仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

120 / 120
銀座のシグレナイト行きたかったです(´;ω;`)

ガンダムの短編に浮気してましたが、今日も更新します。いつもの時間に予定が入ったので、午前中の更新です。第六章はこのまま怒涛の展開に突入します。どうぞお楽しみに。


第123話「最悪な敵は最高の理解者」

Starring:提督

 

 正直、俺も驚いた。二人の激情は初めてだったから。陽気なアイオワと、感情を見せないアトランタ。二人は、いやきっと多くの艦娘が秘めている。かつて日本艦と干戈(かんか)を交えたフネたち。彼女たち感じる義憤は、誇りを踏みにじられた怒りだった。

 

「Meたちはずっとずっと戦って、いろんな強敵(Strong enemy)と戦ってきた! でもMeたち脅かした相手はいても、恐怖させたフネたちは、ただひとつしかないのよ! 日本海軍(Japanese Navy)しかないのよ! Youにそれが分かる!?」

 

 久我は言葉を失い、基地職員たちもまた、固唾(かたず)をのんで事態を見守っていた。

 

(おか)が好きならそこに張り付いてりゃいいだろ! てめぇはソロモンのナイトメアを知らねぇ! アカツキを知らねぇんだよ! あたしが、あたしたちがどんな思いであいつらと殴り合ったか――!」

 

 俺だって防人(さきもり)の端くれ。気圧された久我が一瞬だけ、恐怖を浮かべたのを見逃さなかった。人が悪いと自覚しているが、少しだけ溜飲が下がった。

 

 さあ、そろそろ話を締めようか。この戦いの勝者は、俺でも久我でもない。アイオワとアトランタだ。

 

「と言うわけで、提督と艦娘(俺たち)は、命がけでお人形遊びをやってる。あんたのことなんか怖くない。さあ、どうする?」

 

 久我は大きくため息をつく。いかにも譲歩してやると言う上から目線で、彼は言う。

 

『とにかく、このお祭り騒ぎを止め給え。君が乱心したと更迭を進言する事も出来る』

「どうぞ。そうなったら一切合切ぶちまけるがな。さあ、どうする?」

 

 久我の返答は早かった。俺はその事実から、恐らく南洋艦隊による艦隊とアオの襲撃は、どうも上手くいっていないと読み取り、内心で安堵した。

 

『とにかくお互いの誤解を解こう(・・・・・・)。呉を目指す艦隊などいないし、君の主張するような陰謀は無かった。その証拠に君の艦隊は全員が無事に帰還する(・・・・・・・・・)だろう』

 

 よし、言質を取った。何とかドローに持ち込めた。あとはお互い言いっこなし。「次」はこんな突発の馬鹿試合ではなく、もっとちゃんとした舞台で相まみえよう。

 

「小官も随分と興奮したようだ。無礼を詫びよう。会議中に失礼した」

 

 それだけ言って回線を切ろうとしたとき、久我はこともなげに言った。

 

『君と言う人間を知れてよかったよ。講和会議で会うのを楽しみにしている』

 

 つまり、次の戦場は、講和会議の席上と言うことだろうか。もちろん受けて立つ。

 

『それと、無敵艦隊に酔うのはほどほどにな。痛い目を見ないよう、慎重にな』

 

 通信が切れた。最後の言葉の意味を推察する前に、ブザーが鳴り、スクリーンが赤城たちに切り替わった。

 

『大和さんが被弾しました! 長距離からの精密射撃で!』

 

 !!

 

「艦載機は? 敵の攻撃は継続中か!?」

 

 怒鳴るように受話器に呼び掛ける。

 

『継続的な攻撃もありません! 艦偵は出しましたが、大型艦は確認できません!』

 

 とりあえずは安心だが、久我の意図は何だ? こんなでかいカードを意趣返しの為に切るような男でもあるまい。 

 

「大和のダメージは?」

『主砲を盾にしたせいで体へのダメージは何とか押さえられたそうです。しかし主砲一基が歪んで原型をとどめてません』

 

 赤城の返答に安堵したものの、恐るべき事実を認識するに至る。

 

