走者がガバったら(世界が)即終了チャート はーじまーるよー!   作:私は地を統べる

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日常回に少し暗めの話が混ざっているもの。それが癖だとカッチャマは言っていた。


お気に入り、しおり、感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます。カンソウ、ホントウニ、ウレシイ

アンケートへの投票、ありがとうございます。
憑依タグに関して、「付け足さなくても良い」の票数が多かったのですが、それでも200人以上が「付け足した方が良い」と回答しているため、一応タグを付けることにしました。





拾頁

 

 ★★年★月★日(★) 晴れ

 

 平子隊長のサボりが酷すぎるんだが!?

 

 溜まりに溜まった重要書類が隊長机の上からなだれ落ちそうである。職務室の景観が最悪。

 

 平子隊長の判がなければ他の隊に回すことができない書類が山積みなのに、それでも尚、フラッとどこかに行ってしまう。そんな平子隊長の捜索ばかりしているせいで、副隊長としての業務が滞るのだ。

 

 何度捕まえて机の前に縛り付けたとしても、少し目を離した瞬間に姿を消してしまうので、僕は平子隊長のことを「外出中に少し目を離したらすぐ迷子になってしまう子供」と同じだと思うことにした。

 

 移籍してきた初めの頃は、前任の副隊長と共に業務を教えてくれたのに、僕が五番隊に馴染んできた途端にこれだ。慣れるまではサボらないでおこうという気遣いが、逆に腹立たしい。

 

 京楽隊長のサボりも酷かったが、そんな隊長を捕まえるのは専ら矢胴丸副隊長の役割であった。彼女は自身のサボりのお土産として、京楽隊長の首根っこを掴み、隊へと引きずり戻していたのだ。おかげで、僕は京楽隊長のサボりの被害を直接的には受けていない。まあ、上二人のサボりのツケは、書類仕事という形で三席の僕に押し寄せてきていたのだけれど……

 

 とにかく、今回はそうもいかなくて困っている。

 部下に平子隊長の捜索を頼んでも、のらりくらりと上手く躱されてしまい、捕まえることが出来ないのだ。流石隊長ですね。許せない。

 隊長一人のサボりのために多くの人員を割くことも出来ないので、結局のところ、僕が自ら捜索し捕獲する状況である。

 平子隊長を諌めるのは、副隊長である僕の役割なのだと割り切るしかない。

 

 …正直なところ、副隊長としての職務よりも、隊長のサボりを阻止する方がはるかに手強い。頭にきそう。

 

 

追記

何故、副隊長の業務の一貫に「隊長のサボりを阻止する事」が含まれているんだ?…総隊長に告げ口してしまうかな。わりと本気で。

 

 

 

 

 

 ★★年★月★日(★) 晴れ

 

 過労死するかも。

 

 毎日、四六時中、要に付きっきりで稽古をつけている。厳密には僕本人が指導しているわけではなく、鑑化水月によって造り出した複製体を用いているのだが。

 複製体を造り出す際には膨大な霊力を消費し、さらにその複製体を持続させる為にも霊力を流し続けなければならない。常用するには燃費が悪すぎるが、その利便性にはどうしても抗えなかった…

 

 霊力がゴリゴリと削られている中で、平子隊長の補佐やサボりの阻止、他隊士への指導、そして通常の業務をこなしているが、これがキツいのなんの…

 何と言えばいいのか、低気圧による体調不良のようなそういったダルさを常に抱えている。まあ、これも修行の一環だと思い日々を過ごしているのだが…

 

 天に立つ前に過労死して、本当に天に飛び立ってしまったら笑えるよね。ガハハ!笑えない。

 

 閑話休題。要についてだが、このまま行けば来年には霊術院に入学できると思う。

 彼は盲目でありながらそのハンデをものともせずに、日々の稽古にしっかりとついてきている。泣き言も言わずひたすら鍛練を積むその姿勢には感心するばかりだ。

 

 白打や剣術に関しても、彼は僕の動きを霊圧で読み取ることで対応し、瞬歩も問題なく使いこなしている。簡単な鬼道なら詠唱破棄でも扱えるようになっていた。

 数ヵ月の指導でこの技量に至るとは、本当に感心させられる。流石は後の九番隊隊長といったところかな。

 

 彼は「これも全て藍染様のご指導のお陰です」と謙遜をしていたが、間違いなく要自身の絶え間ない努力の賜物である。彼には明確な目標がある為、それも影響しているのかもしれない。

 

 

