仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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私はウルトラマンの防衛組織が頑張る話は大好きでして。チート級の敵を前にして、貧弱なな装備で戦いを挑む。そして時々自力で怪獣を倒したり、ウルトラマンをピンチから救ったりします。だからウルトラマンたちは、人間を大好きになって母星へ帰って行くのです。

艦娘たちが戦っている時、人間たちは何をしているでしょうか。きっと無力感と戦いながら、自分達にできることを必死にやっているでしょう。艦娘たちも、そんな人間を好きになってくれたらいいのになと思います。

あとトンブリのお迎え、滑り込みで間に合ったヾ(*´∀`*)ノ


第103話「F-2”支援”戦闘機 戦火の海を舞う」

●パラオ泊地 臨時飛行場

 

Starring:南部瞬大尉

 

 穴だらけのジェット戦闘機がふらふらと高度を落とすのを見て、誰もが思った。移動中に敵艦載機(タコヤキ)に待ち伏せされたに違いない。これはもう助からないぞ。

 着陸態勢をとる機体は明らかに左右にぶれていて、適切な着陸コースに乗っていない。少しの間違いや操作ミスで機体はつんのめってひっくり返る。そしてパイロットは下敷きになるか、想定を超える衝撃で頭蓋骨を割られるか。

 整備された飛行場で運用する国土防衛用の戦闘機を、南方のパラオに持ち込んだツケだ。

 それでも南部瞬大尉は、手近なジープに飛び乗り、差されたままの鍵をひねった。

 

「隊長! どうするつもりです!? 消防車は!?」

「そんなもん待ってられるか!」

 

 〔疾風〕飛行隊のパイロットたちも、それ以上聞かず、消火器を抱え這いあがるようにジープに乗り込む。文字通り焼け石に水だが、ただ見ているよりずっと建設的だ。

 

 数刻後。

 

 パイロットは五人がかりで操縦席から引っ張り出され、幸運にも無傷だった。とは言え一安心とは言えない。パラオに送られてきた三機目の支援戦闘機がお釈迦になり、到着早々お役御免となった。多分もう修理は出来ず、配備が始まった簡易生産型の部品取り用になろうだろう。

 

 しかしこんな些事(・・)で右往左往するような繊細さでは、激戦を生き残れない。飛行場の片づけを済ませ、パイロットたちはもう気分を切り替えていた。休憩時間に部下や整備班の下士官たちとお茶をしながら、嫌なことはすっぱり忘れることにする。先ほどのパイロットがお礼にやってきたので、手に入れたドライフルーツを勧めたのだが。

 

「自分は、何のために空を目指したんでしょうか?」

 

 ぼそりと彼は、そんな事を言う。ウィングマークが与えられたばかりの航空学生組だ。どうにも生真面目な性格のようだが、焦ることもないと思う。

 

「あの状況で機体を爆発させず持ち帰ったんだ。運にも技術にも恵まれてるよ。生き残っていれば見えてくるものもあるさ」

 

 空軍で五本の指に入るエースの賞賛は、戦闘機乗りなら自信になるだろう。そして南部は、おべっかを使ったつもりはない。極度に疲労した状況でもパフォーマンスを発揮できる。そんなパイロットは使える。彼に足りないのは経験と老獪さのみだ。しかしルーキーは、賞賛を喜ぶどころか首を垂れた。

 

「〔F-2〕じゃ、もう戦えません。自分たちはひたすら艦娘たちを支援するだけ。新参者の、しかも女の子に」

 

 人の悪いことに、その場にいた〔疾風〕乗りや整備員たちが大爆笑した。

 新参者の女の子――つまり艦娘たちに戦争を委ねるのは悔しい。南部たち軍人が抱いた共通の無念であり、そしてはしかのような一過性の”病気”だ。

 南部も彼を見て苦笑せざるを得ない。一条真矢少尉だけはわずかに口角をゆがめたが、すぐに皆をたしなめる。

 

「失礼です。彼は真面目に悩んでいるのですから」

 

 もっともなお小言を聞かされて、気まずい雰囲気の中、南部は口火を切る。

 

「俺は〔F-15J(イーグル)乗り(ドライバー)だったが、大戦機に乗り換える前はお前たち〔F-2〕乗りが羨ましかったがな」

 

 何人かがそうだそうだと頷いた。空自出身の〔イーグル〕や〔F-35(ライトニング)〕からの転向組だ。

 

「どういうことです?」

 

 どの戦闘機も、深海棲艦に通用しないのは同じだ。やつらと戦えるのは妖精の加護を受けた艦娘か、微弱ではあるが妖精の力を宿した大戦型の兵器のみである。

 

「まだ艦娘たちとは交流してないだろ? ちょっと泊地まで遊びに行くとするか」

「ジープを借りてきます」

 

 真矢が席を立つ。付き合いの長い彼女は、こういう時の南部を止めても無駄と知っている。

 

