最高最善を目指して   作:秋月 ヒカリ

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 子供だけでなく、大人が救われたっていいじゃないか。


本音

 ~記念聖堂内 祭壇前~

 

 

 聖堂内でお互いに睨み合い、ソウゴは問いかける。

 

 

 「ベアトリーチェッ!なんでインベスが聖堂前で群れを成してるんだ?あれはお前の仕業かッ!?」

 

 『そうとも言えますし、違うとも言えます』

 

 「どういう意味だ…?」

 

 『これのお陰ですよ…。貴方が愛する妻に渡したこれのね?』

 

 「ライドウォッチ…!?」

 

 

 ベアトリーチェが取り出したのはソウゴがベアトへ渡したライドウォッチだった。

 

 

 『このオーパーツのお陰で、異世界の存在を召喚する力を得ました。まだ制御は出来ませんが、それも時間の問題。このトリニティを実験場とし、キヴォトス全土を地獄に変えてあげましょう…!!』

 

 「ライドウォッチを媒体にしたのか!?そんなことが出来るなんて…。」

 

 『貴方とベアトリクスが強く結び付いたお陰です。簡単に言えば、縁を辿りその縁を利用した…それだけです』

 

 「俺とベアトの絆を利用したって事か…ッ!どこまで貶めれば気が済むんだよッ!?」

 

 

 家族の絆を利用し、ライダーの力を悪用され頭に血が昇る。気が付くとソウゴはベアトリーチェに殴り掛かっていた。

 

 

 「オラァッ!!」

 

 『グッ!?…女の顔を躊躇なく殴りに来るとは。DVを受けるなんて、ベアト悲しいです…。』

 

 「その顔でッ!声でッ!俺の家族を騙るなぁーーッ!!」

 

 『そんな…!兄様、ベアトを否定するのですか…?』

 

 「…ッ!!喋るなぁーーッ!!」

 

 『アハハハハっ♪こんなに簡単に心を乱すとは…。この娘も愛されていますねぇ…。反吐が出るッ!!』

 

 「ゴハッ!?」

 

 

 ベアトリーチェの執拗な煽りと、ベアトリクスの真似によりソウゴは冷静さを欠いていた。

 しかし、それだけ激昂するということはソウゴがベアトリクスを愛して止まないという裏付けにもなり、ベアトリーチェは不愉快そうにソウゴを蹴り飛ばす。

 

 

 『不愉快だ…。不愉快不愉快不愉快ッ!!アアァァーーッ!!なぜこの娘だけがこんなに…ッ!!私は違うのに…ッ!!……違う。私は、何を口走っている…?私の目的はお前達を絶望…?あの世界の先生に復讐を…?……あ?』

 

 「…ゲホッ、何だ?ベアトリーチェの様子が可笑しいような…?」

 

 

 片手を右顔に添え、苦悶に満ちた表情で呟きだすベアトリーチェ。その様子の変わりように戸惑い、様子見に入るソウゴ。

 

 

 『わたしは…私は、崇高に至るために…。先生に復讐を…絶望を与えるために、ベアトリクスの身体を奪って…。なのにこの娘は私なのに、同一の存在なのに…何もかもが幸福に満たされていて愛されていて…。違うっ!何を考えているっ!そんなことはどうでもいいっ!私はっ!!わたし、は…っ!!』

 

 「ベアトリーチェ……お前、泣いてるのか?」

 

 『……は?何を言ってーーー』

 

 「涙、流してるじゃないか」

 

 『っ!?』

 

 

 手で押さえている右目からは涙が流れていた。それに気付かずソウゴに指摘され、認識したベアトリーチェは驚愕する。

 

 

 『なんですかこれは…?私が涙を流す?あり得ないっ!こんな、これではまるで……っ!?』

 

 「…ベアトリーチェ、お前はベアトに嫉妬したのか?」

 

 『……今、なんと?』

 

 「お前自身、気付いてないだけで羨んでいたんじゃないのか?愛し愛される関係を築けているベアトに、知らず知らずの内に焦がれたんじゃないのか?」

 

 『な、なにを馬鹿なことを…っ!?』

 

 「…お前は本当は誰かに、愛してほしいだけなんじゃないのか?」

 

 

 ベアトリーチェは絶句する。思い当たらないものが無いわけではない。しかし、それを認めてしまえば自分は、大人としての今までの行為は、全てが幼稚で下らない物に成り下がってしまう。

 自分以外の有象無象は、己の糧とするためだけの存在に過ぎないと、子供達をも搾取してきた私が?本当は誰かに愛して欲しかった…?