「つまり、長距離からのピンポイント攻撃で一発百中、大和の分厚い装甲版をぶち抜いたって言うのか?」

『そのようです』

 

 赤城の口数は少ない。敵を仕留められなかった屈辱と、更なる脅威にさらされたという事実が、彼女から多弁さを奪ったのだろう。

 久我の意図なんてもう丸わかりだ。このタイミングでこちらの切り札、大和を沈めること。

 

「夕張、映像は見ているな。一体()だ?」

『分かりません。大和さんをアウトレンジできる砲なんて、はっきり言って超絶技術です。深海棲艦の技術体系とは異なりますね』

「つまりだ。人間の技術を使っている可能性もある、と?」

 

 夕張は、技術者らしく明言を避けた。だが可能性はあると言うことだろう。

 そして第一の容疑者は久我だ。

 

「再装填の時間は、割り出せないか?」

 

 無理を承知で夕張に尋ねる。やはり断言はしなかったが、それでも最低限の予想は出してくれた。

 

『水柱の大きさから、それなりの巨砲だと推定されます。推定ですが、それなりの時間が必要だと思われます』

 

 それならば交代ではなく、距離を詰めて戦うと言う選択肢も出てくる。俺も今回ばかりは即断できなかった。選択を間違えたら、一方的に撃たれて多数の轟沈を出すリスクがあった。

 

『提督、申し訳ありません!』

 

 スクリーン越しの大和は、しょげた姿を想像していたが、意外にも意気軒高(いきけんこう)だった。と言うか目が爛々(らんらん)と輝いてすらいる。

 

『提督は、あの敵(・・・)の存在を予測して、大和を鍛えて頂いていたのですね!』

「え? いやそう言うわけでは」

『お任せください提督! 大和、あれ(・・)を一刀の下に切り伏せて、海の平和を取り戻します! 前進の許可を!』

 

 ま、まぁ無力感に苛まれるとか、そう言うんじゃなくて良かった、かな?

 だが半分は自分を鼓舞する言葉だろう。彼女をもってしても、あれをもう一発食らうのはまずい。それはつまり、戦場のあらゆる艦娘が一撃で轟沈になる可能性を示唆している。

 

 コンソールから編成表を呼び出した。艦隊速度を考慮に入れて、高速戦艦の出撃を後回しにしたのが裏目に出た。かと言って低速の重戦艦を前に出すのは危険。だが艤装が破損した大和を突出させるのは論外だ。バックアップ無しだと、被弾したら助ける者がいなくなる。あと一隻、高速戦艦が欲しい。

 

 いや、いるではないか。最強のカードがもう一枚!

 

『提督! Meたちがいるわ!』

 

 スクリーンにアイオワ顔面がアップで映される。間抜けな光景に、俺は少しだけ緊張から解放された。

 

「戦艦アイオワ、ひとつだけ問う。まだ大和を知りたい(・・・・)か?」

 

 指令部の人間たちは、何の話かと聞き耳を立てている。またか、とか言ってるやつもいるが、今回は不問にしよう。

 

「答えはYes!よ。でも大和を知るのに、遠回しな方法(Way)は取らなくてよかったの。Battleshipを知りたければ、Battleすればいいんだもの!」

 

 俺はにやりと笑う。アメリカ最強が復活なさったそうだ。タネンバーグ少将には申し訳ないが、国際問題上等でやらせてもらう。

 表情から伝わったようで、アイオワが敬礼する。大和を追い回していた姿とは全く違う、獰猛な笑みともに。

 

「暁、聞いていたな。お前たちが一番近い。アイオワとアトランタを連れて、大和と合流しろ」

 

 彼女たちはベテラン駆逐艦だ。考えなしの猪突はない筈だ。

 

『任せて!』

『っぽい!』

『なのです!』

 

 駆逐艦たちから次々良候(ヨーソロ)の返答が入る。韋駄天(いだてん)の戦艦を援護するなら、やっぱり韋駄天の駆逐艦と相場が決まっている。勝負は敵が第二射を撃つまでに肉薄できるかどうかだ。

 

『提督さん、いいっぽい?』

『私も!』

「ん? 何だ?」

 

