仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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銀座のシグレナイト行きたかったです(´;ω;`)

ガンダムの短編に浮気してましたが、今日も更新します。いつもの時間に予定が入ったので、午前中の更新です。第六章はこのまま怒涛の展開に突入します。どうぞお楽しみに。


第123話「最悪な敵は最高の理解者」

Starring:提督

 

 正直、俺も驚いた。二人の激情は初めてだったから。陽気なアイオワと、感情を見せないアトランタ。二人は、いやきっと多くの艦娘が秘めている。かつて日本艦と干戈(かんか)を交えたフネたち。彼女たち感じる義憤は、誇りを踏みにじられた怒りだった。

 

「Meたちはずっとずっと戦って、いろんな強敵(Strong enemy)と戦ってきた! でもMeたち脅かした相手はいても、恐怖させたフネたちは、ただひとつしかないのよ! 日本海軍(Japanese Navy)しかないのよ! Youにそれが分かる!?」

 

 久我は言葉を失い、基地職員たちもまた、固唾(かたず)をのんで事態を見守っていた。

 

(おか)が好きならそこに張り付いてりゃいいだろ! てめぇはソロモンのナイトメアを知らねぇ! アカツキを知らねぇんだよ! あたしが、あたしたちがどんな思いであいつらと殴り合ったか――!」

 

 俺だって防人(さきもり)の端くれ。気圧された久我が一瞬だけ、恐怖を浮かべたのを見逃さなかった。人が悪いと自覚しているが、少しだけ溜飲が下がった。

 

 さあ、そろそろ話を締めようか。この戦いの勝者は、俺でも久我でもない。アイオワとアトランタだ。

 

「と言うわけで、提督と艦娘(俺たち)は、命がけでお人形遊びをやってる。あんたのことなんか怖くない。さあ、どうする?」

 

 久我は大きくため息をつく。いかにも譲歩してやると言う上から目線で、彼は言う。

 

『とにかく、このお祭り騒ぎを止め給え。君が乱心したと更迭を進言する事も出来る』

「どうぞ。そうなったら一切合切ぶちまけるがな。さあ、どうする?」

 

 久我の返答は早かった。俺はその事実から、恐らく南洋艦隊による艦隊とアオの襲撃は、どうも上手くいっていないと読み取り、内心で安堵した。

 

『とにかくお互いの誤解を解こう(・・・・・・)。呉を目指す艦隊などいないし、君の主張するような陰謀は無かった。その証拠に君の艦隊は全員が無事に帰還する(・・・・・・・・・)だろう』

 

 よし、言質を取った。何とかドローに持ち込めた。あとはお互い言いっこなし。「次」はこんな突発の馬鹿試合ではなく、もっとちゃんとした舞台で相まみえよう。

 

「小官も随分と興奮したようだ。無礼を詫びよう。会議中に失礼した」

 

 それだけ言って回線を切ろうとしたとき、久我はこともなげに言った。

 

『君と言う人間を知れてよかったよ。講和会議で会うのを楽しみにしている』

 

 つまり、次の戦場は、講和会議の席上と言うことだろうか。もちろん受けて立つ。

 

『それと、無敵艦隊に酔うのはほどほどにな。痛い目を見ないよう、慎重にな』

 

 通信が切れた。最後の言葉の意味を推察する前に、ブザーが鳴り、スクリーンが赤城たちに切り替わった。

 

『大和さんが被弾しました! 長距離からの精密射撃で!』

 

 !!

 

「艦載機は? 敵の攻撃は継続中か!?」

 

 怒鳴るように受話器に呼び掛ける。

 

『継続的な攻撃もありません! 艦偵は出しましたが、大型艦は確認できません!』

 

 とりあえずは安心だが、久我の意図は何だ? こんなでかいカードを意趣返しの為に切るような男でもあるまい。 

 

「大和のダメージは?」

『主砲を盾にしたせいで体へのダメージは何とか押さえられたそうです。しかし主砲一基が歪んで原型をとどめてません』

 

 赤城の返答に安堵したものの、恐るべき事実を認識するに至る。

 

「つまり、長距離からのピンポイント攻撃で一発百中、大和の分厚い装甲版をぶち抜いたって言うのか?」

『そのようです』

 

 赤城の口数は少ない。敵を仕留められなかった屈辱と、更なる脅威にさらされたという事実が、彼女から多弁さを奪ったのだろう。

 久我の意図なんてもう丸わかりだ。このタイミングでこちらの切り札、大和を沈めること。

 

