では、どうぞ!
「…はぁ。いつになったら外に出られるんだ…。」
なんやかんやで、牢屋に入れられ二週間が経った。その間に、あの会長さんも足を運んではくれたがーー。
「すみません…。窮屈な思いをさせてしまっていますよね…。」
「まぁ、はい…。けど、会長さんも日に一度はこうやって、話し相手になってくれてるし、食事も貰えてる。窮屈ではあっても、最悪ではないよ」
「…そう言ってもらえると、私も助かります」
「それに、毎日話してるお陰かバルバラとも少しだけ打ち解けたしね」
「聖女バルバラと…?」
「うん。最近では不審者からようやく、ソウゴって名前呼びしてもらえるようにはなったよ…。」
苦笑いをしながら、この二週間でのバルバラとのやり取りを思い出す…。…うん、本当に大変だった。
「…あの娘が、自分から貴方の名前を呼んだのですか?あぁ…天変地異の前触れでしょうか…?」
「…え?そんな大袈裟に考えないといけないほどなの…?」
「もうお分かりかもしれませんが、あの娘は生真面目でして…。貴方を普通の部屋でもてなすように伝えた時などーー」
『不審者を自由にさせる等、いくら会長の御言葉とはいえどもこのバルバラ、聞き入れることは出来ません!!もし、奴が貴女を傷付けたらどうします!?しかし、会長の顔を立て、拷問等の危害を加える行為は致しません』
『ではーー』
『しかし!牢屋にて拘束させていただきます!これを承諾頂けぬのなら、我が忠義を持って奴を処断し、貴女の命に背いた責としてこの首を断ちます!!!!』
『(白目)』
「などというやり取りがありました…。」
「生真面目ってより、極ってんじゃん…。」
「本当は、とても良い娘なんですよ?ただ、私への忠心とこの自治区での現状が相まって、少しだけ暴走しやすくなってるだけで…。」
「バーサーカーかよ。…ん?自治区での現状がって、今は何か大変なことでも起きてるの?」
「…他所からいらした方に話すのは、本来ならば有り得ないことですが、あの娘が心を開いた貴方にならば良いでしょう」
会長は、先程までの穏やかな雰囲気が成りを潜め、肌がヒリつく雰囲気を纏い直して口を開く。
「先ずは改めまして、自己紹介を…。私はこのユスティナ聖徒会を統べる生徒会長…。名を、『
「あ、あぁ、よろしく、マトイ…。」
(偶然か?秤っていえば確か、アリウスのあの娘と同じ…。)
「どうかされましたか?怪訝そうなお顔をされていますが…。」
「いや、大したことじゃないんだ!マトイの雰囲気が急に変わったから、少しだけ驚いてしまって…。」
「いけませんね…。ちょっと格好つけようと思うと、いつもこうなってしまって…。相手を萎縮させてしまい勝ちなんですよ…。」
「あ~…。それはまた、難儀な…。」
マトイの哀愁漂う表情を見ながら、まぁ名字が似ているくらいの事は前世でもあることだし、偶然か。と思い直し、話を続ける。
「ところで、話の続きを聴かせてもらっても?」
「こほんっ。えぇ、続けましょう。この自治区の現状、それは古くから続く学園間でのいざこざを解決すべく、一つの学園へと統合するべくユスティナ聖徒会を中心に動いている事に起因します」
「学園を統合…?」
「はい。この自治区は広く、多くの宗派に分かれた学園が存在します。そしてその数だけ、互いの宗派の違いによる衝突もまた、多くありました…。そういった争いを無くすために、我々ユスティナが先導し統合を促しているのです」
「そっか、マトイは偉いね」
「…へ?」
「だってそうだろ?マトイは幾つもの学園を、争いを無くすためにって願ってユスティナを引っ張ってる」
「いえ、ユスティナを率いるのは、生徒会長としての当然の役目なので…。褒められることではーー」
