仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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騎兵隊の登場です! なんかこっちのコロラドはおかしな影響を受けてますが、他の鎮守府にはまともな彼女もちゃんといます。

なお、島風とのコンビは思い付きですが、なんかすっごい噛み合ってるのでまた出したいですね。


第121話「友軍艦隊との合流」

Starring:島風

 

 弾けた砲弾は、前衛のイロハ級たちをまとめて薙ぎ払い、彼らの突撃を叩き潰した。

 

「USS BB-45 Colorado class nameship Colorado! 戦闘開始よ! 久しぶりね神威。この灰色の脳細胞が来たからには……」

「いいから、砲撃を止めないで!」

 

 マイクに怒鳴りつけると、コロラドは「おっと」という間抜けな声と共に、再び砲口から力強い火焔を放ち始める。

 

「お久しぶりです。これで三人ですね!」

 

 神威さんは微笑みつつも、既に融通できる砲弾の確認に入っている。アメリカの大型砲弾は持ってきていないだろうが、ジョンストンの主砲弾は皆が使っているものだから、予備弾が流用可能だろう。アメリカの強さは規格化の強さ。そんな教科書レベルの知識を、島風は肌感覚で学んできた。

 

 

『いきなりで悪いけどさ。ちょっとハワイ行ってきてちょうだい』

『え? 意味が分からんですけど?』

『技術交流がしたいのよ。ジョンストンが来てくれるから、こっちも優秀な子にアメリカのやり方を見てきて欲しいのよ』

『えー、何で私なんですか?』

『タネンバーグ提督から『軽装備で魚雷戦できる子がいい』って言われてるの。向こうの子は重火力だから、速くて正確に動ける子が欲しいんじゃない?』

『速い? 速い子が良いんですか!?』

『硫黄島作戦前には戻ってきてもらうから、向こうの子に胸を貸してあげるつもりで行ってらっしゃい』

 

 

 などと言って鼻歌交じりにハワイに繰り出した島風である。正直騙された。

 ハワイでの生活で思ったのは、丹賑(ニニギ)島での自分は、随分と周囲に奔放さを許容してもらっていた、と言うことである。気付いた理由は簡単で、ハワイの連中が自分より奔放極まりないからである。歓迎会のカオスぶりは忘れない。隼鷹さんも千歳さんも、あれに比べたら随分と風情がある。

 

 特にこのビッグセブンは、本当にあの長門さんや陸奥さんと同じ称号を持つ戦艦なのだろうか。実力が凄いのは分かるが、真面目さと言うか常識人かどうかと言う点において。

 

「そもそも思い付きで突っ込み過ぎ! レンジャーさんがいなかったら迷子になってた!」

「Elementary, my dear Simakaze.――初歩的なことよ、島風! あんたはただ眼で見るだけで、観察と言うことをしな……」

「それを言いたかっただけじゃん! いいから撃って!」

 

 レンジャーさんはただちに戦闘機を発艦させ、サラトガさん、レキシントンさんが補給する時間を稼ぐ。

 

 波状攻撃をかけてくり深海棲艦を、ひたすら叩き続けるという、精神的にも辛い戦いになった。大型艦を八隻ほど大破に追い込んで、ようやく敵は後退して行く。もしかしてだけど、向こうはこちらの消耗を狙っている? 長い逃避行になるかもしれない。そう覚悟しかけたとき。

 

「撤退は駄目。ここに踏みとどまりましょう」

 

 瑞鶴さんがとんでもないことを言い出す。冗談でも笑えない話だ。

 

「敵砲撃、また来ます!」

 

 レンジャーさんが叫び、実際に巨大な水柱が何本も吹き上がる。大口径砲の扱いは専門外だが、それでも分かる。諸元が修正されて、どんどん砲撃が正確になっている。

 

「理由を聞くわ!」

 

 怒鳴るように言い返すのはレキシントンさん。まさか信じる気になったのだろうか?

 

「これ以上北上してパラオから離れるのはまずいわ。南からの圧力が減って帰って取り囲まれるリスクがあるもの。それに敵はパラオの艦隊に後ろを突かれることを恐れてるはずだから、時間はむしろ私たちの味方なの」

 

 正直驚いた。瑞鶴さんには努力家でがむしゃらなイメージはあっても、こんな俯瞰した視点を持っているなんて考えたことが無かった。正直加賀さんに噛みつく姿は、スマートに見えなくて、もっと速くすればいいと思っていた。つまり、彼女を侮っていたと知る。

 翔鶴さんを見たら、島風の考えを読み取ったのか、なんか自慢げにふふんと笑った。この人もなんか、あれだなと思う。

 

 彼女の言うことが正しいかは分からない。しかしぞろぞろ現れる敵を前に、踏みとどまれと言うのは、例え正しくても納得はしかねる。命は今度こそ(・・・・)ひとつだけなのだ。

 

「瑞鶴が言うならしょうがないわね」

「本気ですか!?」

 

 よりにもよってレキシントンさんが支持を表明してしまう。つい正気かどうか聞き返してしまった。

 

「そうね。ページの中盤ぐらいにやる推理は、きっと間違いだもの。彼女の言う通り真犯人は別にいるわ」

「……あんたは黙ってなさい」

 

 全員の顔を確認すると、納得し覚悟を決めていた。

 

「ワタシもズイカクに同意する。目の前の艦隊を撤退に追い込めば、彼女達はもう来ない」

 

 件の深海棲艦が断言する。そう言えばこいつがいたんだった。噂の妙になれなれしい和平派の深海棲艦と言ううさん臭い存在を、思い切りうさん臭そうに見てしまう。だって実際うさんくさい。

 

 再び轟音。敵の斉射。巨大な水柱。着弾の精度は、更に上がっている。

 

「覚悟を決めましょう。今背中を向けても、誰かが被弾したら全員で帰れません」

 

 島風には、翔鶴さんの言葉の方が響いだ。作戦云々より、皆が生き残るのに必要な行為、と言うなら、それはやるべきだろう。

 

「あーもう分かった! その代わり、先頭切って突っ込むのは島風の役割だから!」

 

 取るものも取らず、島風は機関を最大限に吹かして、突撃の準備に入る。何も言わないのにジョンストンはじめ、駆逐艦たちが後に続く。 

 

「気を付けてください!」

 

 神威から砲弾を受け取る。魚雷の予備は無いから、一撃必中。大物を食ってやるつもりだ。

 

「お願い。あと多分だけど。海軍内部の内通者が南洋艦隊に情報を流し、あなたを沈めて講和会議を壊そうとした」

 

 全員がお互いの顔を見合わせ、生唾を飲み込んだ。アオは、静かに頷くだけだった。

 

「恐らく、ズイカクの言う通り」

 

 冗談じゃない話だ。こっちは命がけで戦ってるのに。そう言うのは、速くない。

 

「つまり、アオを守り切れないと戦いはずっと続く。そう言うことですね?」

 

 そうしたら、きっとまだまだ艦娘は沈む。それは、いくら速くても防ぎきれない問題だと、島風はハワイで学んだ。

 

「真犯人は身内なパターンね! 犯人はヤ……」

「いいから撃って!」

 

 コロラドがまた馬鹿を言い出す。それで冷静になる。結局やることは変わらない。だから――。

 

「関係ないです。しまかぜは速いから先頭で突っ込む。誰も沈めない。そう言うのは任せました!」

 

 赤熱したボイラーが強力なエネルギーを生み出し、小さな体を押し出す。目指すは空母か戦艦、とにかうデカブツだ。

 

「しまかぜ、砲雷撃戦にはいります!」

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