ではどうぞ。
~アビドス生徒会室~
「先程はお見苦しいものを見せてしまい、申し訳ありません…。」
「うぅ…。申し訳ありません…。」
「気にしてないから大丈夫だよ。子供達も学校の中を探検して遊んでたしね」
「知らない場所は探検するに限る。どんな発見があるか分からないから、とても楽しい…!」
「アズサは好奇心旺盛だもんね?かくいう私も同意見なんだけどね~」
「アズサもミサキもそうやって、大体何時も迷子になるから探すの大変なんだよ?」
「あぁ、実際アツコの言う通り今日も速攻で居なくなるから、私達からしたら探検というよりは捜索だったぞ」
「つ、疲れました…。ママ~…パパ~…ヒヨリはもう駄目です…。復活するためにも何か食べ物と飲み物、それと頭撫でて下さい~…。」
「あ!ヒヨリお姉ちゃんズルい!パパ、メグリもいっぱい甘やかして下さい!」
子供達の騒がしくも楽しそうな声に、ユメもホシノも眩しい物を見るように目を細める。
ここアビドス高校では、こんなに賑やかな声が響くのはどれくらい振りか分からなくなる程には久し振りだったから。
そんな熱に浮かされたのか、普段なら警戒心の強く、滅多なことでは余所者を歓迎しないホシノが、とある提案をする。
「えっと...もし良かったら、しばらくアビドスに滞在されませんか?聞けば旅をされているとか。お礼も兼ねて、自治区の案内をさせていただければなと思いまして。…どうでしょうか?」
「あら、いいんじゃない?どっち道しばらくここには滞在するつもりだったし、こんなに可愛いガイドさんが付いてくれるなんて、断る理由がないもの。ね、貴方?」
「そうだね。ユメちゃんにホシノちゃん、お世話になってもいいかな?」
「わ~!任せてくださいっ!アビドスの良いところを一杯、お伝えしますとも!ね、ホシノちゃん?」
「か、可愛い…。うへへ…!え、あ、はい!もちろんですよ!」
シオリがホシノの提案に同意し、ソウゴ達も異論無くその申し出を受ける。
「なんだか久し振りにワクワクするねっ!よぉ~し、先ずは何処からがいいかなぁ~?」
「やっぱり柴関ラーメンは鉄板ですよね。他には……」
ユメとホシノは活き活きとした表情で案を練っていく。大人組は微笑ましく、子供組はキラキラとした目で二人の姿を眺めていた。
「…よしっ!大体の案は出たね!明日から案内を始めようと思うんですが、どうですか?」
「私達は構わないよ。子供達は今すぐにでも行きたそうだけどね?」
「そんなに楽しみにしてもらえると、私達も嬉しいなぁ~♪」
子供達の眼には一様にキラキラと星が輝いている。過去からやって来たのだ、視るもの全てが新しく楽しくてしょうがないのだ。
原作のアツコ達よりも幼く感じるのは、年齢だけでなく親から当たり前の愛情を与えられ、子供らしくいられているためだ。
サオリなどは原作の様に気を張り詰めないでいられているので、かなり穏やかな性格に育っているし、ミサキはアクティブ思考で何事も楽しんでいる。
ソウゴ夫婦は子供が子供らしく育ってくれている事が、何よりも喜ばしくて仕方がない。
「今日はもうすぐ日も暮れますから、よかったら空き教室を使って泊まって下さい。構いませんよね、ユメ先輩?」
「ホテルじゃないから立派な物ではないけど、シャワーやマットレスはあるから持ってくるね!」
「あ、私も手伝います!ユメお姉さん!」
「メグリだけだと大変だから、私も行くよユメ姉」
「なら、姉妹全員で行こう。行ってきます、父さん」
「うん、行ってらっしゃい」
こうして学校にお泊まりというイベントに更にテンションが上がり、子供達を寝かしつけるのに苦労するソウゴ達であった。
~屋上~
絆一家と一緒に今日は学校に泊まることにしたユメとホシノは、屋上で二人きりで星を眺めていた。
「いやぁ~!それにしても、何時もなら警戒心MAXでいるホシノちゃんが、あんなに歓迎するなんて驚いたなぁ~!」
