媒体で目のあたりにする。
その恐怖が、私を襲ってくる。
だが、私は見る事をやめることは出来なかった。
まるで魅入られたかのようだった。
そして…最後のページには、こう書かれていた。
「カレン…貴方にライくんは、渡さない…。
彼の身も心も私がもらっていくわ。
貴方は一人生き残って寂しく悲しみに溺れるがいい…。
かっての私のように…。
貴方みたいな女には、それがお似合いよ…。
私は、彼の心と思い出で幸せに生きていくから…」
乱れきった字で書かれたその文には、私への嘲りと侮辱に満ち溢れていた。
それを読んだ時、私の心の中で何かが弾け、湧き上がった。
弾けたものは、哀れみと同情。
そして湧き上がったものは、憎しみ…。
そして怒り…。
そう…。
そうなんだ…。
井上さん…私を殺さなかったのは…そういう事なんだ…。
うふっ…ふふふふふふふふっ…。
自然と口から笑いが漏れる。
そう・・そういうつもりなんだ。
いいわ…。
貴方の思い通りにはさせない…。
貴方なんか…幸せにさせないから…。
私は、日記帳を閉じるとナイフを仕込んだ愛用のポーチを持ち立ち上がった。
ある決意を秘めて…。
日記帳を読み終わって3時間後。
隔離施設の一室に私はいた。
目の前には、井上さんがいる。
彼女は、虚ろな表情のまま枕をクッションにして寄りかかるようにベッドに座っていた。
「井上さん…日記読みましたよ…」
そう声をかけても反応しない。
そう…彼女の精神はここにはもうないのだから…。
自分の世界に入りきり、ライと今でも楽しく過ごしているのだろう。
だが…私は…それさえ許せない…。
憎しみが、怒りが私を支配する。
「ふっ…貴方だけを幸せになんかさせないわ…。死んで…井上さん…」
ポーチに仕込んだナイフを出して斬りつけようとする。
だが、その時だ。
何にも反応しないはずの井上さんの首が私の方を向いたのは…。
そして、ぎろりと私を視線に捕らえる。
「ひっ…」
思わず、ひるむ。
それほどに狂気じみた動きだった。
「ひひひひ…。いい殺気だねぇ…。お譲ちゃん」
井上さんの口を使ってまったく違うものが話しかけてくるような感じさえしてくるほど違和感のある声が部屋に響く…。
「な…なにっ…」
恐怖に捕らえられ、その場に崩れ落ち座り込んでしまう。
「この女もいい媒体だったけど、心を閉ざしちまったらもう駄目だねぇ…」
「な、何言ってるのよ…」
震える声で文句を言うが、膝がガタガタと震えている。
「いいねぇ…。あんたなら長く持ちそうだ…。あんたに決めようかね」
恐怖に押しつぶされそうになり、逃げようとするものの、足は振るえ立ち上がることさえ出来ない。
そして、その視線から目を離すことも出来ないでいた。
「ひひひひ…、我、フォン・ユンツトが命じる。我を受け入れよ…」
目が紅く怪しく光る。
そして…私は気を失った。
「ふひひひひ…。いい、いいよ…この女は…。また遊べそうだねぇ…。
さぁ、また…悲しみと不安を糧に、怒りと恨みの祭りを始めるとするかねぇ…」
カレンの中に入り込んだ人格は、そうつぶやくとここで起こった出来事の記憶を消し去って心の奥底に入り込んでいった…。
かって、井上と呼ばれた女性に行った事と同じように…。
「あれっ…私…どうしたんだろう…」
気を取り戻した私は、周りをきょろきょろして状況を把握しょうとする。
そうだ…。
私は…怒りに駆られて…。
床に転がっているナイフを仕込んだポーチを拾い上げる。
さっきまでの怒りがすーっと引いていく。
井上さん…きっと寂しかったんだね。
そう思うと彼女へ憐れみすら感じられる。
私はそのまま立ち去ろうとした。
その時、私の中に現れたもう一人の私が囁く。
-いいの?彼女を許して…。
えっ?!
私は戸惑う…。
-貴方の最愛の人を殺したのよ。そして、自分だけは自分の世界に閉じこもって幸せになっているのよ。
でも…。
-悔しくはないの?貴方は不幸になって悲しみに暮れているのに…。
ああ…。
-やはり…罰を与えないと…。そう思うでしょ?
あああああ……。
私の心を黒い怒りという闇が塗りつぶしていく。
-さぁ…やるのよ…。
アァアァァァァア嗚呼ああ…。
私は、もう一人の声に従うかのようにポーチから刃を出すとゆっくりと振り上げていく。
-さぁ…、さぁ…、さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………。
そして、私は腕を振り下ろした…。
紅い…。
とっても紅いものが…飛び散った…。
アア…ナンテキレイナ…紅…。
私は、ふとそう思ってしまっていた。
そう…そして悪夢は決して終わらない…。
悪夢は…連鎖していく…。
他の人を巻き込んで…。
人の意識に乗り移るギアスを持つフォン・ユンツトがいなくならない限り…。
悲しみと不安を糧に怒りと憎しみの宴を楽しむナイトメアがいる限り……決して終わらない…。
《完》