走者がガバったら(世界が)即終了チャート はーじまーるよー! 作:私は地を統べる
平子真子視点です。
原作より、藍染惣右介との親密度、というより距離感が近いと思います。背中気を付けろ~
お気に入り、しおり、感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます。頂いた感想から新たな知見を得たりするので本当に助かります。
アニ鰤見たんですけど、雛森ちゃんは本当にか"わ"い"い"な"ァ"!!
「えっ、今夜ですか?」
きょとんと、アホヅラを晒す惣右介へ判を押し終えた書類を投げ渡す。軽々とキャッチした惣右介に微妙に腹が立った。なんやこいつ、反射神経ようなっとるやんけ。
「なんや、話聞いとらんかったんか?オマエのお披露目会として飲み会開くって。」
「初耳ですね。……というより、今更ですか?」
首をかしげながら、そんなことを言う惣右介。
「しゃーないやろ。色々ごたついとって飲み会を開く暇なんざ無かったんやから。」
八席に赤ん坊が出来たから、ソイツの育休とらせんのに各所に手続きしたり、コッチの隊士をアッチに移籍させたりなんやかんやして…そんで期日を伸ばして伸ばして伸ばして、やっと今日開くことになったんや。事務仕事に追われて、ほんまにしんどかったわ。
そんな事を思い出しながら、本題からそれたなと再度話を振る。
「んで、今夜来るんやろな?どうせ暇やろ。」
「どうせって…まあ今夜は特に予定は無いですけど。僕も暇ではありませんからね?」
態とらしく眼鏡の縁を人差し指で押し上げながら、溜め息混じりにそう言い放つ惣右介。「平子隊長、貴方とは違ってね」という副音声が聞こえた気がして、また腹が立った。
「はぁ?俺にだって予定はぎっちりあるんやけど?暇や無いやぞ?俺だって、なぁ!」
「何一人で怒ってるんですか。分かりました、分かりましたから書類を投げて渡すのを止めてください。」
「ああもう、せっかく纏めた書類がまた散らばった…」とかぶつくさ言いながら、紐で紙を括る惣右介。腹立つくらいに整ったその横顔をみながら、ワイの頭ん中にピーンと、閃きという電流が走った。ははーん、さてはコイツ、俺はニヤリと笑って言うた。
「なんやオマエ、もしかしてこれでも居るんか?」小指を立てて、からかうように惣右介に見せる。
「違います。」
ピンと立てた俺の小指に目を向けた後、ピシャリと、眉を顰めて即座に否定しよった。黒縁眼鏡の奥から覗く目が「なにふざけたこと抜かしとるんだコイツ」という呆れの感情を如実に語っとる。(コイツみたいな堅物にも、こういうジェスチャーは伝わるんやな)なんて、妙な感心を抱きながら話を続けていく。
「ほんなら何しとんねん。仕事終わりとか、休日とか。」
「別に普通ですよ。溜めた洗濯物を干したり、掃除をしたり。後は積んでいた本を読んだりですかね。」
「うわ~つまらん男やなぁ。生きてて楽しいんか?」
「はったおしますよ。」
「冗談や。そんな怒らんといて!」
光をギラッギラ反射しとる眼鏡のおかげで、目は全然見えんけど、こっちを睨み付けとるのは確かに分かった。オレは掌を合わせて上にあげ、形だけの謝罪をする。
それを見た惣右介は、大きな溜め息を吐くと作業を続行した。…そんな溜め息をついてたら、幸せが逃げるで~とか冗談でも言ったら、今度こそ手元の分厚い書類でぶん殴られるんちゃうかな、なんて。
「そう言う平子隊長は、どのような休日を過ごしているのですか?」
括った書類をドンドンと角を正しながら、惣右介は聞いてきた。
「そりゃオマエ、可愛い女の子とでぇとしとるに決まっとるやろ。」
「へぇ。」
「聞いといてなんやそのうっすい反応!」
オマエ!俺はオマエの上司やねんぞ!?なんやその雑な扱い!俺の主張を軽々と無視して、惣右介は今までの話を切り捨てるかのように「この書類の確認も頼みますね。」なんて、爽やかな笑顔で、山みたいな書類をドンと机の上に置いた。机が「みしっ」とか音を立てた気がする。
「なんでこんなにあるんや!?ついさっき五十枚くらい判子押したばっかりやろ!これ以上やったら、腱鞘炎になってまうで!」
「机にうつ伏せにならないで、弱音を吐く前に手を動かしてください。」
冷たい表情でそう吐き捨てる部下に、思わず涙が溢れた。あんまりや、俺がなにしたって言うんや。
「言っときますけど、仕事を溜め込んだ平子隊長が悪いんですからね?」
脳内にまでツッコミいれてくんなや。
「僕が飲み会に参加できるかどうかは、平子隊長に掛かっていますから。」
鬼や。
「惣右介ェ、つまらん話は終いにして、さっさと乾杯しようや」「平子隊長、藍染副隊長の話の邪魔をしないでください!」「邪魔あ~!?なに言うてんねん!俺はオマエらの早う酒を飲みたいっちゅう気持ちを汲んで言うてやったんやぞ!感謝せえや!」「俺たちのせいにしないでくださいよ~!」
「ははは…。平子隊長もこう言っている事だし、早速、乾杯の音頭を取ってしまおうか。…それでは、皆さん、ご唱和をお願いします。」
「乾杯!」「「「「乾杯!!」」」」
「こっち一杯頂戴~!」「越後武士*1をストレートで?やりますねぇ~」「取り皿無いですか?」「ありますよ~」「俺酒が居ないと生きていけないよおおおお」「酒カス!!」「ククク…ひどい言われようだな。まぁ事実だからしょうがないけど」「お酒まだぁ~!?」「アイスティーしかなかったんですけどいいですか?」
わいわいガヤガヤ、酔いの熱と喧騒がごちゃまぜになって、居酒屋の空気がええ感じになってきよる。
俺のありがたいお言葉と惣右介のうっすい言葉のあとに始まった飲み会。
無礼講でって言うたんは俺やけど、アイツらはっちゃけ過ぎやないかい?ケツで割り箸割る一発芸やっとるヤツまでおるやんけ。身体張っとるなぁ~嫌いじゃあらへんでああいうギャグ。…あ?よぉ見たら割れてへんやんけ。アカン、失格や。ええ歳こいて恥ずかしないのか?
