コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 短編集 作:アシッドレイン
出会いとは、いろんな形がある。
その後の関係も……。
そして、これはそんな中の一つの出会いと関係の話…・・・。
「では、ライ、視察の皆様のご案内をよろしくお願いしますね」
ユーフェミア様は、にこやかにそういうとスザクを連れ立って部屋から出て行った。
出て行く間際に、スザクがごめんって感じで手で合図をしていたのだが、僕はよくわからず呆気に取られていた。
なんで…僕が……。
その時はそう思ったが、後からスザクから理由を聞いて納得した。
どうやら、本国でも特区日本を守護する二人の白騎士はかなり有名になっているという話だ。
それに元イレブンであり、ユーフェミア皇女殿下の婚約者であるスザクよりも一応ブリタニア人の僕の方が皇族や女性受けがいいのが選抜の理由ということらしい。
スザクはそう説明した後、小声で付け加えた。
どうやら視察団うちの一人の女性の指名というのが本当のところとか……。
確かに女性に興味がないわけではないが、どうも皇族というと親戚というイメージが先行して恋愛対象と思わない感じがするんだよなぁ。
それに、皇族や本国の貴族連中はガチガチのナンバーズ嫌いばかりだし…。
だから、いくら慕われてもねぇ…。
本当に頭が痛いよ……。
そんな風に思っていた。
だから、そこそこ相手をして、誤魔化すしかないか……。
そんな事を考えていたし、その通り実行した。
そして、視察最終日の夜……。
僕は、パーティ会場の離れたベランダで一人たたずんでいた。
ふぅ……。
口から溜息が出る。
やっと開放される。
そう思ったら、自然と出ていた。
おおむね皆さん満足されたみたいだし、問題なく終了したみたいだ。
もっとも、僕に御執心と思われる皇族の女性からのベッドへのエスコートはお断りしたので、その女性にしてみれば不満かもしれないが……。
ともかく、一気に肩の重しが落ちた気がする。
すごく気が楽になった。
明日は非番だからのんびりして、明後日はスザクと久々に模擬戦でもするかな。
確か、クラブの改修が終わったって話だったし…。
そんな事を考えていたら、後ろから声を掛けられた。
「いい?」
そこには、ドレスを着たピンク色の髪の少女が立っていた。
確か…彼女は……。
僕は、慌てて直立不動の姿勢をとる。
そう、彼女の名は、アーニャ・アールストレイム。
ラウンズの一人であり、今回の視察団の一人としてここに来ていた。
そう言えば、よく見られていたな…。
それに写真も撮られていたような…。
もっとも、迫ってくる女性をかわすことを優先していたので気にはしなかったけど。
ふとそんな事が頭に浮かぶ。
ともかく、ここは無難に返答しておこう。
「はっ、どうぞ」
だが、そんな僕の対応に、何を思ったのか無表情のままじーっと顔を覗き込まれる。
今の溜息……聞かれたかっ……。
すーっと汗が背中を濡らす。
やばいなぁ……。
油断しすぎたっ。
そんな事を考えていたら、無表情のまま彼女は言った。
「軍務以外の時もそう対応するの?」
その予想外の言葉に僕は「はぁ?」と何気なく答えてしまう。
ますますじーっと覗き込む彼女。
何か言い訳を言った方がいいのかもしれない。
そう思って口を開こうとしたが、その前に彼女の方が反応した。
「ふーんっ…」
それだけ言うと何を納得したのか、そのまま彼女は踵を返してパーティ会場に戻って行った。
何だったんだよ、今のは……。
次の日の朝早く、僕はスザクに起こされた。
だが別に一緒に住んでいるわけではない。
ドアを叩く音で叩き起こされたというのが正しい。
「どうしたんだよ…、こんな朝早くにぃ…」
欠伸まじりの文句をドアを開けてスザクに言う。
今日は、僕は非番のはずだけどなぁ…。
なんか重大な事でも起こったのだろうか…。
でも、そういう時は、電話とかで連絡してくるし…。
瞼をこすりながらそんな事を考えていた。
「ごめん…ライ。非番なのはわかってるけどね」
苦笑してそう言った後、スザクはきりっと真剣な表情になった。
「アールストレイム卿が、模擬戦の相手に君をご指名だよ。すぐ出かける支度をしてくれ」
その言葉に僕は驚いた。
「そんな予定なかったんじゃ…」
「うん。なかったよ」
すばやくそう返される。
「じゃあ…なんでまた…」
そう答えると、スザクは僕の肩をポンと叩いて言った。
「ライ、言ったよね…。今回の件で女性の指名があったって……」
「ああ、聞いたよ。だから、問題ない程度には相手をしたけど……」
まぁ、ベッドへのエスコートは断ったがきちんと対応したし、問題にはならないと思うのだが…。
それにパーティが終わる頃には大変満足そうだったけどな。
僕の表情から、それを読み取ったらしい。
「いや、ご不満らしいんだ。だからだよ…」
スザクがすぐにそう説明する。
「へ?!」
ちょっと待て。
スザク、今、なんと言った?