「え? 今からですか?」

「基地司令には話を付けておく。自信を回復するのは早い方がいいだろ」

 

 〔疾風〕乗りたちも整備兵たちも、これで解決と各々の仕事に散って行く。

 

「那珂ちゃんと桃ちゃんによろしくなぁー」

「誰かに優しくされても惚れるなよ? あの子たちは色々重たいんだから」

 

 からかいなのか軽口なのか。言いたいことを言って去って行く彼らを、新米パイロットはぽかんと口を開けて見つめた。

 

「じゃ、道中話そうか。支援(・・)戦闘機の活躍を」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

●半月後 丹賑島泊地 中央指令室

 

Starring:提督

 

俺は、通信機にかじりつくように前線の映像を見た。どうやら小破もいなくて済んだようだ。

スクリーンに映るのは、経度:136.7度 緯度:5.5度 通称パラオ戦線である。

 

『提督ー! 勝ったよー! もう夜戦ないの?』

 

 川内の報告は、ローマの英雄の「来た、見た、勝った」のごとき簡潔さで、それゆえ何が何だか分からない。

 

『とりあえず、詳しく』

 

 催促したら、済まなそうに神通が、補足を入れた。

 

『前衛艦隊は撃破しました。これより敵主力の背後に回り込み、退路を塞いでパラオ艦隊の攻撃を支援します』

 

 いや補足なのか? 初めから終わりまで神通が説明してるような。

 俺の苦笑を見てか、那珂が会話に割り込んでくる。

 

『えっと、みんなにお土産何がいいって、聞いておいてね?』

 

 通信の中で、少しだけ川内が悪乗りの罪悪感を感じているようだ。那珂は気を回すのが上手い子じゃないんだが、皆の気持ちを必死にくみ取ろうと頑張ってしまうところがある。川内も、俺を振り回すのは構わないが、可愛い妹に気を使わせるのは駄目らしい。まあつい甘やかす気持ちも分かる。

 

「皆に聞いておくよ。お前たちはパラオに戻ったら、好きに飲み食いして良し」

『本当ですか!? 私は別に良いのですが。パラオはカニが美味しいらしいですね。まあ私は良いのですが』

 

 浜風が食いついてきた。パラオのカニ、旨いらしいからな。

 

『それより、ケガするなよ? 艤装だって壊れたらこっちに持ち帰って直すしかないんだからな』

『りょーかい!』

 

 川内が敬礼する。彼女たちは、我が丹賑島泊地からの援軍だ。パラオ泊地は最前線。硫黄島奪還の失点を取り戻そうと、深海棲艦南洋艦隊は猛攻をかけてくる。そのため呉からの依頼で、俺は熟練の水雷戦隊を南方に派遣する事にした。そして今のところ、それは上手く行っている。あと一週間で彼女たちは任務を終了し、佐世保の艦隊と交代し帰還する。

 

『あと喜べ、今日は支援戦闘機が来てくれるそうだ』

『ほんと? ありがとう提督!』

 

 那珂はじめ、全員の顔がぱっと輝く。〔F-2〕支援(・・)戦闘機。艦娘たちが最も信頼する(・・・・・・)、人間の戦力だ。

 

『と言うことは、夜戦はあるんだねっ!?』

『コンテナの中身は? おにくはありますか? いえ私は別にいいのですが』

 

 はしゃぎまわる仲間たちに苦笑しつつ。神通が現状を総括した。

 

『これで、夜戦の勝率が一気に高まりますね』

 

 その通り、〔F-2〕様々である。

 彼らは最高の支援部隊だ。昼は煙幕、夜には照明弾。そして長期戦になると食料や弾薬を満載したコンテナ。ジェット戦闘機の高速で敵中突破を行い、様々な物資を戦場に投下してくれる。艦娘たちは煙幕や照明弾を持たず、その分武器を積んで戦いに出られるし、保存食ではない生鮮食料品を口にすれば士気が上がる。

 

 艦娘が人間の軍隊を馬鹿にしているなんて嘘っぱちの風聞である。実際は彼女たちにとって空海軍や自衛隊は得難い存在であり、戦友なのだ。俺もここに来るまで無駄な無力感に(さいな)まれていたから、艦娘と言う存在を知って面食らったものだ。

 

『じゃあ、いっちょ頑張りますか!』

『そうですね。”彼ら”の支援に応えませんと』

『那珂ちゃんの戦い、見てもらうんだから!』

 

 水雷戦隊は、意気揚々と南下を始める。

 先輩や綾郷さん。そして俺自身が望んだ人間と艦娘が共存する世界。それは存外近いのかも知れない。

 

 しばらくは、書類地獄の中で、動かない日々が続いた。しかし神様は二度目のモラトリアムを認めたくないご様子で、またまた均衡が破られるのは、それから二週間後だった。

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