走者がガバったら(世界が)即終了チャート はーじまーるよー! 作:私は地を統べる
現世の時代をだいたい江戸時代くらいだとして書いているんですけど、江戸時代ってツルを耳に掛ける眼鏡は無いんですよね。でも原作だと110年前にジャズがある。何やねん
お気に入り、しおり、感想、評価ありがとうございます。
物凄く励みになっております。ありがたや…ありがたや……
○○年○月○日(○) 晴れ
昨晩、奇妙な夢を見た。
僕は湖の上に立っていて、空には大きな三日月が浮かんでいた。そんな幻想的な場所で、白装束の子供に話しかけられる夢だ。
多分「斬魄刀」と対話した、のだと思う。
いや、一方的に話し掛けられただけだから対話とは言えないか。とにかく、刃禅も組まずに己の斬魄刀に会うとはどういう事なのだろう?
…確か、心理学では「夢は“いまの自分”を反映している」とされているらしい。
『羊たちの沈黙』という小説がある。作中で主人公であるクラリスは、檻の中から逃げることができず鳴いている羊の夢を何度も見る。その理由が、幼少期に体験したトラウマが夢へと反映されていると後半で判明していくのだが、そう考えると、精神世界は夢と共通する部分があるのかもしれない。
…とにかく、想定よりも早く斬魄刀を物に出来そうだ。今日から刃禅の時間を増やそうと思う。
追記
見ない振りとはなんの事だろう?気づいている癖に
○○年○月○日(○) 雨
想定外なことが起きた。鏡花水月が何を考えているのか分からない。
僕は夢を見たあの日から斬魄刀の対話を何度も試みた。しかし、対話は上手く行かなかった。
刃禅を組んで瞑想し、精神世界に入るまでは良いのだが、あの白装束の子供が姿を見せないのだ。夢の中では姿を見せたのに。
それが何度も続いたある日、いつもの通り精神世界に入ったところ、ようやく白装束の子供が目の前に現れたのだ。
大体四尺程*1の身長で、白装束を着ている。性別は中性的な見た目のため分からない。毛先が湖面につくほど長い白髪を、後ろに一つで結んでおり、顔半分を覆うような前髪の隙間から、こちらを見透かすような朽葉色の瞳が覗いている。…いや、鏡色だ。鏡のように僕の瞳の色を反射しているのだ。
小さな手には、白い鑑縁で囲まれた大きな鏡を抱えており、その鏡からは何かに見られているような視線を感じる。
取り敢えず対話をしようと話し掛けたのだが、それを遮るように、鈴をならしたような声で、
「あなたはなんにも分かっていないわ」
「それとも、分からない振りをしているだけ?」
と言われた。
いきなりなんのこっちゃと思ったが、子供は我関せずと話を続ける。
「もう《私たち》の名前を識っているようだけど、一応教えておくわね」
「
「私たちは、
そう伝えられた。待ってほしい、それはヨン様が騙った能力で、鏡花水月の本当の力は「五感全てを支配する完全催眠」じゃないのかと問いただしたが、
「
「私たちの名前を識っていたとしても、今のあなたに力の全ては貸してあげられない」
「ちゃんとあなたが考えて、理解して、そうしたらまたお話ししましょ」
そう言われ精神世界を追い出されて以降、いくら刃禅を組んでも鏡花水月は姿を現さなくなってしまった。
斬魄刀の屈服に手こずるとは…本当にどうしよう。
追記
もし、もし僕が藍染惣右介に成ってしまったせいで鏡花水月の能力が「完全催眠」ではなくなってしまっていたら…、僕はどうすれば良いのだろう。
