走者がガバったら(世界が)即終了チャート はーじまーるよー!   作:私は地を統べる

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前回の続きで、京楽春水視点です。
藍染惣右介っぽい口調も、京楽春水の口調も難しすぎる。
賢い人たちの言葉遣いがホントに分からない…

※前話の最後の方に、京楽との問答を主人公視点で追記しました。


お気に入り、しおり、感想、評価ありがとうございます。
評価バーに色が!?あ、ありがとうございます!がんばります!!





本音と嘘の境界線

 

Side 京楽春水

 

 

「いやぁ来て早々、引戸に挟まれるとは想像もしなかったなぁ…」

 

「すみません!決して悪気があったわけではなく…!!」

「ああ、いや。責めてるつもりはないんだよ、ただビックリしたなぁって」

 

 未だにヒリヒリする両頬を擦りながらそう答えるボクに、目の前の少年は申し訳なさそうに目を伏せた。その様子を見ながら腹を抱えて笑う総司(そうじ)の声が客間に響いて、少しうるさい。

 

「すごいなァ惣右介!霊術院の生徒でもないお前が隊長様に傷をつけたんだぞ。むしろ誇れ!」

「父さん…!」

 

 バシバシと背中を叩かれ恨めしそうに総司を睨み付ける惣右介くんの姿に思わず笑い声が漏れた。

 

「もう総司さんったら、あんまり惣右介をからかわないでくださいな」

「おお右乃(うの) ツマミを用意してくれていたのか…!ありがとなぁ」

 

 鍋を抱えて現れたのは右乃(うの)ちゃん、総司の可愛いお嫁さんである。長い黒髪を揺らしながら鍋を机に置いてせかせかと準備をしている。

 

「ありがとねえ、右乃ちゃん」

「いえいえ…大したものは用意していませんがゆっくりしていってくださいね京楽さん。惣右介、お勝手の右の棚に四合瓶とお猪口があるからとってきてくれないかしら?」

 

「硝子戸の中ですね。取り皿も持ってきた方が良いですか?」

「ああ!すっかり忘れていたわ。持ってきて頂戴」

「分かりました」

 

「おっ今日のツマミは豆腐田楽とおでんかぁ!」

「こりゃ随分と豪勢じゃないか。右乃ちゃんの料理は絶品だからね、嬉しいよ」

 

「まあ!絶品だなんて…ありがとうございます」

 

 口許に手を当てながらくすくすと笑う右乃ちゃん。うん可愛い。ホント、

 

「総司には勿体ない出来たお嫁さんだよね~…右乃ちゃんが良ければ僕がお嫁さんに貰いたいくらいだよ」

「あら♡」

「京楽テメェ!人の嫁さんになに言ってんだ!」

 

 斬魄刀に手を掛けながら、鯉口を切ってくる総司。なんで飲みの場でも帯刀してるのよ。

 

「うふふ…でも御免なさい。私は総司さん一筋なので」

「あらら、振られちゃった」

「右乃~♡」

「はいはい、総司さんも京楽さんもあまり飲みすぎないでくださいね。お身体に障りますから」

 

 台所から戻ってきた惣右介くんと入れ替わるようにして、明日の支度があるからと右乃ちゃんは下がってしまった。

 

 

 

「いやー、昔はあんなに小さかったのに、随分と大きくなったね~」

「昔…?以前にお会いしたことが?」

「ああ、京楽が惣右介に会うの久しぶりだもんなぁ。赤ん坊の頃以来だっけ」

「そうそう、確かその時は浮竹…ああ、ボクたちのもう一人の同期ね。その同期も居たんだよ」

「あいつ、寝てる惣右介の頬をずっとつついてたよな」

「懐かしいなぁ~」

 

 美味しいツマミを食べながら、惣右介くんも交え談笑する。こんなおじさん二人の会話に臆すること無く、会話を楽しむ惣右介くんは聞き上手ってやつなのかな。

 

 

「僕が死神を目指した理由、ですか…」

 

 どう言う流れでこの話題になったのかは覚えていない。何となく、惣右介くんが死神を目指した理由を、僕は尋ねてみた。

 

「ああ、困らせていたらごめん。言いたくないなら言わなくて良いよ。面接してる訳じゃないんだし」

「いえ」

 

「大丈夫ですよ」と答えた彼は、考え込むように目を伏せて、小さく息を吐いた。

 

「僕が死神を目指したのは、この世界を護るためです」

 

 そうして放たれた意外な言葉に、ボクは目を丸くする。

 世界を護る?それは…、

 

「随分と大きく出たねえ…」

「子供の戯言だと思われるかもしれませんが僕は本気です。本気でこの世界を護りたいと思っている」

 

 強い光を灯したその目は、ギラギラと輝いている。

 ……へぇ。

 

「─君は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「…おい京楽!!」

 

