仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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イベント海域の華、友軍艦隊到着です! 誰が来るかって? 本編をどうぞ(`・ω・´)ゞ


第120話「陰謀の足音(その2)」

15時37分 公海上

 

『ヒトゴサンナナ! 秘書艦大淀です! 只今より泊地の緊急レベルを引き上げます。一水戦、二水戦は直ちに出撃準備を! 高速戦艦、高速空母は工廠に集合してください! その他艦娘は出撃に備えて待機を! 繰り返します!』

 

●同時刻 泊地中央指令室

 

 かなり危険な事態だ。それも轟沈が出かねないほどの。

 瑞鶴らアメリア・イアハート探索艦隊は、南太平洋上で消息を絶った。より正確に言えば消息は分かっている。彼女たちが目指す、トラック南東方面一帯に、強力な電波妨害が放たれた。つまり彼女たちはそこにいるのだ。明確に罠にはまった形で。

 

 何としても救わなければならない。そのために俺は、大変に危ない橋を渡る。その覚悟を決めたのだった。

 

『空母機動部隊、出撃準備完了です』

 

 叩き起こされた赤城は、俺の無茶な命令に従って、高速空母たちの出撃体制を整えてくれた。

 

「了解だ。言うまでもないが、加賀は復帰して初めての作戦だ。無理はさせるな」

「それ、加賀さんに直接行ったら怒られますよ? 一航戦を侮っちゃ駄目です」

「そうだな弱気は禁物だ。行ってこい」

良候(ヨーソロ)

 

 艦隊は、低速艦から順番に抜錨して行く。

 既に阿賀野たちが現場に急行している。火力不足ではあるが、戦場に急行するなら、軽巡駆逐なのは自明の理だ。

 

 だがディスプレイ越しの赤城は迷わずにいてくれた。かつてのように抗弁すること無く、敬礼する。

 

『信じてます』

 

 工廠からの通信が切れる。分かってるよ。お前を失望させるなら死んだ方がマシだ。

 

「戦艦部隊は?」

「補給は完了してます」

 

 

 モニターの情報を確認していた大淀から、即座に返答を受ける。〔ミズーリ〕が使えたらいいんだが。アメさんの物を勝手には持ち出せない。

 大淀は、遠慮がちに一言付け加えた。

 

「本当に大和さんまで出撃させるんでしょうか?」

「しないで終われば万々歳なんだがな」

 

 何しろ運用コストが激重だ。まあ彼女がガチで戦う状況になったら、俺たちは破滅一直線だがな。

 

『――ちょっと! 何をしてるんです!?』

 

 まだ閉じていなかった回線から、珍しく赤城のうろたえた声が聞こえてきた。

 

『だってレックスやサラたちがPinchなのよ!?』

 

 聞こえてきたのはアイオワの大声、そしてアトランタの懇願だった。

 

『よく知らないけど、これから皆を助けに行くんでしょう? 黙って見ている辛さとか、私は知らないけど、でも何かしたい』

 

 俺は何も返せない。俺が司令官でなければ、きっと同じ事を頼む。だが。

 

『許可できない。丹賑島じゃなく、ハワイの艦を引き連れて西進して見ろ。国際問題になる?』

「西進? レックスたちを助けに南に行くんじゃないの?」

 

 どこまで話すべきか、思考する一瞬の間を、二人は許さなかった。

 

『Please tell me! 教えて!』

 

 二人に話すのなら、もう全員に話すべきだろう。仲間が危機にある中、隠しても無駄だ。俺にできる誠実さは、そのくらいだ。

 

「全艦聞け! 状況を説明する!」

 

 皆不安なのは同じだろう。最低限の意思疎通を残し、スピーカーが静かになる。

 

「情報漏洩は、アオじゃない」

『どう言うこと? あの女じゃないってこと?』

 

 苛立ちをにじませ、霞が言う。彼女もいきなりやってきて瑞鶴たちを聞きに晒したアオに怒りをにじませているのだろう。

 だがこの件は、俺の責任が大きい。()がここまでやるとは思っていなかったからだ。

 

『そうでしょうね。あの子たちは、そんなことで無様を晒したりはしません』

 

 自信をにじませる加賀の声色は落ち着いていた。それはもう、共に戦う五航戦への信頼なのかもしれない。そして彼女の言うとおり、彼女達は老獪だった。

 

「恐らく瑞鶴の悪知恵だな。アメリア捜索艦隊は襲撃を警戒して、最短航路を進んでない。完全にランダムに遠回りやショートカットを繰り返したんだろう。情報が漏れていたとしても、これなら待ち伏せされにくい。翔鶴の目もあるから、アオが座標を漏洩しようとしてもばれてしまうだろう」

『じゃあ誰、なんです?』

 

 大淀の問いはもっともだ。そしてそれを納得させるには、最悪の結論が必要だった。

 

「犯人は、上だ」

 

 俺は天井を指差す。恐らく出撃準備中の艦娘たちは、顔を見合わせている事だろう。だが大淀が気付く。さすが艦隊の戦略面にも関わっていることはある。

 

「ひょっとして……”はげたか”、ですか?」

 

 俺は頷く。

 

『はげたか? Vulture?』

 

 そう、はげたか。所謂偵察衛星だ。

 元々は人間同士の情報戦に使用されるはずだった。しかし深海棲艦相手には、妖精の力を持たない最新鋭の光学装置は通じない。直接敵の探知に使えず、ジャミングを早期に発見して、出現に備えると言った補助的な用途に限られていた。

 そして艦娘は、本来(・・)味方である衛星に対して何らかのジャミングをかけているわけではない。

 

 そこから導き出される結論は、常軌を逸していて、とても不愉快なものだったから。

 

「海軍の誰かが、衛星で私たちを覗き見ていて、アオさんを沈めようとした?」

 

 大淀が答える。話を聞いていた全員――艦娘だけでなく、人間のスタッフたちも――が、一斉に顔をこわばらせた。それは、海軍内部に明確な敵対行動をとる人間がいると言うことだ。

 

「恐らくな」

 

 多分計画的な行動じゃないだろう。目の前に特大の餌が現れたから、ここ一番の勝負に出たんだろう。

 彼女が沈めば、講和はご破算。戦争遂行の主導権を親艦娘派に渡さなくて済む。

 

「だとしたら、許せません」

 

 大淀が静かな怒りをにじませる。事実上、仲間を売り飛ばされた形になるのだから。

 

『なおさら早くRescue行かないと!』

 

 アイオワを落ち着かせるべく、俺は一呼吸終えてから、告げる。

 

「瑞鶴やレキシントンたちだが、実は最初から増援部隊と合流する手はずになってる。丹賑島からの増援が阿賀野達だけだったのは、過剰な戦力を送り込んで消耗戦になったら、不利な戦いを強いられるからだ。」

 

 まさかここまでの大事になるとは思わなかったが、この手配が功を奏した。念のための保険と、ちょっとした粋な計らいが上手く転んだわけだ。

 

「あと、今回だけは艦隊に息を合わせた動きをされちゃ困るんだ。多少浮足立ってないと”敵”が油断してくれない。でもとりあえずは平気だ。……ほら」

 

 俺はコンソールを操作して、最新の電文を表示させた。それは、あの海域にいるはずのない艦隊からの朗報だった。

 

「諸君、安心してくれ。友軍艦隊(・・・・)からの電文だ」

 

 俺は一言ずつかみしめるように、電文を読み上げた。

 

『友軍艦隊ヲ発見 タダチニ合流支援ス ワガ灰色ノ脳細胞ハ健在ナリ BB-45コロラド』

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