「おい、惣右介もなんか一発芸やれや」
「いや、僕はそういうのはあまり」
隣に座る惣右介に声をかけるが、さらりと流されてた。
なんや、清純キャラぶってるんやないぞ。隊長命令や、隊長命令。てか、なんでお前が隣やねん、可愛い姉ちゃんの方がよかったわ。惣右介のむさ苦しい顔見てたら上等な酒まで不味なってまうやないか。
「マグロの解体ショーとかえんちゃう?お前ならできるやろ?」
「マグロなんてこの場に無いですよ…捌けなくはないですけどね。」
「出来んのかい。なんで出来んのや。」
取り分けられた湯豆腐をチビチビ食べる惣右介は「昔取った杵柄で…」なんて言うとった。惣右介の意外な特技に驚きながらも、俺はだる絡みを続ける。
「…あ~、マグロの話しとったら寿司食べたくなってきたわ。惣右介、寿司握ってくれや。」
「平子隊長、もしかしてもう酔ってます?話が二転三転してますが。」
「酔っとらんわ。」
「酔ってる人ほどそう言うんですよ」
「ダリィなコイツ」みたいな呆れ顔を隠さずに、溜め息混じりでそう言い放つ惣右介。ちっとは敬えや。オマエの直属の上司やぞ?
愚痴を溢しながら酒を煽る俺を無視して、惣右介は冷奴に箸をつける。…コイツ、さっきから豆腐ばっか食っとらんか?酒飲めや。せっかくの飲み会やのに。
「そんな良い声しとったら、寿司くらい握れるやろ。」
「声と寿司に何の関係が…?」
「何って、は○寿司のナレーションは速○奨やろ?ならオマエも寿司くらい握れる筈や。」
「…?なにを言っているんですか?」
……?なんや、○ま寿司って、誰や速水○って。なんでこんなアホなこと言い出したんや俺。どこの電波を受信したんやろ。やっぱ酔ってんのか?あんま飲んだ覚え無いんやけどなぁ。
「藍染副隊長!」
二人で顔を見合わせて首をかしげていると、可愛い声が合間に挟まった。目を向けると、茶髪のポニーテールの女の子が目の前に立っとる。
「あっちで○○十二席が占いをしてるんです!藍染副隊長はやって貰ったこと無いですよね?この機会にやって貰いましょうよ!」
あーアレや。この子、最近十七席になった子や。キラキラとした笑顔が眩しいなァなんてオッサン染みたコトを考えながら二人のやり取りを見守る。
「占い?良いのかい僕が交ざっても」
「勿論ですよ!」
目をパチクリとさせ、戸惑いながら問うた惣右介をぶったぎるように、隊士は大きな動作で答えた。
「ささっいきましょう!平子隊長、藍染副隊長をお借りしますね!」
「おう、かまへんで~。持ってけ持ってけ。」
しっしと追い払う動作をしながら、俺はそう言う。
ありがとうございます~!なんて、きゃっきゃっと笑いながら、惣右介の手を引いていく隊士。ったく、そんなんいちいち断りなんかいれんでええねん。別に俺のモンでも無いし。
「お~い!こっちビール一杯!」
そう叫んで、惣右介の方ちらっと見た。占いの輪に加わった惣右介は、困ったような顔しとったけど、周りの女隊士はキャーキャー騒いどる。ほんま、なんでアイツには可愛い子が寄ってくんねん。…別にやっかみちゃうかんな! ホンマに!!
