最高最善を目指して   作:秋月 ヒカリ

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 引き続き、ベアトリクスの回です。
彼女はソウゴ君に何を見出だすのでしょうか。
サブタイは読みは同じですが、字が違うというので一つ。


貴方の優しさに触れたから

 ~牢屋 ソウゴ収監房前~

 

 

 

 ーその姿を見た時の印象は、“優しそうな人”だった。

 

 バルバラ様との会話の中で、彼がやって来てからというもの、彼の話題が出ない日はなかった。初日こそ、アリウスの刺客かもしれないから警戒を怠るな。だったのに、次の日にはもう楽しそうに彼の事を話していた。(これには流石に、バルバラ様ってチョロすぎでは…?と心配になった)

 けれど、私の知る限りバルバラ様はマトイ様や側付きの私以外には、あまり素の姿をお見せにならない。しかも最近では、学園統合の件でアリウスと揉めている最中だ。その事もあり、ずっと表情と心は臨戦態勢だった。

 

 (そんな貴女の心を解かした相手に、私が興味を引かれるのは当然でした)

 

 ー興味、だけではない。不安もあったのだ。いつも側に居て、私を気に掛けてくれていた貴女が、私の知らない誰かの事で楽しそうに笑う…。

 奪い、奪われる事に慣れていた私には卑屈な考えが浮かんでは消えた…。大切な貴女を奪われるのでは?あの冷たい世界に逆戻りするのでは?また、独りぼっちになるのでは?

 グルグル、グルグルと、頭の中を嫌な考えが満たしていく。そんな事は起きないと、分かっている。分かってはいても、過去の経験が私の思考を蝕む…。

 

 「あ、あの…。」

 「ん?どうした?ベアト…?」

 「私も、その方に会ってお話をしてみたい…なんて…。」

 「…ふむ」

 

 腕を組み、何事かを思案しているバルバラ様に、余計な事を言ってしまったかと不安になる。

 

 「そうだな。ベアトも一度会って…。いや、いっそのことアイツの監視役になってはくれないか?」

 「……え?何故でしょうか…?」

 「いやなに、アイツとこの二週間やり取りして分かったがな?未だアイツは我々にとって、怪しい存在ではあるが、危険な奴ではないと判断した。それに伴って、部屋を用意しようと考えている。流石に一人で自由にはさせられんから、信用できる者を付けようと思ってな」

 「それが、私であると…?」

 「この私が一番信用できる部下は、ベアトだからな!」

 

 ハッハッハッ!と私の頭を撫でながら、笑顔を向けるバルバラ様に心の黒い靄が霧散していく…。

 

 「お任せ下さい!このベアトリクス、必ずやバルバラ様の御期待に答えて見せます…!」

 「うんうん。ベアトは実に頼もしくなったな…。では、今から会長の許可を取りに行く。付いてこい」

 「はい!」

 

 こうして私は彼の監視役として、世話係を任せられる事になった。

 

 「初めまして、ソウゴさん。これから、貴方の側付きになります。『紅染 ベアトリクス』と申します。宜しくお願い致します」

 「こちらこそ、よろしく!」

 

 そこから、ソウゴさんと共に過ごしていくなかで感じたのは、この人は底抜けな優しさの持ち主だということだ。

 世話係の私に気を遣うのもそうだが、聖徒会内を案内している時も困っている娘や、怪我をした娘等を目にしてしまうと自分の事は二の次で手を差し伸べる…。

 最初は偽善だと思った。少しでも此方の心証を良くして取り入ろうとしているのだと。私は簡単には騙されないと。

 

 「はあ…。ソウゴさん…。今日も人助けですか…?」

 「あ、おはようベアトリクス!うん。昨日、倉庫整理を手伝うって約束したからさ。その準備中!」

 「……貴方は、いつまで偽善を続けるんですか?」

 「えっと…?どうしたの、ベアトリクス?」

 「…分かってるんですよ?そうやって、如何にも自分は無害です。少しでも誰かの役に立ちたいんですって振りをして、ユスティナ聖徒会の弱味でも握ろうとしているんでしょう?」

 「いやいや、俺は本当にーー」

 

 ーダンッ!