 少しの霊圧を放ち威圧する。見守っていた総司が咎めるように僕へと声をかけるが、それを手で抑える。

 子供に向けるようなものではない、けれど、この程度で折れてしまうような半端な気持ちでその言葉を吐いたなら、今ここで手折ってしまった方がいい。─高い理想を掲げ、落ちぶれた同胞を見送ってきたボクなりの思い遣りだ。

 

「─()()()()()()()()()()。生半可な覚悟じゃそれを成し遂げることは出来ないと」

 

 しかし、彼はボクの霊圧をものともせずそう啖呵を切った。

 それどころか、彼はまるで支配権を取り戻すかのように自身の霊圧を放ったのだ。これには流石のボクも驚いた。死神どころか真央霊術院の生徒でもない彼がこんなにも重苦しい霊圧を放つとは。

 

「…辛くて、苦しい道のりになると思うよ。何も見えなくなるような暗闇に呑まれる日がくるかもしれない。それでも君は世界を護りたいと言うのかい?」

「それが何です?あり得るかも分からない未来を懸念して、掴むべき目標を見失うのは愚者の行いですよ」

 

「その道のりがどれ程険しいものであろうと、理想を遂げる為ならば、僕はただ己を信じて突き進むだけです」

 

 そこに、子供が夢物語を語るような純粋さは一切なかった。

 使命感に酔いしれるわけでもなく、ただ淡々とそれが自分が成すべきことなのだと言い放つ。

 傲慢さをも感じさせるその宣誓からは、剣を握ったばかりの少年が抱えるには、あまりにも重い覚悟を感じさせられた。

 

 神様なんて信じちゃいないが、彼は()()でも授かったんじゃないかと思わせるような気迫を持っている。

 

 

 ─うん、この子になら。

 

 

「ごめんね、いきなり威圧しちゃって!」

「いえ、こちらこそすみません…。つい気分が上がってしまって」

 

 ボクは自身の放っていた霊圧を消し、軽快に笑いかける。それに合わせるように惣右介くんも霊圧を消した。客間に漂っていた重苦しい空気が軽くなる。

 驚いたな…霊圧のコントロールも完璧じゃないか。

 

「いやぁ、煽った僕が悪いからね」

「いえ、現役の護廷十三隊の隊長に啖呵切った僕も悪いですから…」

「いやいや」

「いえいえ」

「ええいうるさい!喧嘩両成敗だ!いきなりやり合いやがって巻き込まれた俺の身にもなれってんだ!!」

「ゴメンゴメン、あ、そうそう」

 

 なみなみと注がれたお猪口に口をつけながら、胸にしまっていた入学願書を惣右介くんに手渡す。

 

「あと2ヶ月後くらいに真央霊術院の試験が始まるだろう?惣右介くん、それに応募しちゃいなよ」

 

「はい?」

 ポカンと口を開けボクを見上げる惣右介くん。先程までの彼の様子と随分違い、年相応の幼さをみせる表情に少し笑ってしまう。

 

「いや、いくらなんでも早すぎねぇか?来年入学させるつもりなんだが…」

「いやいや、剣術と白打、五席の総司と打ち合えるくらい優秀で、歩法も問題なし。鬼道なんて破道の三十番代くらいまで放てるんだろう?むしろ入学前にこれだけ出来てるなんて、そっちの方がおかしいと思うけど?」

「いえ、僕はまだ、死神への登竜門には分不相応ですので…」

 

 眉を顰めながら、唸る総司を諭すように言葉を重ねた僕に対し、惣右介くんは苦笑しながらそう言った。イヤイヤ、

 

「そんなに謙遜しなさんな、謙遜も過ぎれば傲慢になるよ」

「謙遜とかではなくてですね…」

 

「もしかして自信がないのかい?なに心配いらないよ、ボクには分かる。君なら出来るってね♡」

「いや、初対面ですよね?」

 

「君は今すぐ真央霊術院に行ったほうがいい!落ちたとしても、その体験はかけがえの無い青春の一部になるだろうから!」

記念受験(お前は東大へ行け)みたいに言われましても」

 

 そんな押し問答を繰り返すボクたちを見ていた総司は、目を細めながら言った。

 

「京楽、お前なんか企んでいやがるな?」

 

 ぎくり

 

「…なんのことかなぁ~?総司、邪推はやめてよ」

 

 言い淀むボクをジッと見つめた後、彼は呆れたように言葉を吐き出した。うわぁ、お得意のアレだ。

 

「……ん、()()()()。お前さては総隊長に優秀な人材でもスカウトしてこいって入学願書を押し付けられたんだろ?」

「え?」

 

 ジト目で睨み付ける総司と、会話についていけずポカンとしている惣右介くん。

 あーあ、バレちゃった。観念したボクは、正直に事の顛末を話し出す。

 