「…それは、ユメ先輩を助けてもらいましたし。それに、初めてと言っていいくらいに、学校が賑やかで嬉しくなってしまって…。もっとこの時間が続いて欲しいと、柄にもなく思ってしまったんです」
「わかるわかるっ!私も同じ気持ちだったもんっ!生徒が一杯いた頃はこんな風に、学校中に笑い声が溢れてたんだろうなぁ~って考えたら、このままお別れはとっても寂しいなって思っちゃっててさ~」
「はい…。それと不思議なんですが、私はあの時あの子達に被って別の子達が生徒会室で笑っている光景が見えたんです。それが、幻に見えなくて胸が苦しくなって…。余計に惜しく感じたんです」
「そっか…。うん。なら、それはきっと未来のアビドスの姿だったんだよ。きっとアビドスは未来のず~っと先まで続いて行くよって、ホシノちゃんに教えてくれたんだよ♪」
「教えるって…誰がです?」
「それは~……分かんないっ♪」
「はぁ~…。ユメ先輩らしいです…。……先輩」
「ん~?なーに?ホシノちゃん?」
「ごめんなさい…。」
何の脈略もなく突然頭を下げて謝るホシノに、ユメは慌てふためく。
「え?え?なんで謝るのホシノちゃん…!?」
「…私はユメ先輩の語る言葉に、夢ばかり語る先輩に頭に来て、先輩がいなくなったあの日に酷い言葉を浴びせました」
「ホシノちゃん…。」
「次の日、何時も通りユメ先輩が登校してきたら謝ろうと思っていました。……けど、ユメ先輩は帰ってこなかった。私のせいだって自分を責めました。そして先輩を探してあちこち走り回って、砂漠で先輩の盾だけを見付けた時、絶望と恐怖に支配されました」
「もういい…。もういいよホシノちゃん…!私はちゃんと帰ってきたから…!だからーー」
「駄目なんですっ!!私は、ユメ先輩を傷付けたっ!!今回はソウゴさん達が偶々助けてくれたけど、また同じことが起きたら?その時は本当に最悪の別れ方をしてしまうかもしれない…!!」
「……」
「ユメ先輩は優しいから、私を許してくれるのかもしれませんが、私は私を許せない…。…だから私は決めました」
「?」
「私はもう、希望を捨てません。未来に夢を見ることを諦めません。ユメ先輩の夢を私も追いかけ続けます。アビドスの未来へバトンを繋ぎ続けます。そしてそれが叶った時……その時は、私は私を許してみようと思います」
そう告げたホシノの顔を見詰めて、ユメはしょうがないなぁ~ホシノちゃんは……と呆れた顔になりホシノを抱き締める。
「わぷっ!?ユメ先輩…?」
「ホシノちゃんは難しく考えすぎですっ!メグリちゃん達みたいに、もっと自分の心に素直になって良いんだよ?」
「心に素直に…。」
「私が居なくなっちゃうかもって、恐かったんだよね?ごめんねホシノちゃん…。不安にさせちゃって…。私もちゃんとホシノちゃんにお話しして出掛ければよかったんだよね…。私も約束するね?もう、ホシノちゃんの前から勝手に居なくならない。だから、ホシノちゃんももっと自分に優しくなって欲しいなぁ…。」
「……本当に、もう黙って居なくならないですか?」
「うん。約束するよ。ホシノちゃんとの出会いは私にとって、奇跡のような出会いだったんだ。だから、私はそんなホシノちゃんの最後の希望になりたい…。ううん。なるんだ!だから、一緒に隣で歩いてくれる?」
「ユメ先輩が居てくれるなら、私は大丈夫です。…はい、ユメ先輩の隣で一緒に未来へ歩いて行きます」
「じゃあ、約束!私達は二人で一人っ!どんな時でも希望を捨てずに未来を掴むっ!…よしっ!そうと決めたら今日は一緒のお布団で寝ようね?ホシノちゃん!」
「うへっ!?一緒に寝っ…!?う、うへぇ~!?」
まだまだ未来は見えなくて、どっちに進めばいいのか分からない。
だけど、二人ならきっと叶えられると信じて進む事を決めたアビドスに巻き起こった新しい風を夜空の星の輝きが、優しく見守っていた。
それはそれとして、ユメに正面から抱き枕にされたホシノは自分の顔を覆う柔らかな感触に、だらしない顔で酸欠にされ夢の世界に旅立った。
目覚めは最高だった。
次回、ソウゴ店を持つ。
予告どおりにいくかは作者次第!