考え出したらきりがない。まだ時間はある、とにかく今は出来ることをするしかない。
○○年○月○日(○) 曇り
鏡花水月から名前を告げられてから3年が経った。未だに本当の始解には至っていない。
僕は3年の間に飛び級をした。現在は六回生で今年卒業する。卒業したら護廷十三隊への入隊が決定している。檜佐木修平と同じだ。
予定では、3年で霊術院を卒業し、入隊と同時に席官の座に就くつもりだったのだが、始解が中途半端なため4年間真央霊術院に在籍することになった。
……出来れば始解を取得してから飛び級の話を受けようと思っていたのだ。しかし、担任から「実はね、護廷十三隊のとある隊長さんから藍染くんをうちの隊に早く寄越せって言われてて」「私たちとしても、君みたいに優秀な子には早く霊術院を卒業してもらって、護廷十三隊に入隊して欲しいと思ってるんだ」「だから飛び級の話受けてくれると嬉しいんだけど……」と言われてしまい、断れきれずこうなった。
僕のことをそんなに高く評価している隊長は誰なのかと質問したが、それは卒業してからのお楽しみかな!と言われ流されてしまった。
原作から考えるに平子真子だろうか?この頃から隊長なんだろうか平子さんは…
まあ、始解が出来なくても今の僕の霊力は並みの席官を優に越え、もしかしたら副隊長程までは高くなっているので、護廷十三隊の隊士を務めるには何の問題も無いのだけれど…。
追記
今日も始解は出来なかった。
○○年○月○日(○) 曇り
今日はちょっとした出会いがあった。
剣術の授業が終わった後、水道で手を拭いていると先生に声をかけられて荷物運びを頼まれた。そのせいで手拭いをその場に置き忘れてしまったのだ。
それに気づいた時にはもう放課後間近で、急いで剣術道場へと向かった。剣術の指導を行う棟の施錠時間が他の棟よりも早いからだ。
その道中、小池─景観のためだろうか?真央霊術院の敷地内には小池が存在している。例えるならビオトープと言った感じだろうか。─の中に何かがプカプカと浮いていた。怪訝に思った僕はそれを拾い上げてみたのだが、それは鬼道の教科書だった。
取り敢えず、袖である程度の水気を拭き取ったのだが、文字が滲んでしまって、とても読める状態じゃない。やっぱり、和綴本は水に弱いよな。
どうしたものかと頭を悩ませていると、かすかな気配を感じた。そちらに目を向けると、木陰に一人の少年が立っていた。
もしかして、と思い声をかけると、やはりこの教科書の持ち主だった。彼によると、同級生とふざけ合っている最中、うっかり教科書を投げ飛ばしてしまったのだという。
濡れて読めなくなってしまった教科書を手にした彼は、「アチャー、どうしよう…」「買い直すしかないかな」と呟いていた。不憫に思った僕は、どうせならと自分の鬼道の教科書を差し出したのだ。
最初は遠慮して受け取ろうとしなかった彼だが、僕は先を急いでいたので「父が使っていた教科書があるから、遠慮なく使っていいよ」「卒業間近だから、もう使わないし」「要らなかったら捨ててしまえばいいから」と、少し強引に教科書を渡し、その場を離れた。
…今考えてみると余計なお世話だったかもしれない。
追記
手拭いは無事回収できた。
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
side ????
