コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 短編集 作:アシッドレイン
分類 シリアス
注意事項
本SSは、解放戦線編に行きながらそれでもカレンを思い続けた場合というのを想定して書いています。
また、設定など本編とは違う解釈やオリジナルの部分が多々あります。
片瀬少将との意見の食い違いから、解放戦線から離反した僕らを待っていたのは黒の騎士団への合流であった。
かって、意見の違いから、離別したゼロとまた共に戦う。
不思議な感じがしていたし、ゼロとうまくやっていけるかどうかという不安はあった。
しかし、藤堂中佐を大歓迎する黒の騎士団団員達とうれしそうに対応する藤堂中佐達を見ているとこれでよかったんだという思いがわきあがってくる。
いざという時は、自分が泥をかぶればいい。
そう決心すると祝宴を途中で抜け出した。
かって離反した僕がここにいても意味は無いと思えたし、折角の気分に水を注すだけだろう。
それに一度は、自分の主義を通すため彼らを見捨てたのだ。
それはいくら言い訳しても、事実。
だから僕はその場を離れた。
祝宴を途中で抜け出した僕は一人格納庫を歩いていた。
6機の月下。
そして、その側には黒の騎士団の無頼がずらりと並んでいる様はなかなか壮観な眺めだった。
その光景を十分堪能すると僕は自分の月下のコックピットに乗り込んだ。
もちろん、始動させることはしないから、ハッチは空けたままだ。
アッシュフォード学園を出てからというもの、転戦する日々が続いたせいかここが唯一の僕の居場所のようになっていた。
だから、ここが一番落ち着く。
僕は、見慣れたコックピット内をゆっくりと見直す。
お前もいい感じみたいだな…。
別に機械と会話できるわけではないし、見ただけで細かく状況がわかるわけではない。
だが、きちんと整備され、調整された月下はうれしそうな感じに見えた。
そして、パネルの隙間に隠すように挟んでいる1枚の写真を取り出した。
そこにはカレンの笑顔で笑う姿。
それをぼんやりと眺める。
そういえば…まだ言葉も交わしてなかったな…。
ふと、合流してから未だに彼女とは会話らしい会話さえしてない事に気が付く。
だが、何を言えばいい…。
負の感情が心の奥から湧き、僕の心を黒く塗り上げていく。
「私は、ゼロについていくから…」
別れ際に言われた言葉が未だに僕を苦しめる。
僕は、ゼロに嫉妬している。
彼女にそこまで言わせるゼロに…。
だんっ…。
コックピットの壁を叩く。
駄目だっ。
そんなことは考えるな。これは自分自身でまいた種なんだ。
人のせいにするな…。
僕が…僕が…。
だんっ、だんっ…。
何度もコックピットの壁を叩く。
いつしか皮がむけ、血がにじみ出ている。
しかし、それ以上に心の痛みは僕を傷つけていた。
その時だった…。
「どうしたのかな、ライくん?」
月下の足元から声がかけられた。
僕は、我に返って声の方向を向いた。
そこには井上さんがいた。
少し酔っているのか、頬が僅かに紅くなっている。
「い、いえ…何でもありません」
慌てて、僕は写真をしまって月下から降りようとした。
不信がられては、藤堂中佐達に迷惑がかかる。
だが、慌てていたせいか握っていた写真が手からはなれ、下へと落ちていく。
「あ、ああっ……」
途中で捕まえようと躍起になって手を動かすが、写真はそんな僕をあざ笑うかのように井上さんの近くに舞い落ちる。
「あら…なにかしら?」
井上さんは、それを拾い、裏になっていた写真をひっくり返す。
「だ、駄目です。見ないで下さいっ」
必死になって言うが、もう後の祭り…。
「ふーーーんっ…。そうなんだぁ…」
井上さんは、じっくり写真を見てからこっちを向く。
その表情は、おもちゃを見つけた子供のように無邪気な笑顔だった。
僕は、観念して下に降りた。
「はい。カ・レ・ンの写真っ」
名前のところを大きくはっきりと言いながら写真を返してくれる。
僕は、それをただ無言で受け取る。
僕の様子がおかしい事に気が付いたのだろう。
井上さんのからかうつもりだったらしい表情が、真剣なものに変わる。
「どうしたのよ?」
覗き込むような感じで僕の顔を見ている。
「いえ…。何でも…」
そう言って踵を返してその場を離れようとする僕の肩を、井上さんの手ががっちりと掴み自分の方に振り向かせる。
「何でも…じゃないわよ。そんな思い詰めた顔でほっとけるわけないじゃない」
真正面から、真剣な目が僕を射抜く。
僕はその視線を受け止める事が出来ず、俯くだけだった。
「話しなさい…。手助け出来るとは言えないけど、話すだけでも楽になれるから…」
そう言うと、井上さんは僕を優しく抱きしめるとなだめる様に背中を軽く叩く。
何度も何度も…。
まるでゆりかごに乗せられているかのように心が落ち着いていく。
そしていつしか、僕は井上さんに何もかも喋っていた。
「そっか…そういう事か…」
月下の整備用台に腰掛け、真剣な表情で僕の話を聞いた井上さんは、隣に座っている僕をじっと見た。
「すみません…」
「いいのよ。気にしないで。これは私が自ら望んで聞いた事だからさ…」
そう言うと背中を何度か軽く叩く。
「しかし、君の気持ちは良くわかるわ…。カレンは、ほんとゼロに陶酔してるからねぇ」
「………」
「でもさ、やる前からそんなんじゃ駄目よ。恋は戦いなんだから…」
「…だけど…」
「だけど…じゃないのっ。しっかりしなさい。男の子でしょう」
「…はい…」
それでも俯いたままの僕を見て、溜息を漏らす。
「はぁ~、これじゃあ…藤堂中佐の懐刀と噂されるまでになった人物とは思えないわ…」
「…すみません…」
「まぁ、ライくんらしいかなとも思えるけどね」
僕をしばらく見つめた後、くすりと笑う。
「だけど、もっと自信もっていいと思うけどね…私は…。ゼロにだって負けてないと思うけどな」
「そうでしょうか…」
「そうそう。それに、君がいなくなった後、カレンかなり落ち込んでたわよ。
それに、解放戦線で君が活躍しだしてからは、その情報とかは必ずチェックするようになってたし…」
それが事実なら、すごくうれしい。
だが、どうすればいいのだろう…。
井上さんが、これだけ相談にのってくれて励ましてくれているのに僕の心はまだ迷っていた。
そんな僕の態度に我慢できなくなったのだろう。
「あーーん、もう…」
頭をガリガリとかくと、僕を真正面から見つめる。
そして、あっという間に首に手を回すと僕の唇に自らの唇を押しあわせた。
ほんの数秒の間の事だったろうが、僕には時間が止まったかのようだ。
そして、唇を離すと、僕の目をじっと見つめる。
「おねーさんが自信のつくおまじないしてあげたんだから、もっと自信を持ちなさい。いいわね?」
真っ赤になりながら、井上さんはそう言うと格納庫から出て行った。
僕は、我を忘れその後姿を見つめていただけだった。