仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

122 / 122
うっかり更新遅れてごめんなさいm(__)m

今回のお話はタイトル通りです。もはや何も言うことはナシです。お楽しみあれ。



第125話「戦艦は簡単に沈まない」

Starring:大和

 

 四十五口径46cm三連装砲。最強の戦艦に与えられた、人類史上最強の艦砲だ。

 たとえ一基が失われても。最強の自負は変わらない。戦艦を敵にする限り、大和型は無敵!

 

 目の前に現れたのは。大和の身長を10倍してもやっと半分くらいの、まさしくお化け砲台。それを複数の戦艦級が支え、重巡を率いた戦艦棲姫が輪形陣で取り囲み、守っている。

 

「突っ込みます!」

「OKよ!」

 

 発砲! 六門に減っていた大和の主砲でも、ひとたび命中すれば敵船体の装甲は粉々だ。さっそく装甲片をまき散らし、戦艦級が水面に消えてゆく。

 

「続くわ!」

 

 アイオワさんの主砲が火を噴く。比喩ではない。本当に爆炎を吐き出して、正面を守っている重巡級を吹き飛ばした。多くのアメリカ艦は超重量級砲弾(スーパーヘビーシェル)を備えた最新技術の結晶を備える。砲身が長いから、貫通力も半端ではない。

 

 まさに、最強のライバル!

 

 提督が示してくれた、圧倒的な強さ。それは孤独な戦いを意味しない。だから、これはこれで悪くない。

 

 敵空母が直掩機を発進させる。だが遅い。自分達の位置を悟られないように、直掩機を上げなかったのが失敗だった。離陸する敵機、上空の一航戦搭載機が片端から排除してゆく。

 護衛空母からの対潜機が、海面すれすれを走り回り、潜水艦の動きを封じてくれる。

 

「行け!」

 

 弾幕6インチ砲をつるべ打ちにして、アトランタが叫ぶ。返事の代わりに敵随伴艦の穴に突入する。

 

 巨砲の仰角(ぎょうかく)が下がる。水平射撃で自分達を狙うつもりだろう。直線射撃を受けたら、もう主砲塔を盾にしても防げまい。自分は艤装ごと大穴を空けられて、水底へ引きずり込まれる。

 

 だが――。

 

 大和かアイオワさん。どちらかを一撃で倒したところで、再装填が完了する前にもう一人が至近距離で目標を叩ける。つまり相打ち覚悟の一撃と言うことだ。つまり生還を捨てて、片道切符で丹賑島の戦力を削りに来ていると言うことだ。

 

 戦艦棲姫が迎撃してくる。いつもなら真っ先に排除する敵だが、大和は「無視」を選択し、アイオワさんもそれに続いた。

 

(……舐められたものですね)

 

 生きて帰る気のない戦いは、最も彼女の主義に合わないものだ。

 ここで新たな命を得た時、それでもいいと思った。今は違う。敵を余裕で倒し、余裕満面で帰投してこそ最強である。

 

「アイオワさん!」

「任せて!」

 

 単縦陣を解除し、二人は敵陣の中、バラバラに立ち回る。敵に同士討ちが頻発し、化物砲の俯角(ふかく)が微調整される。だがもう間に合わない!

 

 最強の戦艦との戦いを、待ち望んでいたのはアイオワさんだけではない。自分だって長門さんたちに、あなたの後輩は最強無敵だと教えたかった。

 自分は母港に縛り付けられていたせいで、つい拗ねていたけれど提督が道を教えてくれた。

 

 自分は最強の戦艦。最強の深海棲艦を一刀のもとに切り伏せ。彼女達を恐れさせ、侵略を放棄させ、平和を創る。それが大和の役目。

 そしてまた、我が提督は最強だ。一週間も満たない期間で、好敵手アイオワさんの悩みを払拭(ふっしょく)してくれたのだ。本人は何もしていないと謙遜するが、そんなわけがない。だって私たちの提督(・・・・・・)だから。

 

 だから、こうして、ライバルと競うことが出来る!

 

 刹那、頭をぶっ叩かれたような衝撃と、火山のように吹き出す黒煙で周囲が包まれた。巨砲が火を噴いたのだ。

 

 目標は、やはり艤装が傷ついていた大和だった。しかしそれは、彼女を撃ち貫くことはなかった。

 敵が自分に集中している間、アイオワさんが突撃、体当たりをかけたのだ。

 

「Fire!!」

 

 ゼロ距離で主砲が放たれる。巨砲を支えていた戦艦級がもろに吹っ飛ぶ。護衛の重巡たちが、アイオワさんを排除しようとゼロ距離で中型砲を構えた。

 

 判断が遅い!