ご不満だと?
それが模擬戦とどう関係するんだ…。
そこまで考えて、昨日の夜の事を思い出す。
「まさか…」
「そう、そのまさかだよ」
スザクは、呆れたような表情を見せた。
「僕に御執心の女性っていうのは……もしかして……アールストレイム卿のことかっ」
スザクは、こくりと頷く。
「言ってなかったっけ?」
真顔でそんな事を聞いてくる。
「聞いてないぞっ」
僕は、ちょっとイラっとしてそう答える。
するとスザクのやつは、にこやかな笑顔で言い切った。
「あ、ごめんね」
「ごめんですむかっ」
思わず、そう答えた。
眠気が一気に覚める。
「でも、相手を勘違いしたのは、ライだからなぁ」
そんな事を言い出しているスザクに、僕は、今、初めて殺意を覚えた。
こういう天然なのはわかっていたが、ここまでとは…。
しかし、今更何を言っても始まらない。
「わかったよ、どうすればいい?」
結局、前向きに行動するしかない。
「大丈夫、車を手配しているから、すぐに着替えて出かける準備をしてくれればいいよ」
そう説明するスザクを感謝する気にはならなかった。
こうなったのもスザクが悪いんじゃないかっ。
そう思っていたから…。
だから、さっさと彼を部屋から追い出すと身支度を素早く整える事にしたのだった。
30分後、僕は模擬戦の行われる場所に着いた。
車から降りるとロイドさんとセシルさんが僕を見つけて、手を振って呼んでいる。
改装されたクラブの説明の為だろう。
「しかし、君も大変な人に気に入られちゃったねぇ。むふふふふ」
説明しながらロイドさんがニタリとそんな事を言ってくる。
それを慌てて別の話題を振って誤魔化そうとするセシルさん。
いや、大丈夫ですよ、セシルさん。
もう慣れましたから…。
苦笑し、ロイドさんに言い返す。
「そのおかけで面白いデータが取れるんじゃないですか。終わったら何かおごってくださいよ」
軽く冗談ぽく言ってみる。
これ位言っても罰は当たるまい。
「そうだよねぇ。うん、君の言うとおりだよ。よしっ、今夜の夕食は僕がおごるよ」
ご機嫌にそう答えるロイドさん。
ナイトオブラウンズとの模擬戦は、それほど楽しみなのだろう。
いやぁ、言ってみるものだ。
そんなやり取りを呆れて見ているセシルさん。
多分、「ああ、ライくんもすっかりロイドさんに染められちゃったのね」みたいな事を考えているのだろう。
表情がそう語っている。
まぁ、雑談はそれくらいにして本題に入ろう。
「で、アールストレイム卿のナイトメアのデータありますか?」
僕がそう言うと、情報末端からデータをディスプレに映し出してくれる。
彼女専用のナイトメア「モルドレッド」。
その詳細なデータがずらずらと映し出される中、そのデータを確認して僕は苦笑した。
「すごいですね…。まさに動く砲台って感じだ」
「そうだねぇ。彼女のナイトメアは、火力と防御力重視だからねぇ。かなり硬いよぉ~」
ロイドさんが面白そうにそう解説する。
「だけと、その分、機動力と格闘戦には不向きな感じですね」
その解説にディスプレを凝視して僕はそう答える。
「だけど、接近戦だとしてもMVSでもなかなか突破は無理だし、長距離だとクラブの火力では、貫けないわよ」
僕の言葉にセシルさんがそう切り返す。
「でも、シールドが硬いとしても全方位展開じゃありませんよね」
「そうね。ランスロットと同じ様な感じかしら」
セシルさんのその言葉に僕はニヤリとしてみせた。
「提案してあった改修がされているようだったら、何とかなりますよ」
そんな僕の言葉にロイドさんは、ますます楽しそうな表情をした。
「もちろんだよぉ。ご注文どおりにやっといたから…」
ロイドさんがここまではっきりと言い切ったのなら問題はないだろう。
「でも、かなり繊細だから大変だと思うわよ。仮想データだけでしかやってないから……」
心配そうに僕の顔を覗き込むような感じで見ているセシルさん。
まぁ、ぶっつけ本番っていうのは確かにきついかもしれない。
でも、まぁ、なんとかなるかなという自信はあった。
だから、そんなセシルさんに自信ありげに微笑み返す。
「大丈夫ですよ。ある程度の仮想データがあるだけでも助かりますし、予想通りならうまくいくと思います」
そして、気になった事を切り出す。