 

 

 『…認められるかッ!そんなことがッ!』

 

 「ベアトリーチェッ!もしお前が本当にそれを望んでいるなら、俺達と来い!ベアトや皆だって、きっと分かってくれるっ!だからーーー」

 

 『黙れェェェッ!!!!』

 

 

 ソウゴはベアトリーチェに手を差し伸べるが、それを拒否し身体から深紅のオーラを放つ。ベアトリクスの身体を包むように怪物の姿をしたベアトリーチェが形成され、こちらに腕と紅い光線を放ってくる。

 

 

 「もういいだろっ!?お前と話していて理解したっ!始まりは憎しみから来ていたのかもしれないっ!けど、ベアトという存在に触れて、お前自身変化があったんじゃないのかっ!?」

 

 『黙れと言っているでしょうッ!!』

 

 「ぐぅ…っ!?……お前の中に、憎しみ以外の感情があるのなら、俺はお前の手を取りたいッ!!理解し合える筈だ!!お前もベアトなんだからッ!!」

 

 『うるさいッ!これ以上、土足で私の心に踏み込むなァッ!!』

 

 

 冷静さを取り戻すと、身体はベアトなのでなかなか斬り込んでいけないソウゴ。言葉で説得しようとするも、ベアトリーチェは頑なに受け入れようとせず、紅い光球を作り出しソウゴへ放つ。

 が、両手の大橙丸Zで受け流す。

 

 

 「ーッ!…ベアトリーチェ、今のベアトと繋がったお前なら分かる筈だ…ッ!誰かを憎み、貶めるよりも誰かと手を取り合って助け合いながら生きる方が、自分を救えるって事がッ!!」

 

 『貴方の言葉は全てが綺麗事ですッ!!貴方にだってあるでしょう!?どうしようもない程のドス黒い感情が!先程まで私に向けていた感情が、そうでしょう!?貴方だって所詮は、綺麗な言葉で誤魔化して、騙して、自分を偽っているだけでしょうッ!?』

 

 

 ベアトリーチェの言葉には今までのような黒い感情が感じられず、必死にソウゴを否定する姿はまるで……ソウゴには素直になれないだけの幼い子供のように見えた。

 

 

 「…そうだよ。ベアトリーチェ、お前の言う通りだ」

 

 『ハハハ…。ほら、見なさい…。所詮、私達は同じ穴のーーー』

 

 「だけどッ!!」

 

 『!?』

 

 「……綺麗事で良いじゃないか?だって本当は、殴られたから殴り返して……そんな事でしかお互いを理解できないなんて、悲し過ぎるだろ…?」

 

 『ですから、それが綺麗事であり偽善だとーーー』

 

 「俺達人間には皆、醜い部分もあれば底知れない闇を抱えている者もいる。でもッ!!側にいて、支えてくれて人は光りに成れるって教えてくれる人だっているッ!!だから…!!」

 

 

 ソウゴは右手にジオウIIライドウォッチのD’3サイドを取り出す。

 

 

 「俺は、俺を信じてくれている人を悲しませたくない。だから、この真っ黒な部分も含めて自分なんだって受け入れる。光りも闇もどっちも含めて、俺なんだからッ!!」

 

 

 ソウゴが叫び、ウォッチを掲げるとD’9サイドが現れ一つのライドウォッチが完成した。

 ソウゴはライドオンスターターを押し込み、起動させる。

 

 

 ージオウIIッ!

 

 

 更にウォッチを分割し、二つに分ける。

 

 

 ージオウッ!

 

 

 ジクウドライバーへウォッチをセットし、叫ぶ。

 

 

 「……変身ッ!!」

 

 

 ーライダータイム!…カメンライダー!ライダー!ジオウ!ジオウ~!…ツーッ!!

 

 

 “天の声で失礼しますっ!……祝いなさい!全ライダーを凌駕し、時空を超え、過去と未来を知ろしめす時の王者!その名も仮面ライダージオウIIッ!…新たな歴史の幕が開きし瞬間である!!”

 

 

 「おぉ~!ツムギちゃんから祝われるの久し振りだね!」

 

 “はいっ!いつもより気合い入れました!…それではソウゴさん、存分にハッピーエンドにしちゃって下さいっ!!”

 

 「任されたッ!」

 

 『なんなんですか…っ!!なんなんですか!貴方は!?』

 

 「今からお前を救う男だッ!!ラァッ!」

 

 『く…っ!パワーが上がっている…!?』

 

 

 ーサイキョーギレード!

 

 

 サイキョーギレードを召喚しベアトリーチェを斬り付ける。ベアトリーチェはジオウIIのパワーに圧され、狙いをつける間も無くレーザーを矢鱈目ったら打ち出し牽制する。

 

 

 『貴方はッ!お前はッ!!この娘を救いに来たのでしょうッ!?なぜ、私にまで手を伸ばすッ!?分からない分からない分からない分からない分からないッ!!なぜッ!?』

 

 「言っただろう?ベアトと繋がってお前の中に生まれた、新しい感情…。その中に俺は希望を見たッ!……もう、一度見たあんな未来には繋げない。俺はベアトリーチェッ!お前を含めて新しい未来を創るッ!!」

 

 

 ーライダー!…ライダー斬りッ!!