 

 大和は既に、巨砲の反対側に回っていた。

 

「薙ぎ払え!!」

 

 巨砲の横からから一撃。これだけの精密機械。砲自体は頑丈でも装填装置や射撃装置は、恐らく脆い。これで次弾装填を引き延ばせるはず。

 

 背後から殺気! 戦艦棲姫が、振り上げた主砲を大和に叩きつけようと突進してきたのである。

 だが、提督に受けた訓練は伊達ではない。大和は難なく戦艦棲姫の手首を取り、ひねり上げる。敵は盛大に投げ飛ばされ、海面に激突。照準を巨砲から移し、深海棲姫に撃ち込んだ。これで、彼女はもう動けない。

 

 再び巨砲に向き直る。

 

 その時、護衛の重巡級が、一斉に砲身を直上に向けた。大和は、それを警戒するより目の前の巨砲を叩きのめす判断をした。

 

『全艦、対衝撃! 気化爆弾だ!』

 

 気化爆弾! 以前に艦隊を危機に貶めた至近専用兵器である。対策は確立されていたが、それは目の前の敵を見逃すことを意味していた。

 だから負けない! 衝撃で吹き飛ばすだけの兵器だ。高速と引き換えに軽防御の駆逐艦とは違う。

 

「戦艦が、簡単に沈むものですか!」

大和の言う通りよ!(Yamato is completely righ!!)

 

 二人の戦艦は閃光に飛び込んだ。ちりちりと髪の先が灼ける音。だけど、敵はそこにいる!

 

「主砲発射! てえっ!!」

「Fire!!」

 

 ゼロ距離から撃ち込まれた、世界最強の15門が、深海棲艦の装甲を引き裂く。鋼鉄がひしゃげる音。砲身が裂け、最高硬度と予想されるお化け砲は吹き飛び。そのまま赤熱した破片をまき散らした。

 

 顔を庇った腕に熱い鉄片が突き刺さるが、大和の心は歓喜で満たされていた。言葉にならない言葉で、咆哮する。

 

(私は、最強! 私は、皆を守れる!)

 

 だが興奮は、海風が黒煙を洗い流すまでだった。勝利の余韻は、直ぐに冷めて行く。

 

「私は、まだまだですね」

 

 アイオワのアシストは嬉しいが、この程度の敵は単体で戦えないと。アイオワがいてくれたのだから、それこそ二隻三隻沈めないと割が合わない。

 

 でもまあ。今回はこれでいいかもしれない。

 

「Mission Completeね! 艤装なしで互角(Equality)だから、Yamatoの勝ちだわ。次はMeが勝つけどね」

 

 東西の最強戦艦は、握手を交わす。次の機会が、心底楽しみでならなかった。

 

 戦艦は簡単に沈まない。

 

 ――増してや、最強の戦艦は。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

スケベ提督と元ブラック鎮守府(作者:ルフレオ)(原作:艦隊これくしょん)

▼劣悪な環境だった元ブラック鎮守府に着任する事となった優しく、それ以上にバカでスケベなクソ提督が心を閉ざした艦娘達と少しずつ打ち解けていくお話。▼


総合評価:1476/評価:7.27/連載:81話/更新日時:2026年06月01日(月) 21:41 小説情報

疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建(作者:ライadgj1248)(原作:艦隊これくしょん)

 ブラック鎮守府再建ものを書いてみたくなったので始めてみました。ただし明るい提督が艦娘の心に寄り添ってといった王道ではなく、思いっきり邪道を突き進んで行きたいと思います。▼―追記―▼ 砂糖増し増しのIfものを書いてしまいました。良ければ読んでみて下さい。▼https://syosetu.org/novel/243742/▼ このお話の外伝「厨二病提督の崩壊鎮…


総合評価:10121/評価:8.13/連載:240話/更新日時:2024年12月22日(日) 03:19 小説情報

壊れた世界で艦娘と(作者:@秋風)(原作:艦隊これくしょん)

 ありがちな理由で死亡した一般主人公が女神様に拾われて、壊れた世界で艦娘の自己肯定感を上げていく話。▼※注 各要素有、苦手な方はご注意ください。▼ 美醜逆転(明確には逆転ではない)▼ 神様転生(転移)▼ 男女比差有り▼ 貞操逆転▼ ハーレム▼ 一部残酷な描写など▼ 要素は限定的かつ独自的な部分を多分に含みます。▼ ※2024年 6月13日 追記▼ 主人公の口…


総合評価:6439/評価:8.5/連載:42話/更新日時:2025年11月16日(日) 00:16 小説情報

艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い(作者:マロンex)(原作:艦隊これくしょん)

周りから「日本一着任したい鎮守府」と称される鎮守府。▼だがその裏では多くの艦娘が悩みを抱えていた。▼人の気持ちがわからない、優しすぎる提督と言葉足らずだが純粋な艦娘たち。ある事件をきっかけに艦娘に向き合おうと決心した提督に渡されたのは不思議なメガネだった。▼すれ違う思いと勘違い、葛藤の末に提督は艦娘たちの本当の気持ちを理解し、問題を解決することはできるのか?…


総合評価:439/評価:4.73/連載:53話/更新日時:2026年04月01日(水) 21:27 小説情報

オレの周りの女の子達がフルネームを教えてくれない(作者:画面の向こうに行きたい)(原作:艦隊これくしょん)

人類はかつて、深海棲艦の脅威に晒されていたが、艦娘のおかげで助かった。だが、戦後に艦娘は姿を消した。▼なんて歴史は関係ない(と思っている)主人公が名字か名前しか教えてくれない女の子達と送るラブコメディ。


総合評価:3171/評価:7.81/連載:64話/更新日時:2026年05月02日(土) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>