「ところで判定の方法はどうするんですか?」
そうなのだ。
火力重視のモルドレッドで模擬戦の場合、その点が気になっていたのだ。
「まぁ、予想してたと思うけど、模擬弾とコンピューター処理判定がメインだね。後、格闘戦は、寸止めでお願いするからねぇ」
気楽に言うロイドさん。
いやぁ・・・あの重装甲に寸止めって・・・。
まぁ、とやかく言うまい。
ともかくやってやろうじやないか…。
それにやる以上は、勝ちたい。
ナイトオブラウンズと模擬戦なんてめったに出来ることではないからなぁ。
そういえば確か……ナイトオブラウンズとの模擬戦なんてノネットさんとやったとき以来だ。
でも、ノネットさんの時はスザクと僕の2対1だったし、それにノネットさんは専用機でもなかった。
そんな条件でも圧倒されたっけ…。
ふとそんな事を思い出し、苦笑してしまう。
たが、あの時とは大きく違う。
あれから1年以上が過ぎて僕の腕も上達したと思うし、何より僕自身もクラブという専用機を手に入れている。
負けられない。
そういう思いが、沸々と湧き上がってくる。
アドレナリンが全身を駆け回っているような感覚だ。
僕は、ゆっくりとディスプレから目を離すとクラブの方に目をやった。
頼むぜ、相棒。
僕は、心の中でクラブにそう声をかけていた。
ポワーーッ……。
キュルルルッ・・・・・。
コックピット内が独特の起動音とディスプレの光に満たされる。
OSが立ち上がり、各部のチェックを始める。
「すべて問題なしっ。こっちはいつでもいけますよ、セシルさん」
各部のチェックが終わるとサブモニターの隅っこに小さく写るセシルさんを見て報告する。
「こっちでもチェック終わりました。ランスロット・クラブ、発進どうぞっ」
僕はスティックを握りなおすと深呼吸をした。
「ランスロット・クラブっ……。行きますっ!!!」
その声と同時にクラブを発進させた。
一気に急なGが身体を襲う。
だが、それは僕にとって身が引き締まる様に感じられて気持ちが良かった。
さぁ、やってやるっ。
模擬戦地域では、すでにモルドレッドが僕を待っていた。
「すみません。お待たせしました、アールストレイム卿」
僕はそう無線で話しかけた。
「そうね。少し待った…」
短くそう答えるアールストレイム卿。
相変わらずの無表情な顔がサブディスプレに映し出される。
その言葉と態度に少しカチンときた。
急に言い出したのはそっちだろう。
そう言い返したかったが、相手は皇帝陛下直属の騎士だ。
言い返せるはずもない。
「すみません」
短く、そう返事をする。
なんだよ、この女はっ…・…。
だから、本国にいる貴族とか皇族っていうのは嫌いなんだよ。
表情には出さず、そう心の中で不満をぶちまけている時だった。
「賭け……する…。いい?」
へ?
賭け?
いきなり、なんでそうなる…。
僕がアールストレイム卿の急な提案に驚いて何も返事出来ないでいるとそれを承諾と認識したのだろう。
そのまま話を進めていく。
「私が勝ったら1ついう事をきいて」
「え?!」
言葉に詰まる。
どういう事だよ…それは……。
だが、そんな混乱しかけた僕にお構いなく言葉を続ける。
「貴方が勝ったら……」
そこまで言った後、サブモニターの彼女の姿が消えて一気にモルドレッドが攻撃を開始した。
「くそっ。なんなんだっ…」
そのおかげで混乱しかかった頭ははっきりしたが、それどころではないほどの火線が幾重にも迫ってくる。
「くっ…」
一気に出力を上げ機体を加速させると火線の間を曲芸のようにくるくると避けていく。
コックピットのスピーカーが危険を知らせるブザー音をがなりたて、「すごいっすごいっ」というロイドさんの声、「不謹慎ですっ」というセシルさんの声がそれに続く。
ギリギリと身体をGが締め上げ、それに耐えるため歯を食いしばる。
身体は、その激しい動きに悲鳴を上げていたが、頭の中は別だった。
勝つためにするべきことが頭の中を駆け抜けていき、それに合わせてスティックを小刻みに動かして避けていく。
思ったよりも激しいじゃないかっ。
だが…それ以上じゃないっ…。
僕は、少しずつ距離を詰めていき、一瞬火線が弱まった瞬間を狙って突っ込んだ。
いけるっ…。
そう思った瞬間、待ち構えたようにハドロン砲が発射された。