 

 「ハァッ!!」

 

 『アアァァァァッ!?』

 

 

 ベアトリーチェを切り裂き、中からベアトを取り戻す。ぐったりとしてはいるが、特に異常は見られない。ソウゴは安堵し、ベアトを強く抱き締める。

 そしてその光景を見て、ベアトリーチェは覇気の無い声で呟く。

 

 

 『あぁ…。やはり、お前だけは救われるのか…。所詮私はお前達の前に立ち塞がる怪物…。思い上がっただけの、舞台装置…。敵ですらなりえない、誰にも何にも必要とされない存在……。』

 

 

 ふらふらと身体を揺らし、段々と人の形を成していくベアトリーチェ。身体からは力が抜け、膝を着く。

 

 

 『……えぇ、認めますよ。前のままの私なら決して抱かなかったであろう、光りを求めた…。その娘を…ベアトリクスを見付け覗いた時、同じ自分だというのに沢山の光りに囲まれ笑っていた彼女を羨んだ…。』

 

 

 その目からは涙を流しつつ、ベアトリーチェの言葉は続く。

 

 

 『前の世界の私は、余りに独り善がりが過ぎた…。他者を利用し、搾取し、自らの糧とするために子供ですら駒にした…。それでいいのだと、最善なのだと信じていたのに……ベアトリクスを見たら今までの自分がちっぽけな存在に感じました…。』

 

 「ベアトリーチェ…。」

 

 『だけど認めたくなかった!だって、認めたら私は私で無くなってしまう!私が消えてしまう!だからベアトリクスの幸せを壊すことで、私という存在を肯定しようとしたっ!けど、無理でした…。結局、私と貴女はあくまで同じ存在であって、私ではないのです…。私は貴女にはなれない…。』

 

 

 両手で顔を覆い嗚咽を漏らし、地に伏せるベアトリーチェ。

 

 

 「……私は赦しますよ。ベアトリーチェ…。」

 

 「ベアト!気が付いたのか…!」

 

 「兄様…。ご迷惑をお掛けしました…。……ベアトリーチェ、貴女の言う通り私は貴女になれないし、貴女は私になれない。けど、同じ存在なんだから貴女だって幸せになれます…!」

 

 『ベアトリクス…。』

 

 「だって、そうじゃないと救われないじゃない…!貴女はソウゴさんやマトイ様達に出会えず、あの廃れた教会で世界を憎み育ったであろう私なんだ…!あったかもしれない私の可能性なんだ…!そんな貴女(自分)を否定したら……私達は救われないじゃないっ!」

 

 『あ、あぁ…っ!私は…私はっ!』

 

 「だから教えてよっ!貴女の本当の気持ちをっ!願いを聞かせてよっ!私が絶対にその手を掴んでみせるからっ!!」

 

 

 ベアトリーチェはベアトリクスの訴えに胸元で手を組み、本音を叫ぶ。

 

 

 『今の私はっ!幸せになりたいっ!誰かを愛したいっ!誰かに愛されたいっ!!もう真っ暗な闇の中で、何かを呪うのは嫌だっ!貴女の様に誰かと笑い合っていたいですっ!!』

 

 「ならこの手を取れ、ベアトリーチェ。俺達はお前を見捨てない…!!」

 

 『……ありがとうございます。ソウゴ、ベアトリクス……ッ!?ウ…ッ!?ぐぅ……!?あ、あぁあぁぁぁぁぁッ!?』

 

 「ベアトリーチェ!?」

 

 

 ソウゴとベアトの手を取ろうと、ベアトリーチェも手を伸ばしかけたところで急に苦しみだす。

 胸を押さえるベアトリーチェの胸元でライドウォッチが黒く輝いている。

 

 

 “ソウゴさん!大変です!ベアトリーチェの使っていたウォッチが暴走していますっ!”

 

 「どういう事?あのライドウォッチはブランクウォッチだぞ?暴走もなにもないんじゃ…!」

 

 “彼女はウォッチを使って異世界の悪意と繋がってしまいました…!あのウォッチにはその悪意が充満しているんです!”

 

 「悪意って…!それじゃベアトリーチェは…!?」

 

 “…このままでは、充満した悪意によって支配されこのキヴォトスを闇に包みます。…ソウゴさん、女神候補生のツムギとして要請します。ベアトリーチェを……消滅させて下さい…。”

 

 「ツムギ様っ!?」

 

 『ソウ…ゴさん…ッ!……ベアトリクスッ!!私を……殺しなさいッ!!』

 

 「何を!?」

 

 『私は……救われ…ましたッ!私を...受け止めてくれた……それ、だけでッ!……十分ですッ!』

 

 「嫌だっ!嫌だよっ!これからでしょっ!?諦めないでよっ!!」

 

 『……ソウゴさん…!お願いします…!私の最後の、願いを…!!』

 

 「……分かった。それが君の願いなら…。」

 

 「ソウゴさん…!?」

 

 『ありがとう…。あぁあぁぁぁぁッ!?…………。』

 

 

 ベアトリーチェが叫び声を上げると、がくりと脱力し身体から闇のオーラを放ち始める。

 

 

 “完全に呑まれました…!来ますっ!!”

 

 『aaaaaaaaaaaaッ!!!!』

 

 「ベアトは隠れてろ、俺がアイツの最後の願いを叶える。……恨むなら恨んでくれていいから」

 

 「いいえ…。恨みません…。恨めませんよ……。彼女を、お願いします…!」

 

 「うん、任せて。……行くぞ、ベアトリーチェッ!」

 

 

 本当の最後の戦いが始まる。




 次回、決着。
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