先輩から後輩へ大切な事を受け継いでもらう場でもあるのかなって思い、本文の様になりました。
では、どうぞ!
~アビドス高等学校 卒業式~
「これより、アビドス高等学校卒業式を始めます。では始めに――――」
壇上では、今日という日のためだけにソウゴさんが司会を務めてくれている。
他にも、絆一家の方々が写真撮影や何やらと手伝ってくれている。
……私一人の卒業式のために、沢山の人が快く協力してくれている。その事実だけでも、私の視界は涙でボヤけてくる。
元々は二人だけの学校生活だった。それが、気が付いたら大勢の人達に囲まれて今日という日を迎えられた。
嬉しい…今すぐこの胸の暖かな想いのままに、声を上げて泣き出したくなる。
けど、まだ駄目。先輩として、最後の務めを果たすまでは我慢するんだ。
「卒業生代表、梔子 ユメ!」
「はいっ!」
名前を呼ばれ、壇上へ上がる。一礼し、マイクへ向かうと保護者席に座る絆一家にノノミちゃん、在校生席に座る後輩達の姿が見える。
…もう…。ホシノちゃんったら、泣くのを我慢してるのかな?可愛いお顔が力入れすぎて、恐くなっちゃってるよ?
アイちゃん?過ごした時間は短いのに、そんなに泣いてくれるんだね…。声を我慢してるのは偉いけど、そんなに泣いて後でお目眼が腫れても知らないぞ?
マイちゃんも……あ~あ…。そんなに泣いて~…バッチリ決めてるメイクが落ちちゃってるよ~?でも、そっか。そんなの気にならないくらい、泣いてくれるんだね…。
ミイちゃんは……あ、あれ?大丈夫?二人より凄い勢いで涙流してるけど…?
あ、ミイちゃんに釣られてメグリちゃんまで泣いちゃった…。それに釣られてシロコちゃん達まで…。
慕われてるって自覚はあったけど、こんなに想ってもらえてたんだなぁ…。
……卒業、したく、ないなぁ…。もっと皆と色んな事やってみたかったなぁ…。
……。うん。卒業するのに、送り出してもらうのに、後悔なんてしちゃ駄目だよね。
今日は私の卒業と、後輩へバトンを渡す日なんだから…!
「……皆さん、本日はお忙しい中アビドス高等学校卒業式へお越しいただき、ありがとうございます。」
私は軽く会釈し、挨拶を続ける。
「私、梔子 ユメは本日を持ちましてアビドス高等学校を卒業致します。……えへへ、硬い挨拶は私には難しいや。ここからは、在校生の皆さんへ私の想いを伝えて、卒業生の挨拶に代えさせてもらいます…!」
席からは、さっきより和やかな雰囲気が感じられる。
「……私は、アビドスが大好きです。そこに暮らす人の営みが好きです。そして、へっぽこな私の事を“先輩”と呼んで慕ってくれる後輩達の事が心の底から……大好きです!」
泣いていた皆の顔に少しだけ笑顔が戻る。
「後輩の皆さん……アビドスは好きですか?夢はありますか?やってみたいこと、成りたい自分はいますか?」
落ち着いたのか、会場の皆は真剣な表情で私の言葉を聞いている。
「私は、卒業をする今日という日に改めて感じている事があります。……貴方達と出会えて、経験してきた事は本当に奇跡だったんだって。当たり前じゃない……小さな奇跡が積み重なって、今があるんだって」
思い出される、なんて事のない日常の記憶に目頭が熱くなるが、奥歯をぐっと噛み締め堪える。
「……貴方達はきっとこれからも、沢山の出会いと経験を積む事でしょう…。でも、その一つ一つを当たり前だと思わないで?本当は当たり前なんてものは、この世に無いんだよ。……あはは…。なんだかお説教くさくなっちゃったね?」
私の拙い言葉を聞いて、それを笑う人は誰も居ない。皆が真剣な表情で聞き続けてくれている。
「……私はいつの間にか、貴方達から沢山の思い出を受け取りました。貴方達のお陰で私は自分の夢に向かって飛び立つ事が出来ます。……だから、私から大切な貴方達へこの言葉を先輩から後輩へのバトンとして、贈りたいと思います」
私は深呼吸して、心を落ち着かせて大きな声でハッキリと伝える。
「ーー皆さん、夢に向かって飛んで下さい。どんなに辛いことや苦しい事があっても、貴方達を支えてくれる人は必ず居ます。……その中には私も居ます。夢が無くても良い、その時は一緒に探してあげるから。だから皆さん……夢を諦めないで…!」
普段出さないような凛とした声で話したからだろうか、皆がぽかんとしている。……ちょっと面白いな♪
「以上です。……卒業生代表、梔子 ユメ」
結びの言葉を良い終えると同時に、会場が割れんばかりの拍手と後輩達の泣き声が響き渡る。
この後も式は順調に進み、無事に私のアビドス高等学校での最後の役目が終わった……。
「……なんて、今生の別れみたいな挨拶しといて。こんなに近くで働いてるんですから、何時でも会えるのに。…うへ…雰囲気って凄いですよね~…。」
「ひぃ~んっ!あんまり弄らないでよ~!ホシノちゃん!後でジワジワ来るんだからね!?そういう弄りは!」
そう、私は卒業後にクジゴジ堂で就職が決まっていて、アビドスというかキヴォトスからも出て行く予定は無かったのだ。
感極まっていたとはいえ、スッゴく恥ずかしい挨拶をしたものである。
「私は近くに貴女が居てくれて、嬉しいんで良いですけどね♪」
「あれ、何か言った?ホシノちゃん?」
「何でもないですよ~♪うっへへ~♪」
「え~、絶対何か隠してる~!教えてよホシノちゃ~ん!」
「知りませ~ん♪」
変わったようで変わらない、けどちょっぴり変わった日常の中で、子供達は今日も笑顔で過ごすのであった。
はい!という訳で、ユメ先輩の卒業式でした!
ユメ先輩なら、最後の最後まで後輩を想って言葉を伝えるだろうなって思い、こう書きました!
これからもユメ先輩は出番がありますので、宜しくお願いします!