最高最善を目指して   作:秋月 ヒカリ

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 続きです。どうぞ!


アビドスでの出会い(下)

 ~アイ、マイ、ミイの場合~

 

 

 「ありがとうございました~!…ふぅ。やっと一息つけそう…。」

 

 「アイ~!店長が、今日は忙しかったから早めにシフト抜けて良いって~!」

 

 「本当?う~ん、ならミイも誘って前に話してたカフェに行ってみない?」

 

 「お!いいね~♪じゃ、ミイにも声かけてくるね~!」

 

 「は~い」

 

 

 私は店長のソウゴさんに、早上がりのお礼と出かける旨を伝え、自室に向かう。

 

 少し前までは考えられない境遇に今日も感謝しつつ、今から向かうカフェでは何を頼もうか思考を割く。

 

 不意に壁に掛けてある現在通っている学校、アビドスの制服が目の端に写り込む。

 

 

 「…毎日充実しててつい忘れそうになるけど、ほんの少し前までは三人共路頭に迷ってたんだよね…。」

 

 

 制服を撫でながら、あの日の自分達を思い返す。

 あの自暴自棄になっていた頃を…。

 

 

 「…ねぇ、本当にやるの?」

 

 「…仕方ないじゃんっ!家もない、お金もない、頼れるものはなんにもないんだよ!?…これしかないんだよ…!」

 

 「どうせ、私達をわざわざ助けてくれる人なんて居ない。生きてくためには、もう落ちるとこまで堕ちなきゃやっていけない」

 

 「……ごめん。そうだよね、そうだったよね。マイ、ミイ、やるよ…!」

 

 「「うん」」

 

 

 そこからは、他の不良に混じって例の依頼に参加し惨敗。しかも、ヴァルキューレに連行までされた。

 今回が初犯だったこともあって、割りと直ぐに釈放されたけど……結局は振り出しに戻っただけ。

 

 今度こそ精神的にも追い込まれた私達は、また同じ過ちを犯そうかと話をしていた時……あの人に出会ったんだ。

 

 

 「…あれ?君達、この間の…?」

 

 「っ!?あ、ど、どうも…。」

 

 「…私達に何か用?」

 

 「ちょ、ちょっとマイ…!」

 

 「ああいや、三人共思い詰めたような顔でいたから、どうかしたのかなって思って…。」

 

 「貴方には関係ない。どっか行って…!」

 

 「ミイっ!…ごめんなさい!私達、もう行きますので…!」

 

 

 そう言って離れようとしたけど、あの人…ソウゴさんは私達を引き留めて話を聞いてきた。

 

 

 「…子供がそんなに思い詰めた顔してるのに、無視は出来ないって。良かったら、力になれるかもしれないしさ?話を聞かせてよ」

 

 「…実は――」

 

 

 マイとミイからは止められたが、私は藁にも縋る想いで現状を話した。……本当は犯罪なんて恐くてやりたくなかったから、三人で引き返せないところまで行きたくなかったから…。

 

 

 「そっか、大変だったね…。よしっ!三人共、ウチで雇うよ!」

 

 「「「……へ?」」」

 

 「条件は、住み込みでウチの店でバイトとして働いてもらう。三食おやつ付きで、家賃は無し!その代わり、仕事は全力全開で真面目に働くこと!その他は要相談で!…どうかな?」

 

 「どうって、どうして…?そんなのあたしらに都合が良いだけじゃん…。おじさんに得なんて…。」

 

 「いや~…。実は最近、店を開いたばかりでさ?人手が足りないんだよ…。それに自宅も兼ねてるんだけど、部屋が余ってて勿体なくて…。だから、おじさんを助けると思ってお願いっ!」

 

 

 おどけて見せるソウゴさんに私達は頷き合い、この人を信じてみる事にした。

 

 

 「「「宜しくお願いしますっ!!」」」

 

 「こちらこそ、宜しくね!」

 

 

 それから、久し振りに感じた安心に緊張の糸が切れ、三人で抱き合って泣いてしまった。

 それを見てソウゴさんは、あたふたしていたけれど。

 

 そこからは、あれよあれよと絆一家に絆されて、気が付いたら学校にまで通わせてもらっている。

 

 

 「…いつか必ず、恩返ししますからね。皆さん」

 

 「お~い、アイ~?準備出来た~?」

 

 「出来たよ~!今行く~!」

 

 

 返事を返し出ていった後の壁には、コルクボードが架かっており、そこには何れも笑顔の写真が幾つも飾ってあった。

 

 

_______________________

 

 

 ~黒服の場合~

 

 

 「クク…。まさか私が子供の言葉に傷付く日が来るとは…。少し前の私に聞かせても絶対に信じないでしょうね…?」

 

 

 切っ掛けは間違いなくあの日、ソウゴさんと対話してからでしょう。あの日、私の中で明確に変化があった。

 

 別段特別な事ではない。ただ、彼の言う子供と向き合う事を実践してみようと思っただけだ。

 

 

 「そして、彼の元へ通ううちにいつの間にやら絆されていたと……全くもって悪い大人らしくありませんね」

 

 

 まぁ、だからと言って今更子供を犠牲に何かを成そうとは思いませんが。

 あの店で働く子供や彼の家族と接して言葉を交わす内に、彼の言う子供の可能性を私も確かに幻視した。

 

 ……ククっ!これは、悪い大人の看板を降ろす時かもしれませんね?

 

 

 『よぉ、黒服。元気にしてたか~?』

 

 「……ブラッドスタークですか。貴方が私に会いに来るとは、随分と珍しい事もあるものです」

 

 『なんだよ~?そう邪険にするなって~!……ところでお前さん、最近調子はどうだ?生徒の神秘に恐怖を植え付けるだったか?』

 

 「…ええ、お陰様でそれなりに研究は進んでいますよ?ご心配なく。用件は世間話をする事ですか?」

 

 『いや?クジゴジ堂だったか?面白そうな所だよなぁ~?俺も行ってみーー』

 

 「彼等に手を出すつもりなら私は貴方の敵になりますよ」

 

 『おいおい、そんなに恐い顔するなよ…。誰もお前のテリトリーに手なんか出さねぇよ。お互いに不干渉……それが俺達、ゲマトリアだろう?』

 

 「…申し訳ありませんが、所用を思い出したのでこれで失礼します」

 

 『お~う!俺もこの辺で失礼するわ。…今日は会えて楽しかったぜ?んじゃぁ…Ciao!』

 

 

 ブラッドスタークが手に持った銃の様な物のトリガーを引くと、煙が噴出しブラッドスタークの身を包む。

 煙が晴れたそこにはもう、誰も居なかった。

 

 

 「……本当に絆されたものです。彼に対して明確に敵意を向けるとは…。これは私も覚悟を決める時かもしれませんね…?」

 

 

 呟き歩き去る黒服の背中を、赤い蛇のような影が嗤いながら見つめていた。




 声のお仕事が得意そうな人がキヴォトスに本格的に参戦!!
 良い感じに掻き回してくれそうですね!
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