反応するままに回避運動を行い、シールドを展開する。
多分、完全に回避しきれない。
そう判断したためだが、それは間違っていなかった。
モニターに被弾の表示が一瞬点滅する。
かわしきれず、シールドに掠めたのだろう。
もっとも、今の攻撃と回避行動をコンピューターは、被害なしと提示した。
それでもシールドエネルギーの消耗が激しい。
すごい威力だ…。
こりゃ、何度もは無理だな。
出来て後2回ってとこか……。
再度激しくなった攻撃を回避しながらデータを修正していく。
思った以上にモルドレッドの反応が早い。
見せてもらった機体データ以上だ。
さすがナイトオブラウンズと言ったところか。
相手の出方を伺うため回避に専念していると再び火線が弱くなる。
誘っている…な。
脳裏に無表情の彼女の顔が浮かぶ。
いいさっ、やってやるっ…。
僕は、コントロールスティックを握りなおすと火線の中に突っ込んでいった。
「うーん…。なんか今日のライくんの動き、強引過ぎませんか?」
空中で行われる戦いをモニターしながらセシルが呟く。
模擬戦がスタートしてすでに5分が経過していた。
火線が弱くなると突撃を繰り返し、その度にハドロン砲で攻撃され回避して距離をとる。
それが何度も繰り返されていた。
「そうだねぇ。なんかそういう感じするねぇ。彼らしくないっていうか……」
ロイドが歯切れが悪そうに同意する。
だが、一人スザクだけは別意見のようだった。
「さすがだと思いますよ、ライは……」
彼は空中で激しく動きあう2つのナイトメアを見上げてそう答えた。
「え?!」
思わぬ意見にセシルがモニターから目を離し、空を見上げた。
ロイドは、興味深そうにスザクを見ると聞き返す。
「その根拠はなんだい?スザクくん」
その顔には笑みが浮かび実に楽しそうだ。
空を見上げてナイトメアの動きを目で追いながらスザクが答えた。
「数字だけだと同じことの繰り返しの様ですけど、動きを見てたらわかります。少しずつ軌道を修正してますよ。
だから、1回目は回避しきれずにハドロン砲をシールドで受け流したけど、それ以降はかすってもいません」
そんなスザクの言葉にうなづくロイド。
「確かに…。数字だけではわからないねぇ、それは……。で…スザクくんの考えとしては、彼は勝てそうかい?」
ロイドだけでなく、セシルも視線をスザクに移すと彼の答えを待っている。
「わかりません。ですけどそろそろライが仕掛けると思いますよ」
拳をぎゅっと握り締め、2機の動きを目で追い続けるスザク。
そして、スザクの言葉に誘われるかのようにロイドとセシルも2機の動きを目で追い始めた。
つまんない……。
何度も繰り返される単調な攻撃にアーニャはうんざりしていた。
これなら、模擬戦しなくてもよかった。
ふとそんな事が頭に浮かぶ。
そして、幻滅し、悲しい気持ちになる自分がいた。
ノネットの嘘つき……。
話してくれたこととまったく違う。
彼女が話してくれたライは、すごくかっこよくて、優しくて、そして強いはずだった。
それなのに……。
ああ…、こんなことなら、来なければよかった。
会わなければ、こんなに幻滅する事も悲しくなる事もなかったのに……。
もう……いいや……。
終わらせよう。
そう決断すると、アーニャはわざと攻撃を弱めた。
そう、ライを誘い込むために。
ほんと……つまんなかった。
そう思いながら・・・・・・。
攻撃が一瞬弱まる。
よしっ、そろそろ仕掛けるか。
シールド強度のゲージを最大まで上げる。
シールドエネルギーのほとんどを消費するが、これであのハドロン砲の直撃を1回だけだが完全に受け流せるはず……。
だがさっきまでとモルドレッドの攻撃してくるタイミングが違う。
つまり、彼女も仕掛けてくるということだ。
くそっ、なんでわくわくするんだっ、僕はっ。
そんな事が思い浮かんだが、今はその思いを胸の中に押し込めた。
くるくると機体に回避運動をさせながらモルドレッドに接近していく。
多分、ハドロン砲を牽制に使って、こっちの回避方向に火力を集めて攻撃してくるに違いない。
その為に、何度も単調と思えるような攻撃を繰り返してきたのだ。
うまくかかってくれればよし、かかってくれない時は、強引に懐に割り込むだけさ。
そう決心し、スロットルを一気に踏み込む。
「勝負だっ!!!」