 暁と夕立が、発言の許可を取って来る。正規の通信なら許可なんかいらないから、多分私用だな。だが、今回は見逃す事にする。

 

『アトランタさん、アイオワさん! ありがとう! 大好きっぽい!』

『2月になったら豆まきだから!』

 

 アトランタが呆けたように画面を観る。お隣さんの意見で申し訳ないが、愛されてない艦娘なんていないんだよ。

 

「大和、空母部隊と連携して敵を捜索しろ。見つけ次第攻撃していいが、」

『はい提督! 今のアイオワさんなら百人力です!』

 

 静かな笑みと共に告げる。だがただの笑みではない。挑発を受ける強者の笑み。彼女は彼女で待っていたのだろう。

 それを見ていたら、俺の心配も不安も、何処かへ行ってしまっていた。

 

 俺は回線をアイオワに繋ぎ、明確かつ断固とした命令を下した!

 

「アイオワ、行け!(Sally Go!!)

「Yes sir!!」

 

 戦いの第二幕は、始まる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

スケベ提督と元ブラック鎮守府(作者:ルフレオ)(原作:艦隊これくしょん)

▼劣悪な環境だった元ブラック鎮守府に着任する事となった優しく、それ以上にバカでスケベなクソ提督が心を閉ざした艦娘達と少しずつ打ち解けていくお話。▼


総合評価:1473/評価:7.27/連載:80話/更新日時:2025年11月13日(木) 22:20 小説情報

疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建(作者:ライadgj1248)(原作:艦隊これくしょん)

 ブラック鎮守府再建ものを書いてみたくなったので始めてみました。ただし明るい提督が艦娘の心に寄り添ってといった王道ではなく、思いっきり邪道を突き進んで行きたいと思います。▼―追記―▼ 砂糖増し増しのIfものを書いてしまいました。良ければ読んでみて下さい。▼https://syosetu.org/novel/243742/▼ このお話の外伝「厨二病提督の崩壊鎮…


総合評価:10120/評価:8.13/連載:240話/更新日時:2024年12月22日(日) 03:19 小説情報

艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い(作者:マロンex)(原作:艦隊これくしょん)

周りから「日本一着任したい鎮守府」と称される鎮守府。▼だがその裏では多くの艦娘が悩みを抱えていた。▼人の気持ちがわからない、優しすぎる提督と言葉足らずだが純粋な艦娘たち。ある事件をきっかけに艦娘に向き合おうと決心した提督に渡されたのは不思議なメガネだった。▼すれ違う思いと勘違い、葛藤の末に提督は艦娘たちの本当の気持ちを理解し、問題を解決することはできるのか?…


総合評価:439/評価:4.73/連載:53話/更新日時:2026年04月01日(水) 21:27 小説情報

壊れた世界で艦娘と(作者:@秋風)(原作:艦隊これくしょん)

 ありがちな理由で死亡した一般主人公が女神様に拾われて、壊れた世界で艦娘の自己肯定感を上げていく話。▼※注 各要素有、苦手な方はご注意ください。▼ 美醜逆転(明確には逆転ではない)▼ 神様転生(転移)▼ 男女比差有り▼ 貞操逆転▼ ハーレム▼ 一部残酷な描写など▼ 要素は限定的かつ独自的な部分を多分に含みます。▼ ※2024年 6月13日 追記▼ 主人公の口…


総合評価:6407/評価:8.49/連載:42話/更新日時:2025年11月16日(日) 00:16 小説情報

二周目提督がハードモード鎮守府に着任しました(作者:ベリーナイスメル/靴下香)(原作:艦隊これくしょん)

モニタに吸い込まれる式異世界転移したら艦これ世界でした。▼ゲームと違ってハードモードな鎮守府で提督として頑張るお話。▼俺tueee系ハーレム物書こうとしたらカップ麺出来るまでに飽きたので少年漫画風味にしてみました。▼艦これ戦記小説()として頑張りたい、頑張りたくない?▼【挿絵表示】▼


総合評価:27419/評価:8.65/完結:114話/更新日時:2019年08月21日(水) 00:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>