「はひー、息苦しい。もう脱いでいいわよね?」
「のんびりしてらんないよー、急げ急げ。追手がすぐ来るだろうからー」
「それなら多分、大丈夫だよ!ウォズさんとワカモちゃんが足止めしてくれてるから!一息入れる余裕はあるよ!」
「あ!先生!」
流石に、先生が今回の件に関わっていると知られるのはマズイだろうということで、別途外部からアヤネと一緒に遠隔でサポートを行ってもらっていた。
先生と合流し、一息入れながら移動していると覆面を被ったままのヨワコへセリカが問いかける。
「あの、ヨワコ先輩?覆面脱がないの?邪魔じゃない?」
「天職を感じちゃったって言うか、もう魂の一部みたいなものになっちゃって、脱ぎたくないんじゃなーい?」
「ヨワコ先輩はアビドスに来て正解だわ・・・。他の学校だったら、ものすごい事をやらかしてたかも・・・」
セリカのセリフに、「そ、そうかな・・・」と気まずそうに覆面を脱ぐヨワコ。それを見て、いまだに自分も覆面を被っていることを思い出したアヤネが、恥ずかしげにいそいそと脱ぐ。
『封鎖地点を突破。この先は安全です!』
「やった!大成功!これで後は、お姉ちゃんとウォズさんが戻れば完璧ね!」
『それにしても、本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて・・・ふう・・・・・・』
「あ、そうだ。ヨワコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」
「う、うん。バッグの中に・・・」
どこか気まずげなヨワコの反応に、ホシノは首を傾げながらバッグの中身を確認する。すると・・・
「・・・へ?な、なんじゃこりゃぁ!?カバンの中に、札束が!?」
「うえええええっ!?ヨワコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」
「ち、違う・・・目当ての書類はちゃんとある。これは、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで・・・!」
「どれどれ・・・うへ、軽く1億はあるね。本当に5分で1億稼いじゃったよ・・・」
「・・・そのお金、ちゃんと返すわよね?」
「およ?セリカちゃんどうしたの?てっきりお姉さん、「そのお金で一気に借金返済だー!」くらい言っちゃうものかと・・・。まあ、私的にはそういう判断してくれて嬉しいけどさ」
「ぐっ!・・・まあ、昔の私なら、実際言ってたかもだからいいけどさ・・・。その、今の私の周りには頼りになる大人や、先輩、お姉ちゃんに、友達もいるし?こういう”汚いお金”じゃなくて、自分達でちゃんと真っ当に手に入れたお金で、返済しなくちゃ意味ないかなって・・・。それだけだから!」
「あ~ん!セリカちゃんっ!立派ですっ!お姉ちゃんは、今、猛烈に感動していますぅ~っ!」
「わあっ!?お姉ちゃんっ!?いつの間に、っていうか嬉しいけど恥ずかしいから頭撫でないで!抱き締めないでぇ~!」
セリカの言葉に、いつの間にか合流していたワカモは号泣しながら抱きつき構い倒す。
ホシノも鼻を小さくすすりながら、「へへっ・・・!いつの間にか立派になっちゃって・・・」と呟いている。
・・・過保護なアビドスは今日も元気です。
「ん我が魔王っ!たった今、戻りました。任された仕事は確りとこなしてきたので、我が魔王のご褒美が欲しいです・・・!具合的にはアスナロ抱きで、耳元に甘い囁きなんかが欲しいなー!って!」
「本家ウォズとは掛け離れすぎだろ・・・この欲望の塊め。今はこれで我慢なさい」
「ソウゴさんの撫で撫でっ!?・・・ミ”ッ!」
「ウォズさんの霊圧が・・・消えた・・・!?」
「先生ホントにノリがいいよね・・・。と、それじゃこのお金は適当に処分するt『大変です!何者かがそちらに接近しています!!』・・・うへ~、のんびりし過ぎたかな?」
『これは・・・追手ではないみたです。敵意はない様子です。あれは・・・便利屋のアルさん!?』
アヤネの報告に、みんな各々の装備を頭から被り顔を隠す。ちなみに先生は、ウォズがマフラーでくるんで一緒に転移して姿を隠している。
「はあ、ふう・・・ま、待って!!」
「っ!!」
「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから・・・」
(なんでアイツが・・・!)
(撃退する?)
(戦う気が無いって娘を射つのは、流石にね~・・・)
(お知り合いですか?)
(ま、そこそこ?)