入学当初、ボクは沸き立つような期待感に胸を膨らませていた。知らないものを知る喜び、その瞬間の頭が痺れるような感覚が、ここでたくさん味わえるだろうと心躍らせていたのだ。
─しかし、ボクの期待は早々に裏切られる事になる。
本に書かれた内容をなぞるだけで、簡単な内容を何度も何度も繰り返すだけの退屈な授業。人を貶め、蹴落とすのに一生懸命な高慢ちきな同級生。
真央霊術院での生活は、僕の知的好奇心を全く満たしてはくれなかった。
すっかりやる気を無くしてしまったボクは四楓院家の名を汚さぬ程度に手を抜いて授業に取り組むようになっていた。(これなら、四楓院家でガラクタを弄くっていた方がマシだ)とすら思っていた。
─その態度が、癪に障ったのだろう。
同級生たちから小さな嫌がらせを受けるようになった。
同級生のほとんどは上級貴族出身の子だ。その子たちにしてみれば、下級貴族でありながら四大貴族の庇護下にあるボクは目障りだったのだろう。
根も葉もない噂話を流されたり、わざと聞こえるように悪口を投げかけられたり。幼稚で陰湿な嫌がらせに、心底うんざりとしたものの、相手にするのも面倒で結局はそのまま放置していた。大々的な嫌がらせはさすがにしないだろうと高をくっていたところもあった。しかし、ボクが反撃する気がないことを見抜いた彼らは、次第にその嫌がらせを悪化させていった。
そうして今日、ついにボクの教科書がどこかへと隠されたのである。
困ったなぁと内心でため息をつきながら、ボクは思わず天を仰いだ。
彼らは理解しているのだろうか?四大貴族である四楓院家の庇護下にある者に対し、たとえ相手が下級貴族であろうとも手を出すという事の重大さを。
すでに全文暗記している教科書をいまさら探し出す意味はあるのか?と思うが、先生に叱られた以上は仕方がない。
ボクは再度大きな溜め息を吐きながら、霊術院内を歩き回ったのだ。
そうして、やっとボクが教科書を見つけたとき、そこには先客がいた。ボクは咄嗟に、木の影へと姿を隠し、気配を消して様子を窺った。
青い装束を身にまとったその人は、袴が濡れるのも気にせずに池の中へと入っていき、ボクの教科書を拾い上げてくれた。そうして彼は、自分の袖を使って、丁寧に教科書の水気を拭い出したのだ。
その光景を目の当たりにしたボクは少し困惑した。見ず知らずの人のモノのために、そんなに手間をかける人が居るのかと。
しばらくして、教科書から顔を上げた彼は、自然な動作でこちらに目を向けたのだ。
驚いた。
気配を消すことに自信を持っていた。それなのに、彼はまるで、当たり前かのようにボクの存在に気づいたのだ。
夜一サンとのかくれんぼでだって、見つかったことが無いのに。四楓院家の人たちですら、ボクらのことを見つけるのに手こずっていたのに。つまり、この人は
(ボクが今まで出会った人たちよりも、気配を読むのに長けているということっスよね?)
「そこの君、これ、君の教科書かな?」
「っハイっス!」
自分の思考に囚われていたボクは、その声に我に返った。
咄嗟に返事をしたけれど、口調が乱れてしまい、おまけに、声まで裏返ってしまった。恥ずかしさで顔が熱くなる。
ボクの恥態を指摘せずに彼は朗らかな笑みを浮かべて「持ち主が見つかって良かったよ」と言った。
失くした理由を適当に誤魔化し、彼から教科書を受け取ったが、文字が滲んでしまったそれは、とてもじゃないが使えそうにない。満足に役目を果たせず一年経たずでくたくたになってしまった教科書になんとも言えない感情を抱きながら、今後の授業をどう凌ごうかと悩んでいると、「もし良かったら僕の教科書をあげようか?」と、彼はそう言った。
ボクは申し訳ないと断った。─見ず知らずの人に貸しを作りたくないという思いもあったが。─そんなボクの様子を見て、苦笑しながらその人は言葉を続ける。
「実はね、僕はもう卒業間近で丁度教科書の処分に困っていたところなんだ」
「卒業までの授業は父が使っていた教科書で凌げば良いし、遠慮しないで受け取って貰えると助かるのだけれど…」
「もし余計なお世話だったらそれはそれで捨ててしまっても構わないから」
有無を言わさずそう言い放つと、「すまない、急ぎの用事があるからそろそろ行かないと」と強引にボクに教科書を押し付け、その人は足早に立ち去っていった。
「名前、聞けなかったな……」
暫く呆然としていたが、視線を下ろしてあの人から受け取った教科書をみる。少し角が折れているが、お下がりにしてはきれいな状態だ。それはあの人のしっかりとした佇まいを思い出させた。
ふと、なんとなしに貰った教科書の裏表紙を捲ってみたと、お手本のようなきれいな字で名前が書かれていた。その筆跡からも彼の几帳面そうな性格がうかがえるようだった。
「あいぜん そうすけ……」
指で名前をなぞりながら、聡明そうな朽葉色の目を思い出す。再び会えるだろうか。いやきっと会えるだろう。何の根拠もないが、ボクはそう確信していた。
ガバ「呼んだ?」