佐世保は行けませんでした(´;ω;`)
●12時11分 ホテル
『ヒトフタヒトヒト。大和です。本日の閑閑亭は、アメリカ艦の皆さんとの交流のため、ちらし寿司を作ります。艦娘、職員さんだけでなく、町民の方の分もあります。任務中の方もご心配なく。第二回も企画中です』
Starring:アトランタ
あれからアイオワは、大和の秘密をさぐると称して、ずっとつけ回している。ストーキング的なそれではなく、工事現場で働く大人を興味津々で見ている男の子とか、そんな
大和の方は、それを邪険にするでもなく、にこにこと笑いながらあれこれ説明している。自分がこんなのやられたら、開始30分でキレている。
「ねえ? What’s is this?」
「これはですね、照り焼き用の串ですよ。こうやって、タレにくぐらせるんです」
「Amaizing! これは、あなたの強さの秘密なの?」
大和はこまったようにあははと笑う。
「多分違うと思いますよ。でも照り焼きは美味しいです」
「Wonderful!」
アトランタは別に、それに付き合う必要ないのだが。駆逐艦がなんか寄ってくるし。まあ仕事だから仕方がないけど。ちらし寿司うまいし。
それにしても、大和の不調説はどこへ行ったのだ。自分が知る限り、彼女は終始楽しそうで、訓練結果も悪くないどころか、むしろ良い。
「今日はカニ汁もやりますよ。提督が苦労して手配してくださったんです」
「Realy!? YamatoがCookingするの?」
「鳳翔さんと一緒にですけど。室蘭の毛ガニは格別らしいですよ」
あ……。大和は一瞬身を固くするアイオワに気付き、すぐに話題を切り替えた。
室蘭という町は、アイオワにとって特別な意味がある。悪い方にだけれど。大和が沈んだ後だから、彼女は
そう、アトランタにしてみれば、実はアイオワの方が心配だと思っている。実際訓練結果もよろしくない。彼女のハイテンションは、自分が立ち直るきっかけを、大和に求めているのかも知れない。演習で大和に負ければ負けるほど、アイオワは彼女に依存して行く。
で、その不調の原因は恐らく検討がついている。彼女の艦歴は、アトランタとは重ならない。それでもプライドの高いアイオワが苦しんだことは、自分にも分かるのだ。でもアトランタは、そこまで踏み込まない。踏み込めないと言うべきか。この件は本当にどうしたらいいかもわからない。
「ふわぁ」
目の前で大あくびする津田提督も含め。
「いいの? 提督さんが遊んでて」
そう言っても、彼は特に悪びれる様子はない。
「上から色々難癖をつけられてから交代制にしてるんだ。休めるときに休んどかないと体がもたんからな」
そんなことを
この津田と言う男、実績から見て多分有能で、彼を慕う艦娘を見ればそれは分かる。しかし何というか、威厳とか権威とか、そう言う軍隊に必要なものを、無意識に距離を置いている節がある。自分とは何もかも違うのに、何故か親近感がわいた。
「大和、何があったの?」
どうせ自分には腹芸など無理だから――いや、面倒くさいからと言うべきか――いきなり本論を切り出した。
「聞いてたのと違う。魔法でも使った?」
津田大佐が苦笑する。そして言った。
「そんな魔法あれば、毎回使ってる」
その通りだが、前任の色が付いた泊地を、短期間でここまで一枚岩にする。魔法以外の何物でもない。
「別に良いんだけどね。前にうちのAdmiralがそう言ってた」
魔法使い云々は、自分達の提督、タネンバーグ少将の評である。
最近柄にもなく、政治っぽい話をしている。艦娘たち生存圏がどうなどと、地図とにらめっこしているが、それは横須賀や、この津田大佐も一枚かんでいるらしい。
自分大好き、自分一番のわれらがAdmiralも、彼のことは認めている様子。そうでなけれな大事な艦娘を預けたりはしないし、自分に彼を見定めろなども命じたりしない。
「大和はホテル扱いを嫌う艦娘だと聞いたけど、あれは何なの?」
「”あれ”は酷いな」
津田大佐は苦笑して、コーヒーをかき回す。カカオ豆なんて嗜好品、上質のものが普通に飲めるわけがない。恐らく入れ方が良いんだろう。
最近この閑閑亭で散財してるのは、他に娯楽が無いからで、別に大和の料理を気に言ったわけじゃない。ないったらないのだ。
「別にあいつはホテルが嫌なんじゃなく、皆が戦ってる時に
「
してねーよと津田大佐は言う。まあ実際にやろうとしたら、彼は既に消し炭にされていると思うが。
「大和の時は抑止力の話をした。お前がどんと座ってるから皆が頑張れるってな」
「それだけじゃ軽すぎると思うけど?」
軍艦は抑止力。フリート・イン・ビーイング――すなわち軍港から敵に圧力を与え、戦いを躊躇させる思想――こそ最高の使い方。自分たちもAdmiralから、そう教えられてきた。おそらくこの泊地でも変わるまい。
「そうだな。だからまあ一生懸命言い方を考えたんだよ。それはもう柄にもなく」
「日本には”
「さや? sheath?」
「そう、その鞘」
津田大佐は、コーヒーのお代わりを注文し、ゆっくりと話し出した。