「あ、あの・・・た、大したことじゃないんだけど!銀行の襲撃、見せてもらったわ・・・。あの手際、稀に見るアウトローっぷりだったわ」
まさか態々追いかけてきて、銀行強盗の手際を褒められるとは思わず、固まる。
「正直、すごく衝撃的で、このご時世にあんな大胆なことができるなんて・・・感動的というか。わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られず、自由にこのキヴォトスの人々の涙を拭う・・・そんなアウトローになりたいから!」
(一体、何の話し?)
(しー!よく分からないけど、本人的には感動の場面らしいから!)
「そ、そういうことだから・・・な、名前を教えて!!」
「名前・・・!?」
「その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょ?あなた達の雄姿を心に深く刻んでおきたいの!!」
(あはは・・・なんだか盛大に勘違いされているような・・・?)
「・・・はいっ!おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」
(ノノミ先輩!?)
「私たちは、人呼んで・・・覆面水着団!」
「覆面水着団!?や、ヤバい・・・!!超クール!!カッコ良すぎるわ!!」
(父さんあの娘、残念な娘なの?)
(アズサ、そういうことは思ってても口に出しちゃいけません)
「そうっ!私たちは本来、スクール水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー」
(なんか妙な設定を付け足してんだけど!?)
(ホシノさん、楽しんでますね)
「そうなんです!普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!私はクリスティーナだお♧」
「「だ、だお♧」!?キャラも立ってる・・・!?」
「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!!」
「な、なんですってー!!」
段々とアルで遊び始めたアビドスの面々。それを離れて見つめる便利屋のメンバーは、呆れていた。
「何してるの、あの子たち・・・」
「わー、アルちゃんドはまりしちゃってんじゃん。特撮もののイベントに連れていってもらった子供みたいな顔してる!」
どうも例の認識できないヤツと、新たに合流している狐面の女にはこちらの存在がバレているようだが、特に仕掛けてくる気配がないのでこのまま見守る。
(ねえ、もういいでしょ?適当に逃げようよ!)
「(そうですね)それじゃあこの辺で。アディオス~☆」
「行こう!夕日に向かって!」
「あはは・・・夕日、まだですけど・・・・・・」
ー ピューンッ!
全速力で駆けていく覆面水着団。その背中を尊敬の眼差しで見送ったアルは意気込む。
「よし!我が道の如く魔境を・・・その言葉、魂に刻むわ!私も頑張る!」
(事実を伝えるべきなんだろうけど・・・いつ言おうか?)
(面白いからしばらく放置で)
「あ、あの・・・!このバッグ、どうしましょう?あの人たちが置いて行ったみたいなんですけど・・・」
「ん?これはまさか、覆面水着団が私たちのために・・・?」
「いや、それはないわ・・・ただの忘れ物じゃない?」
「結構重いよ?何が入ってるんだろ」
ムツキが中身を確認するために開けてみると、その中身を見て硬直する便利屋一同。
その頃、学校へ戻ったアビドス組のノノミは「ハッ!」とあることを思い出し、みんなに告げる。
「現金のバッグ・・・置いてきちゃいました」
「えーっ!?」
「うへ~いいんじゃない?どうせ適当に処理するつもりだったんだし。気にしなーい」
「うん。誰かに拾われるでしょ、きっと」
「ですよね☆お金に困ってる人が拾ってくれるといいですね」
「あはは・・・良いことしたって思いましょう。お腹を空かせた人が、あのお金でお腹いっぱいになれると思えば・・・」
「ん。結果的に、足のつくような証拠品を手元に残さなくて済んだと喜ぼう」
というやり取りをアビドス組がしているなか、便利屋組は・・・
「ええええーっ!?」
「うわわわわーっ!?」
「これって・・・」
「・・・?もしかしてこれで、もう食事抜かなくていいんですか?」
バッグの中身の見たことの無いお金に絶叫していた。
~便利屋オフィス~
「なああああんですってぇえええっ!?覆面水着団がアビドスだったですってええ!!??」
陸八魔 アルはその日最高の叫び声を上げた。
~アビドス生徒会室~
居残り組と合流し、生徒会室にて全員で書類の確認を行ったところ、出てきた事実に全員沈んだ表情で沈黙が支配していた。