「うあー、飲みすぎた…」
「ああ、もうほらしっかり歩いてください。」
グワングワンする視界の中で、惣右介に支えられながら夜道を歩く。
「自制もせずにお酒を飲むからこうなるんです。」「飲み過ぎはお体に障りますよと、再三言いましたよね?」なんて、惣右介からグチグチと小言を言われた。
オマエ俺の母ちゃんか?ってツッコんでやろうと思うたけど、気持ち悪くて嗚咽しか出せへん。
波のように繰り返す吐き気を誤魔化すために、俺は適当に話を振る。
「占い、なんて言われたん?」
「占い?…ああ、えっと、……」
「なんや早よ言えや」
言い淀む惣右介をせっつき、続きを急かす。
「女難の相が出ていると言われました。」
「じょなん?」
「はい…。」
「じょなん、女難…?だはは!!女難!?だははは!!」
耐えきれず吹き出した。
こんな温厚な面して、占いの結果が女難の相とか。ほんまにアカン、ツボに入ってもうた。笑い止まらん。ヤバい吐きそう。耐えられへん。
惣右介は澄ました顔で「近所迷惑ですから」と俺を窘めるが、夜道でもはっきりわかるほど、その頬は真っ赤に染まっとった。そんな人間味のある表情見るんは珍しくて、思わずまじまじと見てしまう。
「はー、女難の相ね。は、おもろい。駄目やツボや。」
「他人事だと思って…」
顔をしかめたまま、俺の肩を抱き直す惣右介。さっきより雑に扱われてちと肩が痛い。あんま乱暴にせんでや。
「オマエも馴染んだよな。」
ポツリと呟いた独り言が、空へと溶けていく。
最初、惣右介が五番隊に来たばっかの頃は、周囲から距離を置かれとった。コイツ自身もそれを仕方ないと諦めた様子で、俺は、それが妙に気に食わんかった。
けど、今じゃ過去のことみたいに、皆からよう懐かれとる。
そんなことを考えていたとき、俺を見つめる惣右介は一瞬瞳を瞬かせた後、ヘラリと笑ってこう言った。
「そうですね。平子隊長のお陰ですよ」
「はあ?」
「平子隊長のサボり。あれ、僕の姿を他の隊士に見せつけて、馴れさせるためのものでしょう?」
「最初は意図が読めませんでしたが、人気の多い場所を重点的に向かうので、ようやく分かりましたよ。」と軽やかに笑いながら言う惣右介に、俺は面食らった。
「は、意味が分からんわ。オマエの気のせいやろ。」
「…そうですね。そう言うことにしておきます。」
妙に分かったような口を利きながら惣右介は前を向いた。
なんやねん、俺のおかげって。あー、顔アッツい。やっぱ酔ってんかな。惣右介が意味の分からんことを言うから余計に酔いが回ったんや。
ふふ、と隣から微かに笑い声が聞こえた気がして、俺は首の裏を掻いた。
「もう酔いも醒めたわ。こっからは大丈夫や」
「そうですか。」
惣右介の肩から離れて、よろよろしながらもなんとかヒラヒラと手を振る。正直まだ完全に酔いが覚めたわけやないんやけどな。
「気を付けて帰ってくださいね。側溝に落ちたりしないでくださいよ。」
「なんやねん、オマエは俺の母ちゃんか。そない心配せんでもええわ!」
また、やけに世話焼きみたいに言うてきよった。ムキになってツッコんだら、惣右介は特に気にした様子も見せず「では、また明日。」と、あっさり背を向けた。もっと感情出せや。
別れた帰り道、冷えた脳みそがぐるぐる回る。
(分からん。)
ちっとも分からん。
惣右介はええヤツや。10人中10人がそう言うと思う。死神の規範みたいなもんが、服着て歩いてるみたいなヤツやから。
それでも、何かが引っかかっとる。何がそんなに引っかかるんかは分からんけど、ずっと違和感があるんや。
逆撫の態度とか、言われた言葉もそうやけど、一番は惣右介の目やと思う。
初めて会った時、惣右介が俺の胸の高さもないぐらいの小っちゃなガキの頃から、コイツは随分と強い目しとった。枯草色の温かい瞳の中に、何かを成し遂げんとする強い意志が滲んでギラギラと光る。
京楽のオッサンも言うてたな。「惣右介くんに見られると、ちょっと身が竦むんだよね」って。それくらい、惣右介の目は強烈で、その強い意志がこもった目が、コイツの全てを表しとるように思えた。
それが、たかがレンズ一枚で、こんなにも読みづらくなるもんなんか?総司、何考えてこんなもん渡したんや、と心の中で毒づく。
(もし…)
もし、流魂街で死んだ住民に手を合わせる姿も、隊士に仕事を教える姿も、人の相談に乗る姿も、俺の後ろを歩く姿も…全部嘘やったとしたら?今まで見てきた惣右介の姿、全部が演技やったとしたら…
冷たい風が頬を撫でて、思わず肩を震わせる。
首を竦めながら俺は、ひとりごつ。
「ほんまに、あいつは何を考えてんねんやろな」
影踏みみたいな、もどかしい問答劇を延々と続けてもうてる。真実を知りたいような、知りとうないような…そんな相反する気持ちに揺れて、未だに核心に踏み込めん。
立ち止まって、後ろを振り返る。お月さんの光が揺らめく中、そこにあるのは、ゆらゆらと揺れる影だけやった。
もしあん時、俺がアイツに踏み込んどったら…何かが変わったんか?