めぐみんが異世界に行って戻って来る話   作:猿野ただすみ

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とりあえず3話完結、「俺達の戦いはこれからだ!」エンドです。
続きを書くかは、作者のやる気次第です。


紅い瞳の漂流者(キャストアウェイ)

≪めぐみんside≫

「『エクスプロージョン』ッ!!!」

 

私の人生初の爆裂魔法が、群がる悪魔達を一掃した。こうして、邪神の封印が解かれた事による紅魔の里への悪魔襲来事件は終息し、封印解除した真犯人(こめっこ)についても、真実は究明されること無く済んだ。

私が世間一般でネタ魔法と呼ばれている爆裂魔法を修得した事を知るのは、現場に居合わせたこめっことゆんゆん、そして魔法学園(レッド・プリズン)の卒業条件、魔法をひとつ修得する事、という理由で担任のぷっちんには報せてある。爆裂魔法を修得した私がどういう目で見られるのかはわかっているので、他の里の者達には秘密だ。

それはともかく、爆裂魔法を覚えた私、そしてその直前に中級魔法を修得したゆんゆんは、揃って学園を卒業した。ゆんゆんは感涙しているが、体のいい厄介払いの何に感動しているのかがわからない。

私はペット(?)のクロ(仮)に「ちょむすけ」という立派な名前を付け使い魔とし、新たな一歩を踏み出した。

……そう、思っていたのだけど。

 

 

 

 

 

里を出るにも旅費(エリス)がいる。その旅費稼ぎのアルバイトは、ことごとくクビになった。どうやら私の実力に、周りが恐れをなしたらしい。……いや、わかってる。わかってはいるが、少しの間現実逃避をさせて欲しい。

そして私はその夜、鬱憤晴らしのために家を出て。

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

爆裂魔法をぶっ放した。魔力切れで動けない私を運ぶため、毎回こめっこも連れて来ている。今回もいつもどおり里の者達がやって来る前に、こめっこによってこの場から立ち去っていることだろう。

そのはずだった。

 

《ああ、ようやく見つけた…》

 

突然、私の頭の中に直接響いた女性の声。

 

「何者ですか!?」

「ねーちゃん?」

 

こめっこには聞こえなかったのだろう、不思議そうな表情で私を見る。

 

《フフ…、遥か未来で私を滅ぼす、頭のおかしな爆裂魔法使い》

 

当然自己紹介などではなく、私のことを言っているのだろう。しかし、「頭のおかしな」とは何事か。

 

《私には、過去の人間を直接殺すことは出来ない。けれど私の能力なら、貴女をこの世界から追放することが出来る》

「この世界から、追放…?」

 

何を、言っているのだ。

 

《……我は願う。彼の者の刻と世界の繋がりを棄却し、何処(いずこ)かの世界と刻へと導かんことを!》

 

短い呪文の詠唱。しかしそれだけでも、彼女がやろうとしていることがわかってしまった。つまりは私をこの世界から追い出し、別の世界へと跳ばしてしまおうということだ。

……って、マズい! 魔力切れで動けない私は、逃げる事すら出来ない! いや、逃げてどうにかなる保証はないが、悪あがきする事さえ出来ないのだ。

 

《『アナザー・ディメンション』!》

 

魔法発動の言葉と共に、周りの景色がが歪む。

 

「ねーちゃん!?」

 

驚いたこめっこが私に触れようと手を伸ばすが、その手は私の体をすり抜ける。そうだ。歪んでいるのは周りの景色じゃない。私と、私を取り巻く空間の方だ。

 

「こめっこ…」

 

私はその名を呼び、そこでプツリと意識が途切れた。

 

 

 

 

 

次に気づいたとき、私は見知らぬ街の道の中央にいた。そこは変わった建物が建ち並び、つなぎ目のない石で舗装された道が延びている、まさに異世界と呼べるような場所だった。

いつまでもこんな場所にはいられないと、すくりと立ち上がり違和感を感じ、自身の手を見てその正体に気づく。

私の体は縮んでいた。衣服もだぶだぶである。私は慌てて冒険者カードを取り出し、自分のステータスを確認する。そこには本来13歳と記されているべき所が5歳となっていた。

……いやいやいや。いくら何でもあんまりだろう。確かに謎の女性は「刻の破却」を行っていたけど、どうして年齢が逆行しなければならないのだ。まあ、思考や知識が保全されたままなので、まだよかったけど。……って、ちょっと待て。

私は再び冒険者カードに目を通し。……よかった。爆裂魔法が初期化されることはなかったようだ。

気を取り直し、私は移動を始める。とにかく現状を打破しないと始まらない。そして。

 

『お嬢ちゃん、どうしたの?』

 

同じ服装の二人の男に、知らない言語で話しかけられた。

 

 

 

 

 

どうやらこの男達は、この世界の警察組織だったようだ。私は警察署と思われるところに連れて来られる。つまりは保護されたのだ。しかし困ったことに、私達は言葉も文字も通じない。

……いや、通じはしないが文字は見たことがある。それは紅魔の里にある、謎施設に書かれた文字だった。そういえばその施設も、こちらの建物に通じるものがある気がする。もしかしたら施設を作った人物は、こちらの世界の人間だったのだろうか?