そんな中、セリカが口火を切る。
「なによこれっ!一体、どういうことなのっ!?」
「セリカちゃん・・・」
「・・・この書類を見る限り、アビドスのみんなで返していたお金が、闇銀行を経由して犯罪組織に流れていたという事になるみたい。父さん、これって・・・」
「ああ、それにこの項目・・・「任務補助金」とある。その行き先はカタカタヘルメット団・・・。あの子たちが簡単に口を割れないはずだ、推測するに裏で糸を引いているのは・・・・・・」
「カイザーローンって、ことだよね・・・」
アズサの問いに、ソウゴと先生がほぼ確信をもって推測を述べる。
それに混乱して、堪らず声を上げるノノミ。
「ど、どういうことでしょう!?理解できません!学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに・・・どうしてそのようなことを!?」
「ノノミちゃんの言う通りだよ。・・・でも、もしかしたらになるけどさ?奴らの狙いが、お金じゃなくて別の何かだとしたら?」
「別の・・・?それは一体・・・・・・」
「それについては、私から話そうかな」
「あっ!ユメ先輩だっ!」
「えへへ~、みんな久しぶりだね~♪元気にしてた?」
突然のユメの登場に、みんな一瞬戸惑ったが直ぐにユメを取り囲んで笑顔で話し始める。
さっきまで暗かった生徒会室が嘘のように明るくなった。これも彼女の人柄だろう。
「えっと、みんなお話し中にごめん。あなたは?」
「あ!先生とは、初めましてですよね!私は、前生徒会長の梔子 ユメって言います!ちなみに今は、仮面ライダーオーズとして活動してます!」
『いまだに抜けてるとこがあって、フォローが大変だがな』
「ひぃんっ!アンクくん、ヒドイよ~!」
「アンクもおかえり。ユメ先輩のお世話、ありがとね?」
『おう、ホシノ。ま、もう慣れた』
「ふ、二人とも私を何だと・・・」
ちょっとしたコントを挟みつつ先生との挨拶を済ませ、ユメは本題に入る。
「おほん!・・・実はこっちでも色々と調べてたんだけど、みんな何となく察しているように、この件にはカイザーコーポレーションが関わってるよ」
「やっぱり・・・!」
「でも、それだけじゃなくてね。最悪なことに、財団Xがカイザーのバックについてる」
『!!!!』
ユメの口から語られた、カイザーは予想できていたが、財団の名前に一同は驚きの顔を隠せない。
「最っ悪だ・・・。メモリの件があったから、その線も頭にはあったけど・・・まさか、本格的に手を組んでいるとは・・・・・・」
「そうなると、前にセリカちゃんと私が戦った連中も、それ絡みの可能性が高いですわね・・・」
「話を続けるね?奴らはアビドスの借金に関しては、あまり重要視していないみたい。その代わり、奴らはアビドスの土地を欲している」
「・・・そういうことですか。なぜ土地を欲しているのかは判りませんが、私たちを執拗に襲撃し、疲弊させていたのは借金を返済できなくするため。そうして学校を潰し、自治区を統治する権限そのものを自分達の手中に納めるのが目的だったと・・・」
『素晴らしいッ!流石の慧眼だよ、アヤネくんッ!!』
「はいっ!?」
アヤネが自身の考察を語り終えると同時に、生徒会室に響き渡る賛美の声。
それに反応し、アヤネは飛び上がって驚き、ユメ以外の全員が声を上げて驚いている。
ガラリッ!と、勢いよく扉が開け放たれ中へ入ってくる女性。スラリとした体型に、整った顔立ち。基本的に綺麗な娘の多いキヴォトスではあるが、それを含めても誰もが振り替えるであろう容姿を持つその人は、生徒会室の中央に立つと挨拶を始める。
「アビドスの諸君!壮健そうで何よりだ!そして、噂の「シャーレ」の先生にワカモくん!・・・初めまして!私はアビドスの支援企業にして、鴻上ファウンデーションの会長!・・・「
原作でお馴染みの人物が、なぜか年若い女性の姿(キャリアウーマンの姿)で満面の笑顔を携えてそう挨拶してくるのだった。
補足:鴻上 コウセイ(26) 女性
鴻上ファウンデーションの会長。
原作と同じ振る舞いや言動をするが、厳密には原作本人ではなく、「鴻上光生」の記憶と記録を引き継いだ純キヴォトス人。
別世界線よりコピーされ召喚されたカザリ達に近い。もちろん、女神が関わっていますとも。
本人は自分の役割に不満はなく、むしろ普通の人生では味わえないであろう場所に立ててノリノリである。
アビドスのみんなにとっては、支援してくれるお偉いさんというだけではない。むしろ、色々な相談にのってくれたり、自分達と同じ目線で話をしてくれたりする良きお姉さんのような存在として慕っている。