「夕張、映像は見ているな。一体()だ?」

『分かりません。大和さんをアウトレンジできる砲なんて、はっきり言って超絶技術です。深海棲艦の技術体系とは異なりますね』

「つまりだ。人間の技術を使っている可能性もある、と?」

 

 夕張は、技術者らしく明言を避けた。だが可能性はあると言うことだろう。

 そして第一の容疑者は久我だ。

 

「再装填の時間は、割り出せないか?」

 

 無理を承知で夕張に尋ねる。やはり断言はしなかったが、それでも最低限の予想は出してくれた。

 

『水柱の大きさから、それなりの巨砲だと推定されます。推定ですが、それなりの時間が必要だと思われます』

 

 それならば交代ではなく、距離を詰めて戦うと言う選択肢も出てくる。俺も今回ばかりは即断できなかった。選択を間違えたら、一方的に撃たれて多数の轟沈を出すリスクがあった。

 

『提督、申し訳ありません!』

 

 スクリーン越しの大和は、しょげた姿を想像していたが、意外にも意気軒高(いきけんこう)だった。と言うか目が爛々(らんらん)と輝いてすらいる。

 

『提督は、あの敵(・・・)の存在を予測して、大和を鍛えて頂いていたのですね!』

「え? いやそう言うわけでは」

『お任せください提督! 大和、あれ(・・)を一刀の下に切り伏せて、海の平和を取り戻します! 前進の許可を!』

 

 ま、まぁ無力感に苛まれるとか、そう言うんじゃなくて良かった、かな?

 だが半分は自分を鼓舞する言葉だろう。彼女をもってしても、あれをもう一発食らうのはまずい。それはつまり、戦場のあらゆる艦娘が一撃で轟沈になる可能性を示唆している。

 

 コンソールから編成表を呼び出した。艦隊速度を考慮に入れて、高速戦艦の出撃を後回しにしたのが裏目に出た。かと言って低速の重戦艦を前に出すのは危険。だが艤装が破損した大和を突出させるのは論外だ。バックアップ無しだと、被弾したら助ける者がいなくなる。あと一隻、高速戦艦が欲しい。

 

 いや、いるではないか。最強のカードがもう一枚!

 

『提督! Meたちがいるわ!』

 

 スクリーンにアイオワ顔面がアップで映される。間抜けな光景に、俺は少しだけ緊張から解放された。

 

「戦艦アイオワ、ひとつだけ問う。まだ大和を知りたい(・・・・)か?」

 

 指令部の人間たちは、何の話かと聞き耳を立てている。またか、とか言ってるやつもいるが、今回は不問にしよう。

 

「答えはYes!よ。でも大和を知るのに、遠回しな方法(Way)は取らなくてよかったの。Battleshipを知りたければ、Battleすればいいんだもの!」

 

 俺はにやりと笑う。アメリカ最強が復活なさったそうだ。タネンバーグ少将には申し訳ないが、国際問題上等でやらせてもらう。

 表情から伝わったようで、アイオワが敬礼する。大和を追い回していた姿とは全く違う、獰猛な笑みともに。

 

「暁、聞いていたな。お前たちが一番近い。アイオワとアトランタを連れて、大和と合流しろ」

 

 彼女たちはベテラン駆逐艦だ。考えなしの猪突はない筈だ。

 

『任せて!』

『っぽい!』

『なのです!』

 

 駆逐艦たちから次々良候(ヨーソロ)の返答が入る。韋駄天(いだてん)の戦艦を援護するなら、やっぱり韋駄天の駆逐艦と相場が決まっている。勝負は敵が第二射を撃つまでに肉薄できるかどうかだ。

 

『提督さん、いいっぽい?』

『私も!』

「ん? 何だ?」

 

 暁と夕立が、発言の許可を取って来る。正規の通信なら許可なんかいらないから、多分私用だな。だが、今回は見逃す事にする。

 

『アトランタさん、アイオワさん! ありがとう! 大好きっぽい!』

『2月になったら豆まきだから!』

 

 アトランタが呆けたように画面を観る。お隣さんの意見で申し訳ないが、愛されてない艦娘なんていないんだよ。

 

「大和、空母部隊と連携して敵を捜索しろ。見つけ次第攻撃していいが、」

『はい提督! 今のアイオワさんなら百人力です!』

 

 静かな笑みと共に告げる。だがただの笑みではない。挑発を受ける強者の笑み。彼女は彼女で待っていたのだろう。

 それを見ていたら、俺の心配も不安も、何処かへ行ってしまっていた。

 

 俺は回線をアイオワに繋ぎ、明確かつ断固とした命令を下した!

 

「アイオワ、行け!(Sally Go!!)

「Yes sir!!」

 

 戦いの第二幕は、始まる。

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