 

 壁を殴り付け、彼の言葉を遮る。

 

 「だって、そうでしょう?貴方は何処の誰かもハッキリしない。私達に手を貸す理由もない。なのに毎日毎日、誰かに手を差し伸べて誰かと輪を広げていく…!皆、警戒心が無さすぎる…!マトイ様やバルバラ様にもそう!貴方は誰の心にも直ぐに潜り込む!何なんですか貴方は!?」

 「……」

 「…お願いですから…。…お願いだから、私の居場所を奪わないでよぉ…。私の大切な人達を私から奪わないでぇ…!」

 

 分かってる…。もう分かってるんだ、本当は…。この人はマトイ様やバルバラ様と同じだ。人を思い遣り、寄り添い、心を救う…。その才能を持つ人だって。他でもない、そんな人達に救われた私だからこそ、それをハッキリと理解していた。

 

 「…ひっぐ、うぅ…!お願いします…。おねがーー」

 「ーー大丈夫。俺は本当に何もしない」

 

 不安に押し潰されそうな私は、泣きながら懇願する事しか出来なかった。けれど彼は…ソウゴさんは優しく、力強く私を抱き締めて、安心させるように頭を撫でながら囁く。

 

 「君にそんな風に思わせていたなんて、考えてもいなかった。俺は、君の優しさに甘えていたんだね」

 「わ、私は優しくなど…!」

 「優しいよ。だって、誰の手でも握ってしまう俺の手を、君はずっと隣で握ってくれてたじゃないか?」

 「何を…。」

 「困っている娘に俺が手を貸していると、君は手伝ってくれた。怪我をした娘に手を伸ばしたら、君は薬箱を持ってきてくれて手当てを手伝ってくれた。他にも沢山っ!君は俺を助けてくれてたじゃない」

 「それは…私が貴方の世話係だからで…!」

 「世話係だからってだけなら、多分だけど余計な仕事を増やすなって怒ってるとこだと思うんだよね。…元凶が言うことじゃないけどさ」

 

 あはは…。と苦笑いしながら頬を掻くソウゴさんを見て、つい吹き出してしまう。

 

 「…ぷふっ!なんですか、それ?」

 「あ!笑うことないだろ!こっちは安心させようと必死だったのに…!」

 「あははっ!ごめんなさいっ、でも可笑しくって…!」

 「そんなにか…?」

 

 そう、彼の優しさを理解出来ていたのに自分の心の弱さから、信じることを拒み、突き放した自分の未熟さが可笑しかった。

 

 「あ、そうそう。ベアトリクスはさ、俺がユスティナの皆を助ける理由がないって言ってたけど、ちゃんとあるよ?」

 「え?あるんですか?」

 「うん。俺は君の言うように、怪しすぎる存在なのにマトイやバルバラにベアトリクス…ユスティナの皆が俺を受け入れてくれた。救われたんだよ、俺は。行き場所のない俺に居場所をくれてね?」

 

 その言葉に、私は既視感を覚えた。だって、一緒なのだ。私も彼女達に受け入れてもらい、救われたから。

 二人の共通点を見付け、彼の優しさを受け入れたら後はもう駄目だった…。私は、ソウゴ兄様(・・)に抱き付いていた。

 

 「おっとと…。どうしたのさ急に?ベアトリクス?」

 「……ベアト」

 「え?」

 「私の事は今から、ベアトと呼んで下さい。ソウゴ兄様!」

 「あぁ、わかっ……え?兄様?何で??」

 「私はソウゴ兄様より年下でしょう?それに、私はソウゴ兄様をお慕いしていますので!」

 「うん!?理由になってないような…!?それにお慕いって、さっきまで親の敵でも見るような目で見てたじゃん!?」

 「…ベアト難しい事はよく分からないです…。」

 「急に幼くなるのなんなの…。あ、止めて!そんな上目遣いで訴えてこないでっ!分かった!分かったから!」

 「ふっ…。妹に勝てる兄などいないのですよ?兄様」

 「くっそ腹立つ…!」

 

 ふふふ…。まあ、確かにどの口がって気は自分でもしてますとも。ですが、もう駄目です。兄様の事を受け入れてしまえば、疑心暗鬼のベアトリクスはもうお終いです。

 チョロい?上等ですよ。こちとらスラム育ちの愛情に飢えた、一匹の獣ですとも。……ふふふ、ソウゴ兄様?覚悟して下さいね…?

 

 (…!?え、なに!?なんなの!?なんか悪寒が…!?)

 「改めて、これからも宜しくお願いしますね?ソウゴ兄様っ♪」

 

 余談ではあるが、後日このデロデロにソウゴへ甘えているベアトリクスを見たバルバラが、ソウゴが誑かしたと追いかけ回す姿が見かけられたり、頬を膨らませ拗ねているマトイの姿があったりするが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー……みつけた

 

 

 

 




 幕間の各キャラの回想話の後書きに、容姿について書いてみましたので家の娘の解像度をあげてみて下さい!
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