追記

稽古をつけていて思うのだが、僕は霊術院に入る前までは父や京楽隊長に指南をして貰っていたが、護廷十三隊に入隊してからは、誰かに指南を受けるという機会はなかった。

これといった苦戦もなく、格上の相手と相対したことも無い。…この経験の不足が今後に影響するかもしれない。何か考えるか。

 

 

 

 

 

 ★★年★月★日(★) 晴れ

 

 鑑化に怒られちゃった…。

 

 実践不足を懸念した僕は、藍染惣右介をもう一度顕現させてほしいと鑑化に懇願した。彼は霊力と身体操作において、僕をはるかに凌駕している。彼と戦うことで、己の実力向上に繋がると確信していたからだ。

 

 しかし、鑑化にそう告げたところ、「もう一度、あの男に会いたいって…あなた、ついに気が狂ってしまったのね。可哀想に」という容赦ない言葉と共に、絶対零度の視線を向けられた。言い過ぎではないかと内心思いつつも反論は出来なかった。

 

 そもそも、再吸収の時点で、藍染の残滓は完全に消滅しており顕現は不可能だと、鑑化はそう断言した。

 それでも、僕は、彼の存在を未だに自分の内に感じてしまうのだ。気のせいなのかもしれないが、鑑化水月を使うたびに、内側から何かが反発するような、そんな異様な力を感じる。…まあ、藍染惣右介がそう簡単に消え去るような存在ではないと思ってしまうのが最大の理由なのだけれど。

 

 なおも渋る僕に「そんなに稽古がしたいなら、わたしが相手をしてあげる」と鏡化は言った。…見た目が子供の鑑化と戦う?単純に身長差がありすぎて、刀を打ち合うことすらまならないのでは?

 そう考えていた僕の心を読んだのか、鑑化はふんっと鼻を鳴らした後、手にしていた鏡を上に掲げ「テ○マクマ○コンテ○マクマ○コン 藍染惣右介になぁれ」と唱えた。その瞬間、鏡から強烈な光が発せられ、辺り一面を照らし出した。そうして、目に悪い光が収まったそこには僕の姿をした鑑化が立っていた。…その詠唱、作品が違うし、まだ原作も出版されていないよ。

 変身出来るのかと感心したが、鑑化の本体は彼女が手に持つ鏡らしく、普段の姿もそれっぽい姿を投影させたものだという。だからどんな姿にもなれるらしい。それと、姿を変えるのに呪文は必要ないそうだ(何なの?)

 子供らしいお茶目だと思えばいいのかな。最初の頃の因習村でケタケタと笑う子供のような不気味な雰囲気はどこに置いてきたのだろう。

 

 とにかく、僕と同じ姿をした鑑化と剣術の鍛練を積むことにした。「わたしの使い方なら、わたしが一番わかっているわ」という言葉通り、鑑化の戦い方は僕よりも技量に富んでいて、なかなか参考になる。自分自身の斬魄刀と闘うのは「BLEACH」の醍醐味だからね。正直ワクワクした。

 

 

追記

ふと考えたのだが、原作には存在しない、所謂アニオリ回や劇場版はこの世界で起こるのだろうか?

まあ、早々に離反してしまった藍染惣右介は、あまりオリジナル回に登場していなかった。つまり僕が巻き込まれることはない筈…だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

「二度と家の敷居を跨ぐな」

 

 

 重厚な木の門が、大きな音を立てて閉ざされた。

 その門の前に立つ一人の男の姿。黒縁の眼鏡から覗く瞳には、深い悲しみが宿っていた。

 つい先ほど、彼は母方の親戚から絶縁を言い渡されたのである。

 

 長らく入院していた母が実家に引き取られたという噂を耳にした彼は、不安を胸に秘めながらこの屋敷を訪れたのだった。「母の顔を一目見たい」ただ、その一心で。しかし、待っていたのは冷酷な拒絶だった。

 なぜ彼がこのような仕打ちを受けねばならないのか。その答えは、彼の父に関わる複雑な事情にあった。

 

 彼の母は、下級貴族の家に生を受けた。男児ばかりの家系に珍しく生まれた女児として、両親と兄たちから蝶よ花よと大切に育てられた。優雅で洗練された環境の中で育った彼女だったが、ある日、彼女はとある男に心を奪われ、婚約をしたのだ。

 

 勿論、家族は猛烈に反対した。流魂街出身の粗野な男に、高貴なお前が釣り合うはずがない。懇々と諭す家族の言葉を、彼女は耳にも留めず、月明かりの下、薄絹の着物をはためかせながら家を飛び出したのだ。その瞳には、愛する人と未来を築く喜びと、家族との別れを惜しむ哀しみが交錯していた。

 

