ゾッド(転生者)が往く、キングダム世界での戦場暮らし 作:名無しのモブ騎士
ヤッホー。気付いたらゾッドに転生していたよ。何を言っているのか分からないかもしれないが俺もわからない。ベルセルク無双をして寝て起きたらゾッドよ。な? 分からないだろ?
とはいえ最初こそ戸惑ったが今ではこの体にもすっかり慣れてしまった。まぁ、自分の元の体より何倍も長く付き合っていればいやでもなれるわな!
そんなわけで今ではすっかりゾッドの体を使い慣れているわけだがゾッドらしく心のうちより強者との戦いを望む欲求があふれてくる。俺自身そんなバトルジャンキーってわけじゃないからこれは完全にゾッドの肉体から出てくるものだろう。
だが、困ったことに転生してこの方満足できる強者に出会ったことがない。転生らしく異世界であったなら可能性はあった。しかし、どうやら古代中国のようで異世界とは全く関係がなかった。中国の歴史なんて原稿だか言行だかがあったくらいしか知らない。だからここが中国っぽとはわかってもどの時代なのかはさっぱりだ。でも、鉄砲とか見かけないから大分昔だとは勝手に想定している。何なら騎兵すら見かけず、馬車が主力となっているしもしかしたら異世界とかかな? とか一時期は考えてしまったよ。
「き、来たぞ! 防陣を……ぎゃっ!?」
「……脆い」
そうして俺はここが何処かもわからないまま日常と化した戦場に乱入して好き勝手に暴れている。この中華は大戦乱の世であり、戦場はそこら中にあった。だから戦いに関しては特に不都合はなかった。最悪の場合、俺が最初に参戦した戦場で出会った山の民と呼ばれる半裸集団と戦ってもいいかもしれない。あれ以来戦場では見かけないが全員が中々の強者だったからな。とはいえ戦場にいないのならどこに向かえばいいのやら……。山の民というしその辺の山でも荒らしてみるか?
「お、おのれ! 昨年の戦では我らに組したのに何故……!」
「我が求めしは強者との戦い。貴様らはそれを用意できなかっただけの事」
「っ! ふ、ふざけるなぁぁっ!!!」
去年参加した戦では上官だった兵が激昂しながら剣を振ってきたがあまりにも遅い。前線で剣を振るう事も厭わない猛将と言われていたが俺からすればただの雑魚だな。
そんなわけで左手で持った戦斧で剣ごと叩きつぶします。一瞬伝わる肉と骨を破壊する感触。ゾッドの体になったとはいえ意識していないとどうしても慣れないな。肉体のせいで吐くことはないけどな。気持ちは萎えてしまう。
だが、それが少しでも食指に触れる強者なら話は別だ。その時だけは気持ち悪さは消えて経緯と満足感を得られる。ただの雑魚を倒すだけではこうはならないからやはり強者との戦いはゾッドの体に刻み込まれた本能とも呼ぶべきものなのかもしれない。
「お見事です! ゾッド殿が敵将を討ち取ったぞ!!!」
「「「「「うおおぉぉぉぉっ!!!」」」」」
俺の直属の上官である伍長が周囲に戦果を報告した。ちなみに伍長というのは軍隊における最小の部隊を率いる者の事だ。5人一組で伍となり、それをいくつも編成して軍隊が出来るらしい。そんなわけで俺も戦場に出る以上伍に入らないと行けず、結果選んだのがこいつというわけだ。理由は単純だ。こいつの作る飯は美味かったからだ。実力や人柄なんてどうでもいい。
原作のゾッドは知らんが俺は何故か腹が減る。使徒になれるのに腹は減るのだ。だがゾッドの体は胃も規格外のようで毒すら普通に食える飲める。一回味方に毒殺されそうになったらしくそれで判明した。そんなわけでその辺の草木でも食えるようだが食べるなら美味いものが良い。特にこの時代の飯なんて微妙な物ばかりだからな。
「さすがは“不死”の異名を持つだけの事はありますね。たった一人で軍を壊滅させてしまうなんて」
「いつもの事だ」
「あれ? 首はいらないのですか?」
「いらん。手柄はお前に譲ってやる」
「そういわずに。一番の功績はゾッド殿なんですから」
この伍長はお人好しの部類に入るのだろう。普通、俺が入った伍の連中は俺が手柄に興味がないことをいいことに手柄を自分の物にしていたのにこいつはそうではない。別にある程度の金さえもらえればそれでいいからな。
「っ! 隣の陣地が押されているみたいだ! ゾッド殿、行けるか?」
「愚問だ」
ふと、見れば隣がかなり押し込まれている。どうやらこちらとは違いあちらは手ごわいようだ。ここは将があっけなく討ち取られたことで崩壊仕掛けている。放っておいても問題はないだろう。俺は再び武器を構え、壊走している敵兵の中を突っ切りながら隣の陣地に向かうのだった。
幸運にもゾッドを伍に入れる事が出来た伍長は初めて彼を見た時、噂は本当であったと確信した。
曰く、「百年以上前から中華の戦場に姿を見せてはその圧倒的な力で敵を蹂躙する化け物」と言われており、幾度となく腕に自信がある者が挑んでは返り討ちにされているという豪傑だった。その結果、百年以上戦い続けて老いもなく、大した怪我すらない彼は“不死”と
呼ばれるようになっていた。
「はは、本当にすごいな……」
料理屋の息子であり、自身も腕に覚えがあると自負する彼はゾッドにそれを見込まれ、伍に入れる事に成功していた。そのおかげで彼の伍は二度と達成できない程の大活躍を見せていた。突撃命令が出た際には真っ先に敵軍に切りかかり、その勢いのまま敵の将兵を討ち取ってしまったゾッドは一騎当千の強者であった。
「我々も負けていられない! 行くぞ! ゾッド殿に続け!」
もはやこの戦の勝敗は決定したも同然であった。そもそも、ゾッドがいる時点で余程の広域戦でもない限り敗北はない。彼はたった一人で戦場の勝敗を決する実力者なのだから。
「とはいえゾッド殿は決まった国に仕える人ではない」
そう、今回は本当に幸運だったのだ。もし、ゾッドが敵に居れば、伍長の足元に転がる死体になっていたのは自分たちの方だったであろう。
「……せめて敵として出会っても見逃してもらえるように料理の腕を磨いておくか?」
ゾッドが乱入したことで陣形があっけなく崩れ去り、勢いが逆転した隣の戦場を見ながら伍長はそんな事を考えるのだった。
そういえば調べて知ったのですが武霊王って昭王と同じ時代の人らしいですね。つまり、騎馬隊が出来たのも僅か数十年程という事になるんですかね。