そんな事を考えていると、私を保護した内の、やや歳が上と思われる方が声をかけてきた。

 

『お嬢ちゃん、お名前は?』

 

しかし、相変わらず何を言ってるのかがわからない。するとその男性は。

 

『名前』

 

そう言った後自身を指さして。

 

『エイイチ。サトウ・エイイチ』

 

そう言ってから私を指差す。なるほど、名前を聞かれたのか。ならば最高の名乗りをあげて…と思ったものの、言葉が通じない中でその様なことをすれば、正しく名前を伝えられないということに気がついた。

 

「……めぐみん」

 

私は渋々、名前のみを告げる。

 

『めぐみんちゃん、か。変わった名前だね』

 

何を言ったかわからないが、言葉のニュアンスとその表情から、名前を馬鹿にされたことは何となくわかる。

 

「私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか」

『ああ、ごめんごめん』

 

同じく、私の言葉のニュアンスと表情から、私が怒っていることに気がついたのだろう、彼が宥めているのがわかったので、私は大人しく引き下がることにした。……紅魔族は売られたケンカは買う種族だが、さすがに言葉の通じぬ相手とケンカしても何の実りもない。

 

『さて、次は生年月日か。なかなか骨が折れるな』

 

男性は憂い顔で何か言っている。順当に考えれば次は年齢と誕生日を聞かれるはずだが、言語体系が違うために、どうやって情報の交換をするかで頭を悩ませているのだろう。普段ならこちらが考えてあげてもいいのだが、今の私は5歳児の体だ。子供は子供らしく、彼が妙案を思いつくまで待つことにした。

……結局は、備品の楊枝の本数で伝えることになった。まあ、間違いは少ないので、それなりのアイデアだとは言っておく。

 

 

 

 

 

その後、私は子供を預かる施設へと引き取られていった。当然こちらでも言葉は通じず、意思の疎通は侭ならない。だから私は勉強をした。言葉も文字も、それはもう、寝るのも惜しんでがむしゃらに。こちらでは魔法や火を使わずに明かりを灯せるので、そういった意味でも助かった。

そして1年経とうという頃には。

 

『めぐみん、どうしてケンカをしたの?』

 

私は職員のお姉さんに問い詰められていた。少し離れたところでは、他の職員の前で大泣きしている年上の男児がいる。

 

『私のことをチビと言ったので、懲らしめてやりました』

 

私は悪びれることもなく言ってのける。それを聞いたお姉さん…佐藤さだ子さんは溜息を吐く。……彼女は私を保護した警察官、佐藤栄一さんの妹で、その伝手でこの施設へと送られたらしい、というのは最近知った事である。

因みに佐藤はこの国では一番多い姓らしい。もしかしたら、向こうで伝説になっている勇者サトウもこの世界の人間だったのかも知れない。しかし、謎施設を作った人物といい勇者サトウといい、この世界と関わりのありそうな者が向こうの世界にいるのはどういう事だろうか?

 

『めぐみん』

 

おっと、今はそんな事を考えている場合じゃなかった。

 

『たとえひどいことを言われたからといって、暴力をふるうのはいけないことよ』

『紅魔族は売られたケンカは買う種族なのです』

 

私がすかさず言い返すと、さだ子さんは再び溜息を吐く。

 

『紅魔族というのはよくわからないけど、ここは日本よ。たとえあなたが住んでいたところでは当たり前の事だとしても、ここでは暴力をふるうことは、いけないことなの』

 

……むう。確かに住む場所によって、その常識は違ってくる。この世界ではバナナが川で採れることはなく、キャベツは空を飛ばず、サンマが畑で養殖されることはない。いや、ここで言う常識とは意味合いが違うけど、認識の違いという意味では同じことである。

 

『……めぐみん、あなたの年齢じゃ難しいと思うけど、この国には「郷に入りては郷に従え」って言葉があるわ。わかりやすく言うと、暮らしてる場所が変わったのなら、その場所のルールで暮らしなさい、っていう事よ』

『「郷に入りては郷に従え」…ですか』

『もちろん、全部その場所に合わせろって事じゃないわ。ルールを守った上で自分の暮らし方をするの。……って、これはさすがに難しいか』

 

さだ子さんはそう言うが、思考は見た目よりも上の私、しかも幼い頃から大人びていて、更に知力も高いのだ。言ってることは充分に理解できる。

紅魔の里では孤高を貫いていた私だが、せっかくの機会である。もう少し他人に寄り添う努力をしてみてもいいかも知れない。

 

『……わかりました』

 

私はそう言うと踵を返し、男児の許まで歩み寄り。

 

『先程は暴力をふるってしまい、申し訳ありませんでした』

 

謝罪の言葉を述べて、深々と頭を下げる。

 

『う…。ぼ、ぼくも、からかってゴメン…』

 

男児も素直に謝り、この問題は解決した。

 

『……めぐみんって、本当に6歳?』

 

懐疑的な目を向けるさだ子さんには、気づかなかったことにして。

 

 

 

 

 

それからは、積極的に他者と関わる様に振る舞う私。里でのアルバイト同様、最初は失敗だらけであったが、少しずつ他人との付き合い方も身についてきた。今の私のスキルなら、アルバイトをしてもそこまでひどい事にはならないだろう。

そんな私が、みんなには内緒で日課にしていることがある。それは魔法の鍛錬だ。

この世界の常識では、魔法というものはあくまでも空想上のものである。しかし、それほど多くはないものの、大気中には確かにマナが存在している。ならば、魔法そのものの発動は可能なはずだ。

しかし爆裂魔法を発動させるにはマナの集まりが悪すぎ、それを抜きにしても今の私の魔力量ではどのみち、爆裂魔法を発動させることは出来ないだろう。

だからこそ私は今のこの時間を、マナの集束と収束、更にそれまでの時間の短縮、更に更に詠唱速度を上げるための早口の練習に当てることにしたのだ。これで上手くいけば、私が爆裂魔法を修得した年齢までにはこの世界でも扱えるだけの実力が身につくかもしれない。

私はそれを夢に見ながら、毎日を暮らしていくのだった。




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