 当然、彼女の家族は憤った。溺愛していた娘、可愛がっていた妹を、突如現れた無名の男に奪われたのだ。怒りと悲しみが入り混じった複雑な感情が、屋敷中を覆っていた。

 

 しかし、時が経つにつれ、彼らの心境は変化していった。あれほど熱烈に娘を愛する男は、二度と現れないだろうと。そして、娘があれほど深く愛することのできる相手も、もう二度とないだろうと。その認識が、彼らの怒りを静めた。そのため、娘を強引に連れ戻すような真似はしなかったのである。

 

 しかし、世界は、運命は残酷だった。その男は、愛する妻を残して逝ってしまった。そして、絶望的なことに五大貴族の綱彌代家の分家の男との斬り合いの末に命を落としたという。

 

 疑惑の目は彼女にも向けられた。

 「あの男の妻も、この件に関わっているのではないか」そんな有り得ない話が、染みのようにジワジワと広まっていたのだ。そうして始まった上からの容赦ない詰問。それが彼女を追い詰め、やがて彼女の精神は崩壊の淵に追いやられた。京楽家の次男の尽力により、何とか静養先へ入院させることはできたものの、彼女を取り巻く空気は冷たかった。権力ある貴族に刃向かった者の関係者として、周囲から疎まれ、冷たい視線を浴びせられる日々が続いた。

 

 この窮地を救おうと、彼女の家族たちはある決断を下した。娘を、妹を守るため、彼女を屋敷に匿うことにしたのだ。そして、あの男とは一切の関係がないときっぱりと宣言したのである。その言葉の裏には、娘を守るための必死の思いと、過去の判断への後悔が滲んでいた。

 

 だから彼らは絶縁を叩きつけた。

 門の前に立つ男─その男の血を継ぐ息子に。彼女の息子に。

 

 

 彼の心は、二度と会えぬ母への深い寂寥感と、どうしようもない現実への鋭い痛みで満たされていた。その感情に押し潰されそうになりながら、彼は宛もなく彷徨う。そうして、気がついたときには、かつての幸せな日々が眠る実家へと辿り着いていたのだった。

 

 鍵穴に差し込んだ鍵を回す。ゆっくりと開いた扉の先に広がるのは、時間が止まったかのような光景。温かな灯りに包まれていたはずの空間には、埃だけが舞い上がっていた。

 

 誰もいない家の中に、足音だけが響く。懐かしさと寂しさが入り混じる不思議な感覚に包まれながら、彼は歩を進める。ふと、彼は柱の前で足を止めた。その柱には息子の成長を記すためにと、彼の父が刻んだ切り傷が並んでいる。その傷を撫でながら、彼は瞼を閉じ、過ぎし日々を追憶する。

 

 稽古から帰ると、母は笑顔で出迎えてくれた。その優しい笑顔が疲れた心身を癒してくれた。 (今、玄関にはうっすらと埃が積もるだけで、誰の声も聞こえない)

 父と母はよくこの場所で寄り添って談笑していた。二人の笑い声が家中に幸せを運んでいた。 (今、縁側には誰もおらず、くすんだ空だけが寂しげに広がっている)

 御飯時になると良い匂いがし、その度に父は目を輝かせ喜んでいた。家族の団欒がここにはあった。 (今、台所には生ゴミのすえた臭いが漂い、かつての温かさは何処にもない)

 父の解れた死覇装を一針一針丁寧に縫い付ける母。その慈しみに満ちた手つきが父への愛情を物語っていた。 (今、その愛情深い姿を見ることも、母の手の温もりを感じることも出来ない)

 その背を、居間から愛おしそうに見つめていた父。その眼差しには深い愛情と感謝が満ちていた。 (今、その温かな眼差しはもう二度と見ることができない。父の存在を示すものは、脳裏に焼き付いた記憶だけ)

 

 優しい記憶は、現実の冷たさによって容赦なく引き裂かれる。突如として、居たまれない気持ちに襲われた彼は逃げ出すように家を後にした。夢想と現実の残酷な解離。拭いようもない孤独が、まるで濃い霧のように彼の心を包み込んでいく。

 

 愛おしく、心の拠り所だったこの家。かつては安らぎに満ちたこの空間が、今や、彼の心を激しく苛む、苦痛の源になってしまった。

 閉ざされた扉の向こうに、彼は自分の過去を置き去りにして再び冷たい夜の闇の中へと歩み出る。その背中には、二度と戻れない幸せの重みが影のように張り付いていた。

 

 

 

 

 






藍染惣右介たらしめるものに孤独のひとつがあるのなら、きっと、胸を穿つこの痛みにも意味があるのだろう。


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