「外の見回りをしてる時に偶然山じいに出会ってさぁ、見回りついでに優秀な人材でも見付けてこいって()()を押し付けられちゃったんだよ。イヤァ~参ったよね(笑)」

 

「嘘つけ、茶屋でサボってるところを総隊長に見つかってそんなに外に出たいなら、ついでに仕事しろってげんこつと一緒に渡されたんだろ」

「うぐ」

「えぇ…?」

 

 二人のじとっとした視線が突き刺さる。

 

「山じいに、サイン付きの入学願書を持ってくるまで書類仕事を雀部副隊長と同じ部屋でやらせるって言われたんだよ!?そんなの絶対にイヤだ!!ねっねっだからさ、可哀想なボクを助けると思ってこの紙にサインしてよ~!ちょっとだけ!先っぽだけでも良いから!」

 

「自業自得だろ」

「自業自得では」

 

 声を揃えて言われる。ああ、視線もイタイ!

 

「うぐぐ、でもさぁ!それ以上惣右介くんを鍛え上げたら、惣右介くんの同級生が自信なくしちゃうよ!今でさえそんなに強いんだからさぁ!」

「うっ」

 

「大体総司は何を迷ってるのさ、もしかして親バカってやつかい?ダメだよ総司~可愛い子には旅をさせよっていうだろ?」

「ううっ」

 

「ほら総司、ね?」

「う、う~ん…確かに京楽の言うことにも一理ある……」

「父さん?」

 

「…よし、惣右介!2ヶ月後の入試までにみっちり鍛えてやるからな!!」

「父さん!?」

「やったぁ~!」

 

 

 親子共々なんやかんやと言いくるめて、入学願書にサインさせた。不服そうにしている惣右介くんには悪いが、これで山じいにどやされないで済むね。ありがたや、ありがたや。

 

 

 

 

 

✳✳✳

 

 

 

 

 

「では、僕はそろそろお暇します。お二人もあまり深酒をしないように」

 

 釘を刺すようにそう言った惣右介くんは、丁寧なお辞儀をしてこの場を後にした。

 惣右介くんが居なくなった客間で、総司とボクはゆっくり酒を飲む。先程まで和気あいあいとしていた空間には、ゆったりとした時間が流れていた。

 

「…アイツさ、数ヵ月前まではあんなじゃなかったんだぜ?」

「え?」

 

 突然、その静寂を切り裂くように、総司はぽつりぽつりと話し出す。

 

「地に足着いてねぇっていうのか、妙に自我がふわふわしててよ」

「それが急に、死神になるための稽古をつけてくださいなんて言い出しちまってさぁ…。子供の成長ってのは早いもんだなぁ」

 

 喜びと寂しさが合い混ぜになった声色に、ゆったりと下げられた目尻。しかし、その慈愛に満ちた顔は、だんだんと曇っていく。

 

「ただなぁ」

 

「優しいんだ、()()()()()()()()。アイツは人を傷つけることを内心怖がっている」

「それでも、目的のためならそんな優しさも恐怖も飲み込んで、()()()()()()()を持ってる」

 

「でも、その覚悟を以てしても、いつかは限界がくる」

「殺して進んで殺して進んで殺して進んで殺して殺して殺して殺して殺して、そして…」

 

 言い淀んだ総司は、喉元に溜まる汚濁を飲み干すかのように酒を煽る。憂いを隠しもせず、空の猪口を見つめながら悩む彼の姿に、ボクは目を瞬かせた。

 

「総司が、こんなに弱った姿をボクに見せるのは、今日が初めてかもしれないねえ」

 

 茶化すように言ったボクに、総司は口をムッと尖らせると「俺だって人並みには悩むさ」と吐き捨てるように言う。

 損ねてしまった機嫌を取るように、彼の猪口に酒を注ぎ直して、話を繋げる。

 

「君のその懸念は、またお得意の()()で見たものかい?」

「いんや()()。読まなくたって分かるよ。俺はアイツの父親だからな」

 

 カラカラと笑う総司を見て、ボクはなんとも言えない感情を抱いた。行雲流水そのものみたいな男が、ここまで人らしくなるとはね…感慨深いなあ。

 

 

「なぁ京楽、お前も見守ってやってくれねぇか。惣右介のこと」

「…貸しひとつだよ」

「はっ、…ありがとな」

 

 差し出された総司の猪口に、ボクの猪口を触れ合わせる。カチンッと尖った音が空に響いた。

 

 

 

「世界を護るため…ね。」

 

 若々しくて、初々しい。

 ボクは堅苦しい実家から逃げ出すために死神を目指したから、そういった理想を掲げ死神を目指す彼の姿は、ボクには少し眩しかった。

 

 

 ─でも、気のせいかな。そう言い放った(藍染惣右介)の瞳の奥に真っ黒な■■が滲んでいたのは。

 

 

 

 

 







何度も夢に見る
彼に死神への切符を渡したあの日のことを。


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