なんとか満足のいく修正が出来ました。勢い全開で執筆をするのはいいけれど、何度も冷静な頭で読み直さないとイカンですね。
そして節分イベでは震電を改修し損ね、ネジの山に埋もれて「涙、拭けよ」状態でしたとさ。
さて、我らが伝説の超戦艦の登場です。やっぱ最終決戦には彼女の存在は欠かせませんよね。18インチ無双を、どうぞお楽しみに。
第106話「大和の帰投(その2)」
Starring:提督
書類仕事のケリをひとまずつけて、俺は霞と医務室に顔を出す。そわそわと落ち着かない彼女は、結構レアかも知れない。
足柄たちが戻ってきたときも、きっとこんなだったんだろうな。俺は何も言わず、彼女を追って歩を進める。
医務室のベッドの上で、大和は雪風や矢矧、響たちと談笑している。
「霞さん、お久しぶりです」
「ええ、お帰りなさい大和」
余裕ありげの霞だが、ここに来るまで、再会の言葉とか考えてたんだろうな。書類を片付けるまでずっとこころここにあらずだった。それでもミスが微増程度しかしないのが、彼女の凄いところだが。
「大和、着任しました!」
大和は俺に気付き、敬礼する。初めて会った連合艦隊、いや日本の象徴は、噂にたがわぬ凛々しさだった。
「そのままで大丈夫だ。起き上がらなくてもいい。それとかしこまらなくて大丈夫。俺は提督だがまだ佐官だし、指揮官とかじゃなく。お世話係とでも思ってくれ」
立ち上がろうとする彼女を手で制する。だが何やら釈然としない様子。と言っても新人のそんな反応は見慣れている。ただ昭和初期と令和のギャップが分からないだけだからな。
「大和、
穏やかに言う矢矧を、大和は若干の驚きと共に見つめる。根っから真面目な矢矧も、ここに馴染むまで苦労したクチだから、彼女の気持ちが分かるのだろう。
「そうですよ! しれぇはとっても優しいです! ちょっと変な人ですけど」
ちょっと変な人……。雪風よ、お前までそう思われてたのか。うちの加賀とかに比べたら、常識人だと思うんだがな。
「まああれだ。令和の海軍はそれなりにリベラルだが、秩序を欠いたり、伝統を軽んじたりすることは無いから、そこは安心してくれ。活躍を期待している。霞、令和について詳しい説明をしてやってくれ」
そして後ろ髪を引かれつつ、回れ右する。本当は俺だってもっとコミュニケーションは取っておきたい。けど書類の山が残ってんのよこれが。
霞は何故か不満そうに俺と大和の顔を見比べて、ため息をついた。
「あんたはいつも……」
いつも何なのか。霞の言葉は分からなかった。でも多分、執務室に戻って片付ける書類が二倍になることを気遣ってくれてるんだと思う。
でもきっと、これが正解だと思う。
「ありがとう。そうするわ」
結局霞は、俺の気遣いを受けてくれることにしたようだ。こいつは少々、働き過ぎだ。
「ほら! しれぇはとっても優しいのです!」
雪風が満面の笑みで俺を見る。何が「ほら」なんだか分からないが、わざわざ訂正する事も無かろう。それより彼女達には旧交を温めて欲しい。これが最後になるかも、とかじゃない。もう会えないと思っていた古い友人との再会に、上司がしゃしゃり出てきたら俺だって嫌だもんな。
「……そうね。ありがとう」
ほんの小声で霞が礼を言った。何が「そう」なのかは、相変わらず分からないけれど。それにしても、ほんと鎮守府解体派の偉い人たちはメーワクだわ。
「待ってください!」
ドアノブを握る俺を引き留めたのは、大和だった。振り返った先にいたのは、先ほどまでの品の良さはどこへやら、ただただ必死な顔をした女の子がいた。
「どうしたんだい大和?」
「そうだよ? どっか痛いのか?」
心配する響と朝霜の声は届かない。これは何かある。彼女にとって大切な何かが。俺は書類の事を頭から追い出すと、医務室の端に置いてある丸椅子をつかみ、ベッドの傍らに置いた。
「そうかしこまるな。話を聞こう」
坊ノ岬の仲間たちは、皆顔を見合わせて成り行きを見守っている。さあ、何が出るか。
「ここは離島だと聞きました。本土は、無事なんでしょうか?」
ああそうか。真面目な彼女の事だ。俺の口から直接戦況を聞きたかったんだろう。確かにこちらの配慮が足りなかった。俺も疲れて視野が狭くなってるかも知れないな。
「安心しろ。硫黄島は奪還したから、東からの攻勢はとりあえず無くなった」
硫黄島という単語のせいだろうか。彼女は身を乗り出した。
「硫黄島をですか!? ではサイパンは!? 成都は? 都市爆撃は中止されたのですか!? それより、沖縄は!?」
「……大和さん?」
涼月が怪訝そうに首をひねる。彼女が持ち出したのは昭和、それも坊ノ岬で彼女が沈んだ当時の知識によるものだ。今が80年後だと受け入れられず、混乱しているのか?
戦艦〔大和〕は温存され、最後の最後の坊ノ岬で散った。彼女は焼かれる祖国を見ながら、忸怩たる思いを抱いていたのかも知れない。そう言う艦娘は多いし、赤城も長門も、みんなそうだった。
「大丈夫です! 今はアイオワさんもサラさんも仲間ですから」
「えっ?」
心底嬉しそうに言う雪風と、何故か不本意そうな顔を浮かべる大和。その表情に、俺は強い違和感を覚えた。
「まあ”敵”が何なのかは霞から聞いてくれ。実はその敵の一部と、講和の話が出ている。そうなったら日本本土は後方になって、都市爆撃の心配はまずなくなる。安心していい」
「そう……ですか」
ところが大和は一向に安堵の表情を浮かべない。皆が戸惑った表情を浮かべる。矢矧を見やると、彼女も同じ様子だ。
銃後の国民の安全を、素直に喜ばない。それは他鎮守府から話に聞く戦艦大和のイメージと、明らかにずれがあった。
「では、私は何のため……」
ほんの小さく、彼女の唇が動いた。この時俺は、彼女の事を誤解した。赤城や長門、ビスマルクのように、祖国のために戦えなかった自分を悔やみ、その復讐戦を望んでいると勝手に解釈した。
しかし、俺の思い込みは、この後しばらく尾を引く事になる。
「資源は
こう言えば奮い立つと思っていたんだが、彼女は割と無感動だった。いや感情は確かにあるが、それは負の方に働いた。
「……はい」
大和は「何かの感情」をこらえて、それだけ答えた。俺にはそれが、何なのかは分からない。
力を合わせて硫黄島を攻略し、多少調子に乗っていたかも知れない。艦娘と言うものは簡単に「こう言う子達だ」と、簡単に定義できるものではない。それをすぐに思い知らされることになる。