「それでも、マトイに着いていきたいって思わないと、誰も従わないし、誰も慕わないさ」
(初めてです。褒められたのは…。)
「マトイ?」
「…話を続けましょうか。学園を統合している最中、というところまでは話しましたね?」
「うん」
「現在、殆んどの学園が統合へと前向きな姿勢を見せてくれています。しかし、たった1校のみが統合を拒んでいるのです」
「なんでそんな、頑なに…」
「それも、自らの信ずる信仰に殉じている証拠です。今では賛成している学園も、大なり小なり似たようなことは有りましたしね」
そこまで話し、一呼吸置き再度話し始める。
「問題はここからです。その学園が抗議をするだけならば、そこまでの問題はありません。時間をかけ、話し合いにて解決できますからね」
「でも、そうじゃない…?」
「はい、かの学園は武力に訴えてきました。私もユスティナの生徒会長として、黙ってやられる訳にもいかないので、前線に立ち指揮を執ることも多いのです。そうするとやはり、狙われやすくもなるので、バルバラもいつも気を張っている状況なのです…。」
「だから出会った時には、かなり殺気立ってたんだな…。今はそうでもないけどさ」
「あの娘は役目に忠実なので、あまり素を出してくれませんからね。心根は優しく他者を想いやれ、寄り添うことができる良い娘なのです」
「そうなんだな、最初の印象が強くてイメージが出来ないけど…。」
「誤解されやすいだけで、話して仲良くなればよく分かりますよ」
そこまで話し、一つの疑問をマトイに投げ掛ける。
「ところで、さっきの抗議中の学園って何てとこなんだ?」
「そういえば、まだ教えていませんでしたね。…その学園の名は、『アリウス』」
「アリウス…。」
「もしかすると、ソウゴさんも出会う事があるかもしれませんので、覚えておいて下さい」
「あぁ、そうするよ」
「…失礼します、会長」
牢屋部屋の扉を開き、バルバラともう一人少し小柄な少女が入ってくる。
「あら、バルバラ?どうかしましたか?」
「はい、会長に話があり探していましたら、此方に来ていると聞いたので。…おい、ソウゴ。会長に粗相を働いていないだろうな?」
「なんでいつも喧嘩腰なんだよ…。してないっての…。」
「ふん、常に警戒心を忘れないようにしているだけだ」
「ところで、バルバラ?私に話しとは?」
「そうでした。話しとはこの娘の事でして。今まで私の側仕えをさせていたのですが、ソウゴの話を聞かせている内に興味を持ったらしく、彼の世話係りを任せようかと思いまして。その許可を頂きたく参りました」
「あら、貴女が身内以外に気を割くのは珍しいですね?」
「…からかわないで下さい。この二週間、ソウゴと話していてその…そこまで悪い人間ではないと判断しました。彼の部屋を用意する事を決めましたので、今後は客人としてもてなすため、私の信用できる者を側に置こうと考えただけです」
「マジで!俺、ここ出れるの!最っ高だな!」
「はぁ…話を聞いていたのか?解放はするが、要は監視付きで外に出すと言っているんだぞ?妙な真似をすれば、直ぐに処断するからな。分かったか?」
「しないって!俺を何だと思ってんだよ!」
「不審者」
「チクショウッ!!」
「あ、あの…。」
遠慮がちに、バルバラの連れてきた人が声を掛けてくる。
「ごめんごめん、君を置いて話し込みすぎたね」
「いえ、構いませんよ」
「そうだな、連れて来ておいて放置してすまなかったな。会長、彼女に自己紹介させても?」
「はい、どうぞ」
「では、紹介しよう。ほら、挨拶を」
「は、はい!」
促され、俺の前へ立ち頭を下げる。
「初めまして、ソウゴさん。これから、貴方の側付きになります。『
「こちらこそ、よろしく!」
これがこれから始まる物語りの本当のスタートだったーー。