~タツキの場合~
ヒイロ様とあの男が戦闘を開始した。しかし、何故ヒイロ様はあのソウゴという男に執着されるのか?
ヒイロ様の命令で、ユスティナ聖徒会を見張り続けていたある日、光の柱と共にあの男が現れた。
(流石に内部に潜入する事は出来なかったが、それでも毎日監視していたのだ。ユスティナ聖徒会の連中が日に日に生気に満ち溢れ、笑顔になっていく様は異常だった)
その一つ一つをヒイロ様に報告すれば、あの方はヤツに興味を持っていった。
…恐らくヒイロ様も疲弊していたのだと思う。アリウスの生徒会長として、強く振る舞い教義を守り、この学区の未来を憂いユスティナとぶつかり合う毎日…。
(そこにあの様な男が現れれば、今のヒイロ様には劇薬か)
あの男…ええい、面倒だ!ソウゴとか言ったな?ヤツが関わったらユスティナの全生徒が、希望に溢れた顔をしてヤツを慕う。ヒイロ様からしたら、正に天が遣わせられた存在にでも見えていたのだろう。
私はヒイロ様の強さに、気高さに惹かれてあの方の下に就いているのだ。少なくとも私より強くなくては、私はヤツを認められない。
(ほれ視ろ、大口を叩いていた癖に最初は善戦していたが、今はもう虫の息ではないか?)
外に転がるソウゴを見て、無表情で内心ソウゴを見下す。しかし、直ぐに眼を見開く事になる。
(ーーは?な、なんだ?ヤツのプレッシャーが増した?この私が震えている…?)
ヒイロ以外の者に畏怖の念を抱き、震えることなどなかったタツキはソウゴに釘付けになる。
(姿が変わった…?動きまで…!す、凄い。ヒイロ様を圧倒している…!?)
端から視たらタツキの表情は依然として無表情だが、その内心は乱れに乱れていた。
(ふぁっ!?ヒイロ様を倒した!?しゅ、しゅごい…。強い男の人…カッコいい…。はわっ!?こっちに戻ってくりゅ!?どうしよぉ~っ!)
タツキは自身の強さを基準にしているため、圧倒的な強さを持つ者には滅法弱かった。なお、この後ソウゴとのファーストコンタクトを思いだし、内心で“うわぁ~ん!”と泣きべそをかくのだった。
~マトイの場合~
私はヒイロさんからの指示で、別室へ移動させられました。なんでも、生徒会室でソウゴさんと直接話し合い、力を試したいとかで…。
きっと彼女も、ソウゴさんの心に触れたら変われる筈なのです。どうか、女神様…!我々をお救い下さい…!
『あ、マトイさんっ!お祈り中失礼しますっ!』
「へ?ツムギ様…?も、もしかして祈りが届いてーー」
『すみませんっ!ソウゴさんがライダーの力を継承しそうなので、祝福したいんですっ!少しの間だけ、お身体をお借りしますね?』
「…!?待って下さいっ!それってまたアレをやるのですかっ!?今度はツムギ様が私の身体で!?」
『あ、本当に時間がないので借りますね!えいっ!』
「ちょ、ちょっとお待ちを……はうん…!」
『よし、成功ですね。やりましたっ!では、待っていて下さいねっ!ソウゴさん~っ!』
(何も良くないです~っ!)
こうして無事にソウゴの継承の儀は果たされるのであった。
~ミツキの場合~
「う、ぁ?あれ?ここは…?」
気が付くといつの間にか生徒会室に私は転がっていた。激痛が走る身体をなんとか起こして、回りを見ると壁には大穴が空いて、その向こうでは会長とソウゴが戦っていた。
(状況は把握しきれないけど、会長とソウゴの間で何かあったのは確かか…。それにしても、副会長め…!確かに裏切ったけどさ!ここまでやる!?)
激痛が常に身体を走るため、心の中だけで悪態を吐く。口を開くのも億劫なのだ。
(その副会長は腕組んで、観戦してるし。今なら背中がら空きだけど、私も動けないしソウゴの戦いをここから応援するか…。ソウゴ頑張れー。そんな会長なんかピーして、ピーピーピーピーからのピーでピーしなぁ~!)
内心で過激な応援をしながら観戦するミツキ。いよいよ2人の勝負も佳境といったところで、こちらに走ってくる音が聞こえてくる。
(一体誰…。って、ユスティナの生徒会長さんじゃん?なんで出歩けてんの…?てか、副会長気付いてないし。そんなに夢中になってンの?)
『あ、貴女酷い怪我じゃないですか!?女の子がこんな傷だらけになるなんて、痕が残ったりしたら大変ですっ!治しますねっ!』
(いやいや、治すって。んな、手なんか翳して治るわけが……治ったよ…。え、なに?折れた腕すら完璧に治ってる…!?)
『よしっ!治りましたね!では、私はソウゴさんの元へ行かなければならないので、失礼しますね?ではっ!』
「あ!ちょっと…!?行っちゃった…。ワケわかんないけど、後でお礼は言っとこう…。」
その後直ぐに、マトイ(ツムギ IN)による継承の儀が始まり、宇宙猫と化すミツキなのであった。
~バルバラの場合~
「クソッ!迷ったッ!」
ソウゴ達を見失った後、アリウス生徒と戦い続けた。しかし、殲滅し続けていく内に気付いたら迷っていた。
「何処だここは!?会長を救わなくてはいけないのに!!会長~!ソウゴ~!ベアト~!不甲斐ない聖女を許してくれ~!」
その後、アリウスの放送を聞き戦闘が終わった事を知ったバルバラは肩を落とし、どこか哀愁を漂わせながらトボトボと歩き出した。
~ベアトリクス~
私はソウゴ兄様達と離れ、アリウス生徒達と戦闘を行っていた。周りにはユスティナとアリウスの生徒が入り乱れ、お互いに倒し、倒されを繰り返す。
絶え間ない硝煙の臭いに、ガスマスク越しだというのにむせ返りそうな錯覚を覚える。
どれだけ戦い続けたのか分からないが、気が付くと私は孤立していた。
「流石にこれは不味いですね…!」
“ならば、暫くは私がその身体を使わせていただきます”
「…な、なに?意識が…?」
プツリと糸の切れた人形の様に、ベアトリクスの身体は脱力する。
すると、ベアトリクスの纏う空気が一変する。その身にドス黒く、血のように粘り気のあるオーラを纏い、周りを囲むアリウス生徒達を見回す。
「ふぅ…。無事に乗り移る事は出来ましたね。ですが、まだ馴染んでいない。あまり長くは保ちませんか…。仕方ありません、今日のところはこの身体がどの程度使えるのかの確認作業に徹しましょう」
そう言って、一番近くにいたアリウス生徒を殴り飛ばす。
「ふむ。中々動けますね…。力の出力もまずまず…。さて、まだ確認事項は沢山あります。実験動物の皆さんには役にたってもらいますよ?」
そこからは只の虐殺現場としか言えない、凄惨な光景が拡がっていた。
「さて、今はまだ私の存在が知られては不味いですからね…?皆さんの記憶には何者かに襲われたという、刷り込みをさせて頂きます。私個人の事は忘れますが、その恐怖と痛みは忘れないようにしてあげます。では、ご機嫌よう」
ベアトリクス?はそう言って薄暗い路地裏へと消えていく。その顔に愉悦の表情を浮かべながら…。